by jun | 2019/12/31

画像はうちにある今年発売された手品の本とかDVDとかです。Rune’s Worldだけ初版2010年の本ですが再販記念ということで。
あまり新しいのを追って買うほうではないのですけども、マジックマーケットに行ったこともあって今年は結構買ってました。
ダウンロードコンテンツを含めると40ぐらいでしょうか。
これが多いのか少ないのかはわかりませんが、こないだマジックはじめて半年ぐらいの若者と話してる時に新しいマジックでオススメありますかと聞かれて「マジックっていうのは、いや、マジックに限らんな。別に新しいからって必ずしも良いってもんやないんやな。今のマジックも古典の延長なわけで、新作の良さっていうのはだいたい古典にあるものやったりするんや。もちろん新しいものに惹かれるのもわかるし、新しいマジックで正当に進化してるもの、全く新しいものもある。だから古いとか新しいとかより、何をしたいかやな。特にそれがなくて知識を増やしたいんやったら新しさは一旦置いて古典を知っといて損はないんとちゃうかな。古典を知っとくと今のマジックの凄さもよりわかるようになるし、古典見てるとこれがそんな昔のマジックなんかってのもある。あんまり知られてないものあってそれ探すのも楽しい。だからそう古典、古典なんやな」とか言ってたやつの量ではない気がします。お前が古典学べよっていう。
ここで話が終わったら語る資格のないやつが知りもしない古典についてダラダラ話しただけで滅ぶべき老害という感じがやばいので、滅びゆく前に以下のような作品をいくつかおすすめしておきました。
順不同で10個、完全に好みで選んでますが比較的万人に勧められるものが並んだ気がします。

Paul Vigil Live Act

去年はデニスベアのMagic on Tapを、今年はこれを見まくりました。
お噂はちょっと聞いたことありましたがここまで凄いとは思っておりませんで、その圧倒的なパフォーマンスに衝撃を受けた次第です。
もう出てきた瞬間から椅子に座るまでの佇まいでなんかこの人凄いって感じがしました。
別に奇抜な格好をしてるわけでもなく、やってる事自体はクラシック、手法も一つ一つを取り出せば新しいことをしてるわけでもないのに、死ぬほど練られた構成の手順を異常なレベルの演技力とテクニックで見事に演じられています。
何回見ても良い。
これについては以前詳しく書いた気がするのでこの辺にしておきます。

レビュー – Penguin Live : Paul Vigil LIVE ACT

BLAVE (Kimoon Do)

韓国のマジシャン、ドキムーンによるDVDです。
全体的に難しくない怪しくない角度に強いビジュアルなマジックという感じで、昨今のハイレベルなマジックについていけなくなった身からしても嬉しい内容でした。
安定して見せられるのにビジュアルさは全く損なっていないのが凄いです。
ビジュアルなもの以外でも、ビドルトリックのバリエーションなどこれがベストではないかという演じ方をしていて、見所しかない一本。

レビュー – BLAVE by Kimoon Do

Plots & Methods (Michal Kociolek)

今年は大作も多く出ましたが、これはとても小さな作品集です。
そしてとてつもなく濃いです。
現象や技法の引っ張り方と組み合わせ、プレゼンテーション、手法を感じさせないサトルティ、全てにセンスを感じました。
松田道弘先生がよく、手品は一箇所穴を塞ぐと別の場所の穴が広がるというような事を書いておられますが、この人は全部の穴を同時に塞ぎながら決してそれを作業と思わせず、なんなら楽しくなってたりより不思議に見える要素まで足してしまいます。
読み進めるごとにうんうん唸らされました。
ノーマークだったこともあり、読むうちにどんどん興奮していった覚えがあります。

レビュー – Plots & Methods by Michal Kociolek

Apocalyptic Sounds (TAKAHIRO)

コインマジックに限らず、手品に通じた人が見て何をしたかわかるような瞬間は少ない方が良いです。
見る人が見てわかるものですから、誰が見ても何かを感じてしまうもので不思議さを損なってしまう恐れがあります。
TAKAHIROさんのマジックにはそれがありません。もちろん何かはしてるわけですが、演出、道具、音、使えるものは最大限に使ってやってることも現象もとてもシンプル、その結果巧妙に全てが隠蔽されています。
なんと言ってもイマジネーションを喚起するような現象がめちゃくちゃ良いです。ハンギングコインがこうなるかという、でもコンセプトを突き詰めると元からこうなんじゃないかと思わされるような完成度。
コンスタントにこのレベルの作品を出されてる方ですが、個人的には今作がベスト級に好きでした。

レビュー – Apocalyptic Sounds by TAKAHIRO

Seeds & Gimmicks (こざわまさゆき)

こざわまさゆきさんの新刊で、自らの創作論を惜しげも無く語っていることからも集大成的な一冊であることがわかります。
理屈だけでなく、それぞれの作品の面白さで実証していてかっこいいです。
最近本を読んでないけど何かという人にはこの一冊を勧めます。
読みながら賢くて面白いのがわかるので、自分が演じてもめちゃくちゃ良い感じになるのではという感じがします。
ババ抜きは本当に今読んでおいた方が良いです。
この本は著者より頂いてしまいました。
重ね重ね、素敵な本とお心遣いに御礼申し上げます。

レビュー – Seeds & Gimmicks by こざわまさゆき

The Code (Fenik)

Fenikさんは映像作品で見ていたビジュアルな現象のイメージが強かったのですが、初公開となるセミオート系の手順にとても良いものが多かったです。
もちろんビジュアルやキッカーエンドの手順も良くて、映像で見てたやつも本で読むことによって狙いもわかりやすくなっていたように思います。
あんまりチャカチャカしすぎず現象をいちいち飲み込ませられて意外性は残す感じ。
人に見せたり練習してるものの数ではこれが一番でした。一生のレパートリーになりそうなのものもあり大変満足しております。

レビュー – The Code by Fenik

Pure Imagination (Scott Robinson)

ひたすら凄かったですねスコットロビンソン。
なんとなく手法だけが先行してる人というイメージがあったのですが、演出もそれをカバーにしたサトルティも心底素晴らしかったです。
カードもコインも恐ろしいクウォリティでした。
多くが30年前に発表されてたものというのが未だに信じられないぐらい斬新で、まあ不勉強を認識させられた一冊でもありましたね。
来年こそはTrapdoorを読むぞーとちょっと思いましたが、何年かはこれ一冊で遊べそうな量あるのでどうしたもんでしょうか。
造本は今年ベストっていうかこんな本見たことないよっていうレベル。

レビュー – Scott Robinson’s Pure Imagination

すごいぞ!!ゴリラ (万博)

新技法ゴリラムーブとそれを使った3手順が解説されている冊子です。
今年一笑いました。何度読み返しても、来るとわかってるのにゴリラムーブでブホッてなります。
手順も非常に良くできていて、立って行うことしか出来ないのでシチュエーションは選びますが、不思議で現象が起こることに説得力がある手品に仕上がっています。
そしてこれはポップな装いの理論書です。
誰が読んでも面白く、それが伝えるメッセージもわかるようになってます。
手品におけるリアリティとエンターテイメント性、一貫性を持たせながら演出にバリエーションをつけるノウハウ、そのような事が学べる一冊です。
ゴリラに持つステレオタイプなイメージからはみ出す様を見て、プレゼンテーションの可能性を感じることかと思います。
なにより不思議で、ゴリラが凄いからとしか思えないところにサトルティも隠されていて、笑えるだけではない手品の面白さが詰まってました。
娯楽性と伝えたいことを伝えることの両立はマジックで重要なことですが、それを解説の文章でも実践しているところに説得力があります。
どんなジャンルのエンターテイメントでもそういう両立が出来たものが好きなので、まさか手品の解説でそういうものに出会えるとはという喜びがありました。

Card College Lightest 日本語版

良い手品を、良い解説と、良い日本語訳で、でお馴染みのシリーズ完結編。
シリーズ全部読めてよかったという思いも強いです。
今までもライトと言いながらもクセのある作品は入っていましたが、今回は特にロベルトジョビーさんこういうの好きなんやろなという手品が多く、そこに綺麗にハマりました。
傑作を改めてジョビー解説で読んでより良さがわかったり演じてみたくなったりします。
しかしライテスト本当良いの多いですよね。
その名に偽りのない最上級の一冊です。

レビュー – Card College Lightest 日本語版

EMERALD (RALL)

年の瀬にとんでもないコインマジックの作品集が出ました。
ラルさんはつぶやきプロダクションRTのスペルバウンドを見て他はどんな手品をされる方なのだろうと気になっていたのですがやっぱりとんでもなかったです。
ある程度現象が限られそうなコインマジックで全く新しいことをやっていて超絶独創的、刺激しかありませんでした。
全ての演技がスローで、誤魔化された感じもしないのにポンポン変な現象が起こります。
現象が新しくテクニックもあるから追えないということもあるのでしょうけども、解説を見てみるとやはり全体の構成がしっかりしていて自然な動きの中でしれっと事が行われるようになっていました。
裏ではめっちゃ変な事になってたりするのによくここまで妥協なく作り込んだなと感動します。
この解説も凄まじくて、淡々とこうしますそしてこれをこうしますつって話されてるんですけどなんでそれがそうなるんやと口開きっぱなしでした。
コメントで狙いとして話してるも初見の時にズバリ感じたようなことで見事という他ありません。
一部の作品で、それだけでは全く不思議には見えなさそうなアイデアをテクニックとハンドリングとリズムでマジックとしか言いようがないものに仕上げてるものがあり、ここらへんに新しいやばいものが生まれる何かがある気がしました。
いやー面白かった。

リンク先販売ページに動画があるので是非ご覧ください。

エメラルド – インポッシブルカンパニー

そんなわけで以上になりますが、全部見直してたら今年買ったものは普通に全部良くて取り上げないのは惜しいものばかりだったので、各作品集から個人的ベスト作品を一つずつ挙げて終わりにしたいと思います。
上に挙げたもの以外はレビュー書いた順、下の方はまだ書いてないものです。

Paul Vigil “Our Kind of Gir(d)l(e)” (Paul Vigil Live Act)
Kimoon Do “MODERATO” (Brave)
Michal Kociolek “All In” (Plots & Methods)
Fenik “One Card Monte” (The Code)
Scott Robinson “Da Vinci Coins” (Pure Imagination)
TAKAHIRO “Apocalyptic Sounds” (Apocalyptic Sounds)
こざわまさゆき “Visible Invisible Deck” (Seeds & Gimmicks)
万博 “ゴリラの「かしこさ」” (すごいぞ!!ゴリラ)
Moe Seidenstein “Cardstalt” (Card College Lightest 日本語版)
RALL “sympathetic coins” (EMERALD)
Sungwon Kim “Four Cards” (Seven Thoughts)
Asi Wind “Noah” (Paper Work)
川島友希 “オープン・コレクター” (The Svengali No.24)
Kohei Imada “Palm Off Plus” (ANIMAL TRAIL)
Matt Baker “Card College” (The Buena Vista Shuffle Club)
Shimazu Kento “No Faces” (Mouse Pad 2019)
Sho Takashige “FUSION & EXCHANGE” (LITTLE GIANT 2)
みやもと “CCC + α” (Crazy Cherry Collection)
Andrew Frost “Solution 2” (3 Solutions)
K-GO “3 Coins Across” (Weeds)
Rune Klan “Tampon Trickery” (Rune’s World)
TERU,A Bubble Circus “ワッパー” (A Bubble Circus クロースアップ作品集)
Mike Powers “The Fly” (TESSERACT)
ソウ “Stand up ambitious coin” (POWER PLAY 1.5)
こっぺ “Stolen Face” (つぶやきプロダクション RT)
富山達也 “七咲逢は水泳部” (ネモニカ学習帳)
Benjamin Earl “Just a Second” (The Shift)
野島伸幸 “大和なでしこ13变化” (野島伸幸裏レクチャーノート6)
ひー “4 Coins Production” (ぼくらのあいであず)
Miguel Gomez “Card Stab” (The Joy of Magic)
Pit Hartling “Unforgettable Updated Handling” (Card Fictions New Edition 日本語版)
Dani DaOrtiz “ワオ・プレディクション” (バウンドレス)
Ponta the Smith “PPP” (Sick 2)
Joshua Jay “Total Recall” (Triptych)

自分で選んでるから当然ですが、並べてみるとマジで良い手品ばっかでビビりました。
これだけの良い手品を覚えてればもう十分だと言い切れますけど、来年も買ってしまうのだと思います。何故でしょうね。
良いお年を。

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