by jun | 2019/11/29

マジックマーケット2019で発売された小冊子で、タイトル通りの内容です。
書いてるのは世界的に評価の高い日本人マジシャンの一人である碓氷貴光さん。
碓氷さんが何度かこのテーマで研究会を行い、その成果をまとめたもののようです。
8ページしかない冊子なのですが非常に端的にまとまっていて、繰り返しの目的や観客に与える印象などを分類し、実例を交えながら考察していきます。
めちゃくちゃ面白く、ためになる内容でした。

そもそもこういう何か一括りにされがちなものを分類していくのが好きで自分でもよくやります。
例えば観客にもわかるように徐々に難易度とエグさを上げていって現象起きた時に「嘘だッ!!」ってなるタイプの繰り返しを我が家ではひぐらしのなく頃に型と呼んでいるのですが、我が家には手品する人が他にいないので名前つけても一人でにやつくだけでクソの役にも立ちません。

ところがこの冊子では分類して何故効果的なのかを分析し、弱点や反作用についても多く触れられているので、かなり直接的に手順を良くする助けになります。
読みながらこれに当てはまる例はどういう手品かというのを考えるし、その手品は他の項目ではどうかと掘り下げたりするだけで構造を理解できる仕組みです。
繰り返しの弱点についても多くの項目があり、改善すべき問題点も整理しやすくなるかと思います。
手順の組み立てだけでなく、どう演じることで問題を解消できるかという話もあってとにかく実践的。

繰り返しのマイナス面については耳が痛い話が多いです。
なるほどしながら学んだ演者からすると繰り返し演出は面白いものなので、よかれと思ってというのが辛いですね。
エンドレスエイト型というか、作ってる人達はとにかく楽しそうで見てる側は面白いけど早く終われっていう。
アセンブリとかリセットとか、演者的には変化のバリエーションをつけてるつもりのやつは散々言われてるのに結構そうなりがちで、手品の場合は関係ないヤマカンさんが謝ってくれたりしないので絶対になんらかの工夫が必要です。
こういう見せ方やオチの付け方がある、という紹介から更にその副作用についても考察されていて、割とそういう議論をしがちな「こっちの方が良い」という二元論にはしないような書き方になっており、本質的にこっちを立てればあっちが立たずを避けれない手品という芸の中で、最適解を探っていくのに必要な感覚も身につくと思います。

よく出来た手品はそもそもの構造がしっかりしてるので特に意図を汲むことなく真似してしまったりしがちですが、こういう分析を読むと効果を理解して意識的に演じるというクセも付くんじゃないでしょうか。
特に映像で学ぶ場合や、カードマジック事典など作者の意図が反映されきってない解説書なんかを読む時の助けにもなる事かと思います。

冊子後半は「手順構成の手法について」パートで、一つの手順だけじゃなく何分かのルーティンを作る時のチェック項目などがあり、これも非常に有用でした。
手順が長くなるほど一箇所直せば他に綻びや矛盾が出るので、段階ごとに再確認させる作りも妥協できない感じがあって良いです。
特に意外性やどんでんを狙う場合は全体の構成を慎重に作る必要があるし、いくつかの手順を繋げたルーティンでもコンセプトがはっきりしたものは繰り返し演出的になることが多いので、事あるごとに確認する資料になると思います。
なんつっても世界レベルのマジシャンの創作法の一端が見られるのが超良かったですね。
この密度のまとめ方は凄い。
繰り返し以外でも何かテーマを決めて掘っていく時の参考にもなるし、こういう考え方自体を教えてくれる本は貴重なので手に入れられる機会があれば是非。

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