by jun | 2018/09/20

1999年に発売されたShuttering Illusionsという本を加筆修正した日本語完訳版です。
カード、コイン、スレッド、ソリッドグラスの手順が解説されています。
手順で使われる技法は難しいものも多いですが、東京堂出版ものでこのあたりが細かく解説されたものは意外と少ないので参考になりますし、どのように見せるべきかという点についてもがっつり書かれていて面白いです。
理論部分はマニア的には面白く、ハードコアなエッセイも他ではなかなか読めない内容なので中身の是非はともかく読んで良かったと思える内容でした。
こういうのは読む時期によって結構印象変わったりするので何かのきっかけでふと読み返すとなんとも言えん感情になれるのでおすすめです。

Stabbed in the Sandwich

ブーメランカードのサンドイッチをやって、そのあとテーブルにデック置いてカードスタッブやるとサンドイッチカードの間に挟まるという手順。

ブーメランカードが派手すぎるので、2段目はもうちょい手品的に見せたいかなという印象。
使われてる技法に無駄がない分余計にそう思いました。
この本で展開されるマジックとはマジシャンとはみたいな話からするとギリギリな手順って感じします。
カードスタッブのやつはベンザイスのあれを練習してたことあるけど本当安定しないので泣いてます。

The Vanishing Aces Revealed

エースが消えてテーブルに置いた4つのパケットに手をかざすと出てくるやつ。

消失パートはパスを使うのですが、何万回も練習しろというスパルタな話と技術的な話、練習法などが書かれています。
動きの方はまあスムーズにできたとして、音について書かれてなかったのがちょっとあれで、少ない枚数パスしようとすると絶対音するんですけどあれは良いんでしょうか。
何万回もやってるうちに消えるとは思えないので諦めました。
完全にデックから消えたことを確認させるし、出現のさせ方からしてもパスみたいな消し方がベストだとは思えません。

あとパス要求する割にブレイクを親指でカチカチするのは容認していたりして、もっとスパルタを貫いてほしいです。

Point Blank

ピップが1個ずつ減って、全部のカードが白くなってなんやかんやでカードが当たります。

比較的穏当な技法でなんとかなるやつで、ピップが減って白くなるってのもおもろいです。

サッカートリックで全く関係ないカードが変化していくのってどうかなって思わんでもないですが、カードのどうでも良さとビジュアルなインパクトの食い合わせは悪くなさそう。

Kiss of Big Apple

選ばれたカードがりんごの置物の中から6つ折りになって出てきます。
別解で紹介されてるアンダーザスプレッドフォールドっつー折り方がおもろいです。
りんごから出す部分については「もしこの方法で観客を本気で驚かすことができなかったなら、マジックはすっぱり諦めて、切手のコレクションでも始めてください!」と大変自身があるようで。
確かに良い方法で冗談なのかもしれませんけど、だめだったらだめな理由考えてブラッシュアップしていくのも楽しみにさせてください。

A Curiously Strong Card Trick

りんごのテーブルホップ用。
こっちはミントケースから出てきます。
これめっちゃ良いですよね。
特にミントと一緒に出すところ。
この出し方ならダニエルガルシアのあれは要らんかなーと半年ぐらい悩んでますが、あれやっぱいいですよね。

Wish Fulfillment

紙マッチを使ったキックバック現象。
キックバックというか、1枚目のカードが2枚目のカードに変わって、1枚目のはマッチの中から出てくるって感じです。

小道具使うなら一捻りって感じが素敵で、2枚選んでもらう価値が十分ある手順です。
これどうにかカードケースでカード殺さずできないかどうか考え中。

Gaffless Invisible Deck

インビジブルデック的なことをレギュラーで。
この手のやつだいたいは普通にインビジブルデック使えやって思いますが、この方法はベストに近いです。
厳密にインビジブルデック的な現象ではありませんが、ワンクッション置くことで無茶を避けていてクレバーな感じ。
メモライズドデック使えばもっとすっきりいけそうすね。

Premonition Redux

観客が言ったカードがデックから消えて箱の中出てきます。

この消し方好き。
しかしあれ使うなら最初のあの作業はいりますかね??
あれなんだから然るべきタイミングであれして、半端なとこにきてもあーなってるからそこからあれでなんとかなるような。
この手のやつは消す前にいかに無駄な動きを減らすか勝負な気がするんでそこはちょっと気になりました。

The Self Contained Card on Ceiling

天井に貼りつくカード。
画鋲を使うべきかどうかみたいな論考から、たぶん現状ベストな方法に行きついています。

Handy Coins Across

テーブルを使わずに観客の手を使うコインズアクロス。
テーブル使わないってより観客参加が大事っぽいですね。
確かにコインは特性上それが難しいので、その方向で作られてるものは嬉しさあります。
たぶん技法的にもそんなややこいことしてないはず。

Well in Hand Okito

オキトボックスの手順。
コインが1枚ずつボックスから抜け出て、一瞬で元に戻り、その後全消えします。
コインだとこれが一番面白かったです。
部屋に転がってるボックスが何ボックスなのかもわかってないコインだめ人間なのであれなんですが。

Animated Ring

鉛筆に指輪通して動くやつ。
浮遊ではなくアニメイトなのがミソで、そのあたりについての理論やスレッドの選び方、適した照明や背景などみっちり書かれています。
環境についてはふじいあきらさんがクラシックマジック事典Ⅱで書かれてるのとほとんど同じで、たぶんこれが間違いない事実なのでしょう。

スレッドを使った現象の見せ方については他のマジックにも通じる大事なことが書かれてます。
要はこういうことらしいです。

「一般の観客は馬鹿ではないことを、どうか理解して下さい!」

これは本当に大事なことで、現象がダイレクトであればあるほど観客は見えなくてもその可能性を考えるし、勘のいい人なら核心に近付き、少なくとも不思議に見ることはできなくなります。
しかしダイレクトな手法を使った現象はわかりやすく、いかにダイレクトさを消してサカームーブ的なことも使いつつ観客を袋小路に追い詰めるかみたいな話。
文章もさすがという感じで読ませてくれますし、 環境と雰囲気が重要ってことがかなり腑に落ちました。

肝心のルーティンも細部まで練りこまれていて素晴らしいですね。
これは確かにシリアスな空気じゃないとできなさそう。

The Solid Glass

ソリッドグラスのルーティン。
コップを紙ナプキンで包むタイプのやつです。

エッセイ

何故、マジックはくだらない見世物なのか? (Why magic Sucks)、本当の秘密 (Real Secrets)、レッスンと学習 (Lesson and Learning)、謎の探求 (The Search for Mystery)と4つのエッセイが収録されています。
Lesson and LearningとThe Search for Mysteryはジョシュアジェイ監修のMagic in Mindにも転載されてるやつですね。

全体的にマジシャンとはどうあるべきか、てめえにとってマジックとはなんだみたいな話で、うるせえとしか言いようがない部分もあるんですがこんだけうるさく言わないとわかんない人もいるので優しさも感じたりします。
例えば下ネタ問題で、オリジナリティもなければ面白くもなく不思議でもない下品なだけなことをするマジシャンってなかなかいなくなりません。
それどころか嫌な気持ちになったりするわけですけど、ああいうのを面白いと思う神経の人は自分が面白いと思ったものはきっとみんなも面白いと思うはずみたいな考えなのでしょうし、偉い人が偉そうに書いてる文章を読んで自分のやってるのは本当にマジックなのだろうかみたいなことを考えてほしいです。

一方でThe Search for Mysteryあたりはかなりうるさく、マジシャンこうあるべきが行き過ぎて例え話もとんちんかんで何言ってるかよくわかりません。
いや別にそういう考えの人がいても良いし高い志を持ってることは素晴らしいに決まってるんですが、さすがにそれ語るのに「マジック」は主語でかすぎです。
というかその基準でやってないとマジックじゃないって言われるんなら、そうっすかさーせんとしか言いようがなく、高めた意識で不思議なことする人達だけがマジシャンというならはいそうですかって感じが。
終盤は特に「お前がそう思うんならそうなんだろう お前ん中ではな」という雰囲気になってきてて、なんかもう全体的に嫌なんでしょうけど無関係な人もうんざりするような文章書いても何も解決しないような。
仕掛け使うやつはだめで練習した技法を習得してるマジシャンこそマジシャンみたいな書き方も非常に気になりました。
その割にメモライズ使う手順でカンニングペーパーの使い方紹介してたりと、自分がやることは正しいの!みたいな感じがあちこちに見えて立派な意見も台無しです。

個人的におすすめなのはReal Secretsというエッセイで、種明かしがなぜダメなのかという話なのですが、10代のジェイミー少年が初恋の女の子に手品のタネを聞かれて「言っちゃダメだ!いや、でも言わないと嫌われる!」みたいな葛藤してるとこがマジ最高です。

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