2015年にビルグッドウィンが来日した際のレクチャーノートで、内容はカードマジックのみ、スライト系5、セルフワーキング1、技法1の7作品が解説されています。
2015年以前に発表されてるものばかりですが、雑誌投稿ものも多く、ググったりデニスベアったりしてもなかなか出てこない作品もあったりして知られざる物に触れてる感が良いです。
この時のレクチャーはフレンチドロップ主催で、ノートの翻訳・編集はポン太 the スミスさんが担当されてます。
Pickpocket Collectors
キング4枚出してから、カード3枚選んでもらってその3枚をポケットに入れます。
キングでポケットの上をすりすりすると3枚のカードがKの間に挟まり、パケットを撫でるとキングが消えてポケットの中に移動するという手順です。
グッドウィンはとにかくこういうあっち行ったりこっち行ったりが好きですよね。
しかもだいたい見た目の派手さよりは随分楽で、この手順もパームの使用は最小限に抑えられてます。
お尻のポケット使えばノーパームでバラバラのポケットから出すことも可能です。
パケット接近が気にならんでもないですが、不要にシャコシャコしたりしないし見た目の矛盾もないのでそんなに怖さはないです。
ビルグッドウィンが好きなカウントのところの方がヤバいのですけど、ここは裏向きのカードに注目が集まるのでギリなんとかなりそう。
スリとか警察とかの話をするのは恥ずかしいんですが、こういう引っかかる部分がある手順だと誤魔化すのには効率的なのですよね。
Hofzinser Under Cover
エースをよける→選んでもらう→エース乗せる→1枚裏返る→マーク当たる→真ん中裏ある→エース→エースと思われてたカードが実はー、の順番のホフジンザーです。
ホフジンザープレブラマーの方からするとエースをデックに乗せるあたりが気になるあたりでしょうか。
そこは流れでやるとあんまり気にならなくて、むしろデック置いてエース持ってエース置いてデック持ってみたいな鈍重さがなくなって良いです。
選んだカード戻してからエース置くまでコントロールの動きがないからマニアが見てもエースとカードが接近した印象がないのも大きいですね。
あと、裏返るエースは表向きで3枚目に見せてちゃんと3枚目で裏返るというこだわりがあり、他のエースの並びも変わらないし数え直しもなし。
選んでもらってからほぼ一直線で進むのでとても綺麗です。
使われる技法も良くて、複数枚をあれにするあれはテーブル使わないサンドイッチカードとかコレクターとか応用範囲も広そう。
Bison’d
裏向きのデックのトップに表向きのQを2枚置いて、カードを2枚選んでもらいます。
1枚はQの間に挟んで、もう一枚は右手に表向きに持ち、ピョコってやるとビジュアルに入れ替わります。
見た目的には忍者が回転する扉に煙爆弾投げてそこに突っ込んで煙が明けたら壺に変わってるみたいな感じと言えばいいでしょうか。
このネタではカードは回転しませんが、変化後のカードはクリーンに示せて、元にあったカードが薄皮一枚先にあるという意味ではそんな感じです。スモークウォッチが欲しい。
一瞬で終わる上に移動距離が短いのでだからなんだと言われたらそうなんですが、こういうの好きです。こういうのこそ好きです。
Optics
スプレッドして観客に4枚触ってもらってアウトジョグ、全部エースでしたというやつ。
特徴はフォースは1枚もしなくていいこと、4枚とも観客が選ぶこと、抜き出した後にデックに乗せないことです。
アーロンフィッシャーが同様の現象である「フォースド・アンダーカバースイッチ」の解説の中で「観客が4枚選ぼうとそのうち1枚を演者が選ぼうとインパクトが強くなるわけではない」的な事を言っていて、1枚を演者が選ぶ事で負担が激減することや演者が選んだことが気にならない方法にも触れていますが、ちょっと難しくても4枚とも観客に選んでもらえるなら選んで欲しいものだったりします。
このOpticsはそういう意味でかなりバランスの良い手法で、極めて自然な動きの中で色々と問題を解消してます。
手でカバーされる瞬間がありますが、次の一瞬には特に矛盾のない状態になるので、デックでカバーしたりデックの上に乗せたりするよりかはあの時何かした感は残らないんじゃないでしょうか。
Optical Transformation
表向きにスプレッドしてカードを指差してもらいそのカードを裏向きにしてアウトジョグします。
これを4枚やってデックをひっくり返して4枚を確認してから抜き出すとビジュアルに4枚のエースに変化するという現象です。
これがノーセットでできます。
セットしてもできますが観客がシャッフルしたデックでやるとかなり強いです。
通しでスムーズにやろうとするとかなり難しいですが、ブレイクの取り方やひっくり返し方などで引っかからない親切設計ではあります。
あとこれ演技後にデックにゴミが残るタイプの手順なのですが、それをリサイクルできるマジックが紹介されててエコだなと思いました。
紹介されてるマジック以外でも4Aの手品色々知ってるとなんかには繋げられると思います。
エンドクリーンじゃないからダメとかじゃなくエコな気持ち大事ですよね。
というか手順ってその状態にどう持っていくかとその状態から何ができるかの組み合わせですし、色んな手品や技法の開始前と終了後の状態を把握してるとエコに生きられそうです。
知識がないとエコを装って無理に都合良い環境に持っていくシーシェパードみたいな手品になります。
Alterations
ミラスキルの3段重ねバージョン。
1段目は普通のミラスキル、そこからハートとダイヤ、スペードとクラブでミラスキル的な事をして、それぞれ予言できるというセルフワーキング。
フルセットが必要ですが一旦覚えて仕組み理解すれば覚えられるやつで、後半は好きにシャッフルしてもらえるのでミラスキルぶりは失われません。
後半はミラスキラーが見てもかなり不思議で、マニアが見ても一般の人が見ても後半に盛り上がりカーブを作れるセルフワーキングってとても良いですね。
後半は枚数減った状態でやるから間延びしないし、箱の中のあれも自然にあれできる流れでとっても素敵です。
連鎖ミラスキルはデビッドウィリアムソンの”Aunt Mary’s Terrible Secret”もスーパー最高ですが、やや重たい手順なのでどっちも覚えとくと良いですね。
Windmill Pass
ファンの動きでカバーするパス。
ダイアゴナルパームシフトをファンでカバーしたりリプレイスメントをファンで誤魔化すのとかありますけども、これはパスです。
そう聞いてどっちかを想像されるかと思いますが、自分が思ってたのとは逆でした。
ファンする系だとCherry Controlが最強じゃないかなと思ってますけども、このWindmill Passの方が安心感がある気がします。
左右より上下の角度の方が意識しづらいので、なにかをどっちかに向けてれば見えないってのがわかりやすいのは良いですね。
しかし難しいです。
これは映像で本人がやってるの見たいっていうか本当にレクチャー行けばよかったと後悔しております。
このレクチャーが開催された日、ちょうど「マッドマックス 怒りのデスロード」を公開より1週間早く見れる試写会的なものの予定が入っていて、その時あんまり手品テンションも高くなくてマッドマックスを選んでしまったのですね。
結局マッドマックスはその後30回ぐらい観に行ったんですが、観る度にビルグッドウィン行っときゃ良かったと思いましたし、声出して良い上映の時もみんなが「イモーターーーーン!!!!」て言ってるところでグッドウィーーーンて叫びたくなりました。
皆様におかれましては後悔のない人生を送れるよう、気になるレクチャーがあったらあらゆる予定をキャンセルし、欲しい本があれば瞬時に絶版になる可能性を視野に入れてカートへイン、遠方でのイベントも他人事と思わない、廃人になる事を決して恐れない姿勢が求められます。
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