1993年に出たSteve Beam先生のセミオート集一作目。ほとんどセルフワーキングのも多いです。
Fulvesのセルフワーキングシリーズ的な感じですが、あれはあれでセルフワーキング縛りじゃなかったらもうちょっとどうにか出来そうなのにーーみたいなのも多いので、この辺が丁度良いと思う人は多いと思います。
一方で巧妙さ不足のものは中途半端に気取られる技法がある分マニアに見せても不思議ではないし普通に見せるにしてもちょっと地味という中途半端な印象のものもちらほら。
Scott Robinsonの作品はじめ、物理的な現象や予言や一致のトリックは良いのが多かったです。
Beamは面白いセリフを作る人で、手続きのカバーやより不思議に見せるための理屈っぽい説明とか、カードマジックによくある段取りに使えるものとして参考になる部分もありました。
Gambling Effects
いわゆるギャンブリング手品じゃなく、手品用のゲームでマジシャンが勝つ的なやつがまとまったチャプター。
Gentleman’s Bet
赤と黒がどうだったら勝ちというゲーム。
原理も現象も古典的なものですが、演出案が面白く演出によって奇跡的なことが起きてる感が強調されるようなものでした。
Unbeatable (John Riggs)
これも赤と黒のやつ。
こっちはちゃんとした対戦形式で、色んな場合があるよねというのを示せる感じになっててかつマジシャンが勝つ感じになってます。
この原理使ったの色々ありますが、ラフに不思議さを醸し出せるのはこのパターンかなと。
Color Vision
表を見ずに赤か黒か当てるやつ。
これもまあ同じ原理で見せ方めっちゃ色々ありますけども、ゲーム形式だと楽だし見せ方としても難しくなくて良い。
個人的にはもうちょいメンタル的なアプローチの方が好きですが、雰囲気とかもあるしこういうやり方も覚えておいて損はなさそう。
Scaling the Cards
カードの枚数も当て、観客の指定した色の枚数も当てるトリック。
ノーセットでやる方法で、ちょっと狡い感じもありつつ2段の現象が上手いこと説得力になってる感じの手順です。
即興で出来るやり方で続けて現象が起こせるのあんまないと思うんで貴重。
Spelling Effects
スペリングトリックのチャプター。
Bottoming Out
スペリングしていくんですが、そんなとこから出てくるはずがないというとこにカードがある意外性手順。
意外性は良いんですが、スペリングより別の現象が際立つ場合そこまでしてスペリングしたいのかと言われるとちょっと口籠もる。
Raw Deal (Wayne Kyzer)
これも上のやつと同じ現象で、スペリングする単語に意味があるのでこっちの方が意外性は強まって良さそう。
I Cannot Spell A Lie (Allan Slaight)
Lie Detectorです。
ちょっと覚えることはあるけど、フリーチョイスで出来る方法。
最後にカードに関係ない質問が入って自由度が増す工夫があったりするんですが、面白いような帳尻合わせ感が際立つような難しいところではあります。
Super Speller (Tom Craven)
少数枚のパケットを観客に持ってもらって行うタイプのLie Detector。
一応何枚持ってるのかもわからない体裁なので偶然感は強くなりそうです。
The Custom Card Trick (Tom Craven)
数理トリックと絡めたスペリングネタ。
個人的にスペリングはこういう組み合わせで使うのが好きです。予言的な見せ方になるしコントロール感がないと不思議。
The World’s Greatest Magician
スペリングする単語とその形状がギャグになった見せ方。
キャラクターは選びますがスペリングする言葉の意味が複数に渡ると面白さが増します。
言語問わず出来るのも丸。
Future Foretold
予言とか。
Quadruple Prediction
4枚のカードを予言として出しておき、Aをバラバラな位置にカットして入れてもらってから予言のカードの数字の枚数分配るとAが出てくるやつ。
面白いのは、途中で配るカードの順番を観客に指定してもらえるところ。
その分動きに統一感はなくなるけど、ややこしくないし観客の自由度が高い分違和感はそんなにないです。
良かった。
The Ladder Prediction
とあるトリックデックを使った予言。
市販されてないものだけど、単に予言やフォースとして使うならこっちの方が圧倒的に自然です。
The Portable Ladder (Scott Robinson)
スプレッドして好きな数字を言ってもらってちょっと色々あって選ばれたカードが出てきます。
これはレギュラーデック。
色々あっての部分は先に言っておけるので後出し感はなくせます。
セットの枚数は少なくて済むので、クライマックスに今まで使ってたデックで自由度の高いフォースを使えるというのは嬉しいです。
The Falling Prediction (John Riggs)
トリックデックを使った予言。
より自然にカードがバラバラであることと、その中から自由に選ばれたカードであることを強調できるものです。
The Falling Prediction II
上のやつのレギュラーカード版。
汎用性の高い表向きのフォースって感じです。
The Postcard (Marty Martini)
封筒の中にカードが1枚。
観客にカードにサインしてもらって封筒のカードを見ると、というミステリーカードの現象。
割と最近でもこの手の封筒のギミックが色々と発売されていたりしますが、お手軽さとかロードとか色々考えるとこれはかなりバランス良い方法だと思います。
The Opened Prediction
Beam流オープンプリディクション。
かなり大胆な方法で、演じ方とか狙いとか色々書かれてはいますけども、ちょっと怖いですね。決まると気持ちよさそうではありますが。
ジョセフバリーとか似たようなことをやってる人はいて、使い所や手つきでディセプティブにもなるとは思うものの、これは観客にデック渡すので結構操作が記憶に残ってしまうと思うのですよね。
The Unopened Prediction
色違いのカードを観客が選ぶ手品。
原理としては上のやつと似てるんですが、観客にシャッフルしてもらえない分ちょっとセリフで持っていくところに厳しさが出てくる。
オープンプリディクションじゃないのと意外性のところで持っていける部分もあるのですが。
The Closed Prediction
裏向きに配っていって、観客がストップした1枚だけ表向きにしてそれだけ色違いでしたという手品。
上二つと同じコンセプトですが、たぶんこれが一番厳しい。
裏の色が違ってるなら…と考え出された時点で負けてしまうような。
The Public Prediction
上のやつの予言の仕方とオチの見せ方違いみたいな感じ。
こっちの方がありな気はする。
このOP関連の5作品でぐるぐる同じところ回ってる感じはちょっとおもろい。
手法は似たような感じでも現象によっていけそう無理そうというのが大きく変わるのはよくわかりました。
The Solution (John Riggs)
あー、こういうソリューションもおありで。
LII-Kelihood (Stewart James)
少数枚カットしてもらったシークレットナンバーと自由に言ってもらう数字を使った予言現象。
単純な予言というよりCAAN的な感じもあり、数理トリックとしてもちょっとした迂回なのに追いにくい感じになっていて面白いトリックでした。
あと、実は予言トリックでしたという感じの示し方が渋くて良いです。
Coincidence
メイト一致とか。
Mating Season I
2枚をペアで配っていって、観客が言った3つの数字のとこだけメイトになる手品。
表向きに配れるのと、メイト一致でよく使うセットで出来るのが便利。
Mating Season II
メイト一致のルーティン。
普通だとこのセットからこういうことをしないといけないという部分を上手く解決していて、ジョーカーを使う演出も面白げで上手い見せ方だと思いました。
Mating Season III
Mating Season IIや同様のセットが必要な手品を即興でやる方法。
確かに即興。この方が現象としてもわかりやすいメリットもありますね。
Mating Season IV
Power of Thought型のやつで、配り方に何かがある方法。
これも1デックでカットしてすぐに現象に入れるようにするもので面白い工夫でした。
手順としてもビジュアルに変化してからのオール一致という派手さもあって素敵。
Cutting Match
赤青2つのデックを使った一致現象。
完全即興で行えるもので、ランダムな位置のカードが一致したようにも見えてとても良いトリックだと思います。
スタックを使った現象の後にシャッフルしてもらってから演じても遜色ないものになるんではないかなと。
Forte (Wayne Kyzer)
Spectator finds The Aces的なやつ。
序盤は観客の自由度が低いですが、まあバラバラなとこにあったのを探したという感じには見えるぐらいの感じ。
Open and Shut (Wayne Kyzer)
シャッフルの後に予言を書き、その数字の通りに配ったり色々すると4枚のAが出てきます。
Singularities
色々。
Mathematical Card Trick
電卓で色々遊んだ後の合計数字の枚数目からカードが出てきます。
遊びのところがメイン。
ギャグが受ければ受けるほどカードが当たるのも面白くはなりそう。ギャグの中の手品的な仕掛けとしても大胆さがおもろい。
Boxer Shorts (Richard Bartram, Jr.)
箱から出してすぐ箱が消えちゃうやつ。
色々あるけどこれは角度にまあまあ強いです。
傑作っすね。
Odd Man Out
5枚のカードの中から1枚選んでもらって、それが残りの4枚の合計数枚目から出てくるトリック。
地味ですが、5枚バラバラの数字かつ選ばれたカードをデックに戻してから触らなくていいので割とじわじわ不思議さがきます。
The Traveler
演者と観客でカードを当て合いっこするやつ、のちょっとサカー風のやつ。
観客が間違ったカードを出したかと思いきや、リバースされてるという現象で、まあこのプロットぇ観客のパケットで現象が起きないのはちょっとどうかと思わんでもないですがそこに囚われすぎず大胆なことやる感じは好ましくもあり。
Marked Phenomena
これも当て合いっこ。
アルコーランのDouble Thoughtと色々似てます。
The Cascade (Tom Craven)
リバース+CAANみたいなやつ。
元ネタがあってセルフワーキング化してるようで、手法はイマイチ。
The Packed Wallet (Simon Lovell)
カードトゥウォレットで、2段目がセレクトカード以外のカード全部が財布に移動します。
セミオートの範囲でとてもよく出来たハンドリング。
準備はちょっと大変で、サインカードでは出来ないけど、これはサインさせなくてもそこにあったものが移動したように見える構成だと思います。
Lube Job
カードが箱から出てこないというギャグ。
やってることはシンプルながら、なんとなく3段階になっていてちょっとした不思議なものに見えないこともない気がします。
Topological Card Tricks
トポロジー。
Charged Cards
ライジングカードから始まる1枚のカードのルーティン。
中盤の2つに破ったカードのバランス芸的なパートが特に面白いですね。
仕掛けはシンプルだけど、ライジングカードの流れがあるとパワーに見えそう。
そこからカードケースが壁にくっついたり、手法を変えながら現象がエスカレートしていくのが楽しい手順です。
The Toy (Scott Robinson)
Pure Imaginationのオープニングを飾る傑作カード貫通。
Severance Pay (Scott Robinson)
カードスルーお札。
これもPure Imagination収録。
結構近くで見ても気持ち悪い感じの貫通の仕方します。
Impossible Locations
カード当て。
The Optical Location (John Riggs)
デックを表裏に混ぜて選んでもらって当てるやつ。
原理としては普通な感じですが、手続きは丁寧で表裏混ぜること以外はカードを引いて戻してもらうというシンプルなものになってます。
この原理はシャッフルしてもらうことが可能というメリットがあるものの、やはり表裏ぐちゃぐちゃになったデックが残るのでそこにもう一つ演出上の工夫が欲しいところもありますね。
もしくは2枚目は大勝利して欲しい。
Lucky 13
ナンバートリック系の手品。
観客が自由な位置からカットした2枚の数字を使うもので、これは本当に自由なのでその不思議さは強い。
また、セレクトカードを当てるまでの予備現象があったり、MOでもあるので楽しいです。
パーシャルで出来るこれ系のとしては結構良い感じだと思います。
Double Dealer
2枚のカードのCAAN的な現象。
インコンプリートファローみたいな感じのことをするんですが、ファロー関係の技法は不要でぺネロパないやり方になってます。
元はFulvesのアイデアらしいのですけども、観客の手にカードが残らないので数理感もないですしシークレットナンバーの処理はうまいこといってるんじゃないでしょうか。
The Lost Key
キーカードとか無理そうなのにキーカードロケーションができます。
無理そうって言っても絶対無理って感じでもないあたり中途半端な感じは否めません。
A Fine Mess
即興で出来るちょっと変な選ばせ方をするカード当て。
当て方もシンプルなので、この変な選ばせ方が浮きすぎるところはあるけど、ちゃんと何故そういう選ばせ方をするのかという説明はされるのでそこさえ納得してもらえれば大丈夫。
まあ冷静に考えると、こういう理由だからというこういう理由のところが実際に可能なのだとしたら別にその手続きも意味はないのではという気もしなくはない。
Locator Service / Locator Service II (Gary Plants)
シークレットナンバーを使うトリック2つ。
無印の方は最終的に観客のカードがシークレットナンバーの枚数目ではない特定の位置に来るもので、直接的感は薄いです。
Ⅱの方は表を見て探す必要はありますが、シークレットナンバーを知りようがないので見ただけのカードを当てたように見せるタイプのもの。
UNCANNY (Doug Canning)
ポケットの中にデックを入れて、抜き出したカードの名前をスペリングすると観客のカードが出てきます。
なにかしら応用できそうなアイデア。
Impaired
ジョーカーを2枚バラバラの位置に裏向きに差し込み、間のカード数枚の中から一枚覚えてもらい、おまじないするとジョーカーが寄ってそのカードを挟んでるという現象。
フリーコールでなく限定された中のカードであることと、ジョーカーが移動するという現象のバランスが良い感じです。
Jinxed
メンタルセレクションのカード当て。
OOSOOMや説明できないトリック的な要素がありますが、選択の自由度は高くほぼ確実に絞り込める方法が取られています。
クライマックスの調整はちょっとバッドエンドみもあるけど演じ方次第という感じですかね。
Killocation
これは直接的にOOSOOMのバリエーション。
カードを覚えてもらう手続きが違って、ちょっと楽にあれできるようになってます。
あとここにありますかパートのところのセリフが良いです。ちょっと現象とそのセリフが繋がらん気もしないではないけど、ただ確認して絞り込んでるという感じはだいぶそらせるような気がします。
10選。Quadruple Prediction、The Portable Ladder、LII-Kelihood、Mating Season II、Cutting Match、The Packed Wallet、Charged Cards、The Toy 、Lucky 13
Volume 2に続く。
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