by jun | 2018/05/15


デニスベアさんはConjuring Archiveという手品本のデータベースサイトを運営されてる大変な研究家の方で、ご自身もHandcrafted Card Magic という本を出されています。
基本的にこのDVDはハンドクラフティドで解説されていたマジックの実演と映像解説版という感じです。


実演は実際のショーを撮影したもので、これが非常に面白いのでそれを見るだけで十分価値があります。
ハンドクラフティドは日本語訳も出たので読んでいましたが、トリックを知っていてもびっくりするものばかりです。
一部のマジックは本で読んで、仕組みはすごいけどこんなん実演できんのか??と思っていました。
本人ならそこそこ上手くやるんだろうなぐらいに思ってましたが期待を遥かに上回る自然さで演じていて、本当に怪しいところが全くないのにあほみたいな現象が起こります。

基礎技法のレベルもいちいち高く、全ての技法やアクションにこだわりが感じられ、演技も解説もここまで楽しめたDVDは久しぶりでした。
今年一番楽しみにしていたDVDで発売日に買ったのですが、ようやく飲み込めてきたので全作品レビューします。

Brute Force Opening

カードを選んでもらってデックに戻し、一番上のカードが観客のカードでないのを見せて、観客の手のひらに置きます。
観客が手を開くと選んだカードに変化していて、もう一度見るとまた別のカードになってます。選ばれたカードは箱の中から出てくるという即席でできるルーティン。

たぶんこの現象を読めばこうやってこうやってるのかなと想像されるかと思いますが、たぶんだいたい当たってます。
ただしクウォリティは鬼です。
単純なトリックがバカ受けしています。
技法のレベルの高さもタイミングも観客とのコミュニケーションも全部素晴らしく、みんながなんとなくやってる動きをなんとなくやってません。

特に観客の手にどうやってカードを渡しどうやって開かせるのかというあたりはとても合理的でそこで何かが起こった感がとてもよく出ています。
ショー映像なのでオフビートの使い方もとても勉強になりました。

The King Thing

4枚のQをデックから取り出し、まず箱の中にミステリーカードを一枚入れます。
そのあとカードを選んでもらい、デックに戻します。
ここから4枚のQが表向きになったり裏向きになったりした後、Qの中からデックに戻したはずの選ばれたカードが出てきて、4枚ともそのカードに変わります。
またQに戻って、箱の中を見ると4枚のQ、Qは選ばれたカード1枚だけになって終わり。

これも4枚のQの取り出し方から、カウントの仕方、現象の繰り返しの感じなど計算されています。
特に4枚のカードを同じに見せるアレ、あの見せ方はとても好みでした。
最後の1枚のハンドリングも巧みで、着実に変わったように見せて、リズムを変えることで動きの違いに違和感がなくなってます。

ややくどいかなと思いましたが、4to1のキックバックでインパクト与えるなら4枚のをアピールする時間はこんぐらいの長さがちょうど良いのでしょうね。

Shuffled ACAAN

観客にシャッフルしてもらうエニーカードエニーナンバー。

デックは2つ使いますし、数字にも制限があるのでガチ勢からしたらエニエニではないのだと思います。
ただし観客がシャッフルさせるのはやはり強いです。
たぶんリアルフリーチョイスエニエニより混ぜたのにっ!混ぜたのにっ!って思う方が尾を引く不思議さだと思います。

数字を聞くタイミング的に制限かかったこともそこまで印象に残らないでしょうし、カードの選ばせ方も鬼クウォリティで完全に死にました。

Herbert

輪ゴムとカードのルーティンです。
このDVDのPV的に演技動画が公開されてます。

知ってる人からしたら1段目は普通ながらも随所にされてるアレンジに感動することかと思います。
あれを完全にロックさせる方法を自分なりに考えていたので解説はめっちゃためになりました。

問題は2枚目です。
観客が言っただけのカードをまんまと捕まえてきます。
表向きで見たりしてません。何回も見たら一瞬あっていうとこはありますが、あれだけであれできてるとはヤバすぎです。
本読んで一番スムーズにできるかどうか疑わしかった演技なので、このレベルでやられてマジびびりました。
2段目のビジュアルな輪ゴムの消失は本当に素晴らしいですね。

ちなみにデニスベアさんが使ってる輪ゴムの解説があるのですが、日本人にはちょっと嬉しい感じの話でした。

Mating Season

鬼のようなメイトカードルーティンです。

なんか最初はポーカーデモンストレーションみたいなことやりながら観客の指定した枚数目のメイトカードを出したりして、なんか混ざったっぽいのにその後もメイトカード当てみたいなことやったり、広げてバラバラなの見せてからトップから配ると全部メイトになってたりマジ意味不明でした。
なんでこんなこと思いつくんでしょう。
結構覚えることが多いので大変ですが、非常に賢い手順です。

また、ネモニカからさくっとセットできる方法が解説されていて、これはかなり便利。

Magic Monthly

観客に誕生月を聞いて、観客にシャッフルされたデックからその月と同じ数字のカードを4枚出します。
もう一人に誕生月を聞くと、さっきの4枚が変わってその人の月の数字の4枚になってます。

ビジュアルな4カードプロダクションからのトランスポジション。
プロダクション部分はめちゃくちゃかっちょええですし、見よう見まねじゃちょっとできないパンッのあれが解説されてます。
二人目の誕生月聞いてから変化するカードには触れません。
この反則的な解決法はいろんなマジックに使えると思います。

Oil & Water

シャッフルしてもらったデックで3・3のオイルアンドウォーターからフルデック揃います。
フルデックは既存の方法ですがめちゃくちゃうまいです。
一気にやらないのが怪しくならないコツなんですかね。

3・3の1回目はすごい良かったです。
ノーエキストラでこんなに自然にできるかって思います。
2回目のはデニスベアさんが好きな技法使いたいだけやん感があってそれはそれで面白かったです。

クライマックスはピンで止めたカードを赤黒に混ぜてそれでも戻るやつ。
ギミック使いますがめちゃくちゃ不思議でした。

Photographic Memory (演技のみ)

記憶力のデモンストレーション。
ビールを飲むと記憶力が増すと言い、ジョッキ、ピッチャーとどばどば飲みますがカードの位置を一瞬で記憶して再現します。

まず飲みっぷりがすごすぎて、このショーで一番盛り上がります。

デニスベアの盟友ピットハートリングも記憶力ルーティンである”Unforgettable”を発表していますが、彼はオレンジジュースで演技していて、解説では飲み物はなんでもいいけど「酒類は避けることをお勧めします」とはっきり書いていました。
ジョッキはまだしもピッチャーはやばすぎますよ。

The Tantalizer

デックからカードを1枚選んでもらいシャッフルします。
カードを2つに分けて、そのカードが入った方が勝ちというゲームをしますが、観客に勝たせるという理由でマジシャン側のカードをどんどん観客側に配っていきます。
最終的にマジシャンのカードは1枚になりますが、それが選ばれたカードです。

これめっちゃ良いです。
ほとんどセルフワーキングでできますし、ゲーム演出もあまりやらしくないです。
お客さんが勝つ方でやってもいいですしね。
原理さえわかれば4枚のAとか複数枚でも演技可能。

実はこの手順には別の目的があって、それは本の方が詳しく書かれているので読みましょう。

Expanded Gambling Demonstration

ポーカーデモンストレーションの解説をするという体で始まるデモンストレーションで、解説したのとは別に強い手を配ったり、観客が言ったマークのロイヤルフラッシュを出したり、最後はオーダーに揃ったりするヤバ手順。
解説をするという部分で混ぜてコントロールするんやでえみたいなこと言うからオチにインパクト出ますし、途中も普通に混ぜてるやん。

色んな意味で一番難しいマジックですが、ポーカーデモンストレーションもこういうのならやってみたいと思わされる演技でした。

Encore: Stop It (演技のみ)

3連続のストップトリック。
不思議すぎてサクラを疑うレベル。
全部フェアに観客がカードめくってるのになんですかこれは。
解説されてる本だけ紹介されています。

Stack Management

多くの演技で使われてるメモライズデック。
その扱いや、それを疑われないためにどうするかみたいな話です。

DISC1のショーの演技は全部通しでのパフォーマンスですが、どの演技でもスタックデック使ってる感はありませんので、その辺の秘訣的な何かが語られてます。
たぶんここで話されてることだけじゃないので何回も演技見て細かい動きの意味を考えるのも良さそう。

Messy

ガチ混ぜトライアンフです。
ピットハートリングの”Master of the Mess”と影響し合ってる作品ですが、こっちはカオス混ぜがない分、ラストは並びが揃うおまけついてます。
これも本で読んで知ってても不思議なやつでした。
あれ、今回は戻らない手順なのかなと思うぐらいの混ぜっぷりで、戻った時は本当にびびりました。
オーバーハンドシャッフル入るのがマジ不思議。
原理解説もとっても面白いです。
なんで52枚の紙がこんなことになるんでしょうねって感じ。

Strip-out Shuffle

テーブル上で行うフォールスシャッフル。
完全に揃えたとしか思えない見せ方ですが完璧にフォールスにできます。
やたらむずいですが説得力でこれ以上のものはそんなにないんじゃないでしょうか。

Another Trick for Allen Kennedy 2

センターディールするよーと言って4枚のAをバラバラに戻して、ディールしながら一枚ずつ出していきます。

鬼のようなテクニックと賢さが両立した手順です。
Aは表向きに戻すのでめっちゃ不思議。

Routined Arith-Mate-ic

2つのパケットに分け、観客に数枚取ってもらいます。
2つのパケットを同時にくばっていきますが、その枚数目だけメイトカードが出てきます。
セルフワーキングで、同じ原理を使ってどんどん不思議レベルを上げていけるルーティンなので面白いです。
メイトネタって地味っちゃ地味ですがかっちり手順になってると地味さが気持ち悪さに変わって味わい深いですね。
原理は計算すると当然といえば当然のものなのですけど、よく思いついてここまでの手順にしたものだと感動しました。

Packet Trick

パケットトリックという名前ですがフルデック使います。
最初は抜かれたカードを残りのカードから当てるという演出で、後半は先にマークを言わせて適当に配っていき、配り終えてから数字を聞き、そのカードの枚数目を当てます。

まあ何かしらのシステムかなと思うわけですが、何回見てもわかりませんでした。
そんぐらい適当に配ってる感あります。
このDVDでも一番マニア対策感ある手品で、解説見るとめっちゃ必死に騙そうとしてるやんというヤバさが見えておもろいです。

The Green Card

一枚の折りたたまれた緑のカードを出しておきます。
観客にサインしてもらってアンビシャスカードをやり、折りたたまれたカードを見るとサインカードに変わってます。

他の手順と比べるとワイルド技法が多くて、それが割と続くので全体としてワイルドに見えます。
このワイルドさ嫌いじゃありません。
特に3回目に真ん中に入れる時のワイルドさが好きです。

Plop

観客に1から13までの中で好きな数字を言ってもらいます。
カードケースを調べてもらって、デックをケースにしまってもらい、箱を上から押すと言ってもらった数字の4枚が箱から抜け出てきます。
カードを言われてから表は一切見ません。
最後もなにこれってなりました。

というわけで異常なハイクウォリティが大量に詰め込まれてるDVDです。
解説見るとどれも本当にこだわられてて「一般の人に見せるならそこまでせんでええやろ」みたいな甘えが一切ありません。
莫大な知識を駆使して妥協なしに不思議を追求しています。
ショーの演技を見ると一般のお客さんがめちゃくちゃ受けてることがわかりますし、一般受けとマニア受けが両立するということを見事に証明した感じです。

どれもこのクウォリティでやろうとするとめちゃくちゃ時間かかるとは思いますが、1つでも覚えたら一生ものの手順になります。
マジックは好みがあるものなので、あんまり人に強くおすすめすることはありませんがこれは誰が見ても面白いと思いますし、どれか1つは絶対やってみたくなるはずです。
シャレにならん知識を結集して形にしてくれてるカードマジック史上に残る名盤だと思います。

個人的にはHerbertとMessyが大変気に入ったのでめっちゃ練習してます。
メモライズデック使ったやつは敬遠する人が多いかもしれませんが、演技見るといわゆるコスパがめちゃくちゃ良いものだとわかります。
簡単で受けが良いじゃなくて、コストは高めだけどリターンは何倍もに跳ね上がる感じのコスパというか、サイゼリヤと俺のイタリアンの違いみたいな。
使ってるのは同じトランプであり同じパスタであるのに、ちょっとのことで格段に上質な何かになるのです。
メモライズデック使ってることを意識して見れば見るほど不思議に見える構成も非常に巧みで、本当に得るものが多いDVDでした。
なんかハンドクラフティドの3巻が出るとか出ないとかいう話を聞いたのでとても楽しみですね。

5/23 追記
3巻もうすぐ出るみたいです。
https://twitter.com/denisbehr/status/999175020378251264

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