最近リリースされたMichal Kociolekの新刊、超面白かったPlots & Methodsの続編です。著者よりご送本いただき一足先に読みましたが、前作同様マニアックで楽しい手品が載ってる本でした。
全作に共通するのは原理の使い方の上手さ。あまり使われることがない原理が多く、あまり使われないのは使い辛さ故でもあったりするのですが、手順構成と演出で弱点を補いつつ強みを活かす手順になっています。
セリフと演出は特に素晴らしく、プロットに合ったプレゼンテーションの的確さもあるし、観客にやってもらう手続きにしっかり意味を持たせて不思議で楽しい手品にする感じも好き。
マジシャンをひっかけるパワーがあって一見さんも楽しめるスタイルは一番興味あるところで、ご本人も”professional amateur magician”という言葉を使っていますがそういうとこを目指したいもんやなーと思わせてくれる一冊です。
Synch
Do as I DoのSame Positionパターンで、観客がストップした場所からお互いが覚えたカードが現れます。
これだけでも魅力的ですが、観客がカードを覚えてパケットに埋もれさせる手続きは演者に絶対にわからないように見えるものになっていて巧妙です。
ここで使われてる原理の弱点をDo as I Doならではの演出で埋めていて、便利ながら扱い辛い原理が普通に使えるものになってるのが素敵。
この本の中で一番はまったトリックです。
Mr. Liar
嘘を見破る演出のインポッシブルロケーション。
こちらも演者がカードの行方を知るのは不可能に見えるので演出の説得力が高いです。
まあカード当てならなんでも嘘の演出って使えますが、細かいサトルティにまで配慮されつつマニアックな原理を使っていてこの手順の手続きのそれっぽさが強いという感じ。メンタルチックな当て方もおしゃれだし、手法的にそういう当て方しか出来ない場合に演出に寄せてショートカットする感じとかめちゃくちゃ上手い。
頭使うので実演慣れするのはちょっと難しいと思いますが、練習する価値あるトリックです。
3H
3人のメンタルセレクションを当てます。
元ネタはリオボーのトリックでスタックの特性を使うものですが、この3Hは即興で行えるようになってます。
即興といってもちょっとあれこれする必要があり、手続きもクロックトリック風のことをやったりしますがマジシャン相手にも通用するトリック。
こちらと面白い割にあまり使われない原理で、あまり使われないのには独特の不自由さがあるからなのですが、そこらへんもうまいこと気の利いたセリフでカバーしてる作品になってます。
特に釣りっぽいことが必要とされる場面でそう思わせない工夫、アロンソンとリオボーのやり方にもう一工夫足されていてここが見事でした。
The Dreamer
観客がカットした場所からポーカーハンドを配り、ハイカードを当てた後に全部のカードを当てます。
この現象だけやろうと思えば詰んでチラッとやってどーんで行けますし、まあそのやり方でも上手いこと見せる人はいるかもしれませんが、手法とここはこう見せたいというこだわり、この見せ方じゃないとこの面白みは出ないというのがわかりやすい一作です。
特殊なセットがいるしこじらせてるようにも見える作品でもありますけども、観客を巻き込んでいく演出はとても楽しそう。
このリアルな観客とのやり取りは彼の作品の特徴で、リアルだけどなんでもないように見せたり実は絶対に必要な会話だったりという匙加減が絶妙。
ポーカーを題材にしてることでより自然になってるしおもろいです。
Esoteric (Bonus)
タロットカードを使ったカード当て。
タロットカードの特性を上手く使いつつ、プレゼンテーションもタロットカードの紹介になってたりするのでどんな観客にも演じることが出来ます。
ボーナス扱いだけど個人的には結構気に入ったトリックで、タロットのカードとは違う独特の雰囲気が出せるのも良いし、なんかの手続きもタロットでやるとそれはそういうもんという感じに見えるのが好き。
全5作品の作品集ですが、この原理はこういう使い方ができるのかという幅の広がりを感じられ、細かいセリフやサトルティなど応用できることも多い一冊です。
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