マジックマーケット2024冬にて発売中の長谷和幸さんによる作品集。前作もとても面白かったので読みました。
回転 The Innocents
ペンの上に折ったお札を載せるとお札がクルクル回ります。ペンも紙幣もあらため可。回転中に息とか糸を使ってないこともアピールできます。
早速試してみましたがめちゃくちゃ面白いです。自分でやってても仕掛けの部分に目が行かないほど気持ちよく回ってくれます。
他の作品もそうですが、これは特にそもそも特殊なものを上手いこと他の用途に使う面白さがありました。凄いアイデア。
バルカン・サリュート Vulcan Salute
指輪をした左手の薬指が右手を貫通します。(突き刺す貫通じゃなくて横に)
指輪をしていれば道具なしで演じられる即興手品でハンドリングも無理なくビジュアルも文句なし。
あと、演出で使われているセリフが粋です。結婚指輪をする指だから皮肉っぽいセリフにもなりそうなところ、あざとすぎずカッコよくちゃんと現象の説明にもなってるスマートな演出になってます。
封緘 Foo Can
お札と封筒を使うバンクナイトです。
外れの封筒には白紙を入れ、燃やしてしまいます。封筒にお札を入れる作業は観客が行い、演者はその作業を見ず封筒も自由に選んでもらえます。
仕掛けに用いるとある道具を使ったマジックは結構色々あるんですが、これほど巧妙に使った例はないんじゃないでしょうか。こういう疑いの余地をなくすためのものに仕掛けをするトリックいいですよね。
火を使えない場所での演技も解説されています。
ザ・マジックナンバー 3 is the Magic Number
1〜4の数字が書いたカードから1枚選んでもらい、変わった方法で当てます。
“観客の感心と笑いのなか、にっこりと微笑んで演技を締めくくりましょう。” って書かれてて、実際にそういう終わり方が出来る手品というだけで凄い。
パート・オブ・ユア・ワールド Part of Your World
赤黒10枚ずつ使ったOOTW。
レギュラーのみ、即興、ガイドカードの交換なし、という条件を満たしていて、さらに10枚ずつでやるから「観客がちょうど10枚選ぶ」ということができます。少数枚のOOTWなら絶対そう見せたいのでこれができるだけでポイント高い。
手法はOOTWでこれ使えたかという感じでとてもらしさが出ています。別にめっちゃ変わった技法使うとかでもないけど、これにこれ使えるんや的な。他の「観客が選んだカードが」系のトリックで使われる技法ではあるのでなるほど確かにという感じで、見た目もとても良いです。
というわけで以上5作品、前作同様肝となるアイデアを上手く使ったシンプルな現象が楽しめる一冊でした。
また、本書には「女神の微笑む街にて」という東釜山大学芸術学部マジック学科で行った講演の抜粋記事があり、より長谷和幸さんのクリエイティブな部分を味わえます。この記事の文章もめちゃくちゃかっこよくて、どうすれば良い手品を思いつくかに対するシンプルな答えを納得できる形で言葉にしています。解説されているトリックはどれも、どうやったらこの発想になるのかと思うものばかりなので説得力があります。
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