by jun | 2021/01/03

どうもあけましておめでとうございます。
今年も大いに手品を楽しみましょうということで楽しい手品がたくさん載ってる本の話です。
この本は2014年にVanishing Incから出たTomas Blombergの作品集。
Blomberg作品はスウェーデンのマジシャンのアンソロジーDVD 21 収録の”Time After Time”がたぶん一番有名。この本にも載ってますが、あれは凄いですね。
この界隈の人の本に「これはBlombergのアドバイスです」とか「彼がこういうハンドリングを考えました」とか、そういう形でもよく名前が出てきますが、この本はそういう細かな改良という方向よりもオリジナリティ高いものが面白く、まず見たことない現象や新しい原理が楽しいです。
改案系のものは良くも悪くも論理的というか、理屈としては矛盾しないんだけど実際どうやって人に見せたもんかいなという作品もまあまああります。そこはまあ手を動かして原理におーってなっておきましょう。
意外にもというかこういう手品を作る人だからなのか、演出やセリフも凝ったものがあって読みどころは多いです。

Non-Card Tricks

最初はカード以外の現象を扱ったチャプター。

The Konami Code

みんなどこかの方向を指差してる人物写真の束があって、それを並べて、ルールに沿って色々やると、演者がこっちに指差してる写真が出てきます。
ただ矢印のカードでやるより面白くなるしフェア感も出て良いです。観客がシャッフルできるところがあるので不思議。
タイトルがまさかのコナミコマンド、読めば納得できます。

Cashing

5つの封筒を使ったバンクナイトの手品ですが、封筒を減らしていく過程でコインを使います。
5枚のコインをじゃらじゃらやって、その表裏の枚数によってその番号が書かれた封筒を減らしていくというもの。
面白いアイデアですけど、何もしなくてもその封筒が最後に残りそうな感じもちょっとするような。
アイデア自体はカードにも活かせるし有用なものです。

Neckless Grandma

おばあちゃんの首飾りを首でやります。
これ、紐っぽい普通のネックレスでもできるので不思議です。

ABandOn

クレイジー輪ゴムの後にやるやつ。
普通にかけるのと逆の動きになるからかけてるように見せれる感じではないですね。

Magic Lesson

指輪と輪ゴムの手順。
繋がったり外れたりします。
中盤は定番の感じですが、最初にインするところのハンドリングと、最後のアンリンクがちょっと変わってます。
トランスポジションさせるオチもなかなか。
指輪ゴムは実際綺麗に繋がったところを見せれないので、6フェイズもあるとちょっと怪しさの方が残ってしまったりもしますが、良い方法がまとまってます。

Brazilian Bend

手を触れないスプーン曲げ。
スプーン独立でやるものではないですが、めっちゃ良い感じに曲がります。
シチュエーションと演じるタイミングがむずいですけど、しかるべき時にやれば超受けるやつ。

Bills Witch

親指なしのビルスイッチ。
準備必要だけどサイズぴったりじゃなくてもできるやつで、変化もなかなか綺麗です。
Double Bills Witchっていう20が10ふたつに分裂するやつがとても良いです。

TB Spread Double

TB Spread Doubleというオリジナル技法と、それを使った手順が解説されてます。

À la Cummins

観客がジョーカーを差し込んだ位置から観客のカードが出てくるかと思いきや、ジョーカーが観客のカードに変化してます。
他のスイッチ手法でもできますが、アウトジョグ状態を維持しておけるのでフェアに見えそうです。

Tattwo You

バノンの”Tattoo You”のバリエーション。
サインが色違いのにピョンするやつです。
この技法の便利なところとして、色違いのカードを隠してフォースできるので、まあそういう感じです。

Matest

レギュラーデックの表裏でやるアニバーサリーワルツ。
これにはとても適してる技法だと思います。
カップル向けに2段階の現象で見せる演出もおもろいです。

Double Brainwave Update Update

レギュラーデックでやるブレインウェーブ現象。カードはフリーチョイスでいけます。
ただ、デックを2つ使うのですが、その理由がちょっと厳しい。

One Improbability

オープンプリディクションです。
技法のダイレクトな使い方ですが、スムーズにできれば良い感じになるのではないかと思います。
完全即興でできないのはちょっとあれですけど、簡単なセットで終盤クリーンに見せれるならありっちゃあり。

Moves

技法がいくつか解説されてます。
よかったのはEarickのあのコントロールをカードケースに入れた状態でやるProteus Boundというもの。
コスキースイッチのバリエーションも使い所はありそう。
後半の手順で使われてるJack ParkarのLow Life Displayっていうパケットでディスプレイからスイッチするやつはマニア向けには結構あり。

Interlock

ラストトリックとかグラスホッパーとかチーズとかその辺のフォーオブアカインドを絡めたトランスポジション系の現象がまとまってるチャプター。

113g

4枚のKを使い、黒の方は置いといて赤を使ってサンドイッチ現象をしつつ、なんやかんやあって黒の2枚が赤の2枚に挟まってと観客のカードが入れ替わるというあれ。
2段階になってることで変なことが起きてるのがわかりやすくなってるパターン。

Interlocked Daley

赤と黒をそれぞれ表が向かい合わせになるよう重ねて、その位置が入れ替わります。
手を動かす楽しさには満ちているのですが、何故向かい合わせに重ねるのかはちょっと難しい。
何かの前振りとか、なんか上手いこと使えば良く見せられそうな気もしないでもないです。

Low Cost

赤のジャックの間に入れたカードが黒のジャックの間から出てくるやつ。
理屈としてはほぼ矛盾する箇所がなく、確かにカードの位置関係を示せるのですが、枚数の誤魔化しが上手くいくのかが怖いあたり。

Hindu Interlock

ヒンドゥーシャッフルを使ってのフォースからコントロールまでの一連の流れ。

Paradoxes

パラドックスを扱った章。
ここが一番おもろいです。

Lucky 14

観客が自由に選んだ3枚でジェミニツインズ的なことをやり、3枚のAが出て、3枚の合計枚数目から4枚目が出てきます。
これは素晴らしいですね。
原理的には古典的な数理トリック的なんですが、ジェミニツインズやることでその感じが全くないです。
こういう数理的な目的のためにこの数字には意味があるんですよ的な演出も好み。

The Freakish Miracle

3つのデックを使った一致現象。
この原理とても好きです。
観客もシャッフルするし、ちゃんと演じればエニエニ的な不思議さがあると思います。
このバリエーションはちょっと捻りがあって、手法にたどり着きにくい感じです。

Deal the Way

ミラスキルのちょっと変わった見せ方。ギルブレスも変則的な使われ方をしていて、ちょっと解説聞いても納得できない感じのパラドックスです。
複数の観客に自由に選択してもらえるから盛り上がるき不思議。
カードを選ぶところから選択があるのでどうやってもそうなるって感じもそんなしないと思います。
凄い。

Torn Uncut Card Sheet

デックのシートを使ったパズル。あの並べ替えると隙間ができるあれ。
その空間のカードが観客の選んだカードですという見せ方ができます。
これ隙間ができるわけだし色々見せ方考えられそうですね。

Estimated Sunken Key

即興で出来る謎の原理を使った一致現象。
サンクンキーをノーセットで活かすという面白いアイデアなのですが、操作はやや謎で、現象の示し方としてもちょっと難しいところがあります。
しかしこのエスティメーションでありながら確実に活かせる方法は胸が高鳴りますね。

Late Key

カードを2枚当てるロケーション。
片方はポケットに入れてもらいますが当たります。
あーあの原理をカード当てに応用できるのかーって感じの一品で、なかなか気に入ってる手順です。

Hard Card Paradox

ブレインウェーブデックの演出例。
これは実際の有名なパラドックスを使ったもので、このパラドックスは説明を聞いても不思議なタイプの話なので、とても良い演出方法だと思います。
複数観客参加だから普通に盛り上がりますし、みんなが不思議がれる見せ方。

Interlocked Gilbreath

ギルブレスにまさかの新展開。
現象は、顔写真のカードの束をシャッフルして、上からその人物の特徴を当てていけるというもの。シャッフルしたらそれを配り直したりせずに当てていけます。
これは現象も面白いし原理の使い方としてもかなりの正解なのではないでしょうか。

もう一つはデンジャーモンテ。
先を折った画鋲とガチ画鋲を観客に並べてもらって、そこに紙の蓋をしてガチ画鋲を避けつつ指で押していくというもの。
観客がミスってたらぶっしゃーーいきますしちょっと怖いですが風船とか使っても全然いいと思います。

Mind Stress

10個3桁の数字が書いた紙が10枚あって、観客が選んだのを当てるやつ。
ちょっとこうあれはありますけど質問はしなくて良いです。
面白い原理ですが、まあ何かだろうと思われたら何かなので演出が大事。解説されてるセリフは普通に演じやすいものだと思います。

Packet Tricks

パケットトリックの章。

Packet Morpher Sequence

カウントを使って1枚ずつ表向きのカードが増えていくやつ。
手続き自体は普通ですが、カウント周りのちょっとしたティップスがあります。

Hoftwister

パケットも全部選ばれたカードのフォーオブアカインドに変わるタイプのホフジンサー。
カウントで解決なのでクリーンさに欠ける部分もありますが、元のパケットを再びデックに近付けずにリズム良く変わるのでこれはこれで。
まあこのあたり、どこをフェアにするかは好みですね。勢いで終わらせるならありだと思います。

Three-Card Monster

ウィリアムソンのThe Famous Three Card Trick的な、なかなか3枚にならないトリック。
余計なカードは表向きで出てくるわかりやすさがあります。
表向きで出てくるの最初微妙かと思ったけど、余計なカード演出としては結構効果的かも。

ProHof

自由に3枚のカードを選んでもらって、その中から1枚選んでもらう。
なんやかんやあって3枚の中で黒のJが表向きになるから選んだのは赤のJでしょということになるけど、覚えたのと別の赤のJが出てきて…というちょっとややこしい現象です。
まず3枚のJを選んでしまってたのかというところをうまいこと現象にできるかどうかが難しく、そこさえいけたら意外性はあります。

Marlo Might Have Liked This

Sympathetic 13。
混ぜるところの工夫も良いのですが、完全な一致ではなく違ったところは変化させる手順になっていて楽しい。
とても良いトリックだと思います。

One Behead

カウントを使わないツイスティング現象。
1枚ずつ裏向きになります。
山なしオチなしという感じで単調ではありますが、カードの構成的になんかに繋げられるもんではあるので覚えておいて損はないです。

L-I-A-R

ブランクフェイスにFalse/Trueと書いたパケットを用意して、観客の答えに沿ってスペリングすると嘘か本当かわかるというLDのバリエーション。オチはブランクカードが観客のカードに変わります。
日本語だとちょっと厳しいけど、面白いトリックです。
ある程度嘘発見器の機能があるトリックの方が好きだし、オチの持っていき方も綺麗。

General Card Magic

色んなカード手品。

Multiplex Re+Set

ポケットインターチェンジとリセットの組み合わせ。
基本的なパターンより最初に4枚ポケットに入れるところをフェアに見せられます。
その分仕事量は増えるけど、割と負担のないように考えられてる感じです。
後ろのポケット使うのもまあ、そんなに気にならないですかね。
リセットなので厳密なインターチェンジではないのですが、後半ちょっとずるいところもあったりしておもろいです。

Signed Hot Mama

サインカードでやるシカゴオープナー。
2枚目のオチをサインカードでできます。
また、色々ショートカットできていて良い感じです。
カード当てじゃなくなる分、色の変化の動機は弱くなりますが、こういうアプローチの変え方は面白いですね。

Brownian Bridge

Edward G Brownの12枚カードアクロスのバリエーション。
こっちは10枚10枚のパケットで行うもので、移動先でも覚えた枚数目に出現するというもの。
その分そういうことをしたのではないかと思われなくもなさそうですが、ちゃんと手順は踏んでいます。

Chase the Red

ちょっと変わったOut of This World。
混ざったデックを赤黒に分けてもっかいシャッフルするとこから始まります。
この分けてまた混ぜる手順がまどろっこしいと言えばまどろっこしいですが、ちゃんと見せられればよく混ぜたものが綺麗に分かれたという見せ方は強調できます。
ハンドリング良いので水油とかでも良い風に出来るんじゃないでしょうか。

Defect Gatherer

パンチ穴が移動するトリック。
ペンとパンチがあればできるやつ。
カードを独立させて見せることはできないけど、移動の効果は十分出るし割と良いです。

Gasp! Scream!

カードケースに集まるアセンブリ。
消えて移動したという見せ方ができるので綺麗です。
消えていくパートも普通のアセンブリでやらないようなハンドリングが見られます。

Mxyzptlk

観客がカードの裏に書いた字が別のカードに鏡映しでコピーされます。
手法も面白くてお気に入りトリックです。

QXS…SXQ

スプレッドじゃなく、ファンの中に2枚のQを同じ位置に入れて、それが分離して選ばれたカードの隣に移動します。
難しいけど面白い動き。
綺麗にするの難しいけどサンドイッチカードとかナンバートリックとか色々使い道あります。

Mental Devilish Miracle

思ったカード(シークレットナンバー)で行うデビリッシュミラクル。
あんまりあっち行ったりこっち行ったりという見せ方じゃないからすっきりしてて良いかも。

X-Scape

輪ゴムのプロダクションをパケット間の貫通っぽく見せます。
輪ゴムで縛った状態にこだわっていて技法もそれで出来る様になってますが、まあ普通に技かけてから輪ゴムしたのと比べてそう印象が変わるかというとそんなこともなさそうではある。
でもこういうこだわりは嫌いなれないものがありますね。

Schrödinger’s Tie

好きな数字を言ってもらってその枚数目のカードが予言されてます。
その枚数目というか、リボンで結んだデックがあって、それを引っ張ってカットされた場所から数えるんですが、なんかこの仕掛けが変でおもろいです。
クリーンな予言として見せられるもんではないですけど、引っ張った時の動きはそうなるとしか思えないから説得力はそれなりにあります。

At the Card Table

テクニカルなカードマジック。

(Vernon + Sadowitz)^2

観客が4つに分けたデックのフェイスがバラバラ→A→Jと変化していきます。
出来たら相当楽しいだろうなというトリックなんですが、相当練習しないと頭も指もついていかないですね。
この本の中で練習し甲斐は一番あります。

Jack’s Trick

観客が4つに分けたパケットのトップにQを一枚ずつ置いていって、それが1箇所に集まり、他のトップを見ると全部A。
他にもやり方があるやつですが、置いていくところでJack Parkerの技法が使われています。まあ良し悪しな技法ですけど、パケット系で応用できるものではあるので覚えておいて損なし。
この手順にはなかなか合ってます。

Svensk Voodoo

セレクトカードと思い浮かべたカードでやるエニエニ。
レギュラーデックじゃないけど、思い浮かべたカードの自由度は高いので結構良い方法だと思います。
デックを2つ使うバージョンだと実質エンドクリーンだしなかなかアリ。

TSAR

色違いAでやるアセンブリ。
リバースまであります。
プロブレム的に力技で解決されるものも多いですが、これは色違いであることを活かした手順になってます。

Tabled Oil & Water

シンプルな1フェイズの水油。
傑作です。

Rhythm Switch Assembly

リズムカウントとフェイクを組み合わせた変な技法でアセンブリ。
割と楽しい。

Time After Time

3人の観客にカードを選んでもらって3つに分けたパケットを渡す。観客がそれぞれ数字を決めてその数だけ配ってもらい、パケットを交換して同じことを繰り返しますがそれぞれのパケットのトップに選ばれたカードが現れます。
本当不思議ですねこれ。
3人の観客に何度も配ってもらうことになるので事故も起きんことはないですけど、渡す時に手渡せばそれなりにリスクは減らせます。

Cardpool

オープントラベラー。
ギャフてんこ盛りでハンドリングも良いです。
どうしてもパケットだけで完結したい人は。

Twists on Christ

クライストフォースについての章。

Double Christ

2枚のカードをフォースする方法。
テーブルの下でカットしてもらうもので、作業と完了後の状態に矛盾がなく自由な感じが出ます。
良い。

Sunken Christ

3枚のカードを当てます。
アロンソンとかも似たようなのありましたけど、やってて楽しい系。
この手順は原理に対してギャフ使用+セット必要なのが結構痛いですが、その分不可能性もちょっと上がってます。

PreMEMOnition

プレモニションてかポストイットを使った予言なのですが、これが超賢くて良いです。
クライストフォースの諸々のもやもやを解消してると思います。
めっちゃ好き。

Con/Science

バーベット系のやつ。

「1面にカードを4枚貼り付けた6面のサイコロがあって、お互いにマークを一つずつ決めて高い数字のカードがあった方が勝ち」
「コイントスを4回やって全部で表を出す」
「2枚をコイントスして、表が出ていたらそれをもう一度トス、これでもう一度表が出ていたら演者の勝ち」
など。

Double Bills Witch、Matest、Lucky 14、The Freakish Miracle、Deal the Way、Hard Card Paradox、Interlocked Gilbreath、Marlo Might Have Liked This、Multiplex Re+Set、Signed Hot Mama、Mxyzptlk、Schrödinger’s Tie、(Vernon + Sadowitz)^2、Tabled Oil & Water、Time After Time、Double Christ、PreMEMOnition、人に見せたことがあるやつ、練習したいようなものだけでも結構あります。アイデアだけ使えるものも合わせたらもうちょい。
セッショントリック的なのも多いですけどそれはそれで。
というわけで今年もよろしくお願いします。

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