by jun | 2020/12/20

マジックマーケット2020にて発売されたみやもとさんによる作品集。
みやもとさんは去年Crazy Cherry Collectionという作品集を出されていて、これはもう端正でクラシカルな風格さえある手品が解説されていたのですが、この喪男コインマジックシリーズは鼻になんか突っ込んだり大半が全裸だったり誰もやってない新しいことに異常なモチベーションでチャレンジしています。

Re:Any Nose Shot

これは両方の鼻の穴にピーヒャラを突っ込んで、観客が指定した方のピーヒャラだけ動かせたり、自由にピーヒャラをコントロールできます。
全く想像できない方法で普通に面白かったです。
たぶんパッとこうやってんじゃないかという方法では絶対に出来ないし、ピーヒャラは見た目で無理だろうというのがわかるのでティッシュから段階的に見せるのめっちゃ良いですね。見た人はみんな鼻をひくひくさせながら不思議に迷い込むことだと思います。というか解説読んでも難しくてひくひくしてます。傑作。

Naked Coin Production / Naked Miser’s Dream

ここから全裸の手品が続きます。
この二作はどちらも全裸でコインを出す手品。
アキラ100%さんがクレジットされており、この手の芸には常に賛否が付き纏いますが、そもそも服を着れば何も問題なかろうにわざわざ裸になってちんこが見えないように頑張ってる人は面白いと思いますし、緊張と緩和や演者が真剣であることが笑いの原則だとすると人を笑わせるのにとても理にかなった方法でもあります。
アキラ100%さんはジャグリングの要素を取り込んで緊張を高めていました。ジャグリングの成功と露出を避ける目的が一致する演目にすることで拍手も笑いも誘え、ジャグリングというわかりやすく訓練が必要なものを組み込むことでただ脱ぐだけの安易な笑いであると思わせず、見たくないものが見えるかもしれないのに最後まで目を離せない空気を作ってます。

手品の場合は裸になるということが不可能性を高める目的であるという理由になるのが大きなアドバンテージで、脱ぐ事自体が目的に見えないのは品をギリギリ保つ上でも重要だし実際プロダクションは無類に不思議に見えます。
また、手品は見えてはいけないものが絶対に見えてはいけない芸なので、ちんこ見えちゃったらてへへってやるつもりなんだなという甘えも感じさせません。

手法も面白いです。「絶対ポロリしないように全裸でマンモスコイン出してください、股にちんこ挟んで隠すのはナシで」というプロブレムが世界中で流行ったとしてもNaked Coin Productionみたいな解決はなかなか出ないんじゃないでしょうか。
Naked Miser’s Dreamはスライト派の需要も満たしつつ、全裸にとてもマッチした手品に仕上がっています。
登場人物に障壁を与えて乗り越えさせるというのは作劇の基本で、その障壁と乗り越えなければならない理由が誰にでも共感できる明確なものであればあるほど観客を引き込み、いかに手品にその物語構造を持ち込むかというのをみんな頑張ってるわけですが、このNaked Miser’s Dreamはきっちり普遍性のある壁を作って手品によって乗り越えます。だって誰も人のちんこ見たくないし手品を見たいわけですからこの作りは強いです。手品の中で手品のためだけに作られた葛藤ではないという意味で稀有な例なので、裸であることを差し引いても他の手品にはない感動を与えることができる手順だと思います。

Naked Prediction

これはポーズの予言なので服を脱ぐ必然性はやや弱いですが、予言の写真が一生1枚で済むメリットはあります。
演技中はもちろん隠すべき所を隠さなければいけないし予言の写真もちんこが写ってないものにすることになるので、やや選択肢の幅を狭めてしまってるという指摘ができなくもないです。
ただ、裸の人が床で暴れまわっている現実を目の前にして予言としての不可能性云々を考える人もそういないのでそこは大した問題ではないと思います。

END OF THIS WORLD

これはOut of This Worldのバリエーションというか、それを前提とした何かです。
手品の本を読む時、できるだけ頭の中で観客目線になってみてそれが成立するかどうかを考えますが、完全に著者が意図する策略を体感できるわけではありません。
このEND OF THIS WORLDは本の読後感と演じた時に観客が感じる印象の差がほとんど0なので、読んで何かを感じたその感覚を大切にして演技すれば手順もしっかりしてるし観客に与える印象という意味では失敗はないです。そういうわけで初読時の気持ちが大事なのでまだ読んでない人のために詳細は伏せます。

とにかく他で読めない手品ばっかり載ってる本です。
笑ったし、割と真面目に手品の面白さとはなんなのかというような事を考えたりしました。本質論や答えの出ない問題について難しい顔して机に向かってるだけでは考えないような切り口を与えてくれる貴重な一冊。

【ダウンロード商品】喪男コインマジックII byみやもと – マジックショップMAJION

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