今年出たMichal Kociolekさんの薄いノートです。
タイトル通りプロットとメソッドが書かれています。まあだいたいの手品本はそうですが、ベンジャミンアールの本を注文する時に彼の場合はプロットだけが巨大化して概念に成り果てメソッドは魂で感じるしかないということも十分ありえるなと思って、とにかくメソッドを確保しておきたい一心でカートに入れました。
Pit Hartling、Harapan Ong、Bob Farmer、Tomas Blombergという面々が推薦文を書いていて惹かれたというのも大きいです。
皆さんコメント自体は別に他の本でも同じこと書けるのではという感じでどうかなーと思ってたのですが、とてもとても面白い本でした。
All In
サンドイッチカードです。
複数の観客にデックを分けて渡してぐちゃぐちゃにシャッフルしてもらって1枚覚えてもらい、かなりどこに行ったかわからんようになった状態からジョーカーの間に挟まります。
実際には手続きの中で見て覚えてもらいますが、ぐちゃぐちゃにするのでかなり「思っているカード」という印象が強いです。
非常にバランス感覚が良い作品で、作業の自然さと仕事の楽さが良いとこで落とし所になっていて、ハンドリング的な負担もほぼありません。
一つのアイデアの弱点をもう一つのアイデアで補強しつつ、演技的にはまったくゴテゴテしないというのがお見事でした。
Lucky You
カードアットエニーナンバー。
数字の選ばせ方が面白くて、何枚かの紙の両面に数字を書いて、表裏バラバラにして表向いてる数字の合計値で決めます。
なんでそういうことをするのかという導入のセリフもちゃんとしていて、操作もシンプルで観客の自由度も高いです。
ちょっとした遊びという感じでエニーナンバーできるのは個人的に結構ポイント高め。
不勉強にも全く知らない原理でしたが、クレジットにShigeo Futagawaの文字が。
結構色々遊べそうな原理ですけど、なんかで読めるんでしょうかこれ。
R.M.
カードの中から殺人犯と被害者を決め、被害者が殺されてそのカードが別の場所に移動します。
元ネタはブラザージョンハーマン。
東京堂出版の日本語版にも載ってるやつで、かなり好きで一時期めっちゃやってました。
それでまあここはどうしたもんかなーというところがあるマジックなのですが、そこの部分を失くして確かにそこにあったものが移動したというところを補強したアイデアも追加されています。
まあ元ネタの方はちょっと残念なことになっても言い張ることで上手くいくようになってて、それは手品の面白いところでもあるし言い張るところに説得力を出す努力をするのも楽しいのですが、この改案では先に色々と説明できるのが最大のメリット。
後出しジャンケン感がなくてバッドエンドもなし。
さらに追加のアイデアもあって、カードマジックはこれ一つで十分というクウォリティになってます。
Three + One
なんやかんやあってフォーオブアカインドが揃います。
なんやかんやの中にはスペリングも含まれていて、日本語で演じることができません。
だいたいのスペリングトリックは日本語で出来なかろうが数秒後にその傷は癒えるわけですが、これは結構やってみたい感じがあって残念。
これもやっぱり自由度が高くてランダムにしか見えないので、かなり気持ち悪いと思います。
箱とあれを使ったアイデアは秀逸で、フリーチョイス風の何かと組み合わせてやるのにかなり応用効きそうだしここだけでも知れて良かったですが。
Polish Poker Stacking
Polish Pokerというこの人が出してる売りネタがあって、カードを配ってから観客にポーカーの役を言ってもらうとその役になってるというものなのですが、それを使ってスタッキングデモをやる手順です。
売りネタの方は買ってませんが、PV見る限りうーんというところがあったので、ちょっと技法いるけどデモンストレーション的に使う方が色々誤魔化せるよなとは思いました。
ただまあこれは自身の商品だから仕方ないのかと思いますが、手法先行すぎて現象が魅力的かどうかは微妙なところです。
他の手順はレギュラーデックのみで演じられなくても、ちょっと加えるだけでカバーする範囲が劇的に増え観客の自由さも増し、処理も鮮やかって感じでよかったので比較すると少し落ちます。
でもまあ他の手順はどれも素晴らしかったですね。
ちょっとはみ出てめっちゃ楽するって考え方は良いし、ちゃんとフェアに見せる演出も考えられてて、この辺りの攻め方はまだまだ開拓される余地があるんじゃないかと感じました。
なんか最近ヘビー級のごつい本がよく出てて、これぐらいの感じのものがちょうど良かったのもあります。
このサイズでそれぞれ傑作級だと満足度かなり高いっすね。
Comments
No comments yet...