by jun | 2018/04/26

なんかホラー映画のポスターみたいな表紙にビビりまくってましたが、めっちゃ難しいことはせずに賢く解決していく感じの本なので全くリビングデッドっぽさはありません。
途中賢すぎて解説聞いても理屈がわからんのもありますけど、覚えたら演じながら自分も驚ける手品ができます。

Chapter One:Bullet Train

エースアセンブリ3手順です。
全部エース4枚と関係ないカード12枚で行うものでクリーンに演じやすく、もちろん続けて演じれて、続けても追われにくい感じになってます。
エースを4枚出す方法も解説あり。

どれもテンポがよく、もったりと消失を繰り返さない手順なのでとても好みでした。
特にラストの「Interrobang Ace」は「もう違うカードなんでしょ」と思わせず、それで集まんのかって感じで素晴らしいです。
3枚目のあれは、うまく力を抜くとぽろんと落ちるのでそれで差し替えることにしました。

ノーエキストラのアセンブリは実際にやると言われないまでももう違うカードなんでしょ感が出そうなので、こういう既に集まってますってのは強いと思います。

Chapter Two:Secrets And Mysteries Of The Four Aces

「Cull De Stack」ではお客さんの前で目的のカードを複数枚好きな場所にコントロールしてしまいますが、これが変わった方法で面白いです。

「Final Verdict 」はシャッフルしたデックをお客さんに4つにカットしてもらって上から4Aが出るやつで、Spectator cuts to the Acesの中でもかなり理想に近い形だと思います。
実際には色々賢いことやってるんですがお客さんからしたらそういう風にしか見えないと思わせる構成も見事すぎます。
最後の一回がちょっとあれではあるものの、お客さんとの会話が肝の作品でもあるのでああいうのも許される感じじゃないでしょうか。

「INTERLUDE: TWO CLASSICS」はラストトリックとツイスティングジエーセスについて。
ラストトリックには一工夫あり、「観客の手の中で現象を起こすこと」についてとても大事なことが書かれています。

Chapter Three:DEAD RECKONING

この章は何故か一人称小説風なのですが、日本一信頼できる手品本翻訳者の富山達也さんの素晴らしすぎる文章のおかげですらすら読めます。
カード当てが3つ解説されてる章で、どれも不思議なので小説形式で読者も欺かれた感を味わえて良いです。

特に「Out Of Touch」は見て覚えただけのカードをフォースされるというホラー手品なのでそういう感覚を本でも体験できるのは良いですね。
手順自体もすっきりしてて、演者は表を見ないので同種の現象と比べても不思議度は高いと思います。

「Dawn Patrol」は原理系サンドイッチ。
原理臭さは排除されて、たまたまみたいな感じで挟まってるのとても良いです。

Chapter Four:Degrees Of Freedom

なんか表裏ぐちゃぐちゃにするのにAだけ表向きみたいなそういう章。
この章が難しいやつです。
いや、手順覚えるのは簡単なんですが、優しく解説されてもどうにも不思議でなんでこうなんのなんでこうなんの呟いちゃう系の。
ちょうど最近フレンチの石田コラムで取り上げられた原理なのですが、歴史とか読むともっとクラクラしてきます。

コラム:第84回 ボブ・ハマー原理の表裏ごちゃまぜとCATO

本の中にはちゃんとバノン先生による解説もあります。
手順覚えれば問題ないですが、一応理屈も理解しとかないとやっててマジで混ざってしもたんちゃうんって不安になるので頑張りましょう。

ここに解説されてる手順は本当作業感がなくて、動きもとてもよく練られてるので「こうやったらこうなるのね」という感じが全くしません。
やっぱ原理系こそ手品にしていく詰め大事よなって思います。

Chapter Five: IMPOSSIBILIA BAG

「Wait Until Dark」はお客さんが表裏ぐちゃまぜ混ぜても演者がその結果を当ててしまうもの。
予言として演じられることが多いですが、予言はオチだけという演出の工夫が面白いです。
手順もシンプルで混ぜた感もあるのでこのやり方覚えてしまうのがよさそう。
適当にやってると事故りますからね。

「Last Man Standing」はテーブルなしでできるトライアンフ。大好きです。
ジョンバノンさんといえばPlay It Straightも有名ですが、こういうどこでもできるやつも覚えときたいものですね、
例の一枚の処理も会話の中でさらっとやっちゃう感じでとても素敵。

「Trait Secrets」はジェミニツインズの後にカットした場所からフォーエースも出てくるというマニアもびっくりどんでん返し手品。
結構強引な方法ではありますが、観客の意識からそれた物を使うのと、十分なエンディング後に厚かましく悪いことするってのがとても好み。

原理を使ってるのにどれも単純作業感がなく演じてみたいものばかりです。
セルフワーキング的な本でどれも演じてみたいというのはなかなかなくて、その理由の一つにセルフワーキングというとだいたいみんなダウンなんとかみたいなことをやりたがるというのがあるのですが、ジョンバノンさんは一回も使ってないので読み進めるごとに加点されていく一方でした。
フォーエース系とカード当てが多いですが、バリエーション豊かなので退屈することなく読めます。
個人的ベストはFinal Verdict、Out Of Touch 、Chapter4。
結構選びきれないぐらいどれも良いです。

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