by jun | 2019/11/16

韓国のマジシャン、ドキムーンによるカードマジックDVD。
日本やアメリカでは今年のはじめの方にショップに出ていましたが、韓国では去年リリースされたもののようです。
非常に安定したテクニックを持った方で手順構成もよく考えられており、超低負担でビジュアルな現象を、より少ない手数で移動や交換現象を達成しています。
コントロールやフォースなどはオーソドックスなものが使われていて、マニア的にはちょっと物足りない気がしなくもないのですけど、トータルで「演じてもらうための作品集」という感じがあって好感が持てました。
映像作品なので、別にここは普通でも不思議でおもしろいでしょというのがわかるし、全体的に「今この人頑張ってる!」という雰囲気がないというのはインパクトの強い現象をより引き立たせるなというのもよくわかります。
また、定番の技法のクウォリティが非常に高く、ちょっとした工夫もあってもたもたしないので平場でも参考になる部分は多いです。

簡単で覚えやすいセットとエンドクリーンにもこだわられていて、久しぶりに見てもだいたいの手順は覚えてました。
PVを見てもわかる通り映像や音楽にもかなりこだわられていて、異常に完成度の高いDVDです。
ギミック付きで売られてるからPV見てどれがギミック使うんかと思ってたら、12作品中ギミック使用は2つだけ。
1つは小道具も使うやつでもうひとつはシークレット。
ギミックというほどギミックではなく扱いやすさ、手順に自然に組み込まれることもよく考えられています。

BETWEEN

ビジュアルなサンドイッチカードとサンドイッチ状態のカードの変化。
演技では裏向きのカードが表になるという見せ方をしています。
似たような現象は多くありますが、しゅこしゅこしたりもっさりすることなく、変化前のサンドイッチから変化までのセットをさくっと済ませられる手順です。
このビジュアルさがありながら実用的で安定して行うことができます。
特に変化の時に「行き過ぎてしまう」ということがないのは嬉しいですね。

AVENGERS

アンビシャスクラシックのバリエーションです。
使うカードは4枚。
アンビシャス現象、移動、ツイストときて最後のカードは色が変わります。
ちゃんと徐々に奇妙に現象が変化していくのがわかりやすい構成です。
エンドクリーンにするためのあれが一個手前なのもクレバーでいいですね。

BIG PROBLEM

ホフジンサーエースプロブレム。
サンドイッチカードの現象が加わっていてやや複雑にはなっていますが、これによって簡単にエースとセレクトカードをあれできるようになっています。
このDVDの中で見るとサンドイッチカード2枚を途中でデックの中から探す下りがややもったり感じる気はしますね。
なんかエースを使ってサンドイッチにするとかにもできそうですけども。

SHAKING THE ACES

ツイスティングエーセスをシェイキングで。
シェイキングすることで矛盾を解消していますがこれは結構好みが分かれそうではあります。
むしろ原案のツイストムーブからのカウントってよく出来てるよなーということに気付くというか。
しかしいきなり手の中に入れてにゅってするやつよりはジェスチャーに統一性があるので、全体的になんでいきなりそういうことをやり出すのかという感じがなく辻褄にこだわるなら良い手順だと思います。
ビジュアルに表向くフェイズがあったり、ジョークを入れたり無理にノームーブ推してない感じは好き。

DOUBLE ACT

コレクターなのですが、3枚目だけ別の当たり方をします。
コレクターはいかに仕事を分散させるかでスマートさが出るので、そういう意味で捻りながらも良くまとまった手順です。
筋もしっかりしてるし、この手の現象にありがちな「なんかいきなりツイスト現象が始まった!」も割と飲み込みやすいと思います。
絵札を使ったある動機付けもおもろいですね。
実際に演じるならこのジャックがこうであるということを先に説明しておいてもいいかもしれません。

MAN FROM SEOUL 2.0

エースプロダクションとトライアンフを合わせたTopsy Turvyのバリエーションです。
これ系のトライアンフは表裏混ざったことを見せるとこに工夫ができますが、ここで演じられてる方法はめちゃくちゃ良いですね。
表裏揃ったのをオチにしないのは個性でしょうか、ちょっと弱い気もしますが「一つだけ向きの違うカード」という文脈があるので綺麗にまとまって見えます。
まあ別にそこは好きに変えれるのでご自由にという感じですね。
ビジュアルにこだわらないスタイルでも全然いけると思います。

HELP!

St Nicholas Aceという、サンドイッチカードでAをプロダクションしていくやつでサンドイッチカードがAに変化するオチのやつ。
それのディスプレイにこだわったスタイリッシュ版です。
Yoannも似たようなことをやっていましたね。
結構好きで色々調べてたことがあるプロットなのですが、このHELP!はノーギミックかつ表向きのセットが不用な稀有なバージョンです。
ご本人もそこを意識されてるらしく、非常にすっきりした手順になってます。
表向きのセットがいらんということは出したエースをデックに戻してから演じることも可能ですし、演技中にセットするにもストレスがありません。

これはクイックビジュアルな現象にすることであるところを気にならなくさせてる感じがあるので、このまま演じるのがベストっぽい感じです。
1枚サンドイッチ、もう1枚サンドイッチ、サンドイッチカードがAに変化、という見せ方もセットを変えればできなくはないです。
いやー、なんにしてもこれは賢い。

MODERATO

セレクトカード2枚のキックバックサンドイッチ。
1枚を2枚のように見せるのって結構説得力持たせるの難しいんですが、ここの手順はなかなか強いです。
また、1枚状態の後すぐにアクロバティックなプロダクションが始まるのでストレスも低いかと思います。
行きがかり上2枚選ばせるのが必要悪的に許容されてる感のあるプロットですが、この作品は流れがしっかりしててそこの嫌さがほぼないですね。

COUNTDOWN

カッティングエース的なことをしようとするも、違うカードが出てきつつ、カウントダウンになっていてそれが終わると一瞬でAが全部出てきます。
これだけちょっと厄介なセットを必要とする手順なのですが、オープナーにはぴったりでしょう。
ちょっとやってみたらわかるんですけど、適当なテンポでやると気持ちいい感じが全然出ません。
DVDの演技動画は完璧なリズムでパタパタっと出てくる感じが最高です。
これ一つとってみても最後までこだわり抜くクリエイターというのがよくわかります。

IMITATION

1と2がくっついて3になったり分裂したりするやつをカード当ての手順にしたもの。
まずこの分裂合体のシークエンスが素晴らしく、超ビジュアルで角度にも強く負担なくできます。

最初見た時はカード当ての演出どうなんかなーと思ってたんですが、タイトル通りのストーリーなので、最後は本物がちゃんと見つかるというのは結構綺麗な気がしてきました。

2018 BIDDLE TRICK

まさかのビドルトリック。
しかもギミックここで使います。
そういえば似た系統のパトリッククンもビドルトリックでギミック使うやつありましたね。
どちらも消える前に確実にそこにカードがあったように見せる使い方です。
で、ドキムーンの場合は手順全体がめちゃ良いです。
これはギミック使わない普通のビドルトリックの見せ方としてもかなり自然で、クラシックプロットを現代風にアレンジするにあたって元ネタの良さを最大限活かす工夫が見られます。

REALISM

写真の中のカードがライジングしていって具現化します。
カードど同サイズの写真がついていて、扱いやすく楽しいです。
徐々にライジングしていくところも基本的なカラーチェンジかつ、動きとあっているのでめちゃ実用的。
単体で売られててもおかしくない出来です。
他の手順もそれ一つのために見る価値があるようなものがいくつもあって名盤と言ってもいいのではないでしょうか。
間違いない基礎テクニックの解説もあるし、オリジナリティも高いので割と万人におすすめできる感じあります。
個人的にもかなり気に入ってて、カードのDVDなら今年ベストかなと思っております。

Sponsored Link

Comments

No comments yet...

Leave a Reply

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です