今年発売されたJim SteinmeyerのImpuzzibilitiesシリーズ8作目。
最近過去シリーズが全部在庫復活したので、なんとなく一番新しいのから読みはじめました。
このシリーズは原理のみで成立するセルフワーキング手品を扱っていて、観客に全部の操作をやってもらえるようなものも多く、場合によっては解説が一行もなくこういう操作をすれば絶対こうなるというような作品もあります。
原理的には穴掘って埋めて平になりましたジャジャーンということではあるんですけど、演出やセリフはしっかりしていてちゃんと手品として見せられる感じです。パズル的でありながら挑戦しすぎないバランスであり、観客が自由に決めたことがしっかり不思議に繋がるような感じ。
今作は11個の手順が載ってます。
One Exceptional Card
5枚のカードを観客に渡し、カードを1枚覚えてもらう。そこから5までの好きな数字を思ってもらい、その数字の分だけカットしたり演者が指定した枚数分カットしたり色々やるとカードが1番上にくるという手品。
複数の観客に同時に演じられるもので、誰がどの数字を思い浮かべても1番上に来ます。
これ系のやつは仕組みを隠すために長く色んな作業をやってもらうのもありますが、これは比較的短距離で最後までいく手順で混乱させすぎない感じは好みです。逆に原理を気取られやすくなる怖さもあるのですけど、パケット全体をひっくり返すというところがうまいこと機能していてただ元に戻しただけという感じはあんまりないです。
Two Way Switch
2人の観客に数字を思い浮かべてもらいその枚数目のカードを覚えてもらう。そのあと2人の数字の合計数によってパケットのカードの枚数を増減させますが、思い浮かべてもらった数字の枚数目からそれぞれのカードが出てきます。
面白い原理でした。パケットの枚数を変えるのでちょっと考えても当たり前のことが起きてるだけという感じはありません。
1人目の数字の枚数目から2人目のカード、またその逆という感じでカードが出てくるので演出的にも面白い感じにできます。
解説では特定の枚数のカードを使って行うことになってますが、別に何枚でもできるので観客に好きな枚数取ってもらってからスタートすれば途中の作業も正当化できるんではという気がしました。
Three Wishes
ダウンアンダーを使った予言現象なのですが、シャッフルした状態からスタートすることができ、途中の作業も色々と予言されていた的な見せ方をします。
巧妙げな感じもあるのですけど、これはちょっと見せるのが難しそう。
そもそもカードが当たる以外の要素が弱いというのもあり、段階的に盛り上げていく見せ方もできないのでどう演じたものかという感じ。
ダウンアンダーの計算方法はよくわかってなかったので勉強になりました。
The “I Forgot of Something”
I Forgot of Somethingとスペリングするとカードが出てくる手品です。
1回目は失敗するのですが、言葉通り忘れてたものを思い出してからやりなおすと出てくるという演出で面白い見せ方でした。
先にスペリングについて説明するから後出し感もないし、観客が決めた枚数のパケットが効いてくるので不思議さも十分。
Blunt Force
パケットを使って観客が決めた数字の分だけ配ってカットしてみたいなことを繰り返すと、カードの並びが演者の電話番号になります。
作業中は何をやってるかわからなくても、結果から考えるとどういうことをしていたのか想像しやすいものだと思いますが、配ってカットして積むという動きはなかなかカードの順が入れ替わってる感が強いです。
Excessive Force
演者と観客で数字を一つ決め、その数字の分配って積んでというのを3回繰り返す。演者と観客は別の数字を選んでいるのに一番上に同じカードが出て、パケットを見るとA〜Kの順に並んでるという現象。
このお手軽さで2段落ちになってるのはかなり良い感じ。
先に演者がやってから同じことをするのを説明し、その後はパケットには触らなくても観客の数字を聞かなくてもいいです。
観客の数字を使いつつ並びをコントロールできるので、複数のパケットでコインシデンス系の現象とかやっても面白そう。
The Nine Card Enchantment
9枚のカードを使って行うスペリングトリック。
観客のカードの名前と演者が指定する単語をスペリングすると、観客のカードとマジシャンのカードの位置が入れ替わるという現象です。
入れ替わるといってもトップカードとボトムカードなので、一周配り終えればそうなります。さすがにそのまんまに見えないようにはなってますけどかなり地味。
Thurston’s Coins
演者はずっと後ろ向きで、何枚かのコインを出してもらい、指示にしたがってコインを減らしていってもらいますが最後に何枚になったかを当てれます。
途中で何枚のコインを減らしたかを聞くポイントがあるんですけど、最初に何枚コインを置いたかはわからないので不思議に見える感じです。
たぶんちょっと考えてもわからないとは思いますけど、カードと違って配って順番が変わったりする要素がないので式にしやすさがあり勘の良い人は気付いちゃうと思います。
小銭は誰でも持ってるからコインを使うことになってますが、カードを積んだ方が察せられにくくなりそう。
A Pretend Magic Show
いくつかの動物の中から選ばれたものを当てるという手品。
絶対にそれしか残らないようになっているのですけど、セリフがかなり凝っていて想像力をかきたてる感じが楽しいです。
仕組みの部分も動物であることをうまいこと利用したものになっていて、ギャグから現象をさらっと示すセリフ回しも面白みあります。
The Instructions What Make It Work / The Poem What Reads Your Mind
最後の2つは同じ現象で手法も似てます。
紙に書かれた単語の中から3人の観客に一つずつ覚えてもらってそれを当てる手品です。
文章に仕掛けがあり、3人に別の単語を覚えてもらうためにそれぞれ制限をかけるのでそのまま日本語で演じるのは不可。
数字がいっぱい書いたカードを見せてあるかないか聞いていくやつの文章版という感じではありますが、直接的な質問にならないよう工夫されていて、文章自体が演出にもなっているので原理感が薄まってます。
全体的に全く新しい原理を使ってるというわけではありませんが、観客の選択が重要であることが印象に残る構成になっていて、通して読むとそのポイントが掴めるのでこういう手品を考える時の参考になるはず。
どれもまあ地味といえば地味だし必殺級のトリックという感じではないものの、フルオート手品はやっぱり気持ちがよく、最後に演者が言った通りになるとドキっとするもんです。
ひたすら指示をし続ける必要があり演技力も必要とされますけど、読んで手を動かしてすげーとなった感動を胸に挑むと良いんじゃないでしょうか。
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