by jun | 2019/06/26


1989年に出版されたブラザー・ジョン・ハーマンの作品集 The Secrets of Brother John Hamman の日本語版。
書いてるのはリチャードカウフマンで日本語翻訳はTON・おのさかさん。

カードマジックのみ82作品収録されていて打率もかなり高いです。
大雑把に、カードをこうやってこう動かせばこうしたように見えるって感じのやつと、ギミックを使った変なビジュアルなやつと、スタック使った気持ち悪い不思議系のやつの3種類。
どれもゆっくり見せれるような手順ばかりで、ギミックの使い方も一捻りあってとても賢いです。
動機付けや演出がしっかりされていて、やってしまいがちな細かい注意点なども書かれてるので、不思議に見えポイントが掴みやすく演じてみたくなります。
まあ演出はかなり無理があったりカードを擬人化したようなものも多く個人的にはあんまハマらなかったりもしましたが、そういう手順はだいたい技法ありきだったりするので、使用例の一つとして見て原理部分を汲めば参考になるとこは多いです。
特に章立てはされてないけど、同じ技法を使った作品が連続してたりするので応用例は掴みやすいかなと。

あとサインドカードのあれとかもそうですけどなかなか大胆な手法を好む人で、それがいい感じに手数を稼げて誤魔化せるとこに置かれてたりするので、現象の割に作業がすっきりしています。
最も手短に現象を起こすには直接的で暴力的な技法を使うことですが、ハーマンの場合は平和な技法と流れの中で堂々と仕事をして、サトルティで説得力を持たせ、非常にフェアな状態の中で現象を示す手順を好んでいるようです。
その分状況や設定を説明する部分が長いので、かったるくならんように興味を惹く演技力が求められます。
設定自体がちょっと変わってるのも多いんで、マニアとまでは言わなくてもカードマジック好きな人に演じるにはそこまでハードル高くないはず。
ギミックとカウント使うパケットものが多いんでしょーってイメージ持ってる人こそ是非という感じです。

インスタント・ダブル・ターンオーバー (Instant Double and Triple Turnover Technique)

ブレイクしないダブル。
今の目で見ると指の位置とか動作とか色々と言いたいこともなくはないですが、ブレイク取らずにやる方法の中では比較的簡単で確実なので、リズムが大事な手順でカチカチしたりにゅってしたりしたくないという時には役に立ちます。

死のポーカーハンド (Dead-Man’s Hand)

赤と青のデックを使うポーカーの手順。
赤のデックから5枚のカードを青のデックに移し、その5枚を見せて赤は自分の手札に、青のデックはシャッフルして観客に5枚配ります。
観客の手札はフォーカードで、赤の手札はさっき見たのとは変わっててロイヤルフラッシュになります。

デックは2つ使う必要はなく、5枚足すところを見せればいいのでどっかに5枚だけ用意しておけば演技可能です。
裏の色違いですり替えとか不可能に見えるし、1フェイズで綺麗にひっくり返していておもろい。
手法的にもあまり使われることがないけど割と便利なもので、1枚ずつカード見せていくこの手順には合ってます。

ポケットに通うカード (Double-Deal Card to Pocket)

カウフマン「良いニュースと悪いニュースがある。良いニュースはパームを使わないこと、悪いニュースはパームを使った方が簡単かもしれないということ」

原題がチラッとネタバレしていますが、そこじゃなくて度胸と態度が試されるとこに肝があります。
非常に変わった解決法で、大胆ながら消失を綺麗に見せれるところがあり、綺麗に消えたってことは移動しててもおかしくねーって思わせればかなり不思議に見えるはず。

何と何処テスト (The What and Where Tests)

同じマークの5から9までの数字を使って、偶数と奇数に分けますが、偶数のカードがデックの中から表向きに出てきて偶数だと思われてた2枚は全く別のカードに変わります。

ジェネラルカードとかに使われるちょっと変なディスプレイを使うのですが、テストという設定によって変な見せ方をすることに意味が通るようになっています。
ちょっと見せるの難しそうですが、あのアイデアの使い方としては捻っていておもろい。

2枚のカードで (The Two-Card Trick)

AとQをテーブルに置き、どっちか好きな方を言ってもらいますが、どっちを言われても面白い変化が起きます。
まあどっちを言われても変化自体は同じなのですが、セリフは凝っててどっちもバッドエンドじゃありません。
超シンプルで2枚のカードをテーブルに置くだけだし、マニアが見てもあれってなる変化が起きます。

覗き見したカード (1 2 3 4 5 Peek Thought)

最初に観客にカードを選んでもらって、二番目の観客にハートのA、2、3、4、5の中から覚えてもらいます。
色々あってカードを当てるのですが、二人のカードの位置が入れ替わるおまけつき。

A〜5の中から覚えてもらうとこの動機がやや弱いのですが、セミオートマチックにわかりやすい入れ替わり現象がつけれるのは良いですね。
ちょっと変えればホフジンサーエースとかもできそうな感じす。

縮むケース (Deck in Parvo)

デックを箱から出すと、箱が小さくなってまして、小さな箱から大きなカードを取り出します。
楽しいやつですね。
テーブルかカバンがないとスタートさせるのがちょっと大変なやつですが、頑張ってでもやる価値あります。
小さい箱は調べてもらえるものが残るんで、予言のカードとか移動するカードとか入れといて思い出したように使うのも効果的じゃないでしょうか。

エースとデュース (Acey-Deucey)

2枚のカードを使った3段階のトランスポジション。
3段目は2枚とも別のカードに変わります。
1段だと短すぎるし、2段だとオチが弱いしみたいな感じでこういう感じになってますが、2段目の終わりがエンドクリーンなので全然そこで終わっても良いですね。
かなり綺麗な構成で、非ビジュアルなチェンジなのがまた味わい深いです。
表向きのセットもブラウエリバーサルも使わず、複数枚のカードをスイッチする方法としても覚えておいて損ないと思います。
手順としては、観客の選んだカード2枚でスタートできないのはやや重たい感じはありますが。

ツイスト第1番/第2番/最終章 (Brother Hamman’s First Twist /Second Twist /Final Twist)

ツイスティングエーセスで、基本的にはスペードA〜4を使い、数字の順番にひっくり返り、4のカードがハートの4になるオチが付きます。
2番はノーエキストラ解決、最終章は裏の色が全代わり。
2はノーエキストラと言ってもちょっとアレしないといけないからアレで、最終章はミニマムなのはいいんですがやはり説得力もそれなりという感じのバランス。

個人的には1番が好きで、エンドクリーンではないけどエンドクリーンと言って差し支えない見せ方ができるのが素敵。
しかしA〜4を使うツイスティングものがあんま好きじゃない。

鷹のように (Watch Me Like a Hawk)

絶対に盗み見できないようにカードを置きますが、カードを当ててしかもその場からカードがなくなってます。

スムーズにやるのがちょっと難しいパケットの扱いがありますが、どっかで盗み見ようとするという演出なので割と変な動きしても大丈夫ってのがおもろいですね。
んでカードが消えるわけだから後から考えても絶対不可能に見えるという、とてもよく出来てます。

サインしたカード (The Signed Card)

みんな大好きサインドカード。
星の数ほど改案が出てますが、原案の演じ方にも目を通しておくのがおすすめです。
このカードが何でこっちのカードが何という情報を明かすタイミングとか、あんまこの通りにやってる人見ないですし、原案の小出し感は結構おもろくて色々曖昧にできて良いと思うのですよね。

入れ替わり (Triple Cross)

赤のKの間に赤いカードを1枚、黒のKの間に黒いカードを1枚挟みますが、間のカードが入れ替わります。
3段になっていて、最後は2枚のカードと4枚のKに分かれるような移動をします。

カードの動きはとても面白いのですが、状況説明の段階で何でこっちは裏向きでこっちは表向きなんっていうところがあって、入れ替わった後の見せ方もそこのせいでちょっと綺麗じゃなくなってるのはたぶん誰でも思うはず。
特にそこについてセリフとかで補足されてないので演じるのはちょっとなーという感じです。
似たようなプロットでジョンバノンの魔女のやつとかはかなりシンプルになってましたね。

テーブルを通り抜けるK (Kings Through the Table)

4枚のKがテーブルを貫通して上に行ったり下に行ったりポケットに貫通したり楽しい手順です。
最後は4枚ともAに変わります。

コインスルーザテーブル的な現象ですがコインスルーザテーブル的なことはあんまりしません。
最後Aに変わるのもほとんどカードの技法だけで達成するのですが、コインスルーザテーブル的なアレをしてると思われそうなのはややもったいない感じしますね。
話的には最後にAに変わるのもそこまで無理なくて良いのですけど。

飛行する4 (Flight of Four)

思ってるよりめっちゃ飛行します。
箱の中とかデックの中に表向きとか、5回移動します。
もちろん5回はちゃんと構成されたもので、「同じカードいっぱい使ったらどうにでもなるやん」と思われないようになってます。
それは消えるところに説得力を持たせたり移動する先にはなかったことを軽く改めたり色々なのですが、ギャフの使い方としてもめちゃくちゃ面白く、ノーパームでこんだけできんのかと感心しました。

密室の怪演 (Sealed-Room Mystery)

封筒をテーブルに置いてから、絵札の中から殺人犯と被害者のカードを決めてもらいます。
被害者のカードがパケットから消えて封筒から出てきます。

ノーパームノーギミックワン封筒。
殺人犯がどうのという設定がこれほど活きてる手順もそうないんじゃないでしょうか。
めちゃくちゃ良く出来てると思います。

びっくり仰天 (Thunderstruck)

予言のカードハートのJがスペードの7に変わります。
変わるというか、ハートのJからスペードの4要素を引っぺがして7にします。
なんじゃこれっていう変化。

覗いて、見て、考えて (Peek Look Think)

タイトル通りの方法で、3人の観客にカードを覚えてもらいます。3人目は思うだけ。

やや作業感もありますが、3人に別の方法で覚えてもらうというのが効いてるし、思っただけのカードを当てる段階では不可能性を言えば作業や制限があっても不思議さを置いていけます。
セットも最小限だし実用的。

チャイニーズミラクル (The Chinese Miracle)

中国風のシャッフルというのをやりながら2枚のカード当てをしますが、当てた後デックがA〜Kまでのフォーオブアカインドで並んでます。
完全即席のオーダーエンド。

中国云々の話をどこまでリアルに話せるかが勝負ですね。
さすがにあの回数やればなんかやってたんだろうとは思われそう。
実際その回数で出来るのがおもろい原理なのですが、実演するとなるとかなり怖いです。
スプレッドカルを併用すればちょっとだけショートカットできるけど、最後の方は結構並んでるとこが見えるのでそこもなんか工夫が欲しいあたり。
無難なのはオーダーに戻せるけどバラバラに見えるスタックに留めておいて、ここはカード当てだけにしておくとかですかね。
それなら、この中にありますか、この中にありますか、みたいな感じでYESNO質問しながらアウトジョグしたカードを見せて当てるという演出でいけそう。

チャイニーズシャッフルでサイ・ステビンス (Chinese Shuffle to Si Stebbins Stack)

アウトジョグして抜き出して、アウトジョグして抜き出して、を6回やってサイステビンスを組む方法。スプレッドカルでも代用可。
サイステビンスの並びを別のに当てはめればいいだけなので、この解説読めばどんなスタックでも作れますが、規則性のないものだと覚えるのが大変です。
前にフレンチのメルマガでポンタさんがオーダーに並べる方法解説してましたね。

いろいろいじっくっていたら、6回のカルで赤黒も数字の順番もランダムなサイクリックスタックを作れるようになりました。
覚えることもそんなややこしくなく、観客の前では無理でも頑張れば1分半ぐらいでテーブルを使わずにセットできて便利。

3枚の予想 (Three Guesses)

選んだカードと同じ色、マーク、数字のカードだと思うのを3枚引いてもらいますが、バラバラです。
3枚をもう一度見ると選ばれたカードのフォーオブアカインドになってます。
マッチングカードの一種ですが、フォースを使わず、カードを特定するところとセットがリンクしていて賢いですね。
一旦膝カックンな演出入れるのも巧妙。

2つのポケット (Opposite Pockets)

1枚のカードはポケットに入れてもらい、もう1枚思い浮かべてもらいます。
ポケットに入れたカードを当て、思い浮かべたカードは演者のポケットから出てきます。

Think Card系の中ではこれ結構気に入ってます。
思ったカードには制限ありますが、ポケットとポケットという道具立てが綺麗かなと。
この作品はレギュラーデックしか使いませんが、ギャフ使えばもっと自由度は高まりますし、レギュラー解決でも状況によってのアレンジはいくつも考えられます。

マジックボックス (Magic Box)

4人の観客にカードを思い浮かべてもらい、その数字の分だけカードを配ってもらい、止めたところのカードを箱に入れます。
箱に入れた4枚のカードを見ると全部Kです。
さらに、4人の思い浮かべたカードが箱に移動します。

Think Cardの制限も謎の操作もとてもうまく取り込んで破綻してなくて超素敵です。
これもレギュラーでパームなし。

4つのポケット (Four-Pocket Mirror)

4人の観客にそれぞれカードを思い浮かべてもらい、そのカードをポケットに入れてもらいますが、そのカードのメイトカードを出して当てます。
これはスタック系で、「デックを見る前にすでに知っているカードを単に取り出したという印象を与える」と書かれてる通り瞬時にカードがわかりますが、観客にカードを抜き出してもらうところでは気付かれない巧妙な並びです。
複数の観客にカードを覚えさせるのも上手い。

わがままなカード (The Disobedient Cards)

観客にデックをシャッフルしてもらい、「わがままなカード」をデックから2枚抜き出します。
わがままなカードは輪を乱すカードであると説明し、裏向きでデックをバラバラに配ると、赤と黒に別れますが、わがままなカードだけは反対の色の場所にいます。

観客にシャッフルしてもらえるセパレート現象。
わがままなカードは本当に邪魔なカードなのですが、それを堂々と抜き出せる演出が見事。
途中の原理も面白いし、カードの配り方も簡単で超ランダムに見えます。

ファイナルシャッフル (The Final Shuffle)

これも赤黒セパレート。
ビジュアル的には微妙だけど原理は面白い系。
カード当てに使ったりすると楽しそう。
というかこれ系の原理使うやつ全部合わせて長大な手続きを経るカード当てをしたい欲。
あと、配る時に表向きのカードを裏向きにしておけば綺麗に示せるんじゃないかと思います。

トゥー・シャッフル・ハリー (Two-Shuffles Harry)

トライアンフの後に赤黒分かれる現象。
これをノーセットで行いますが、それっぽいストーリーの中で大胆にやってしまい、その後のコントロールまで一貫してその動きを活かしていて綺麗です。
まあ不自然ではありますが、うまくいってる時ならこういうのもありな空気ってあると思うのですよね。
めっちゃ頭とファローシャッフル使えば表向きでアウトジョグするのもできるかも。

厄介なカード (The Pesky Card)

トゥー・シャッフル・ハリーのセットバージョン。
ハンドリングも演出も軽くなっててこっちの方が好み。
トライアンフのハンドリングとしてもおもろいすね。

双子 (The Twins)

ジェミニカウントの紹介のような手順。
カード構成的に地味に見える変化かもしれませんが、あの示し方しかできないならあんまやりすぎもよくないかなーと思うしちょうど良さげです。
演出はこういうストーリーもの好きな人ならハマると思います。

ピノクル (The Pinochle Trick)

こっちは割と派手に変化を示すパケットトリック。
「2枚のスペードのQとダイヤのJを使います」みたいな始まり方がどうも好きになれません。
こういう普通のトランプでありえない組み合わせのカードでちゃんと広げて示せないのはかなりモヤっとします。
解説されてるゲームも、別にスペードとクラブのQでも問題ないからなー。
ただまあそこさえ飲み込めて飲み込ませればゲームの展開とから結構おもろいです。

マジック・カード (The Magic Cards)

3枚のカードを選んでもらい、色違いの3枚のカードを選んでもらったカードと重ねると、それぞれのフォーオブアカインドに変化する現象。

一連のカウント使うパケットものではこれが一番好きですね。
これに関しては別の場所からパケット持ってくるのがとても効いてます。

戻ってくるジャック (The Jacks Come Back)

ジャックを赤黒、赤黒という風に分けておきますが、黒黒に戻ってしまい、最後は4枚のAになってしまいます。
オイルアンドクイーンの全部変えバージョンみたいなやつ。

ならず者デュース (The Knavish Deuces)

オイルアンドクイーンとフォローザリーダーを合わせたような手嶋。
まあフォローザリーダーですね。
カウント使うことでトランスポジション的な見せ方もでき、1枚ずつ何のカードがどこにあったか混乱しまくる類のフォローザリーダーより見やすくて良いです。

ピンク・パンサー (Revenge of the Pink Panthers
)

がっつりお話がついたトリックです。
映画のRevenge of the Pink Panthersは邦題だとピンクパンサー4というやつですかが、特にそれとストーリー合わせてるってこともない感じ。
カードが人だったり銀行だったりして、これ上手いこと説明すんのは結構むずいと思います。
最後の変化とから意外性も高くクリーンなのですけど。

カンガルーカード(Kangaroo Card)

ビジター的な赤のKから黒のKに移動する現象。
選ばれたカードのフォーオブアカインドが表向きで現れるオマケ付き。
ビジターのあの最後のパケットが接近するあれ的なあれは明らかにハーマンはやらなそうだし、いかにもハーマン的な解決法です。
カウフマンが書いてるほどは大胆ということもなく、カードの裏表の使い方と3段構成の中でそれぞれの段階で誤魔化してるところをうまくズラしてる感じのうまさですね。

アンラッキー (Eight-Ball Queens)

5段階からなるモンテ手順。
どんどん打ちのめしていくパターンなので観客は選びますが、まあもうモンテというか変化してるし手品だしという雰囲気にもしやすいと思います。
段階が進むにつれてカウントのフェア度が下がるのはちょっとどうかなーって感じですが、ポケットへの移動とかも入るし説得力は保てるのでしょうかね。

色どり (New Hue)

カードボードカメレオン的な裏も表もコロコロ変わるパケットトリック。
「カードをポケットに入れてすぐに立ち去りましょう」
で解説が締められています。

ローラハローザ (The Lollapalooza Hand)

4人の観客に適当な4枚のカードを見せ覚えてもらい、それを裏向きにして置いておきます。
ポーカーハンドを配ると1箇所に観客が覚えたカードが集まっていて、観客が覚えたカードと思われている裏向きのカードはAになっています。

少し変わったスイッチを使うのですが、なんとなく覚えておくと使う場面もあるかもしれないぐらいのなんとも言えない感じの技法。
好きな枚数目に置きたい時に便利。
あとリバースにも使えますね。

目撃者 (False Witness)

観客が選んだカードをパームを使わずクリーンにカードケースに入れるのが最終目的で、着々と準備しつつ現象も起こしつつサトルティも張りつつという巧妙な手順です。
こういうの好きですね。
どんどん大胆になっていくけど、小さい現象の積み重ねで信じささていく感じ。

スリ (Pickpocket)

目撃者とはまた違ったアプローチのカードインケース。
パームを使わずにカードをケースに入れることを考えるのがハーマンの気晴らしだったそうで。
パーム使わずとなると手法は限定されますが、スリの場合はストーリーがミスディレクションになっていて、カードも予想外の動きをするので強いですね。

分身 (The Doppelganger Card)

こちらもケースへの移動です。
なんかハンドリングの好き嫌いもあるでしょーってことで複数解説してくださってるとのこと。
この方法が一番原始的って感じですが、そこに持っていくまでの手順やカードの選ばせ方が肝。
ちょっとメンタル風味なこともあって、消失を綺麗に示せるので手法を絞らせない感じが良いですね。
負担も物凄く低いですし、セルフワーキングでよくある操作の動機についても触れられています。

繁殖するK (The Multiplying Kings)

セレクトカードの要素があるイレブンカードトリック的なもの。
カード選んでもらって、それと4枚のKを使いますが、5枚のカードが増えたり減ったり同じカードになったりします。
最後は選んだカードが消えてデックの中から表向きで出てくるので、あの手の手順のオチ問題も綺麗に解決しています。

飛び移るカード (Thought Cards Across)

観客2名にそれぞれカードを思ってもらって、その2枚が別のパケットに飛び移ります。
まあマニアが見たらそれしかないだろって感じになるかもしれませんが、地味にズルくてハンドリング的な工夫をしないところとかがあって結構好きです。
肝のとこは細かいとこまで不自然のないように気を使われてるし、ギャフ扱うにあたっての精神もなんとなく読み取れるかと思います。

ビリー・ザ・キッド (Billy the Kid)

観客が枚数目で覚えたカードを、その枚数配った時に手で叩いて取ってもらうようにお願いしますが、そのカードは別の場所にあります。
早打ち対決演出を上手く活かしたカードの選ばせ方が秀逸ですね。
ちょっとこの本にしては難易度高い技法を使いますが、ほとんど負担なくできるようになってる構成も見事。

肝をつぶす! (Stun-Sational)

ミニカードを使った予言手品。
ミニカード4枚の中から1枚選んでもらって、予言のカードを見ると外れてますが、カードが分裂して3枚のミニカードになって、最初の4枚の中から選んでもらったカードは巨大化します。

いやー、面白いですね。
結構瞬間手品的なことだからか、フォースのとことかあっさりだけど普通にレギュラーデックとがっつり組み合わせても楽しそうです。
しかしあれですね、去年ぐらいに新しく出たバイシクルのミニデックって微妙にサイズが違っててこれ的なの作るの難しくなったのですよね…

ミクロ・マクロ (Micro-Macro)

代表作の一つ。
カードがでっかくなったり小さくなったり。
一応言っとくとデミニッシングリターンズとは違うものです。
レギュラー版とギミック版が解説されてますけど、これはギミック版でしょうね。
ギミックが処理された状態で終われるし、圧倒的ビジュアルがやばいです。
レギュラー版もうまーく錯覚させるような見せ方で面白いですけどね。
いきなりやられたら普通にビビると思います。

見えなくなるカード (The Invisible Card)

5枚の中から4枚目のカードを覚えてもらいますが、テーブルに広げると4枚しかなく観客の覚えたカードが消えてまた出てきます。
消失の見せ方が良いですね。
こういうあるはずなのにないという見せ方はなんか良い感じの気色悪さがあって、消した物を出すな感もなくなる気がします。

フーディニー (Houdini Escapes)

現象は上と同じですが、消えてカードがデックの中から表向きで出てきます。
現象的にはビドルトリック風で手法は違いますが、まあビドルトリックの方が色々と良いかなーという印象です。
やはり5枚の中から4枚目を覚えてっていうのがちょっとしんどい。

指先の目 (Seeing with the Fingertips)

上2つと同じような感じですが、覚えるカードが2枚で、トランスポジション要素が入ります。
デビリッシュミラクル感がありますが、デビリッシュミラクルの改案として解説されてるのは下の「悪魔の杖」。
こっちはその技法そういう使い方もできんのかーという感じが強く、現象としてはやや混乱しそうな気がします。

悪魔の杖 (A Devilish Miracle Retold)

デビリッシュミラクルのハーマン流改案。
ビドルトリック的なやり方じゃなく、この近辺で使われてる同じ技法を使って解決しています。
これがスイッチとしての技法としては優れてるのですが、リバース機能はないためそこで一手増えるのが好み分かれるところかなと。
デックは左手に持ったままいられるので持ち替えのイライラはありませんが、スイッチしたと同時にひっくり返った状態になってることに歓喜するマニアの皆さんからするとやはり少し物足りなさは感じるでしょうね。

透明のカード (The Transparent Cards)

透明のカードは消えたのではなくて、カードが透明になっただけなのである、だから弾くと音が聞こえるのである、みたいな現象です。
この筋に合わせた出現のさせ方も面白いですね。

シャーロックホームズの冒険 (The Adventure of the Spotted Seven)

移動現象とメンタル的なカード当てを含む変なサンドイッチカード。
かなりがっつりとホームズとワトソンのストーリーがついてます。

飛び跳ねるジャック (Skipping Jacks)

4枚のジャックがパケット感を飛び回り、1枚はケースの下に移動します。
核はディスプレイ系の技法なので移動系の手品がまずパッと思いつくあたりでしょうが、このなんでもどこにでも移動させられる状況でやりすぎないあたりが良いですね。
やっぱり手品ってそこらへんのさじ加減が超大事な気がします。

フラッシュポーカー (Flash Poker)

ワンペア、強いワンペア、スリーカード、フルハウス、ロイヤルフラッシュとポーカーハンドを変化させる手品。
表向きセットが必要なようで実はいらなくて、最後に表向きのゴミも残りません。
同じ動きを4回繰り返しますが、微妙に結果が異なるのが面白いです。
ただまあ5枚の手札が徐々に変化するわけではなく、役の部分だけを見せるパートがあるのはちょっと辛い。
カット操作なしってのも利点ですが、1回ぐらいカットしてもいいからそういう見せ方のも考えてみたいところ。

下駄を履くまで (Spectator Outdeals Magician… Almost)

演者と観客でシャッフルし、かつ観客にも配ってもらえるポーカーデモンストレーション。
2段になっててしっかりした手順で、準備もそんなに大変じゃないという嬉しい感じです。
公平感はかなりあるんじゃないでしょうか。

ポーカー・パーム・シフト (The Poker Palm Shift)

5枚のポーカーハンドが3回変化します。
変化と言ってもドローポーカー形式でカードを1枚ずつ入れ替えていくだけなのに、その前からは考えられない役になる感じ。
ワンペア、フルハウスと来て、Aのファイブカードという謎手札を見せてからロイヤルフラッシュというオチ。
途中でカウントでしか示せなかったりあり得ない手札が見えるのがちょっとって感じもしますが、後にクリーンにロイヤルフラッシュを示せますのでそんなに嫌な感じもなかったりします。

マジシャン対ギャンブラー (Magician Versus Gambler)

上のポーカーパームシフトの10カードポーカーディール版かつギミック解決版。
カウントがなくなってにゅるんとカードを示せるようになりました。
手順上ギミックの処理もスムーズにできて、怪しさなく変化させていけますし、10カードポーカーディールの面白みもあります。

袖を昇降するカード (Up the Down Sleeve)

カードアップザスリーブでポケットにカードが移動したり出てきたりします。
原理だけ聞くとへーーって感じですが、「見えないカード」を使う演出が面白く、いい感じでカバーになってます。
それなりの演技力は必要になってきますが、こういうので騙せたら楽しそうって感じの手順ですね。

金魚釣り (Go Fish)

なんかカードを覚えてもらって、観客にストップしてもらったとこからそれを出そうとするも失敗。それを3回繰り返して失敗したカードを覚えてもらいます。
なんやかんやで3枚のカードが当たり、最初に覚えてもらったカードのフォーオブアカインドに変化します。

ストーリーもハンドリングも微妙な手順です。
ほぼ最初から最後までその動きはなんだっていう感じで、なんかよーわからんのに4枚もカード覚えないといけないのもなかなか辛いと思います。

当てずっぽう (Blind Chance)

変なカード当てです。
4枚のカードを覚えてもらってから表と裏で混ぜ、スプレッドして観客に一人ずつ表の中にカードがないかどうか確認し、裏向きの中から次々と当てていきます。

ザ・セルフワーキングな原理の組み合わせですが、かなり変則的で不思議です。
まあ表と裏が揃ったりしないので物足りない感は否めませんが、裏表混ぜたところを見せれるトライアンフ的なことを頑張ってオチにしてもいいかもしれません。

上がってくるクリーム (Cream Rises to the Top)

カードを4人に選んでもらってから、表と裏で混ぜ合わせると4枚を除いて向きが揃いますが、4枚は全部Aで、そっからなんやかんやあってマジシャンvsギャンブラー的な感じで4枚のカードが当たります。

好みもあると思いますが、トライアンフ現象の後に色々ありすぎてさすがにどうかという気がします。
最初のAを単純なリバースで出現させて、後半をトライアンフにしたらかなり好きな構成なのですが。

エクセスとジャクセス (The Axes and the Jaxes)

イケてるAとJの8枚出しから始まるトランスポジション。
The Underground Transpositionの後に考案されたもののようですが、こちらが先に収録されています。
これはトランスポジションというよりフォローザリーダー感強めで、プロダクションから入るどさくさで一仕事するのでパケットを接近させて数えるところがないのが面白いところ。

秘密の交流 (The Underground Transposition)

AとJのトランスポジション。
移動する度に両方のパケットを示して途中経過を確認できます。
ポールハリスのリセットはいちいち両方のパケットを示さないところがクレバーだったりしますが、入れ替わってるーーを見せるなら両方見せるのが筋な気もするし、フォローザリーダー的な後半で実際にカードを入れ替えてエンドクリーンにしてるのも上手いなって感じします。

フェニックス (Phoenix Four)

4枚のカードをスペリングで当てる手品。
ちょっと日本語だと厳しいやつですが、複数枚のカードを特定の枚数目にコントロールする方法が学べます。
これはまあまあ直接的ですが、スペリング以外でも色んな演出が考えられる手法です。

ホーミング・カード (The Homing Card)

パケットの中から捨てたカードが何回も戻ってくる方のホーミングカード。
これはハーマンの好きな技法で作られた感が強いのでかなり好みが分かれそう。
個人的には結構くどいなという印象でした。
技量にもよるんだと思いますけど、重ねれば説得力が上がるだけじゃなく不自然さも見えるような気がします。
あと5枚同じカードに見せるとこはこのプロットには合わないと思いますね。

消える印刷 (Out of Print)

ほぼ最小限の準備で、裏も表も真っ白にしてしまう手順です。
本当に最小限にしようとすると無駄な動きが増えるのでほぼ最小限。
普通のデックであるところからスタートするパターンの場合は手軽さより説得力重視型がいいと思ってるので、この方法も好みでした。

ユニバーサル・カード (Universal Card)

裏の色が違うカードを使うユニバーサルカード。
ギャフ使用で同時に2枚のカードを示しますが、色違いカードの設定によって「ただ同じカードを複数枚使ってる」という風に見えないのがおもろいですね。
ギャフの組み合わせ方もとても参考になります。

ミスティック・ナイン (The Mystic Nine)

レギュラーデックの黒と赤のスポットを使って行うワイルドカード。
ハーマンの代表的な技法の一つはこの手順で使われるだしたらしいです。へー。

フェイクド・デック (The Faked Deck)

ギャフカードの使い方について大事なことが書かれています。
一概に言えないことではありますが、ここに書かれてることを頭に、この手順はこういう理由があるからこうするってことを考えた方が良さそうです。

幸運な選択 (Four-Tunate Choice)

4枚の4の中から2枚選んでもらって、その裏の色を変え、残りの4はJに変わっています。
ちょっと色んなとこに気を使いすぎてる感が出ないようにするのが大変な手順ですが、畳み掛けてエンドクリーン感を出すノリは嫌いじゃないです。
まあ似た系統のなら「2枚のカードで」はちゃんとエンドクリーンだからそっちを演じると思いますけども、パケットだけであることのある種のフェアさというのも魅力ではありますね。

ジャックとデュース (Haldeucination)

2枚の赤のJを黒のJに変化させ、実はカードを4枚使ってることを明かして4枚の2に変化させます。
コインだと音もあるからこの手のプロットが面白く感じるけど、カードだと普通に隠せそうというのもあってやや落ちますね。
ギミック作るのが大変すぎるのと、加工する意味がよくわからない箇所があって謎。

結晶するA (The Amorphous Ace)

4枚の中に1枚だけAがあります。
ここからAがひっくり返ったり上に上がってきたりカラーチェンジしたり4枚ともAになったりします。
ギャフパワー全開でとても楽しい手順ですね。
そういえばこの本にはアレの作り方が載ってるのでマニアがあっとならないための組み合わせにすれば結構行けそうな気がします。

ワイルド・カードの道 (Wild All the Way)

色々と壮大なワイルドカード手順。
これもパケットケースなど出すことなくレギュラーデック風に行います。
今までここで使われてるギミック作ったことなかったけど試しに作ってみたら結構行けそうな感じありますね。
この威力が発揮されるのは2段目のQを1枚ずつ置いたはずの4枚が全部9になってしまうとこなんですが、そこは本当に不思議。
一瞬Qが8枚に見えるとことかあってもやってした直後にこれなのでめちゃくちゃ気持ちいいです。

ファイナル・エーセス (Final Aces)

マクドナルドじゃないギャフを使ったアセンブリ。
これもかなり不思議です。
マクドナルドよりマスターパケットに関係ない3枚を置いた説得力が強いし、消したり出したり便利だし、このプロットの中では自然なディスプレイの範囲なので割と最強の部類だと思います。

マルクス兄弟 (The Marx Brothers)

3枚のJが観客の3枚とも選んだカードに変化して、というのを3人のカードでやりますが、最後はそれぞれのカードになり、なんかAに変わったように見えたりJが別のとこから出てきたりちょっと説明し辛い手順です。
たぶん盛り込みすぎてると思います。
基本的にはこのカードだと思ってたらこのカードだったという繰り返しなのでAが出てきてもあんま意外じゃない気がするしなんでもあり感が出すぎて意味はあんまり通らないと思うのですね。
こういう並びでこうやったらこうなるってのは気持ちいいもんではあるんですが、なんか辛すぎて味がよくわからないカレーみたいな、そういう余韻。

プレイボーイ (Ladies’ Man)

観客に好きなカードを言ってもらって、そのカードのフォーオブアカインドを全部出して、テーブルに裏向きに置きます。
他の観客に1枚カードを選んでもらって、その裏に電話番号を書いてもらいますが、テーブルに置いてあったカードが2人目のカードのフォーオブアカインドになり、最初の観客の選んだカードの裏面に電話番号が書いてあります。
書いてもらうのが電話番号なのはまだ電話番号も知らなそうなカップルにマジック後交換してもらえるという余計なお世話演出で、別になんでも構いませんが電話番号であることがトリックのちょっとした鍵になってはいます。

サインの不思議な移動がレギュラーデックで出来て、カードの入れ替わりからそれが起こるのでなかなか良い感じの盛り上げです。
サインドカードのあれが嫌いな人はこれも読んでみると意外とはまるかもしれません。
あれとは別の面白みと意外性があって良い手順だと思います。

仲良しメイト (Mixed-Up Mates)

スペードのA〜4、ハートのA〜4を使って、順番入れ替えたり色々しますが、同じ順番になったり隣あったりします。

オイルアンドウォーターとかフォローザリーダーの縛りきつい版みたいなもんですが、割とパケット内の技法なんでも応用できる手品ですね。
オイルアンドウォーターもフルデック落ちがあることだし、メイティングルーティンの繋ぎに使うと面白いかもしれません。

5人の王様たち (Five Kings Royal)

5枚のダイヤのKという変わった手札が、スペードのロイヤルフラッシュに変わります。
5枚に見せるとこが面白い手法で、表向きに持つ、裏向きにして置く、その下にダイヤのKがある、みたいな見せ方なので、次々ダイヤのKが現れる感がすごいです。
ちょっといじればビジュアルな変化もいけそう。

古典 (The Old Classic)

レギュラーデックのアセンブリ。
トラベラー的な移動現象もついてます。
ここまで使われてきた技法がたっぷり出てくるおさらいのような手順。
好みで出来すぎていて、たぶんこの手順を最高だと思うのはハーマン以外にはいないんじゃないかと思いますが、要所の手法は変わってるのでアセンブリ好きには参考になるはずです。
トラベラー部分の最後の1枚問題の解決も、アセンブリから繋げてることもあってなかなか良い感じだと思います。

大きくなるファン (Fan-to-See)

ファンが大きくなります。
思ってるより大きくなります。
ちょっと取り出し方に工夫がいるギミックで、どうにか箱の中から出してこれできんかなーという感じではあります。

はい。
個人的ベスト10はこんな感じです。

2枚のカードで
縮むケース
飛行する4
マジックボックス
2つのポケット
密室の怪演
肝をつぶす!
ワイルドカードの道
ファイナルエーセス
5人の王様たち

今あらためて読むとスタック系が特に面白かったですね。
既存のスタックではなくその手順専用の並びで、解説用の作品としてはあまり評価されないかもしれませんし面倒くさいなーとは思うんですけど、マニアを引っ掛けるのには比較的楽な部類だと思います。
全体的に指の筋繊維がちぎれるような動きはないし、指が疲れた時にしっとり読むのがおすすめです。

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