マジックマーケット2020で発売された、園内五果さんによる作品集です。
園内さんの過去二作、strawberry、kiwiと読んだイメージはだいたいこんな感じ。
・見せ方が面白く、クラシックプロットでも全く違う手品に見える。
・技法の使い方が的確で、全体通して無理なく流れるように演じることができる。ここでこういう技法が使えるのかという発見も多い。
・装丁や本の作りもそうだし手品としても粋でオシャレ。
・Matching the Cardsに対する情熱。
・文章がわかりやすく、図がなくても引っかかるところがない。
手品の解説書にこれ以上何を求めますかという感じで、たぶん過去作読んだ人はみんなそういう印象を持ってるのではないかと思います。だからこの本めっちゃ早く売り切れてましたよね。
そしてこのbananaも同様に、演出が面白く、手順がすっきりしていて、Matching the Cardsのユニークなバリエーションも楽しめる一冊となっています。
X-Crossing Hofzinser
ホフジンサーエースの変わった見せ方。
カードの入れ替わりを重点的に見せる演出で、デモンストレーション的な趣もあり、めっちゃそれっぽく見えます。
見せ方自体はいくつか先行列があるようですが、このハンドリングが素晴らしく、セットもフォースも不要で全く重い感じがしない手順です。
ホフジンサーであんまり使われてることがない一般的な技法を使ってるというだけで目から鱗ぼろん。
Collector’s Drawer
4-3からコレクター状態にするためのハンドリングの話。
パケットをビドルグリップで持つ必要がなく、軽い感じで目的を達成します。
自分でやってみてもなってなさそうで実はなってる感じがあり、カウント的なことをした後に自然に何も挟まってないディスプレイに行けるのでそこらへんが説得力増しになってるのかと思いました。
持ち方一つ、直前にどう示すかというだけで印象がコロッと変わるのが実感できます。
Misreference
Matching the Cardsのかなり変わったバリエーション。
Aがリセット的に1枚ずつ別のフォーオブアカインドに変化していき・・・からMatching the Cards展開になります。
Matchingするカードを変化させて見せることによって、選ばれたカードはこれに違いないという印象が強くなり意外性も高まるのがとても良いです。
某フォースに説得力を持たせる工夫や、ノーセットで演じることが出来る点など、Matching the Cardsにつきまとう問題をあれこれ解決してる一作。
なにより他の誰がこんな手順を思いつきましょうかという手順なので、それだけで読む価値があります。
Mummy Collector
コレクターとMatching the Cardsを合わせた作品。
strawberryの方にも”Collecting the Cards”という面白手順が載っておりましたが、今回はもうちょっと攻めた感じになってます。
仕組みだけ一見するとどう見せていいのか難しそうなものではあるのですけども、これがMatching the Cardsの演出ととても相性がよく、なんでそういうことになったのかという余韻がとても良い感じです。
コレクター部分もセレクトカード3枚を挟むものより軽く扱えますし、これもセットが要らないので好きなタイミングでインパクトの強い現象が演じられます。
Lie Eater
カニバルカードとライディテクターの組み合わせでカードを当てます。
スペリングではなく、カードの属性ではいかいいえを答えてもらい、嘘をついた場合はカードが食べられてしまうという見せ方。
特に観客に指示することなく答えをコントロールできるようになっていて、ハンドリングをすっきりさせるための原理もとても良いです。
このトリックは特にセリフが良くて、普通にカニバルカード界隈で流行りそうな感じあります。
とにかく楽しい。
Rule of RPS
RPSのルールになぞらえるクラシック手品の演出案。
なぞらえるというか、ちょっとしたRPSに対する批評性があって文字通りそこを切ってしまうところが現象になっています。道具を余すことなく使う感じとかもめっちゃ良く出来てて普通に感動しました。
あとやっぱりその話自体に意味があるセリフは仕事する時にちょっと楽になって良いですね。
gumroadにて電子版の発売が始まっています。
6月までの限定販売のようです。
めっちゃ面白いので急ぎましょう。
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