by jun | 2025/02/23

2008年に出た本で、タマリッツが実際にラジオ番組で演じた手品が収録されています。

ラジオ用手品ということでマジシャンは一切オブジェクトに触れず、指示をして観客にそれを実行させることで不思議なことを起こします。カードで言うと、こうやって配って好きなようにカットして…みたいなあれです。
本の最初にVerbal Magicを定義する21の項目が書かれていて、例えば「トランプやコインなど一般的なものを使うこと」「操作は簡単なものであること」「トリックの最後に観客が手順を思い出せない」「再現できる痕跡を残さない」などなど。
さすがに全てのトリックで全ての項目を満たしているようには感じませんでしたが、この手の手品を演じるにあたってのポイントがよくまとめられています。
また、痕跡を残さないとか思い出せない云々は必ずしも良いことではありません。実生活の人間関係でも覚えてほしいことだけ記憶に残して他は忘れてもらうのが一番良いわけですが、この本の手順ではやや複雑さで誤魔化しているところはあるものの観客が自由にやったことやランダムな要素が記憶に残り、他の手続きは思い出しにくくなっています。セリフもタマリッツが実際に使ってるものが書かれているので、全体を通してタマリッツの理論の学びになるところもあるかと思います。

ラジオ以外で演じる場合、複数の観客に同じことをやってもらい全員に不思議が起こる見せ方ができるのですが、途中途中では全員別の過程をたどっていることも強調でき、セルフワーキングや観客が操作する手品の課題である「どうやってもそうなる」感を誤魔化す工夫が多く見れたのも面白いところでした。

演者が手を触れないからこそ普通のセルフワーキング手品より演じる難易度は格段に高く、セットにあたる部分すら観客にやってもらう必要があり、そこに適切な演出もつけなければなりません。タマリッツ以外の多くのマジシャンがこれを説得力を持って演じるのは相当難しいと思いますが、30以上の手順でバリエーションに富んだ演出例が示されているので大変勉強になりました。洒落ていて後味が良いプレゼンテーションなのでこういうの演じられたらかっこいいなと思えるものも多いです。
例えば”The Human Condition”は原理的にそうなるだけで現象とも言えないものを演出とVerbal Magicならではの見せ方で手品にしています。
これが収録されているカードのチャプターでは似たような手続きを取るものが多いのですが、逆に演出のアイデアの幅の広さに感心しました。
中でもおすすめなのが”Wisdom”と”Happiness”で、原理もプレゼンテーションも素晴らしいです。一見本筋と関係なさそうなちょっとしたセリフがいい味出してます。

この本は文章の通りに手を動かせば読者も不思議を体験できる本なので詳しく現象は書きませんが、コインを使う”Heads Up”、4枚のAが出てくる”Four Aces”、コミカルな演出が楽しい”The Interfering Joker”、産まれた年のカードを使う”The Best Year to be Born”あたりが気に入りました。

あと、カードアクロスでよく使われる原理を観客の手でやってもらう”Card to Pocket”など、実演するのは怖いけどチャレンジングなアイデアも面白かったです。
最後の章ではVerbal Magicで使える数理的原理がいくつか紹介されており、ラモンリオボーのフォースのアイデアなんかも含まれていていました。ここは特に普通にセルフワーキング好きな人が読んでも勉強になると思います。

とにもかくにもそのまま演じるのが難しい手品なので、単純にレパートリーを増やしたいという人にはおすすめできません。演じることさえできれば特殊な環境で変わった手品が出来るようになり強くなれます。手品をできるシチュエーションを増やせるって良いですね。
セルフワーキングとして普通に演じるのも難しいですが数理的原理や演出などは本当に参考になります。
観客の手の中で現象を起こすという事をしたければガスタフェローのHands Off My Noteとかがおすすめです。

Sponsored Link

Comments

No comments yet...

Leave a Reply

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です