by jun | 2018/07/12

この本はリチャードカウフマンが書いたThe Collected Almanacの中から厳選して日本語訳したもので、35名のマジシャンによる100個のトリックが解説されています。


世界のカードマジックはリチャードカウフマンのトリックがほとんどだったので、35人いるこっちの方が世界の感は強いですね。
ただ、こっちは「クロースアップマジック」というには内容が偏っていて内訳はこんな感じです。

輪ゴム : 3
お札 : 4
ボール&ベース : 1
メモ用紙 : 1
スプーン : 1
シェル :1
ダイス : 2
砂糖 : 1
ESP : 2
カード : 84

大半がカードマジックで、シルクはおろかコインマジックの手順も1つもありません。
マイケルルービーシュタインも輪ゴムのトリック1つだけで、元の本にはコインの手順も入ってるのに何故選ばれなかったのかはかなり疑問。
リチャードカウフマンのまえがきも訳者のあとがきもないのでチョイスにはかなり謎が残ります。
あと、技法1つだけの解説して特にそれ使ったマジックは紹介されてないマジシャンがいるかと思えば、ジェニングスだけで11手順あったりと明らかにバランスはおかしいです。
元の本に何が載ってるかについては例によってデニスベアさんのデータベースをご参照ください。
The Collected Almanac (Richard Kaufman)

この本は世界のカードマジックや世界のコインマジックと違って現象と準備と演技が別々に書かれていて、トリックだけ追うには読みやすいのですが、考案経緯や狙いなどは書かれておらず物足りなさもあったりします。
まあでもやっぱり大物揃いでトリックは面白いですし、カードマジック好きなら持っていると結構遊べるんじゃないでしょうか。
というわけで一部気になった人ごとに紹介したいと思います。

ジョンカーニー

カードと輪ゴムを使った「ラバー・ディテクティブ」という1手順のみ解説。
選ばれたカードをデックに戻し、デックに全体に輪ゴムをかけ、かかってる範囲が狭くなっていって最終的に観客のカード1枚のみをキャッチします。
ヒロサカイ方式との違いは輪ゴムが消えてからすぐにスプレッドできるところで、これはなかなかのメリットです。
輪ゴムの特性よりもカードスライトに頼る手順なので難易度は高めですが、他にも応用が利くムーブなので頑張りましょう。
カーニーがやったらさぞ自然にできるんだろうなというところを想像しながらやるのがおススメです。

デレック・ディングル

カードマジック3種類解説。
「ホリーP.O.D.」は穴開いたジョーカーを使ったサンドイッチカードから、ビジュアルに真ん中のカードが消えてデックの中に瞬間移動。
これはマジ最高ですね。
ギミックもスーパー賢いです。
これ穴あきジョーカーは裏の色が違っててもできるので1組作っておけばどのデックにも使いまわせるもいいとこです。
しかしデュプリケートには抵抗あってもこういうのは受け入れられる心理って一体なんでしょうね。

ビジターのちょっとした改案である「アイソレイテッド・ビジター」はビジターの例の気になるあれに工夫があるのですが、これはどうでしょう。
縦の動きによって例のあれは気にならなくなる気もしないではないですけど、その後横にスプレッドするから縦の動き自体が気になるような。
ビジターは大量に改案されてるものの、例のあれは本当にどうしようもない感じでしょうか。

ポール・ハリス

カードマジック2つ。
「バイナロジカル・シャフル」は4本の指にリフル噛ませていって引き抜くとフォーオブアカインドをプロダクションできる技法で、見た目面白いのにそんなにやってる人見ないです。
理由ははっきりしててプロダクションって割にクリーンにカードを示せないからだと思います。
その後デックにまたバラバラに戻してまた4枚取り出すまでがルーティンなのでそこに文句言ってもしゃあねえんですけども。

4枚のAと4枚のJを使う「スライダー」はリセットではなく、2枚ずつデックに戻すけどすぐ帰ってくるみたいな現象で、AとJを使う理由はよくわからず、とりあえず4枚のAと4枚の絵札が並ぶ絵面が好きなのかなという感じがしました。
気持ちはよくわかります。

ラリー・ジェニングス

100個のうち11個を支配するジェニングス。
そんだけ良いネタが多いということですね。

デックケースに1枚のカードを乗せて消してケースの中から取り出す「アストロカード」は仕掛けの機構とサトルティがおもろいです。

「サーチャー」は徐々にカードを絞っていくサンドイッチカード。
アーロンフィッシャーの大傑作”Search and Destroy”の元ネタです。
イメージ的には逆な感じがしますが、ジェニングスはスライトで解決してアーロンフィッシャーはセルフワーキングに近付けて改良しています。
結構難しくて、こう音もせずサーチしたい思いみたいなのがシャコ音に阻まれてなかなかうまいこと行きません。
だいたい観客の想像通りのことをするので、いかにサンドイッチカード自体が移動しているかというプレゼンが重要になってくるトリックです。

ビル・カルーシュ

指輪と輪ゴムのリンクの手順です。
二段階になっていて、どちらのムーブも今ではクラシック化していますね。
二段目のリンクは指輪輪ゴムにありがちな面倒なセットしなきゃいけないんですけど、比較的あやとりあやとりせずに例のポジションに持っていけるので覚えておくと便利。

アールネルソン

アールネルソンはダンアンドデイブが影響を公言しているぐらいで、クールにビジュアル現象起こす人です。
「アップ・セット」という4Aのライジングカードが解説されてて、日本語で彼のトリック学べるのはこれぐらいじゃないでしょうか。

4枚のカードを1枚ずつライジングさせる手法は非常に賢く、ラストは裏向きのカードが一瞬で表向きになるオマケ付き。
めっちゃむずいです。

ジョン・ラッカーバーマー

カードを中に戻した瞬間にトップにある2枚のジョーカーにサンドイッチしたように見せれる「オーディシャス・サンドイッチ」は最近のビジュアル系サンドイッチにはないような考え方。
コントロールを使わないので上手く演じることができれば最強の部類ではないでしょうか。
誰が上手く演じることができるか、それが問題です。
途中までこの手順通りにやってそこでカバーパスしてしまうのが一番無難な感じですが、それでもかなり速度は落ちるので良さは目減りします。
この手順をやるかどうかは置いといてサンドイッチ独特の錯覚を使うものなので覚えておきたいです。

「オートグラフ・ラウンド」は演者のサインと観客のサインが入れ替わって、最後はアニバーサリーにワルツしたような感じになります。
サインさせるのは裏。
演者のサイン使うって手順は結構好きで、デュプリケートと同じくなんぼでも事前に用意できるけど観客のサインと合体することでそういう考えに及びにくくなるのがとても面白いと思ってます。

「ブレイン・ウェイブ」はブレインウェイブデックではなく、ラフも使わない、どちらかというとカードアクロス的な現象。
青裏のカードの中から一枚選んでもらい、カードの裏にサインしてもらってからデックに戻し更にケースに入れます。
赤裏のデックを取り出すと一枚だけ表向きのカードがあり、それが観客の選んだカード、しかも裏にはサインがあります。
演じるシチュエーションは限定されますがかなり強烈なマジックで、手法的にも無駄は削ぎ落とされています。

その他、水油とか裏の色変わるリセットとかコレクターとかマニア度高めのカードマジックが多数解説されてました。

マイケルルービンシュタイン

輪ゴムの復活1手順。
デックに巻いた輪ゴムを結んで1箇所ハサミで切りますが復活します。
ロープマジックでありそうな見せ方を輪ゴムで。
輪ゴムだからこその説得力ある見せ方がさすが。

ジェイ・サンキー

「エアー・タイト」「フォージリー」「ピラミッド」などの代表作を含む6手順。
やはり80年代サンキーは素晴らしいですね。
この方よく玉石混交って言われますが、玉のほとんどは80年代に集中してて以降は石率が加速度的に増えてる印象。

注目したいのは、輪ゴムでカード探すよーって言ってデックに巻いたサイン付き輪ゴムが消えて腕時計に繋がってるという「テンポラル・エラスティクティー」。
なんか「輪ゴムが時間気にしちゃってさー」みたいな演出なのですが、観客にカード聞いておいてそのカードは特に手品的にどうにもならないというモヤモヤエンド。
手法としてはおもろいのですけど、なんとなくアイデア先走り感の片鱗が見えるような手順です。
時計と輪ゴム絡めてカードをどっかに出すぐらいこの時のサンキーなら余裕なはず。

フランクサイモン

「2ビット・サンドウィッチ」という本の中で唯一コインを使うマジック。
選ばれたカードを真ん中に戻し、2枚のサンドイッチカードを表にして間にコインをはさみ、次の瞬間に真ん中にコイン、サンドイッチカードの間に選ばれたカードという風にカードとコインの位置がトランスポジションする変わった現象です。
カードもコインもデュプリケート使わないのでサインしてもらえます。
カード同士のトランスポジションより遥かに楽に行えて、コインはカードと違っていちいちひっくり返さなくてもそこにコインがあることを示せるのがごちゃごちゃしなくて良いです。
コイン出す時のなんでやねん感をいかに無くせるかが勝負。

とりあえず10人書きましたが、他メジャーなところだとダローとかバーノンとなマックスメイヴィンとかスライディーニのトリックも解説されています。

カードマジックに関しては比較的ビジュアルなものが多く、ビジュアルなだけ難易度も上がるみたいな印象です。
個人的ベストはホリーP.O.D.かサーチャー。
ラッカーバーマーのブレインウェイブも機会があればやってみたいもんです。
というか100個も手品浴びると何が良いとか不思議とは何かとかよくわかんなくなってきます。

Sponsored Link

Comments

No comments yet...

Leave a Reply

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です