by jun | 2019/03/29

2017年にVanishing Incから出たJ.K. Hartmanのカードマジック作品集。
非常に多作な方でこの本にも60作品収録されています。
比較的最近の作品の改案とセルフリメイクが多く、元ネタを知ってると帯に短し襷に長しを感じるやつも多いんですが、セリフと演出でうまくショートカットしてるようなものもあって強引賢い感じです。
割と足し算的な方向が多くて、これとこれ組み合わせましたイェーイ!みたいな無邪気な感じは良いのですけども、現象の焦点がぼやけるような印象のものも少なくありません。
作品の好き嫌いも色々あるし、作品の中でも好きな部分と微妙なとこがあったりするので、章ごとに半分ずつぐらい紹介できればという感じでいきます。

Handiworks

スライト中心のネタで、特にレギュラー縛りではなく色違いのカード使った作品とかもありますが、基本的には即興でいけます。

一番最初の”Mock Mix”は普通にシャッフルしただけなのに表裏が混ざるというネタ。
手法はそれしかないって感じですが演出でそれっぽさはあります。
最初がこれ?っていうのはありますが、良くも悪くも全体の流れを印象付けるようなトリックです。

“Every Which Way – Another Way”は数枚の中から見て覚えてもらったカードをトライアンフ的に当てる手順で、元ネタの原理とパケットのトライアンフハンドリングがうまく噛み合ってます。
トライアンフパートのせいでやや混乱しそうですが、うまくやると見て覚えてもらうとこの原理を煙にまく演出として機能するかと。

Searcher型のサンドイッチカード”Searching High and Low”はハンドリングをさっぱりさせることが目的のようですが、どうしても怪しさは残って微妙です。
どんなにうまくやっても割と普通に抜いただけに見えます。

“All for One II”は裏向きで絵札だけ抜き出します的なことを言って12枚カード抜き出して、そこから観客の選択も活かしつつ1枚のカードを残し、残るカードが当たってる的な手品。
これはかなり演技力必要で現象伝えるのも苦労しそうですが、現象さえ伝わればかなり不思議に見えるはずです。

クリスメイヒューのチーズのやつの改案”Trap and Trade”は個人的に元ネタの良いと思うところが削られててあまり良い印象はありません。
サンドイッチカードのキックバック的なやつなんですが、カードの選ばせ方からハンドリング的にもややもったりしてて、意外なオチのネタとしては序盤から不自然というのは致命的な気がしました。

4枚のジョーカーからスタートするラストトリック”Daley Dilly”はカウントがうまくはまってはいますが盛り込みすぎ感が否めません。
変化とトランスポジションを別のフェイズで見せるのってあんまり相性良くないと思うのですね。
入れ替わっても入れ替わったように見せただけにしか見えないというか。

地味に良かったのは”Fast Forward”というパケット間のカード移動。
やや難易度の高い技法が入りますが、仕事終わってからはバニッシュのフェイズで遊べて意外性ある現象としても見せれるし結構気に入りました。
スライトレスでやる方法もなくもないので色々試しています。

ハートマンお気に入りのある手法を使ったものでは”Sixes & Sevens”が良かったです。
かなり不可能性の高いカード当てで、この手順そのままやるかは別にしてこの原理は結構遊べそう。

“Back to Back Into Time”は2枚と1枚のトランスポジションを時間が巻き戻る演出で見せたもの。
ビジュアルじゃないあたりが演出と合ってる気はしますが、ちょっともっさり感はあります。

カードケースの中でのミステリーカード”Double Identity”はジョーカーでミステリーカードを挟んで箱の中に入れて行います。
ジョーカーで挟んだからといってミステリアス度が上がるわけでもなく、いたずらに不自然な箇所が増えてるのはいかがなものかと思いますし、サインドカード的な動きの代わりもやたら負担が増える割にうまくやってもイロジカル感が残るというちょっと謎な作品でした。

Heavy Mental

章題ほどはヘビーということもなく、オープンプリディクションや51 Face North、CAANあたりのネタ中心です。
あんまりプロブレムのルールを厳守する感じでもなく、オープンプリディクションでも予言は伏せられていたりします。

オープンプリディクションはどれもピンと来なかったんですが、”Open Minded”はカードの選ばせ方と示し方に少し工夫をすればシンプルで自由度の高い選択を印象付けることができると思います。
シャッフルしたデックで演技可能ですが、先に予言を見せることはできないタイプです。
先に予言を見せたい場合でもちょっといじくればなんとかなりますが、いわゆる「はよ見せろや」的なカードの選ばせ方なので、ワンクッションあった方が良いって感じでしょうか。

CAANでは”Caandroid”というのが即興に近い形で出来て良かったです。
デックをパソコンに見立てるという難しさはあるのですが、エニエニ系は割とそういうあほらしい話と相性いいかもと思ったりもしました。
もちろんぞわぞわするような不思議さは減退してしまいますけど、こういう軽い話が合うキャラクターの人がやれば現象のインパクトのギャップは楽しいかと思います。

全体にOPもCAANも処理の雑さは気になりましたね。
セリフのカバーに頼ってるところが大きいので、そこうまくできるなら良いのかもしれませんが。

2種類解説されてる”Stop on Red”はどちらもパッとせず。
2人の観客に赤と青のデックからそれぞれカードを選んでもらって一致する現象ですが、それぞれの作業がうまく正当化されておらず現象が起こった後に手続きの意味を考えてしまうような気がします。

“Strange But Perfect”はレインボーデックを使った予言現象で、複数の予言のカードと、レインボーデックから選ばれた複数のカードが裏も表も当たってるみたいなやつです。
これは結構良いんですけど、レナートグリーンのあれとかもっと良いのありますし、マニアを刺せるような手法でもないので存在意義としては微妙です。
レインボーデックならではの隠蔽具合という意味ではよく出来た手法だとは思います。

一番良かったのは”Crossed Thoughts”という、観客が選んだ2枚と演者が選んだ2枚が一致する現象で、そのままでも良いしメモライズド使えばかなり不思議に当てることができそう。
使われるちょっと変わった技法の適切っぷりもこの作品のは際立ってるように思いました。
やや観客に間違った想像をされそうなので、もう少しフェアさを強調する工夫がいるかもしれませんが面白い手順です。

Stacked and Stunning

スタックを使うチャプター。
フルスタックより数枚のセットでなんとかなるものが多く、準備が楽なのは助かりますが現象もそれなりという感じは否めません。

例えば”Fish & Pips”は選んでもらった5枚の中から自由に覚えてもらう型ですが質問が必要だったりします。
確かにバランスは良いですが、あえてやるならもっとがっつりセットして質問か技法かどっちか削るよなという感じ。

“Mind’s Psi”は選ばれた5枚のカードをサンドイッチして表見ずに当てる現象で、ビジュアルとメンタルの組み合わせとしては面白いですが演出力勝負になりすぎる気もして微妙。
複数人の観客にそれぞれ不思議を体感させる的なのはこの人の持ち味っぽいですが、5枚ともなると盛り上げ方も難しそうっすね。

一方”Leap to Mind”という手順は思ったカードのカードアクロス的な手順で、なかなか良い感じです。
カードアクロスじゃなく、パケットからデックへ移動させてCAANということもできますねこれ。

シャッフルさせたパケットの中から1枚覚えてもらってまたシャッフルして当てる”Caught Thought”も面白いです。
スタックの割に手続きが多いというのはありますが、あまり使われないこの手法の使い方として参考になりました。

“A Caantasy”というCAANも同様の手法を使いますが、最後は割と技法で解決していて別にそれじゃなくても感が。
Think Card系と相性良いとは思いますけど、CAANだと手続きが増えすぎるのはちょっとという感じ。

Gaffed by Half

ギャフを使ったパートです。
大半の手順がスタンダードなギャフアソートでは揃わず自作を必要としますが、ここまでカード当てと予言が続いてるので凄く面白そうな雰囲気で読めます。

“Hand Over Hand”は同じ手を数人に見せていきますが、Aのワンペア→Aのスリーカード→ロイヤルフラッシュのようにそれぞれが別の手に見えるという手順。
パケットトリックじゃなくデック使いますがかなり好みの現象で、ハンドリングも流れでやればそんなに大変じゃないです。

密室殺人をテーマにした”Clueless”は、ギャフの絵力的な側面が強く手順的には普通ですが、単に箱の中のカードが別のカードに変わるというより微妙なカードの変化というのは良くて、シナリオに沿ったものとして無理ない範囲だと思います。

“Oddsity”と”Minds Gone Blank”はどちらもブレインウェーブ的な現象で、後者はダブルブランクから始まって1枚だけ裏面が表示されるという見せ方が面白く、エンドクリーンつーわけではありませんがラフは使わないので比較的ライトに演技できます。

Spirited Moves

最後の章では技法が解説されてます。

“Boldout”は数枚のスタックを維持しつつ観客にシャッフルしてもらう方法。
Gaffed by Halfの章での手順に大いに活躍します。
この手のはベンジャミンアールのあれが強いですが、数枚の順番を全く変えずテーブルもいらないこの手法も覚えておいて損はないかもしれません。

リフルシャッフルの流れでリバースする”Dovetail Reverse”はちょっと練習してみたい感じです。
自然にできれば角度もそこまで気にしなくていいし流れで返せてボトムにリバースカードを残さないようにできるのもメリット。

フォースは2つ、”Midsection Force”と”Mark Forces”というのが解説されていて、どちらも堅いとは思いますがその選ばせ方をさせる手順となるとまあまあ限られそう。

全体的にそのままやってみたいってのが少なく、根本的に好みや演じ方が合わないってのはありましたが、それぞれの手順に使われるアイデアとしては面白いものがいくつもありました。
それをそうやって使うのかというのもあるし、あんまり使う人がいないマイナーな手法もあって、特にメンタル系のプロブレムのどこかで役に立ちそうなものが多いです。
似たような手法や現象が多いので、ぶっちゃけもうちょっと絞ってそれぞれをブラッシュアップしていただきたいという感じではありますが、これだけ多作で最新刊でも出涸らしパサパサということはないので、もしかしたら過去作はもっといいのかもしれません。
なんかおすすめあれば教えてください。

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