by jun | 2018/08/29

テクニカルなカードマジック講座の続編。発行は2006年。
続編のため技法パートは1巻の何ページに解説してるよとかそういうのもありますが、この本の手順で使う技法は解説されてるのでこれだけ読んでも問題ありません。
内容は1よりマニアックで技法も難しめ。
変なストーリーは抑えめなのでそういう意味ではこっちの方が演じやすいものが多いかもしれません。

失われたエースの謎

ホフジンザープロブレム。
ただしちょっと変則的で、エースパケットを1枚ずつ表向きにしていって、そのマークが出たら言ってもらってテーブルに置き、残りのエースはデックに戻し、デックの中のエースの中に裏向きの1枚があってそれがテーブルに置いたはずのエースで、テーブルに置いたカードが選ばれたカードに変わってるというもの。

エースをデックに戻す分プロブレム的な何かは失われていますが、エースパケットに選ばれたカードをあれする技法は面白いです。
ただ、この技法エースパケットを裏向きに置く必要があって、テーブルにあったのがエースであると無意識に印象付けるのにやや弱さがあります。

その後は特に破綻ないのですけど、デックに戻したエースの中からテーブルに置いたはずのエースが出てくるというのは、絵面的にはエースからエースが出てきただけで、ホフジンザーの持つ意外性は弱まっている印象。

アラビー

元ネタはヒロサカイさんの「ワラビー」。
4枚のエースと4枚のスポットカードを使ったエレベーター現象で、段階ごとに上がってくる枚数が増えていく構成。
4枚目はトランスポジション的なことが起きて、カード構成はジャズエーセスと同じですがフェイズごとの違いがはっきりしていて演じやすいです。

フラッシュ!

4エースプロダクション。
フラリッシュ要素だけでやらないってのが狙いで、観客に選んでもらったりしながら最後は綺麗に出てきます。
表向きのセットが不要で、紹介されてるリバース技法は使い勝手良いものなので覚えておくと便利。

ユニバーサル・ユニバース

ユニユニ。
ユニバーサルカードの定義がよーわかってないんですけど、Everywhere and nowhere的なものが原点みたいなので、まあどこにもあってどこにもない感じです。
特徴としては色違いカードを使うことで、そのカードがどんなカードにもなるユニバーサルカードですつって進みます。

観客に3枚カードを選ばせないといけないこと、色違いカードを混ぜないといけないこと、そのせいで色々制約が出ることと結構しんどそうに見えますが、カードを3枚選ばせることに抵抗がなければ他はそんなに無理がありません。
明らかに同じカードが2枚あることを示すパートは好み分かれるかと思いますけども、デックから取り出したカードで始めるパケットトリックなら結構ありって感じで、一応エンドクリーンなので現象が気に入ればみたいなところです。

ツイスティング・エース・プラス

最後にスペードだけ裏色が変わるツイスティングエーセス。
カードは4枚しか使いません。

原案と違って表向きにが裏向きになるツイストと表向きになるツイストの混合なのでかなり現象がわかりにくくなってます。
このカウントとこのスプレッド組み合わせたら裏隠せるやん!というパズル的な面白さはありますが、原案から落ちてる部分が多くてちょっと都合が見えすぎる感じ。
あとやっぱり原案の良さは全体的なお手軽感だと思うんで、色違い一枚持ってくるだけでかなりマイナスな印象です。

エナメル・カウント

ディングルの”Regal Loyal Flush”が元ネタらしいですが、パケットトリック化していて完全に別物。
4枚のジョーカーが4枚の2に変わって、最後は4枚のジャックに変わるという、どっちかってとジャンピングジェミニに近いやつです。
フラッシュトレーションカウントを使わないのですが、逆にラストのジャックを示す時に違和感が出そう。
そのあたりはリズム勝負になってきます。

Regal Loyal Flushの改案はカーニーの”Inscrutable”がスーパー最高すぎてちょっと高いハードルがあるのですけど、パケット好きならこういう解決になるのですかね。
ちなみに東京堂出版から出てるデレックディングル カードマジックに載ってるRegal Loyal Flushは「杜撰なロイヤル・フラッシュ」という荒木一郎みがある日本語タイトルがついています。

ポーカーハンド占い

ボブハマーのあれを使ったあれです。
観客が裏向きにしたりカットしながらすると、ロイヤルフラッシュのカードが表向きになるというやつ。
テクニカルなカードマジックなのでテクニックを使ってシャッフルした状態から始められるのが売りらしく、シャッフルさせたあとカルするだけだったらどうしようと思いましたが、ちゃんと他にも工夫がありました。

リセット・オードブル

テーブルを使わない1回だけの入れ代わり。
久しぶりに読み返したらこれヤマギシルイさんが原案なんですね。
原案との差異は書かれてないのでわかりませんが、最初のとこがよく使われる技法だったとかそういう感じでしょうか。

テーブル使わない4-4のトランスポジションてうまくいきそうでなかなか収まり悪かったりするところを綺麗に解決しています。
見た目的な矛盾もなく、技法は自然に行える位置にあってそこからビジュアルに変化させれるのでとても良いです。

リセットの考察 / リセット・セパレーション

こちらはリセットボタンを押す正統派リセット。

使われてる技法はかなり変わっていて、リセット研究家の人は参考になると思います。
ポイントはパケット接近のなさで、最初と最後のあれが嫌いな人にはおすすめです。
チェンジの方法もよくあるものとは違うので、完全に手順をコピーするんでなくても取り入れれる部分はあるんじゃないでしょうか。

東京・ホテル・ミステリー

ホテルミステリー。
あんまり詳しくないジャンルですが、たぶん綺麗な手順だと思います。
枚数を錯誤させないといけないのでそこのハンドリングの無理のなさが勝負所だと思いますけども、そこに関しては自然にできるので良いんじゃないでしょうか。

あと、ホテルミステリーの話ってホテルに来た客と支配人を修学旅行の生徒と先生に置き換えるのってどうでしょう。
風紀がどうのと言って支配人が注意しにくるホテルより先生が見回りに来るという方が現実味がありますし、変に下品になりすぎない気がします。
修学旅行だと男子部屋と女子部屋が建物ごと違ってたりしますし、移動距離が長い分不思議に見えたりしないでしょうか。しないですか、はい。

女マジシャン スペード

女マジシャンであるスペードのクイーンがステージの入れ代わりマジックをする的な手順で、最後はハートに衣装代わり。
カードを擬人化するやつだとこういうステージ憧れ的な手品が好きです。
使われてる技法はなかなかハードコアで、無駄にシャカシャカする回数を減らしています。

フーディニと三人の観客

コレクターの変則的バリエーション。
エース4枚の間にジョーカー(フーディニ)を差し込み、輪ゴムでとめて箱の中に戻します。それから3枚カードを選んでもらって中に戻し、箱から輪ゴムで縛られたエースを取り出すと、ジョーカーはデックの中から表向きに出てきて、エースの間には3枚のカードが挟まってます。

世代的にフーディニがエスケープマジシャンであるってイメージがあんまないのでお話的にはピンと来ないんですが、コレクターとしては好きです。
エースを離して置いておくっていうコレクターでよく使われるあれを、ジョーカー挟んでおくことで説得力持たせてるのが良いですね。アトファさなくて良いですし、輪ゴムも効いてます。

1枚取って戻して、2枚目取って戻してってのがちょっともたつく感あるんですけど、色々仕事があるのでやむなし感。
良い意味で色々ハンドリング考えてみたくなる手順です。

マジカル・トリップ

赤青10枚ずつで行うカードアクロス。
移動するカードは観客がストップしたとこのカードでやります。
いわゆる枚数をはっきり確認させれないパターンなので技法のクウォリティ勝負。
消失パートはもう少し綺麗にどうにかなりそうですが、ワンクッション入れることで消えた時の消えた感が出る気もします。

シュナイダーとストリッパー

サンドイッチカード。
トリッキーな解決法で、カードがサンドイッチされる前にコインが出てくるという謎のおまけ付き。
なんか通販番組で「この青汁、1ヶ月分が3800円!今なら更に低反発まくらをお付けします!」みたいなやつがありました。
これ、低反発まくらがメインで青汁がおまけの時もあって、余ってるんやろなーって感じがやばかったです。
たとえ在庫処理であろうと、低反発まくらも青汁も体に良いものであり、今のように暑い季節に丁度良いですね。

護送車からの脱出

ここまで荒木さん得意のヤクザとか犯罪者とかが出てこなかったのでひやひやしましたが、最後はちゃんと犯人が捕まります。
護送車がカードケース、護送車の警備員が色違いカード、犯人はフリーチョイスの2枚のカード。
この本でよく使われて来た技法がここでも使われていて、なんかこの技法で色々できるか考えてた感じなんだろうなというのがよくわかります。
本通して読むとそういうのわかっておもろいですね。
その技法はうまくやればカード移動にはなかなか強いので、この本に載ってる手順ちょこちょこ練習しながらうまくなりましょう。

付属のDVDには荒木さんによるこの本に収録されてるマジックの演技と、ほかのプロマジシャンによる技法解説。
ヒロサカイさんのマルチプルコントロールはとても良いです。

全体的に現象が足し算方向のマニアック路線で好みに合うものは少ないですが、効果に対してミニマムに解決するために使われてる技法は変わったものが多いので頭の片隅に置いておきたいものもありました。
片隅に置いてるものってすぐどっか行っちゃうので、そこらへんの頭の悪さをテクニカルに解決したいですね。

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