by jun | 2022/08/23

ACAANとOpen Prediction の研究家であるTommaso Guglielmiが2010年にリリースした作品集です。
例によってテーマはACAANとOpen Predictionで、ACAAN(と言い張ってるだけの物も含む)とOpen Prediction(と言い張ってるだけの物も含む)の手順ばっかり解説されており、なんぼなんでもそれをACAANと言うは厳しいんじゃないでしょうかという手順やACAANとOpen Predictionを合体させた手順まで、やや迷走感はありつつも何かを好きになるって素敵ですねという感じの一冊です。

この人は他の本でも色んなアプローチでACAANに挑戦しておりますが、一つの特徴としてACAAN単独で演じるのではなく他の手順と合わせてその中でACAAN状態にしてしまうというのがあります。
特にSubliminal Influenceはそれが上手くいっていて、最後までカードも数字も聞かないけど現象を起こしながら観客に配ってもらえる状態になり、ちょっと冗長だったり意味が良くわからない操作はあったりするものの良い作品でした。スライトレスやハンズフリーで頑張ろうとしているのも特徴の一つ。

今回のSubtle Scamも基本的にはそういう方向です。
表題作の現象はACAANとOOSOOM的なThink a Cardの合わせ技。
この人の他の作品集ではあまり見なかったサイコロジカルな要素も加わって、なかなか面白いです。
以降の作品でも使われる肝の原理では冗長さは避けられないのですが、これは演出の都合と現象に上手く合わせていてだらだらした感じはありません。
ただし原理の特性上カードも数字も先に知っておく必要があり、この現象ではACAANを先に見せるので、どうしてもこのタイミングでどうにかしたなという感じは残ります。

この作品集で解説されてる作品は大まかな原理は同じなので、いかにその部分を演出で上手く見せるかというところが気に入るかどうかの分かれ目です。
例えば”Arcane Coincidence”という手順は観客が選んだカードが他に観客が選ぶ3枚のカードの数字の合計枚数目から出てくるトリックで、原理を上手いこと演出で隠せている一作です。全くACAANではありませんが、そういうものを期待しなければ普通に良いトリックでしょう。これは予言にも応用できます。
というかこの原理、先にカードを言わせない予言的な使い方の方が悟られ難く、たぶんそんなにACAANと相性いいものではありません。
原理自体は良い物なので、他の作例のアイデアを元に色々考えてみるのは楽しいと思います。即興でも効果を発揮するものですがスタックや他の数理トリックとの組み合わせで色々出来そうです。

あとこの原理とあんま関係ないけど”Duplicity”という作品はとても気に入りました。イマジナリーデック系の手順で、2枚のカードの位置が入れ替わったことを示せます。
何もしなくていいし実際何も起こってないのに観客が自由に言った数字とカードが現象の説得力に関わっていて面白いです。
セリフとかもうちょっとよくなりそうなので色々考え中。

これの派生作品である”Mental Trip”はセレクトカードが観客の決めた枚数目に移動するというトリックなのですが、移動するという現象を誤魔化しに使った変なトリックで、最初なんやこれと思ったけどなかなか楽しそう。
これもまだ詰めの余地はあるものの面白い発想だと思いました。

“TC-ACAAN”というトリックは全体としては気になる点が多いトリックでACAANと呼べる物でもありませんでしたが、観客のカードを制御する方法はあまり見たことがなく賢い感じでした。色々応用も効きそうで、スタック等と組み合わせればACAAN風ぐらいのそれなりの現象は出来そうです。

とまあメインのSubtle Scamの原理はじめ、まだまだ使い道がありそうな手法を知ることが出来た本なので満足度は高めでした。

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