by jun | 2018/10/10

2010年に出たマークドデック本で、作り方からその特性を活かしたマジックも20個ぐらい解説されています。
あんまり詳しくないジャンルなので、自分が知ってて似た特徴があるボリスワイルドマークドデックと比較しつつ。

The PM Card Mark System

マークの仕方について。
印刷機や特殊な道具も必要とせず、ペン1本で作ることができます。
マークは直感的に読めて、各数字の書き方に目立たないような工夫がされていて、ボリスワイルドマークドデックに抵抗ある人でもたぶん大丈夫。
ボリスワイルドマークドデックは素早くカードを探すことに特化して、決してマークドと思わせないルーティンと組み合わせて効果を発揮するものでしたが、PM Card Mark Systemは良くも悪くもバランスを取ったマーク法です。
それでも図形方式や2進数を使ったマークより遥かに早く読めますし、ガン見されると困るあたりはボリスワイルドマークドデック寄りと言えるかと思います。

カードのマークともう一工夫あって、それによって以下の手順が進められるようになってます。

Assorted Miracles

ここから手順の話です。

オープニングの”Stop Sign”は演者がデックに触れないストップトリック。
観客がデック持ってても読めるということを活かしたもので、ストップかけるのは演者ですがかなり不思議に見えるはずです。
こういうのは観客にシャッフルさせるのとさせないのじゃ結構印象変わると思うんでマークド万歳って感じですね。

2作目の”Core Meltdown”はいきなり演技の難易度が上がります。
元ネタはピットハートリングの”The Core”ですが、5人の観客に順番に自由な選択をしてもらってカードを減らしていき、自由にコールされたカードを残すというものです。
自由な選択をさせる部分はマークドデック関係なくても使える方法で、マークドデック使うことでかなり負担が減り、カードのコールはガチ自由にできます。

Vanishingの商品ページでも推奨されている”Simple Miracle 1″はタイトル通りシンプルな原理でシンプルにカードを当てます。
操作は演者が後ろ向きのままで、カードの表を見ずにというマークドを疑われようのない使い方。たぶんこういう使い方がベストなのでしょうね。
“Simple Miracle 2″と”Simple Miracle 3″は同じ原理で当て方の演出のバリエーション。負担なく動きの意味に説得力ある2が好きです。

相性が良さそうで意外とマークドを使いにくい予言マジックですが”The Rule of Three Prediction”は予言の書き方からカードの選ばせ方まで凝っていて演出も優れています。ギャグの繋ぎには好みが別れるかもしれませんけども、「3つの予言を当てる」という部分に嘘がない分、オチできっちり当てるのでなんか決まった感が出て良いです。
こういうタイムラグや中盤の時間の使い方で、基本後出ししかできないマークドデック使って予言が成立する良い例かと思います。

次の”Perfect Prediction”はノーフォースノースイッチで予言の紙を1枚テーブルに置いた状態でスタートします。
観客にシャッフルしてもらってからのフリーチョイス、マークドデックでなければ絶対に不可能な完璧な予言トリックです。
マークドデックの中でもこれを成立させれるものは限られてるんじゃないでしょうか。
ていうかこれでも結構ギリな気はします。
テクニック的にすっごい苦手意識がある手法なので実演する日はたぶんないんですが、メンタル慣れてる人なら余裕なんじゃないでしょうか。

“Seven Shuffles”はニューオーダーの状態から観客が7回リフルシャッフルして、観客が言った枚数目のカードを当てる手順。
7回シャッフルするとどうなるかご存知の皆さん向けのやらしい手品で、原理臭を漂わせつつ食べてみたら別にそんな味はしません。
この本の中ではテクニック頼りの一作で、使われてる技法は結構おもろいのでカードアットエニーナンバーやストップカード好きの人にはおすすめです。

章のラストはボブファーマーさんの”Markus Maximus”。マークドデック禁断の後ろ向きで戻してもらって自由にシャッフルさせる手順。
それを3枚当てます。
演出と手法がいい感じに合わさったもので、盛り上げるためのカードの言い当て方にも触れられていて面白かったです。

Nothing But Script

トリックについては後であっさり触れる程度で、台本がメインで書かれてる章です。
3作品が映画脚本のフォーマットで書かれていてなんかそれっぽい雰囲気を味わえます。

どれも割と直接的に使いながらマークドデックだと思わせない演出ではあるのですが、かなりラフに言えないと茶番感が出そうなやつで難易度は高めです。
それ関係あんの??って思われすぎてもだめだし、一見関係なさそうな話がカードを当てる材料なのかもと思わせる塩梅にしなきゃいかんのでなかなかの役者力が求められてます。
単に心を読みますとかはもっと難易度高いし、たぶん良い感じのバランスを探る練習用の台本としては優れてるんだと思います。

Addid to Existing Tricks

既存の作品をマークドデックでより魅力的に!みたいな話です。
キーカードで当てるにしても表見ずに探せるだけで不思議度はぐっと上がりますし、マニアでも知らなければ絶対にわからない系の原理と組み合わせると更に強くなります。
原案との差異も書かれてるのでどれだけすっきりしたかもよくわかり、元の原理知らないのもあったので面白いパートでした。

“The Tapping Card Location”は目隠し状態で観客がカードを叩く音から当てるというもの。
元のトリックも優れていますがマークドパワーで準備段階が怪しくなく進行もスムーズになっています。
ただ、枚数を絞ってカードを広げるのでマークド疑われやすさでいうとちょっと不安もなくはありません。
カードを特定する部分をもう少し搦め手系のものにしてもいいかもです。

Jack MacMillenの大傑作をマークド仕様にした”The Mind Mirror”は元ネタからの跳ね率でいうとそんなでもないですが、繰り返し演じる方法が紹介されてます。
さすがに2回やると原理感が立ってくるんでどうでも良いと言えばそうなんですけども、裏向きのまま簡単なセットならできちゃうっつーのは強みですね。

“Two of a Kind”は現象のパワーアップよりもスタックが必要なのをマークドで補った作品で、あのDo as I Doの背中越しで真ん中に表向きのカード入れてもらうやつです。
マークドというよりスライトも結構使うのでむしろレギュラーでよくねって感じでした。

元からマークド使うネタをPM Card System使うことでシャッフル状態からスタートできるようになった”First Incantation”は名刺を使った予言で、色んな原理が混ざって追いにくくはあるけど若干混乱させ方向すぎな気もします。
選ばせ方が複雑なやつは予言でもカード当てでも観客の印象で見たときにマークドの良さが発揮されない感じが。

Stucking Deck

個人的に一番マークドデックと相性が良いと思ってるシステムデックを使ったマジックです。
特にメモライズドとマークドの組み合わせは最強だと思ってるのでもう少しボリューム欲しかったですが、このマークシステムはカジュアルに使えるっつー方が売りって感じですかね。

シンプルカード当てのシステム版、”Simple Miracle 4″はシャッフルすることができなくなった代わりに不可能性は高まりました。
演者が見てない状態でカードを隠してもらって当てる2段目も少し選ばせ方に捻りがあって良いです。
これぐらいだと観客にシャッフルしてもらうバージョンの方がインパクト強い気もしますけども、手続きがシンプルなのも捨てがたい感じ。

カップルの片方にカード言ってもらってもう片方がカード選んで一致する理想的現象の”Love Connection”は一切表を見ずにできるので強いです。
オープンプリディクション的なものなのでカードの選ばせ方が重要ですが、リカバリーで紹介されてる方法はギリギリな感じ。
これに付随して”The In-Deck Index Plus Miracles”というマークドメモライズドデックの扱い方も紹介されてます。

ラストのトリックは”Sylvania”というエニエニ。
バーグラス具合は数字とカードがフリーチョイスの2件クリアで、ハードコアエニエニマン相手でなければ全然これでええやんて感じのものです。

なんにしても演者がデックの表を見ないのは良いことで、頭も気もそんなに使わずにそれができるのは嬉しいですね。
あらゆる手法はいかにそれ使ってると思わせないかが勝負なので、マークドっぽさを排すことに全力が注がれていておもろい本です。
マークドユーザーでなくても演出やカード当ての盛り上げ方など参考になる部分も多く、色んなトリックの問題点に意識を向ける気になるような本だと思います。

マークド使わなくても「これで十分」的な事を考えてしまいがちですが、観客にとんでもない体験をさせるなら絶対に使うべきツールです。
現象がほぼカード当てに限られていて、みんな既に好きなカード当てがあるし、見た目的な印象や盛り上がり具合は変わらないからマークドデックがあんま流行らない気がしますけども、見せられてずっと尾を引くような手品をお手軽にできるってのは素敵なことではないでしょうか。

自由度の高さ、よく見られるとバレる、若干の後ろめたさがある、使うと見た目は良くなる、別に使わなくてもなんとかなる、使ってる人に対しての風当たりが不当に厳しい、ということでマークドデックはカツラと似てるなと思うことがあるんですが、あまり人の目など気にせずに自分の好きなようにするのが良いですね。
自分が禿げた時のこと考えるとたぶんスキンヘッドにするのでカードマジックなどやめてしまえということでしょうか。

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