by jun | 2022/01/30

2021年冬のマジックマーケットにて販売されたムナカタ・ヒロシさんの作品集です。
著者が前の年に出した52Hzにもメンタルマジックを取り扱ったチャプターがあったり、全編にわたってメンタル的な要素、特にエキボックや観客に自由を感じさせる手法に目を見張るものがあって、今回メンタルに特化した一冊というところで期待高まっておりましたが予想以上の面白さでした。
メンタルと聞いて怯む人もいるかもしんないですけど実演怖い系のやつはないのでビビらなくても大丈夫です。
むしろ手続きだけを見れば手品らしい手品と言えるもので、それらをいかにメンタルマジックにするかという内容なので広い層におすすめできる一冊になってます。
動作やセリフの意図が明確な解説から、観客にどう見えてどう面白いかも文章でよくわかるため、演じてみたくなるようなものばかりでした。
また、この本のあとがきは「アマチュアマジシャンがメンタルマジックを演じることについて」のコラムになっていて、その難しさを伝えつつも方向性は示してくれるとても良い文章になってます。
その訓練として本書の手順が適してるというのもその通りで、手法にも演出にも説得力があるから演技に幅を持たせやすく、メンタル的な演技によってこそ効果を発揮するバランスの手順なので、自分らしい演技についても考えやすいです。
まあ読んだら面白いタイプの本ですよ。1つの手順の中に面白いところが何個あるんやという勢いなので、特に気にいったポイントについて紹介しようと思います。

‘TEMAKI’ Mind Reading

カード当てです。
たった6枚のカードしか使わないミニマルな手順ですが、当てるパートがとてもかっこよく、マインドをリードしてることの説得力も強いので当てられた観客は特にドキッとするでしょうし、このトリックの構造が持つ盛り上がり感についての解説は興味深く納得できるものでした。
こういう「リアルだからリアル」みたいな要素は手品の演技に相性がいいものではあるものの、なかなか上手く取り込むのは難しいです。この手順では6枚しか使わないことと、限定された情報からどうカードを特定して示すかという見せ方が上手くハマっていて、どんなシチュエーションでも空気を持っていける仕組みになってるんじゃないかと思います。

The Triumphant Poker

観客と演者のポーカーの手札が予言されている手順。
どちらの手札も観客の選択によって決められるものですが、10カードポーカーディール的なあれではなく別の手続きを行います。
手続きの中でカードを裏表に混ぜるところがあって、この混ぜる理由を「面白くするため」と観客に説明できるのがこの手順の素晴らしいところです。
これは観客に自由を感じてもらうために必要な手続きなので手品としての面白さももちろんあるんですけど、カードを選択する観客にも表向きのカードを選ぶ権利があったり、その場に応じて演者がセリフを言ったり状況を面白くする機能がちゃんとある。
この裏表混ぜるところはVigilとかRedfordとかMurrayあたりのメンタル系マジシャンも使ってる手法ですが、手続きの意味を持たせてる例は珍しいんじゃないでしょうか。

37 + 1

演者と観客が1枚ずつカードを選んで行うハイカードバトルの結果が予言されています。
少しずつ枚数を減らしてお互いのカードを観客が決め、その過程までも全て予言されてるという見せ方で、まずもってこの現象の示し方がとても魅力的。
観客の自由度はとても高く、この現象と演出だから使えるセリフになってるところは超賢い。
52Hzでもそうだったけどバッドエンドの処理がお見事で、マルチエンドの手順でこんだけ細部の隅まで考えられていて穴がないのは感動しますね。
テクニカルな部分もこの著者らしいこだわりがあり、技法のみならずそれをどう意識させないかという工夫もあって本当に隙がない一作です。

O.M.O Force

複数のメモ紙の中から選ばれるものを予言できます。
紙に書いてばら撒いて観客が選ぶというシンプルな手続きの中にメンタルマジックで使われる手法がてんこ盛りで、それぞれがそれぞれの大胆さを上手いこと和らげてる感じが小気味良いです。
古典的な原理にアイデアを混ぜて新しく面白くするというのは今の時代の手品創作の基本なので、そういう意味でもめちゃ勉強になりました。
メモを使うので色々応用ができそうで、追加アイデアの腕時計の手品もとても良かったです。

Sponsored Link

Comments

No comments yet...

Leave a Reply

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です