松田道弘さん7冊目の作品集。
オリジナルカードマジックとなっていますが、いつも通りクラシックプロットの改案で、手法がややマニアックという安定の感じです。
ここまで皆勤のカニバルカードやエースアセンブリの改案も入ってるので安心して今松田道弘の本を読んでる感が楽しめます。
前作の魅惑のトリックカードマジックに続いて今回も結構ギミック率高めです。
ツイスティングゲーム
最近の本はパケットトリックが多くなってきて、今回も松田さんが特に好きなツイスト現象からスタート。
「ワイルデスト・ツイスト」は4枚のジョーカーが一枚ずつ裏向きになっていって、表向きにしていくと全部別のカードに変わってしまいます。
ギミックと変なカウントをすることでカード4枚だけで可能になりました。
示すとこ以外でカウントしないところはいいところですが、しょっぱなから変なカウントしなきゃいけないのと、カウント使い分けないといけないのでパケット弱者的には色々と怖いです。
枚数についてはクリーンですし、表返していくとこも説得力あるのであんまりさっさと片付けなくても大丈夫だと思います。
技法が効果を招きよせる
技法から原理が生まれて現象が起こるというパターン。
技法から生まれるその技法ってのが個人的にかなりあれなあれです。具体的に書くのもあれなのですが、その技法の文字列にその技法を与えた時にCEOPとなる技法です。
この本この後も結構CEOPを使うので、それを信じられるかどうかが勝負。
「4枚のエースが4枚のキングに変化する」ではレギュラーカードのみで題名通りの現象を起こせます。
一部CEOPはスプレッドで置き換えることができるので、なんとかCEOPを失くす方向に組み替えていきたい感じです。
「オールバックの手順構成」は4枚のエースのツイスト現象の後に、エースがダブルバックに変わり、デックも全部ダブルバックになるという現象です。
パケットからフルデックに現象が起こる構成好きで、ツイスト現象からオールバックというのもかなり綺麗な構成だと思います。
前半は佐藤総さんの「ラブ・ア・ダブ・ダブ」に影響を受けたカードの移動が入って、ずっとパケットをカウントするおじさんになるのも避けれます。
オールバックはレギュラー→オールバック→レギュラーだと騙くらかし感が出るので、ダブルバックオチの方が好きですね。
ロジャー・スミスを追いかけて
ロジャースミスさんは「マキシ・ツイスト」の考案者。
エースのツイスト現象の後に、エースがA234のカードに変わる手品が元で、それを発展させた「MAXI TWIST 1-2-3-4-5」と、そのの改案である「ロジャーの1-2-3-4-5 私の改案」が解説されてます。
松田さんの改案ポイントはパケットのみで行えるようになったこと、それによってアトファさなくてよくなったこと、テンポアップというあたり。
テンポアップに関しては松田さんのパケットにありがちな端折りすぎ感もあるんですけど、カウント苦手人としては結構嬉しかったりもします。
4枚だったのが5枚になる件は、逆算すると「カード1枚隠してた」「カードを1枚隠すことができる」と思われそうで、素直に「1枚増えた!すごい!」ってなるのかはかなり疑問です。
物理的に変化があるとギミック疑われる可能性も上がりますし、元ネタ自体があんまり好きになれないのでなんとも言えない感じ。
パケット・トリックを改案する
「ニック・トロストのMAXI TWISTOの改案」と、それのレギュラーバージョンである「ロイヤル・ツイスト」の2手順はマキシツイストを4枚のQでやって最後がロイヤルストレートフラッシュになるもの。
これも4枚が5枚になるのであれですが、この章にポールハラスのパケットトリックベスト10と松田さんのパケットトリックベスト10が載ってておもろいです。
新しい技法が新しい効果の扉を開く
手品や技法の流行りを猿の集団行動と例える文章には笑いました。
そんな中あくまでフォアエーストリックを解説する軸のブレなさマジさすがっす。
「リン・シールスの ULTIMATE ACESのさらなる単純化」は色違いのエースで行うエースアセンブリで、前作からのセルフリメイクです。
そういう意味で新しい効果の扉が開かれたかどうかは微妙ですが、単純化はされてると言えばされてます。
しかしここまでくるともう目玉焼きに醤油をかけるか塩胡椒で食べるかぐらいの違いで、好みを超えてその日の気分というぐらいの感じではないでしょうか。
個人的には前作が塩胡椒、今作が醤油だと思いますが、塩胡椒や醤油に対する思いも人それぞれでしょうし、是非読み比べてみてください。
スプレッド・カル・バニッシュを用いたOIL and WATER 2題
なんか今回はタイトルが英語になってますが、今までと明らかに違うのはノーギミックノーエキストラなこと。
「OIL and WATER 4枚/4枚のストリクト・バージョン」は松田さん初のノーノー水油作品で、スプレッドカルを使った非常にシンプルなものになってます。
ポイントはサトルティ部分で、そこからめくるだけで分かれるので自然。
「バック・トゥ・バックのストリクト・バージョン」は赤黒じゃなく表裏でやるバリエーション。
チャドロングのアイデアが使われてますが、彼の作品よりクリーンと言えばクリーンです。
DVDの方で発表された”OIL & WALTER”は完全に赤黒混ぜてるとこを見せるバリエーションで、カード広げるとこにやや引っかかりがあるので今回の松田さんのバランスはかなり良いんじゃないでしょうか。
KISSの精神
KISSは”Keep It Simple Stupid”の略語で「ビル・サイモンのインスタント・リバースの簡素化」が解説されています。
レギュラーで解決してるのでフォース勝負になってきますが、カードがリバースするという現象に対してフォースもサトルティも整合性あると思いました。
現象がリバースで選ばせ方もリバースなのでそこでなんかやった感が出てしまいかねませんけども、演出でカバーできる範囲かと思います。
シックカードの導入とその応用 オールド・ワインを新しい革袋に
シックカードを使った2手順。
「天海のフライング・クイーンの新工夫」はシックカード使うことによってカードをラフに扱えるようになってます。
ラストにクイーンが胸ポケットから出てくる演出もクールです。
というか松田さんこのオチ好きですよね。
マニアもひっかけたい「アンビシャス・カードの新工夫」はマニアが「あれ、そこであれしなくていいの?」って思うぐらいで、たぶんその後すぐ「ということはあれね」みたいになります。
シックカードを活かすにはちょっと難しい手順な気がしますこれは。
テレビでアンビシャスカードが流行ってた時期に書かれてる本なので、そのあたりのうんざり感と俺ならこうやるぜ感が強いです。
でもテレビとかショーでアンビシャスカードやるって決めてるならこういうやり方してる人がいてもいいかなとは思います。
シックカードの原理を利用したひっかけ手順2題
「四人組のギャングの新工夫」は4枚のKをバラバラに入れてそれがトップにくる現象。
シックカード使おうと結局はそういうことなのでちょっとそれはという気がします。
まあこのあたりはマニア相手向けなので、普通のスイッチ使ってもなって感じでしょうか。
確かに他のギミックカードより扱いに気を使わなくていいってのはあるんですけども。
シックカード応用のクラシック・トリック オールド・ワインを新しい革袋に
、
「ライプチッヒのストップ・トリック」は実用的なストップトリックなのですが、シークレットにコントロールをしてしまうところが気になりました。
真ん中に入れたように見せて、そこからカットもシャッフルもしないので数枚目にストップかかったらちょっとあれなような。
コントロールも負担かかるし、カットとかでそれとなくそれした方が良いような気がします。
シックカード使うわけだし好きにカットさせるとかすれば、もう少し観客の自由選択増やせると思うのですがいかがでしょうか。
カード・プロブレムを考える Unusual Assemblyの新構成
「公明正大バックファイヤー・ジョーカー」も近作では常連のジョーカーを使ったアセンブリのバックファイア版。
「飽食のカニバル」は4枚に3枚喰われます。
このあたりの松田さんのライフワークプロットは特に最近お気に入りの技法使いたかった感は強いです。
他の手順も全体的に手法ありきっぽさがあって、あまり使われない解決法でどうにかしたかったというマニアぶりが強く出てる本でした。
それ自体は個性ということなのですが、使われない手法は使われないなりの理由があって、カウント関連とかは特に好き嫌い分かれるかと思います。
シックカードは次作でも全面展開されますけども、この本の中でだいたいの使い方は示されていてスライト派の方にとってはそんなに使い道ありません。
技法臭さと負担を減らす保険代わりという目的が強いので、 ここぞって時には使いたいもんですが、ここぞって時だけ使うと逆に違和感で死ぬので、なんやかんや使わないラストエリクサー的アイテム。
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