by jun | 2019/04/19

2月のダニダオルティスと先週のアシウィンド、どちらも大阪で開催された来日イベントに行ってきました。
まずは関係者の皆様に圧倒的感謝を。
どちらもマジで最高のイベントでした。


まず先に行われたダニダオルティス、作品に衝撃を受け続け超好きなマジシャンなので目の前にいるだけでむっちゃ興奮しましたが、ショーの内容は予想を遥かに上回るもので笑いっぱなし驚きっぱなし口開きっぱなしの1時間。
発表されてる作品はほとんど見てるし、DVDで見たのを近くで見れるぐらいの気持ちで行ったらぶっ飛ばされました。
一般論で言う手品は生で見た方が良いとかそういうレベルの話じゃなく、やばい手品をやばく魅せることに特化したショーで本当に間近で体感できてよかったです。
一番前の席に座れたんでカード引いたりストップ言う機会も多く、その結果が意味不明な現象に繋がって心底気持ち悪い思いをさせていただきました。

一見ジャジーに見えるトリックの数々が後の伏線になっていたり、ライブならではの構成も凄かったです。
UtopiaやReloadedのショーでもああいう繋げ方のはなかったし、借りたデックのあんな使い方初めて見た。あれは本当にやばかったですね。ちょっとびっくりしすぎて死ぬかと思いました。

あと意外と威圧感とかなくて、プレッシャーないからエニエニとか選択が重要なトリックの余韻がすごい。
違う数字言ってたらどうなってたんだろうとか別のカードを選んでいたらみたいなことが巡って手法を考えさせない現象に対してベストな後味。
あの演技スタイルもあって楽に見れるし現象起こる時は一瞬空気が締まって驚いた瞬間に拍手してしまうような空気が出来てました。
目の前で机ドンッも最高に興奮したし、後から振り返ってトラバハンドエンカサで語られてる演技論のはまりっぷりを確認した次第です。

現象の一つ一つもまあイカつくて、次々当たったり変わったり移動したりエニったりするの全部が衝撃。
後から考えたら知ってるのもいくつかあったんですが、即興性の高さのせいか現象起こるギリギリまで気付かず、気付いた時にはもう記憶改竄されまくってたと思います。
DVDで見てそこまでピンと来てなかったのもことごとく良かったし、超好きなThe Oneの観客役できたのはマジで最高でしたね。
徹底的にライブに最適化された手品を散々浴びてショー見るだけでもかなりの刺激を受けました。

レクチャーパートはエニエニ中心で、トリックも理論もどこかで既に語ってることが多かったんですが、映像や文章だとにわかには信じがたい話でも目の前で見せつけられた後だと納得度が違って本当にベリベリイージーな気すらしてきます。
どういう話でも質問に答える時でもまず大きい話からするのが特徴で、個別のやり方がどうというより、やばい手品をやばく魅せるためにトリックより重要な前提を意識してることが伝わってきました。
そんでやっぱりその前提がしっかりしてる手品は強く、なんでもできるような状況に助走なしで持っていけます。
当然かなりの経験が必要になってくる話ではありますが、真近で散々喰らってるせいでDVD見てるだけじゃ絶対にここまで伝わらないというような説得力があって自信とモチベーションになりました。
そこらへん飲み込んだ上で細かな手法を聞くと効果を実感しやすく、観客との関係と態度という手品の基礎であり本質である要素を極めた人の語るそれは大胆であるとか図々しいという言葉で片付けられるようなものではなかったです。

その興奮を2ヶ月間引きずった状態でアシウィンドを見たわけですが、映像の量が少ないからというのもあってライブは意外な内容で、予想外で予想通り予想以上に良かったと言いましょうか、良いのは知ってたけど思ってたのと全く別の方向でした。
少なくともThree Card Routinesからは想像できないショーで、あえて言えばChapter ONEについてるDVDにその片鱗があったような気もしますが、キャッチーな現象はそのままに即興性の高さと公明正大さで魅せるショーになっていてダニダオルティスにかなり近いものがありました。
シュッとしたイメージのダニダオルティス感というとジョセフバリーとかもいますが、どっちかと言うとかなりダニダオルティス。
現象の優先度、サイコロジカルな要素や原理と技法の使い方など、ステータスの振り方に違いはあるものの根本のクロースアップショーに対する考え方そのものはかなり近いんじゃないでしょうか。
解説していた手法や考え方も共通してる部分が多かったのでトレンドや本人に影響を受けてる部分もあるのでしょうけども、タマリッツ他スペインの手品やホフジンサーなど源流にあるものの近さって感じかと思います。

とにかく現象が恐ろしく借りたデック即興とは全く思えないことが次々起こってそれがエスカレートしていくし、理屈でどうこうできることには全く思えません。
当然レクチャーでは解説してくれたわけですが、そんなことやってるとは全く思えない構成力とフリースタイルでそれやろうとするっていう事自体にむっちゃ感動しましたね。
一連のルーティンは世界トップクラスの演技力あってこそ成り立つものでもあり、普通にやったら作業ダレ場間延び待った無しのとこが全部盛り上げとサスペンスになっていて、現象までの手続きを踏んでるような印象は皆無。
全てのセリフや動作に複数の意味があって、裏の意味は徹底的に隠蔽され表向きは極上のエンターテイメントという手品とはそうあるべきというのを恐ろしいほど高い次元で安定させててエグすぎました。

トリック的には新作レクチャーノートPaper Workでも解説されてる”Noah”がスーパー最高で人生ベスト級。
昨年デニスベアが発表した同一テーマの作品がめっちゃ好きで、ここしばらく関連作品を調べてたのもあって頭割れるかと思うぐらいの衝撃でした。解説読んでも端から端まですごい。

ショーではrepertoire収録作も演じられていたのですが、読んでてもあそこまでの演技を全くイメージできてなかった読解力のなさが辛いところで、文章だけではどうしてもそれは無理やろと思ってしまうのはよくないですね。
今回のレクチャーでアシウィンド作品もそうだし、あらゆる手品への触れ方の意識はめっちゃ変わりました。
そもそもアシウィンド作品は改案というより超解釈的なところがあり、作品の捉え方が尖っていてプロットの元ネタや原理など要素だけ取り出せばクラシックなものをフレッシュに読み替える、表面的な見方だけでは絶対に出ない発想に満ちています。
ダニダオルティスもよくラテラルシンキングという言葉を使いますが、掘ってる場所と出てきたものの磨き方は結構違う印象で、根っこの考え方が似ている2人のショーを近い時期に見たことで手法や理論をどう演技にフィードバックさせるかという幅を感じれたのも良かったです。

まあとにかく2人とも超凄かった。
手品はじめて10年以上経つけどまだこういう驚きが出来て嬉しい限りです。
2人のパフォーマンスも初期衝動感を喚起するようなエキサイティングなもので、何も知らない状態みたいに丸腰にされて楽しめたし、ちょっと手品のことわかったつもりでいる時にガツンとやられるあの感じもあって、手品ってそんなことあんのかっていうTriple IntuitionやDouble Exposureを初めて見た時のような沼の底知れなさを同じ人達からまた味合わされました。
手品に限らずポップカルチャー全般、リアルタイムで傑作がボコボコ誕生する黄金期の祭り状態はとっくに終了してしまったって虚しさを今の世代はどうしても感じてしまいますが、クリエイターは人の何倍も昔は良かった事を知ってるしそれを越えるために作品を作ってるわけで、実際にそういうクウォリティのものを見ると今の時代最高じゃねって思えますね。

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