by jun | 2019/11/25

2010年に発売されたルーンクランの作品集。文章はジョシュアジェイが書いてます。
長らく絶版状態だったのですが、今年になって2版が出てようやく読むことができました。
まとまった作品集がこれぐらいしかなくてFISMにもFool Usにも出てない人ですが、EMCのUNREALの中でジョシュアジェイが激賞していたので気になっている人も多いと思います。
そのDVDの中でジョシュアジェイがリスペクトするマジシャンを4人挙げてて、トミーワンダー、サイモンアロンソン、デビッドウィリアムソンに並んでこのルーンクランが入ってるので、なんか凄い人です。


この本を買うとVanishing Incから動画をダウンロードでき、彼の演技を細切れながら見る事ができます。
ある時期からコメディに転身したようで、下ネタもブラックジョークもエグめでありありのショーですが、トリック自体や見せ方にオリジナリティがあり、ただ手品に乗っかって言いたい放題やる感じではなくあんまり嫌な気はしませんでした。というかむしろ人生が辛い時に見たい類の映像です。
不思議なとこもギャグにしてしまうのはなんとなくもったいないなと思ったりしますが、余裕というか贅沢というかそこら辺がかっこよかったりもします。

この本の前半で解説されてるのはクロースアップで、特にコインが多めに紹介されています。
いくつかの手順を繋げてテーマごとに5ステージ分のルーティンがあり、良い感じに前のトリックが現象の伏線になってるような感じもあって、コインでこういうルーティンの組み方の解説はあんま見たことないので興味深く読みました。
前半では下品なセリフや道具立てもなく、演出やオフビートとして機能するセリフは普通に良くできてます。
コインは全てレギュラーで、煩雑なセットが要らないフットワークの軽さも特徴です。

Act One | Huddle Up

ペンの出現、ペンとコイン、コインとボトルの3手順。
ビジュアルとインパクト重視なルーティンになってます。
わかりやすいし途中まではテーブルも袖もいらないので小回りの効くアクト。

Pensive

ペンの出現です。
演出的に面白いところがあり、良い感じにミスディレクションにもなってて綺麗に出ます。
ペンコインの導入にちょうど良いですね。
空の手の状態でテーブルの下とかじゃなくセットできるのも利点。

Impromptu Hitman

テーブル不要のペンコイン手順です。
入れ替わり現象がメインで、リックメリルのあれが入ってたりして最後は絵面的に面白いホールドを使います。
結構難しいんですけど、移動先に筋が通りつつ見た目もおもろいというカタルシスマックス手順。
ただこれ、移動前の絵面も目を引くので、いつのまにか移動してた現象としての難易度はかなり高いように思います。

Coin and Bottle

コインがボトルの下に移動したりボトルと入れ替わったりというめちゃくちゃ良くできた手順です。
こういうのはコメディ系のマジシャンだと特に強いですね。
前振りの移動パートもすごい良くて、ちゃんとボトルから意識を反らせるような構成になってると思います。

Act Two | Strolling Set

コイン半分カード半分のルーティン。
Act Oneに比べると渋めでマニアックです。

Two, One and Hanging

一枚のチャイニーズと二枚の銀貨が入れ替わる手順からハンギングコイン。
viking vanishというオリジナル技法が使われていて、複数枚のコインをスタンディングで扱う時に便利そうです。
2-1の入れ替わりはビジュアルで一応話もちゃんとついてておもろい。

ハンギングコインの方もviking vanishでかなり楽になってる印象です。
ギャリーカーツのアイデアという3枚目のプロダクションが良かったですね。

One Back Up

カードの某ギャグを使った手順。
ギャグから不思議に繋げるのがやっぱり上手いですねこの人は。
笑いを取って実は全く無関係な事に繋げるんじゃなく、ギャグに使った要素を残して現象にするお手本のような作品です。

Confusing Aces

バラバラの4枚が4枚のエースに変わります。
こちらも演出良いです。
手法的にはまあなんとでもなりそうな話ですが、変化前のカードの接地感をなくす方向で綺麗。
確かにこの演出ならその方が良いし、その手法ならこの演出向いてるしという良い感じの持ちつ持たれつになってます。

Full Palm Change

水平に見せれるカラーチェンジ技法。
エリックジョーンズのアレ的なやつですね。

Act Three | Getting Down

スリーコインマラソンというひたすら3枚のコインを使ったルーティン。

Coins Across Cards

3フライ的な移動現象から最後コインが3枚のカードに変化します。
さすがに強引と思わなくもないですが、セリフも演出も悪くないです。
現象起こる前に一つそれっぽいことを言うだけで意味不明の現象になるということは避けれてます。

Matrio

3枚のコイン、3枚のカードによるアセンブリの手順。
3枚だとスタンディングの手順からの繋がりが良いというのもありますが、思った以上に仕事が楽で、ラフなスタイルにも向いてます。
特にバックファイアはカード持ち替えたり気を使ってるような気配を消したいので結構良い感じです。
3段目の全消失もサトルティの繋げ方が良くて3枚ならではの良さ出てます。
マットが四角いし4枚を見慣れてるというのもあって収まりの悪さ感みたいなのがなくもないですが、このテンポの良さはかなり魅力。

Three Coins, One Card

3枚のコインが1枚のカードの下に集まります。
あまり無理せずまとめてる感じです。
ちょっとこれはセリフも含めてあんまピンと来なかったですね。
賢い部分はあるのですが、全体的にはちょっと演者都合っぽい感じがします。
まあ彼の演技スタイルなら都合良さぐらいは余裕でスルーされそうですけど。

Magic Left Its Footprint

チンカチンクの3枚バージョン。
処理に面白いところがあります。
今となってはそんなに珍しいものでもないかもしれませんが、これは結構3枚をトライアングルに並べてる状況に強い気がします。

Coins Through Floor

3枚のコインがマットを貫通して消えて、あらためてマットの下を見ると貫通前と同じ位置に並んでます。
このルーティンの目玉的なトリックで、演出も手法もとても面白いです。
バックファイアも解説されてますがここまでで十分綺麗かなと。

And the Other Two Follow

パースからコインを抜き取る手品。
実際に抜き取るというかあれするところの仕組み全く知らなかったけどかなり便利そう。
取り出すところはこういう一芝居あるとコインマジックめちゃくちゃ面白くなるよなーという感じで大変好みでした。

Three Coins and a Purse

コインが消えてパースのあっちゃこっちゃから出てくると見せかけて最後の一枚は…みたいなやつです。
ここまで読んでると癖もだいぶわかってきますが、手法も現象もらしいなーって感じがします。
この本にあるいつのまにか系の現象の中では一番視線の誘導が強く、比較的ストレスなく出来そうな感じです。

Act Four | Fantasy to Reality

ここも3コイントリックメインですが、この辺から結構難しくなってきます。

Fantasy to Reality

3枚のコインのプロダクション。
まあ3枚でお手洗い的なことをするわけでございますが、しっかり音をさせない構造になってます。
その分指が硬く見えてしまいがちなので、さらりとやるのに時間を要しそうな感じです。

Cage Birds

3枚のコインをパースの中に入れて1枚ずつ脱出させていきます。
3段階の手順も良いし、パースの技法としても有用なものが多いです。
viking vanishはここでも活躍。

Bird of World

3枚のコインが1枚ずつ移動し、最後は全部チャイニーズコインに変化します。
チャイニーズがある分なかなか負担がかかるんですが、リスクを減らすコツ的なやり方が書いてあってなるほどという感じでした。

Act Five | Three Pieces of Silver

3枚のコインの手順3種。
これはダウンロードできる映像で一連の流れ全部観れるんですがめっちゃ良いですね。

Mirage Coins

3枚が1枚ずつ消えてまた出てくるというやつ。
消えるところは浅田さんのあれと似てますね。ちょっとハンドリング違うけど。
また出てくるところのディスプレイが面白くて、2枚しかなかったのに3枚になった感が強く、見た目も変で良い。

Born a Freak

3枚のコインが手を貫通する現象。
ビジュアルで楽しく、ラスト1枚問題も演出を絡めて見事に解決しています。

Tips of Trickery

3枚のコインとソーサーを使った手順です。
1枚ずつ消えていって全部ソーサーの下から出てきます。
カードでやるより楽で自然でめっちゃ良いです。
絶妙に鳴っちゃいけないところで音がしない工夫があってストレスも低め。
この本の中でもかなり気に入った手順の一つです。

Part Two

さて、ここまででも十分なボリュームとクウォリティな前半でしたが、真のRune’s Worldはここからです。
後半はダウンロード動画でも見れるステージのアイデアがたんまり紹介されていて、非常にお下品なものも含まれます。
取り出しただけであーーーそれやっちゃうかーーって感じのアイテムも登場し、しかもそれ使った手品が非常に出来良かったりして、まあ凄まじい内容です。
言っても下劣なのは数個で、大半はギャグをうまく手品に取り込んだアイデアになってます。
見た目の面白重視がメインですが、メンタル要素を含む手品に効果的なギャグとか、クロースアップでも取り込めそうなの多いです。
いずれも手品にどうギャグを使うかという非常に良い例になっていて、ギャグが仕掛けの一部になってるようなのはやっぱり巧妙さあって良いですね。

面白いのがこの第2部はJesse Rubenfeldという人がグラフィックノベルで書いていて、手順のおもろさがパッと見てわかるようになってます。
絶妙にゆるくて癖のある絵のタッチがめっちゃルーンクランの可笑しみ手品を表現するのに合っていて、ここだけでめっちゃ感動しましたね。これは凄い。
何回も読み直す一冊になりそう。

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