by jun | 2019/11/12

1977年に出たファローシャッフルに関する本。
Lybrary.comに電子版あります。
電子版は文字の解像度がかっさかさで、文字選択も微妙に狂うがっかり仕様です。


内容は前半数学的な解説で後半手順みたいな感じで、数学の話は二進数を交えてファローの原理を解説するのが中心。
何回ファローしたらこのカードが何枚目にいくとかそこらへんの話で知っておいて損はない知識ですが、実践的にどうかというとそれは別の話だったりします。
テーブルファローでインとアウトを使い分けられるぐらいならデモンストレーションとしてもシークレットなコントロールとしても良い物になりそうですけども、ただ好きな枚数目に移動させたいだけならだいたいはカット、ファロー、カットぐらいの手数で数えてる印象なく済みますからね。
カットとファローを使った枚数のコントロールの話も出てくるものの、この本では枚数を数える方法が一つも解説されていなくてファローチェックすら出てこないので観客の前で出来るようなものではありません。
原理の数学的な解説は直接的な役の立ち方より、新たな法則に気付いたり変種を考えたりするのには近道だと思います。

実践的でないのは一部解説されてるテクニックもそうで、例えば”Placement For Thirds”はトップから13枚目までのカードを3枚置き(1枚目、4枚目、7枚目…)にスタックする技法なのですが、ファローの動きが特殊すぎてこれもどうしたもんかという感じです。
それを利用したマルチメンタルセレクションの手順とかも成立はしていますが、別にこれじゃなくてもなーと思いました。
1、5、9…は簡単にできるので、現象だけ見ると3枚置きである必然性はありません。
「ファローしたのに3枚置きだ…と…?」と思ってくれる人もいるかもしれませんが、マニアでもそこ拾ってくれるかどうかは微妙なんで積極的に3枚置きであることをアピールする過剰説明台詞マンになる姿勢が求められます。

あまり有名でない原理で使い所がありそうなのは”The Principle of Internal Shuffling”という複数枚のカードの場所だけ入れ替わるというシャッフルの仕方。
アウトファローで2枚の位置が入れ替わるだけのやつは有名ですが、10枚とかだとポーカー系、8枚だと2種類のフォーオブアカインド等なんかの位置を把握できるし、ざっくりしたフォースにも使えそう。
シャッフル後の位置関係も良い感じなので普通に使いやすいと思います。
普通に1回シャッフルするだけだと、アンチファロー状態からパーフェクトやるのと変わらんので、観客にシャッフルするからどうか選択させたりするようにするとこの原理ならではの良さが出そうです。

他の手順はペネロペ祭りで、エニーナンバー、メイト一致、サンドイッチなど、同じ原理を別の現象に仕立てています。
エニーナンバーの手順”Cut Coincidence”はよくある同原理を使った手順とはあれする順番とあれの位置が違って、見え方もちょっと変わってくる感じです。
キーカードやクリンプも必要ないので完全即興に適しています。

メイト一致の”More Power Of Thought”は破壊系の手順なのでルーティンでは繋げることができませんが、これをケツに持ってくるような使い方はできます。
まあ普通に1デックでメイトが揃うPower Of Thoughtをやってこれという流れでも良さそう。
メイトの手順いくつかでもストックがあるとなんかにくっつけることは出来ます。
あーあの人のあれとかは破壊された状態からでもちょっと頑張れば行けるので普通に良いかもしれません。

手順で一番良かったのは”Double Coincidence”というこれもメイト一致の現象。
まず観客が選んだカードのメイトが同じ位置から出てきて、さらに配っていくと同じ数字の残り二枚も同じ位置から出てきます。
他のカードは全てバラバラであることを見せれて、フォオーブアカインドが揃う綺麗な手順です。
原理的にもおーって感じがありますし、他をバラバラに見せる一工夫もありなかなか巧妙で、現象終了後ちょっとあれすれば某スタックに戻せるので便利でもあります。
ちなみにこの作品は手順の中でファローシャッフルする必要がありません。

ファローシャッフルについてはExpert Card Technicとエルムズレイ本の該当箇所にも数学的解説があり、コントロールについてはマルローのFaro Noteに詳しくありますので、今となってはこの本の立ち位置は微妙だったりするのですが、なんかちょっとどうにかすればもうちょっとどうにかなりそうぐらいの話がポロポロあって、割と見逃せない感じでもあります。
しかし原理自体が面白いからといってそれを使ったマジックが面白くなるかというとそんなことはないの大変悲しいですね。
デニスベア、ウッディアラゴン、ルイスオテロ、ジェイソンラダニーあたりはそこらへんを上手いことやってて、なんかまだ開拓の余地がありそうなとこだとは思うんですけども。

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