by jun | 2018/06/12

手品にはまってからカードマジック事典の次に買ってしまった本です。
買ってしまったというのは明らかに初心者向けの本ではなく、マニアックで難易度も比較的高めだと思います。

あと、現象と手法が分けて書かれていないので手品本に慣れてないとかなり読みにくいです。
それだけならまだ良いのですが、シェイクスピアがどうしたとかいう冗談が全編に散りばめられていて、リチャードカウフマンとシェイクスピアの会話とかいう教養のある人にしかわからないコーナーまであって、なかなか厳しいものがあります。
冗談言うならやりきるべきという姿勢には賛成しますが、なんぼなんでも後半は辛いです。
まえがきによると、この本は元々世界最古の奇術書と言われていたレジナルド・スコットの「妖術の開示(The Discoverie of Witchcraft」(1584年)について一冊なんか書きたいと思ったのが動機だそうで、そのせいもあって色々ややこしい構成になってます。

世界のカードマジックの原題は”CardMagic”というだけで、古今東西のカードマジックをリチャードカウフマンがどうアレンジして演じてるかみたいな内容でカウフマンオリジナルと合わせて解説されています。
ケンクレッツェルやハリーロレイン原案作も多いので面白いですし、現象はビジュアルで派手なものばかりで、サロンぐらいの規模でも見栄えがするものもあるので覚えておきたいものも多いです。
1979年の本なので今読むと新しく感じないものも多いですが、クレジットがきちんとされていて勉強になります。

第1章

サンドイッチカードやトライアンフ、ダンバリーデリュージョン、カラーチェンジングデック、エースアセンブリーあたりのクラシックの章です。

個人的には指で選ばれたカードを突き刺す「カラテカード」のハンドリングが気に入ってます。
見た目も派手で良いですし、サトルティの効かせ方も好み。
カラテコインにしろ、指で穴開けるのがなんでカラテなのかよーわかりませんが。
ところで穴の空いたカードって摩擦や空気の抜け方が違うから、デックに混ぜるとかなり扱いが難しくなりますね。

トライアンフは今では一番主流になってる方法です。

サンドイッチカードの「ハムとチーズ」は一番怪しいことせずに目標達成できる方法です。
あれが怖いのでデュプリケート使いたいですが、そうなるとレギュラーでちょっと怪しいぐらいのバランスがいいよなあってなるので微妙なとこです。
リチャードカウフマンは基本的にデュプリケートやギミック使わない派というか、読書がそういうの嫌ってるのをよく分かってる人で、こういう解決好きそうって感じします。

第2章

カードインビルスイッチについての章です。
カードインビルスイッチは、カードを1枚お札にくるんで置いておき、それをあとからパームしたカードとスイッチする技法です。

結構今風の技法な感じで、ちょっと練習してみたくなりました。
今だと口にくわえたカードのスイッチとかでやる人多いですが、お札にくるまれたカードというのもなかなか意味不明な絵面でスイッチ不能に見えるので面白いです。

アングルパームとテンカイパームの違いから解説していて、図も多いのでわかりやすく、他のアイデアも浮かんできそうな技法です。
例えばカードケースで似たようなことできないかとか、使い方としても予言やトランスポジション、裏の色違いに変化など色々考えつきます。

第3章

デモンストレーション形というか、「今からこれをやります!」みたいな形式の手順4種類。

デックスイッチデモンストレーションの「ドリーム・デック・スイッチ・トゥ」は赤裏と青裏で行います。
ラッピングに加えてクラシックパスも「何もしてないように見えないといえない」レベルでやる必要があるハードコア手順です。
でも手順としては面白く、デモンストレーションと割り切ってパス部分をビジュアルなカラーチェンジにしたり色々いじっても良いかなと思います。

「スイブルルー・プラス」はフラリッシュからカードのプロダクションですが、1979年にこういうのあったんですね。

「ワールド・ファステスト・リバース」はリバースのデモンストレーション。
フラリッシュ 的に1枚ひっくり返したあと、今度は手をかざすだけでデック全体が表向きに。
好きな系統の手順です。
中で使われてる技法もセット要らずで大胆で、あまり無理がありません。

今やると逆に古く見える感じのビジュアルマジックってありますが、このあたりは現象的に大丈夫な感じがします。

第4章

カードのスイッチやに関する章。

ビルサイモンの「タップ」という片手でカード差し込んでインジョグ作る方法とか、クレッツェルの「シューティング・スター」というド派手なプロダクションなど、普通に良い技法が載ってます。
タップはマニアックなDVDだと基礎技法みたいに扱われていてあんまり詳しくされなかったりするので勉強なります。

「フィフティ・ワン・ビロー」というデックスイッチも有用だと思いましたし、非常にシンプルなフォールスカットもやらしくなくできるので使いやすいです。

第5章

レジナルド・スコット「妖精の開示」のカードマジックに関する章の詳細。
「妖精の開示」に載ってるカードマジックの文章に、リチャードカウフマンがコメントを補足してるというなかなか興味深いものです。

魔女狩り時代の原初的なメンタルトリックですが、方法論が確立されてないからこそ今でも逆に追われにくい方法でもあります。
なんか紙幅気にして無理矢理詰め込んで書いてるというのがリチャードカウフマンの見解ですが、盛り盛り手品今でもありますし現代的だった可能性も。

第6章

4A系のトリックがメインの章。

「4-5-6エーセス」は手の中でカットしながら、パケットを元に戻すとトップにAが表向きで出てくるもので、かなり好みです。
現象にしてはシンプルで合理的なセット方も良く、派手すぎるプロダクションが苦手な人でも演じやすいかと思います。
それぞれ微妙に違うカット方ですが、まあ見た目にはそんなに変わらないのが4回続くので単調ではあります。
プロダクションの一つとして覚えておくぐらいでも十分。

「リアル・ゴーン・エーセス・テイクオーバー」は雑誌の下に集まるアセンブリー。
雑誌じゃなくてマットとかでもできます。
この下にロードする方法がとてもスムーズで、その部分はマルロー考案らしいです。
アセンブリーに一つ物理的壁を作ったことで、カード重ねる部分にもちょっと説得力が増した気がしますし、ロード部分さえスムーズにやればかなり良いんじゃないでしょうか。

第7章

カード2枚をビジュアルに変化させる「ラディカルチェンジ」が解説されています。
同時に変化させれるのでジョーカー2枚を選ばれたカード2枚に変化させたり、マークを移動させたり応用は色々。
ラディカルチェンジを使った「アルカディオ・コレクターズ」はデュプリケートを使いますが、ビジュアルだしコントロールも楽だし面白かったです。

ポケットとデックの中で行うトランスポジションである「マス・トランジット」はカードにサインしてもらおうとする瞬間に入れ替わってるという変わったタイミングの交換現象で、これから何か起こりますよーの遥か前にセットが完了していて素敵です。
そのあと普通にサインさせてカードトゥポケットしてもいいですし、手法的にも変わってるのでマニア受けしそう。

「S.P.L.I.T」はカードの分裂現象で、本に付属のギミックカードを使うのですが、このカードの質が明らかに最近のUSPC製とは違っていて、市販されてるものにはないものなのでちょっと厄介。
今だと分裂はレギュラーで表現できる手法が多々ありますし、ギミック使う割に難易度高いのでちょっとスルー。

レギュラーでできるやつだと「モンテ・フォー・ザ・マラジャステッド」が面白いです。
黒のA1枚と2枚のJでスリーカードモンテをするのですが、オチはAとJの色が逆転します。
モンテは最初だけで、ちょっと変わった方法で3枚同じカードに見せたりする過程も楽しく、スイッチもそこまで無理はありませんので色々と応用が効きそう。

第8章

どういう章分けかよくわからんくなってきましたが、なんか変わったマジックが多いです。

「カセット(A面)」「カセット(B面)」はカセットに録音した声と漫才しながらカセットがカードを当ててくれます。
デックがカセットケースに変わる謎オチ付き。
今だとスマートフォンとスマートフォンケースでやってもよさそう。
カセットの声と合わせないといけないのでかなり演じる場所は限定されますが。

「スルー・シック・アンド・シン」は4枚のKでやるカードスルーテーブル。
ラストの1枚はKの絵の部分だけ取れてブランクカードになります。
魅力的ながら地味な現象のオチとしても良いですし、ハンドリング的にもちょうど良い感じです。

カードケースとセロファンを使う「イン・ケース・ユア・パッシング・スルー」は現象も手法もとても好きです。
「ケースをカードにしまう」という謎のギャグの時にあれしてしまうのですが、スイッチは自然なので疑われにくい方法だと思います。

デレックディングルが元ネタの「バニシング・デック」も箱を使うネタとしてはとても素敵です。
箱に入れたデックから選んだカードだけを抜き出し、箱の中を見るとカードが消えてるというものですが、こういうのってオチに使うしそのあと立ってありがとうございましたしなきゃいけない時はどうするんでしょ。

立って演じる

ここまではラッピングが必要な手順も多かったのですが、最後はスタンディングで演じるマジックがたくさん解説されています。
ラッピングの代わりに激しいパームが必要ではあるものの、その分インパクトは強いです。

「ブルース・コート・オン・ウィンディ・デイ」はお客さんにパケットからカードを投げてもらうふりをしてもらうと演者のパケットからカードが出てくるカードアクロス。
最後はお客さんのパケットの枚数も減るのでインパクト強いです。
かなりハードコアなパーム使うのですが、プロダクション部分はとても綺麗なのでこの手順じゃなくてもなんかやってみたいものです。

リンギングリングにカードを通すと消える「プロバービアル・ホール」、手をスロットマシーンに例えてカード消したり出したりする「スロットマシーン」もパーム祭り。
現象的には変わってておもろいので練習したいもんですが、コインマジックみたいなもんなので人に見せるレベルになるにはかなり時間かかりそう。
スロットマシーンのオチはデック丸ごと出てくるのでかなり面白いのですが。

「ポラロイドチェンジ」も結構今風な無茶目のビジュアルカラーチェンジ。
異なったカードの連続チェンジができるので、そのチェンジを使って徐々にカードが印刷されていく「クリスタル・ボール」も上手く特性を活かしてます。
こういう連続チェンジができるカラーチェンジはあんまないので貴重かもしれません。
なのでそれを使った手順があと2つ収録されてますが、クロースアップで見せるには厳しく、サロンで演じるには地味みたいな感じはあります。

んなわけで、手品本に慣れてから読むと割とすんなり読めますが、今読んで斬新かと言われるとそこまででもなく、これからカードマジック覚えたい人には難解すぎるという感じで誰におススメしたらいいかよくわからない本です。
トリック的にも帯に短し襷に長しなものも多いので、なんとなく本全体がそれを表してるような気も。
たぶんちゃんと全部読んだ人少ないと思うので、人と違うことしたい人にはおすすめです。

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