1927年に出版されたLouis Nikolaによるメモライズドデック本。
いわゆるニコラシステムについてと、メモライズドデックの手順が解説されています。
まずニコラシステムについて。
恥ずかしながらこれ読むまでちゃんと学んだことがなく、なんか適当な並びなんだと思っていたんですがそれなりの機能があることを知りました。
アロンソンのあれ的なあれと、もう一つ何か便利に使えそうな感じがする規則があります。
それでいて、当時サイステビンスが流行ってたからマジシャンがじっくり見てもわからない並びを作ったそうで、実際わかりません。
今でもアロンソンよりはマイナーだと思うので、ギャンブル系やりたくて気取られたくないならニコラシステムか、使えるとこだけ取ってあと適当に並べるスタックなどを使うと誰にもバレないと思います。
ニコラシステム依存のトリックはそれほど発表されてないので、あえてこれをそのまま使うメリットはそんなにないです。
トリックは20種類ほど。
Spelling、Cards By Weight、ACAAN、Any Card Called Forなど、今でもポピュラーなプロットがカバーされています。
このあたりは現代の凝った手順と比べると物足りなさを感じるかもしれませんが、これに何の問題がありましょうというシンプルで良いトリックが並んでいて、なにより原型となるようなものがどう演じられていたのかを知ることの意味は大きいです。
解説はそこまで長い文章ではないながら、ポイントポイントで演出意図は汲み取れる感じになってます。
また、メモライズドデックの基礎的なテクニックのtips的なことがちらほら出てくるのでなかなか勉強になりました。
例えばACAANの”Thought Anticipated”は現在主流となってるものの原型みたいなやつで、あまり知られてないChas Shepherdのやつ(1908)を除けば古い部類。
演じ方や目的の手続きを行うための解説もなかなか良いです。
Cards By Weightは大事なあそこんとこどうやってんのか気になってて、これがベストかどうかはわからんけどちょっと凝ったやり方をしていました。
続けて”Weighing Chosen Cards”というカード当てが解説されていて、繋げて演じればお互いのトリックの演出面白さが上がる良い連作になってます。
面白い現象でいうと”Unconscious Thought Transmission” 、これは観客が封筒に入れたカードと別の観客が決めたカードが一致するというものです。
最後に凄い仕掛けを使った凄いトリックも解説されてますが、これはそこまで大変でもなくコスパのバランス良い感じの手順。
後半は手順というよりフォールスシャッフルとかメモライズドデックtips的な話が多めです。
デックスイッチやピークの方法など、メモライズドデックが普及してなかった時代にここまでやってたのかというアイデアもあります。
特にデックスイッチの考え方はアロンソンやアラゴンもやってるようなやつを最もシンプルな形でやってるのでとても有用。
一番クレイジーかつ面白かったのは”The Telepathogram”という手順。
観客にカードを思い浮かべてもらって紙に書いてもらい、デックは自由にシャッフルさせます。デックも紙も封筒に入れ、もう一つの封筒には白いカードとクレヨンを入れておきますが、カードは当たり、白いカードには数字が書かれており、その枚数配るとそのカードが出てくるというもの。
仕掛けはもちろんプレゼンテーションの解説にも力が入っていて普通に読み応えがありました。難しいところもあるけどめっちゃおもろい現象だと思います。
もう一つ凄いのが”The Flight”というトリック。
セレクトカードを封筒に入れハンカチに包みますが消えて、デックに戻っていてしかも観客の指定した枚数目から出てきます。
Telepathogramよりは現代デバイスに置き換えやすいかもしれませんが、ハンカチに包まれた封筒の中のカードを消す方法が面白かったです。
CAANの考え方としても、無理なく達成する手法としてとてもクレバー。
最後の2つは実演するかどうかはともかく、エニーナンバーのアプローチとして今でも十分読む価値あるトリックになってます。
ちなみにEncyclopedia of Card Tricksにこの本のほとんどが転載されていますが、転載されてない部分に読みどころの多い本なので単体で買った方が良いです。
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