by jun | 2020/12/18

最近Vanishing Incから出たAndi Gladwinの作品集。注文する前に送ってきてるんじゃないかというレベルの勢いで届いたのでなんとか年内に読み切ることができました。
内容はカードマジック、17手順と技法10個ぐらい。
小回りの効くクロースアップから、ステージで見せれるルーティンまでバランス良く載ってます。
実際に彼が長年レパートリーとしてるだけあって無理がありませんし、プレゼンテーションもしっかりしているのですぐ演じられるのが多いです。
冒頭のエッセイでも無駄な動きを省くことを重きに置いてることが書かれてますが、割と大胆に狡くショートカットする方法とかもあってラッシュをかけるようなルーティンでも重くなりすぎておらず、磨き上げられたことがよくわかる手順がいっぱい収録されてます。

1. Close-Up Card Magic

Whack Your Phone

カードアンダーザ携帯。
元ネタはポールハリスのWhack Your Pack。ピットハートリングのHigh Noonもそうなので、だいたいああいう感じです。
ちょっとしんどいけど、フェアにカードを選んでもらってシャッフルしてもらえるので演出に合ってます。これが出来るトリックは少ないので即興でできるし覚えておいた方が良い手順です。
アンダーザ部分、動き自体の動機は強いけど、現象の意味と視線のコントロールはちょっと弱いかもしれません。

Perfect Order

バノントライアンフ型のトライアンフ。
実際に表裏に混ぜて混ざったところを見せれるのが強みですが、混ざったところを見せられるトライアンフのアイデアをもいっこ足してバランス良い感じに仕上げてます。
ハンドリングというか、その技法の見せ方にちょっと気になるところはあるけど良い塩梅のトリックだと思いました。

Monte Python

イロジカルなムーブてんこ盛りで余計な動きを削ぎ落としたスリーカードモンテ。
ラストはアシンメトリカルトランスポジション的なオチが付くけど、かなりスムーズかつ安定してできる部類だと思います。
無駄がないからテンポ良く進められるので、オチの意外性も高い。

Ghost

Ghost King (4枚のKを置いて観客に赤か黒かを選ぼせて片方の色のKが消えてそのカードがデックの中でカードをサンドイッチしてるやつ)のバリエーション。
説明がくどかったり意味のない動きが多いバリエーションになりがちですが、これは超サクッと終わります。
テクニカルな割に技法は楽なタイミングで行えるようになっていてとても良い手順だと思いました。

Pocket Mule

観客のコールしたカードがポケットから出てきます。
ギャグを挟むので、そこを面白く見せられるかどうかが勝負。ちゃんと笑わせられれば強いオフビートにもなるし、ギャグが必要な手続きであるようにも思われません。
ウォルトンの元ネタはサンドイッチで、視覚的にはっきり状況を確認できるのでギャグ部分が現象の前フリに見せれますが、ポケットの場合はギャグの扱いも現象の見え方も結構印象が変わります。
その分難しくなっているとは思いますが、決まればめっちゃ強い。

Fireworks

エースプロダクション、コレクター、消える、変わる、デック消えるなどてんこ盛りのルーティン。
スタンディングである程度囲まれてても出来る手順で、簡単なセットから畳みかけるように何かしたい時にちょうど良いです。
コレクター後の流れが特に好き。

2. Card Technique

第二章はテクニックが色々解説されています。
DVDも出てるMaster Pushoffもここで。
やっぱりちょっと押す場所と押し方が気になります。押してから何をするかによってこのやり方がいいこともありますが、単に返すだけならやっぱりちょっとゲットレディ感はあるなーと。

Undo Cutっていうフォールスカットなかなか良かったです。
何気ない感が結構出てる。
Undo Shuffleの方もお手軽オーバーハンドフォールスで良。

他、ポップアップカードを指で押さえない方法、コンビンシングティルトの一工夫などなど、覚えておいて損ないのも解説されてます。

3. At the Card Table

From the Centre

トライアンフのスキルデモンストレーション的な見せ方。
元ネタあるらしいですけど知らなかったので新鮮で面白く感じました。
実際のテクニックがそこそこのクウォリティじゃないとダメですが、ちゃんと手品として盛り上がる展開になっていておもろい。

Red/Black to the Future

赤黒赤黒赤黒赤黒赤黒…が赤赤黒黒…になって、赤赤赤黒黒黒…、最後は綺麗に分かれます。
テクニックの巧い活かし方という感じもありますが、後半の錯覚を使った見せ方がとても良かったです。
補足で書かれてるおまけで俄然やる気が出た。

Misdeal

ポーカーのイカサマ演出のアセンブリ。
Aの上に3枚ずつ置きます、というのもいかにも手品という感じで嫌いになりきれないものですが、やはり適当な話があると演じやすくなるものです。
手法自体も演出に沿わせていて素敵な手順じゃないでしょうか。

Cut, Stop, Shuffle

Spectator Cut the Acesの変種。
カットした場所にはここでカットすると書いてあって、ストップしたとこにはストップと書いてあり、シャッフルを止めた場所のカードにはそう書いてあります。
面白い見せ方です。
観客の自由度が圧倒的に上がるし不思議。
カードに文字書いたりするのはちょっとーってのはありますけど、Aが出るよりそれぞれピンポイントで出た感はありますね。

4. Stand-Up Card Magic

Silent Movie

ステージ上のDo us I Doで観客と演者が同じカードを選ぶやつ。
指示は全て無言で行うようになっていて、最初にシャッフルさせるから不思議。
音楽かけてちゃんとやればめっちゃ盛り上がりそう。
しかし口から水出すやつの代わりになるようなものはなんかないもんですかね…

Castle Jacks

記憶術デモ、4オブアカインド出し、消える、移動、トラベラー、デックバニッシュという手順。
あんまり連なりなさそうですが、出たカードをその都度使っていくのでそこまでバラバラな感じもしません。
そこそこの人数に対応してる一連のルーティンなので、こういうてんこ盛り手順は覚えておきたいもんです。
記憶術デモは本格派ではないけど、まあ全然これでもという感じ。こういうジャブ的なライトな使い方はいいかもしれません。
Jが消えていってステージ上のワイングラスに移動してるやつは結構好きでした。
ステージだったらこういうのやりたい。

Aura

3枚のカードを選んでもらい、1枚は普通に探し、2枚目はデックをポケットに入れて抜き出し、3枚目は観客に抜き出してもらえます。
レギュラーデックでは出来んのですけども、思ったより凝った作りでそのおかげもあって単純にそういう感じのことをしてるようには見えない感じです。
考えれば考えるほど良くできた手順な気がします。
1枚目がまず観客のシャッフルから表を見ずに当てるから不思議で、ここで使われてる手法は何か色々できそうでおもろい。

Supersonic

3枚のカードを当てる手品。
タイムアタック的に当てようとしますが時間内に2枚しか見つけられず、3枚目はポケットにあったという見せ方です。
サロン用の手順で、2枚当てるところも観客がシャッフルするから不思議に見えます。
これはレギュラーデックだけで出来て大人数対応なので、シンプルに不思議なカード当てを見せたい時には良いっすね。

ScriptedBored

Shuffle Boredのプレゼンテーションについて。
マジのプレゼンテーションです。
似たようなことをしてる人は結構いると思いますが、作り込むことによってすり替えられない予言感は増します。
最初からずっと使えるのが良いですね。
普通に紙でやるより実は続きがありましたはそこまで綺麗には行かないですけど、オチの1枚の前の予言を示すところでここで終わりです感は結構出せます。

Thought Experiment

Edward G BrownのThe Twelve Card Thought Transitionのバリエーション。
観客が思ったカードが別のパケットに移動します。
元からして良いトリックなんですが、らしい方法で上手いことやってます。結構色んな改案があるけどこの方向のはあんま見たことない気がするし、おまけ展開も良い感じ。
演じ方によっちゃ地味にもなるトリックですが、ステージングもとても盛り上がりそうなものです。

後半の大人数に見せれるやつは全体に良かったですね。
レギュラーデックで出来んやつも多いですけどステージならそんなストレスならんしおかげでかなりスムーズに事を運ぶことができるようになってます。
今年Vanishing Incからプロ向けの本がいくつか出ましたけど、一番手を出しやすく、マニアが喜ぶポイントもちょこちょこあるので、割と広範囲に刺さるんじゃないでしょうか。
読んだだけでは刺さりすぎて死ぬってとこまでは行かなかったですけど、受けは堅そうなのでやってるうちにどんどん気に入ってくるような本だと思います。

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