by jun | 2020/10/14

2017年に出たPatrick Redfordの本。
オリジナルのスタックであるRedford Stackとそれを使った手順とか色々解説されていています。
正直このスタックは前に覚えようとしてやめちゃったんですけど、なんか続編が出るようなので読み直しました。
Sleightly Out of Order (PRE ORDER) – Patrick G. Redford

実際Redford Stackを覚えなくても他のスタックで出来るのもあるし、観客の前でのスタックの組み方やメモライズデックの覚え方、フォールスシャッフルなどの周辺技法など、スタックを扱うにあたっての諸々が網羅されているのがこの本のいいところです。
特にメモライズドデックを使った現象は軒並み良くて、手順の中で使われている技法や演出にも目を引くところがありカード好きならかなり満足できる内容になってます。
とはいえRedford Stack便利は便利なのでまずその話から。

Redford Stack

最初の方のチャプターでがっつりRedford Stackについての解説があります。

どういう特徴があるか、リストにまとめられてる一部を紹介。

  • ニューデックオーダーからはもちろん、どんな状態からでも素早く組むことができる
  • ステイスタックや赤黒セット、サイステビンスなどにトランスフォームできる
  • ニューデックオーダーに戻せる
  • エニーポーカーハンドが出来る
  • ブラックジャックやブリッジの手順も出来る
  • スペリングで色々できる

などなど。
一部、その手続きするんやったらどんなスタックでもそうやろというのもありますが、別のスタックへのトランスフォームは比較的少ない手数で出来ます。これは便利。
それぞれの作業は覚える必要があるあわけですが、その覚え方はいちいち解説されているので頭の中で復習しやすいです。
52枚の記憶法とその例文も解説されています。
これはアルファベットを数字に置き換えて頑張る方法です。絵を書いて覚えるやつと組み合わせれば強そう。

また、シャッフルデックから手順の中でスタックを組んでいくものがあって、これはシステマチックに組めるスタックなら応用できるものになってます。
裏でそういう作業をするわけですから現象的にも長くなるわけですが、2つのトリックを組み合わせて完成させていくやつとかはまだまだ可能性ありそうです。
“A Subtler Game”は消去法的なカード当てをやっていくもの。この手の積み込みはいくつかバリエーションがありますが、観客がずっとカードを持ってるからどんどんサスペンスが高まっていくようになっていて、演技自体も比較的難しくないと思います。

あと、”Super Card”というメモライズドデックに一枚混ぜておくとよりラフに扱えるようになるものが解説されていて、こういうのはやりだしたらキリがないわけですが、1枚で効率よくなるなら入れない手はないというものです。

エニーポーカーハンドは結構凄いです。
覚えないといけないことは多いですが、ワンペアのランクも指定できる。
プログレッシブポーカーはスタックから若干の操作が必要なのでアロンソンの方が上。

スペリングは全部対応してるわけじゃないけど、コールカードが該当してる場合は操作しなくていいのでミラクルっぽく見せれます。

一個一個を取り出すとこれのためにスタック覚えるのもなーってなるんですけど、これが全部できるというなら覚える価値は全然あるかなと。
それ言い出したらアロンソンもタマリッツもアラゴンもそうだし、一体どうすればいいんでしょうか。

Faro-Effects

Redford Stackとファローシャッフルを組み合わせた現象が解説されています。
現象はサンドイッチが3つとポーカーデモンストレーション。
サンドイッチはスタックを崩さずファローシャッフルだけで頑張るので、ファローシャッフルだけで元のスタックに戻せるようになってます。
その途中で簡単なポーカーデモンストレーションができるという感じ。
“Tut Tut Tut”はコレクターなのですが、これはスタックの位置のAを表向きにするだけで綺麗にできるようになっていておーーってなります。
スタックを崩さないためにフォースが必要になってはくるのですが、この本全体通して任意の枚数目のカードをフォースするテクニックは習得すべきところかと思います。

Generic Memorized Deck

どんなスタックでもできるよ手品のコーナー。
最初の3つはコールカードのリベレーションです。
観客の手の下でさっきまでなかったカードがトップに上がってきたように見える”Velleity”、テーブルを貫通する”Thru the Table”、ドリブルの中からキャッチする”What’s the Catch?”と、どれも面白いアイデアです。
特にVelleityはシンプルなスタックの使い方ながら、本当に観客の手の中で現象が起こったように見えるもので素敵。
Thru the Tableも体感型手品としてとても良いんじゃないでしょうか。

そういえば最近ジョシュアジェイがなんでもかんでもコールカードでやれば良いというわけではないというエントリーを書いていて、どういう場合だと効果的に働くかというのをちょっと考えていたんですが、上の3つはどれもコールカードでやってこそという感じがします。
現象だけで捉えるとなかなか一般化するのは難しい話ですが、少なくともそれようの演出が機能しているのは確かです。
Named-Card Effects are NOT Always Better than Chosen-Card Effects – magic blog

2枚のカードを当てる”Twain”はちょっと凝った原理で、これが大変素晴らしいです。
原理的な面白さもあるし、観客の操作はシンプル。演出的にもはったりをかましつつ最終的にガチメンタルとしか思えないような見せ方ができます。良い感じの原理を使っていて、この手続きからできることの可能性もかなり広く、二人目のカードのパケットには触れなくていいので一人目のカードより二人目のカードを当てるのが難しいという見せ方がいくらでも考えられます。

単売されてる”Ninja Tossed Out Deck”もここで解説されています。
全ての操作を観客にやってもらえて、箱の中にしまって箱から出さずに当てれる手品です。
これをちょっとややこしくしたような複数枚当てるバージョンが解説されています。演出も良くて、人が嘘をつく傾向からカードを当てるという感じで、いくつかセリフ例が書いてるんですけど、カードを特定できてるだけで嘘の付き方までズバズバ言い当ててるように思わせることができます。面白い。

More Redford Stack Tricks

ここはRedford Stack特有のトリックが解説されてます。

“O.F.M.”は観客のカードの位置を演者が当てる手品。
記憶術のデモンストレーション的に見せるもので、2段階目は観客がカードを言う前に当てることができます。
原理も面白く、ルーティンとしても綺麗な流れですが、これはスタックをトランスフォームさせるための手順でもあるので、ややカードを覚えてもらう手続きが冗長。演者の都合に観客を付き合わせる感が残ってます。

“Twegen”の現象はTwainと似てるんですが、密かにA〜Kオーダーに並べ替えてしまうという手順になってます。
現象のシンプルさは失われてるけどこれは羨ましい。

表題作の”Temporarily Out of Order”は5フェーズからなる超大作。
現象はメイト一致の連続から、A〜Kが揃うまで。
メイト一致は2つのパケットに分けて進行するもので、いちいち観客が自由にできるところがあるので大変不思議。
Swindle Sortのバリエーションや、メンタルチックに見せるフェイズがあったり盛り上がりも十分です。
特にフェーズ4の完全コインシデンスは素晴らしくて、2つのパケットでそれぞれ裏表のパケットを作るのですが、裏表は違うのに一致するのがとても良くて、裏表にする手続きでも完全に順番が入れ替わってるように見えます。
ちなみにオチのA〜Kが出るところが不要ならRedford Stackは必要なく、フェーズ4で十分落ちるので原理だけ覚えれば大丈夫です。
技法の発展自体は既存のものが大半なのですが、その組み合わせがとにかく見事な一連の手順。

It’s About The Story

Redford Stackを使ったSam the Bellhop的なのが3つ解説されてます。
スタック覚えるにはちょうど良いかもしれないです。
この本に載ってる手順で最終的にスタックが組み上がって終わるものに続けて演じれば効果的かと思います。
いやまあでもメモライズドセットが手元にある超ボーナスステージでストーリー手品に行くという選択肢は自分にはないですけど、憧れ手品ではありますよね。

Utilities

フォールスシャッフルとカットがいくつか解説されてます。
オーバーハンドシャッフルのフォールスは普通に良い感じです。
慣れが必要ですが、リフトシャッフルやオプティカルシャッフルで使うあれをしなくていいのでゆっくりした感じでできます。

3つに分けて積み直してもシングルカットの効果にしかならないやつはスタック扱う上で絶対覚えておいたほうがいいやつ。とても錯覚が強い。

Two Deck Switches …and a Force

デックスイッチが2つ解説されてます。一つはまあポケットに手入れるやつの一工夫版という感じで、似たような考えのやつはなくはないというあれです。

もう一つのThe Interchange Forceというのが良くて、現象のあとにスイッチされた状態になるもの。現象は観客に1枚カードをひっくり返してもらい、もう一つのデックを見ると同じカードがひっくり返ってるというあれ。このハンドリングがとても自然で、操作は全部観客にやってもらえて、この手の作業でありがちなテーブルの下でとか上においてひっくり返してカットとかそういうことがなく、テーブルにスプレッドできる。
デックスイッチ云々をおいといてもとても良い手品です。

Stacking Into Effect by Others

Redford Stackをちょちょいとやると、あの人のあの手品が出来るよ!という紹介があります。
解説はありませんが良い手品ばかり載っており、ここでRedford Stackやっぱりちょっと羨ましくなる感じです。

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