by jun | 2018/12/22

ダニダオルティスがUtopia、Reloadedに続いてまた4枚組の鬼箱を出しました。
今回はEMCじゃなくGrupoKapsから出てて、デマトス品質よりはかなり落ちますが値段も安いのでしゃあないなという感じ。
演技は英語(スペイン語字幕を出せる)、解説はスペイン語に英語の通訳、インタビューはスペイン語に英語字幕というややこい仕様ではあるもののインタビューに英語字幕出せるのは嬉しいですね。
インタビューはマジシャンじゃない人からの影響とか暮らしの話から始まって理論ぽい話もあります。
トリックはカードオンリーの24作品。

Disc1 – NEW EFFECTS I

新作カードマジックが6つ解説されております。
最初のディスクはサイコロジカルフォースにちょっとアイデアを加えたようなものがメインです。

オープニングの”Full Concordance”はお馴染みの10が出るやつで新作感ないですが、確かにこの見せ方は初めてな気がします。At The Tableのオープニングで似たようなことやってたけどあれは解説なかったですしね。
全部のカードが現象に関係してるように見えるのが良くて、他の10出るやつより安全な気もしますが、気がするだけでしょうか。

続く”Cards To Order”は最初にカードを4枚選んでもらって観客のストップで4つの山を作り、最初の4枚のカードの数字とパケットの枚数が一致、その後にさらにおまけが付きます。
At The Tableで解説してた時はおまけがなくて、かなりアドリブ的な対応をしていた感じでしたが今回は堅くきました。オチもしっかりしてるし実際にやるとしたらこのバージョンという感じです。

このディスクで一番気に入ったのは”The Dagger”というカードスタブ。
3枚カードを選んでもらってデックに戻し、ナイフで分けたところから1枚目、観客に分けてもらったところから2枚目、上からナイフを突き刺して持ち上がったところから3枚目という感じで出てきます。
ダオルティスタッチも活きててこれは完全に引っかかりました。
観客がやるとこが超不思議。

観客が表裏混ぜる”Real Triumph”は微妙でしたね。ダニダオルティスの土足でお邪魔しますパワーがあってギリって感じです。一応工夫はあるのですがこれ不思議に見せるのはかなり厳しそう。

観客の出したお札のシリアルナンバーと選んだ5枚のカードの数字が一致する”Hofzinser Bill”はDisc2に入ってるやつの方が良いんですが、こっちはこっちで参考になる部分は多いです。
お札丸めるのがちょっとあれ。

“A New Force”はオチ書いてしまうとあれなんで是非タイトルだけ頭に入れてご覧ください。

Disc2 – NEW EFFECTS II

2巻目も新作ディスク。
こっちはサイコロジカルよりニコニコしながら行列の先頭に割り込むようなスキルが求められます。

観客が指定した手札を配る”Poker A Petición”はなかなか自由度が高くてすごいです。
フルハウスで10と7とか、6ハイストレートとかそこまで指定してもらえます。
当然というか言われてすぐ配り始められるわけじゃありませんが、表向きで広げたりせずシャッフルする動きの中で頑張るので不思議。

“From The Pocket”は赤青2つのデックを使って、青から2枚選んでもらって赤はポケットに。ポケットの中の赤から選ばれた2枚を取り出します。
おもろいです。
初見でやることはだいたいわかると思うんですけど、タイミングとか諸々がクソ上手くて普通に引っかかりました。

“Hofzinser Bill 2″はディスク1のものと現象は同じで、お札ぐちゃぐちゃにしなくて良いしカード選ぶ過程が楽しそうだしこっちの方が好みでした。
全員でめっちゃシャッフルするから不思議度も高まってて、なんかわちゃわちゃ楽しくやってるどさくさに紛れる感じとかも良いです。
ダニダオルティスの手品はなんか知らんけど楽しそうみたいなのが魅力ですし、意味に合わない動きをねじ込むのにも非常に都合がよく、計算されてる雰囲気を消し飛ばす力があります。

ミステリーカード的にカードを折って口にくわえ、別のカードにサインしてもらってデックに戻し、口にくわえてるカードを見るとサインカードでしたという”Card To Mouth”、これもエンジョイ感がキーになってますがこれはさすがにどうでしょう。
構えて見過ぎたのも悪かった気はしますけど、「ずっと口にくわえてたカード」という印象が著しく低下する上にエンジョイ感故にそこが記憶に残りやすいように思います。
ダニダオルティスの演技は事故性みたいなものを活かしやすいスタイルですが、ミステリーカードのようにフックが強すぎるものとはそんな相性良くないんじゃないかと思いました。
何が起こるかわからないことが正しいとは限らないというスタンスでこういうチャレンジやってんのはおもろいんですけども。

“Illogical”は観客がシャッフルしたデックの中からスペードのカードを取り出し順番に並べ、位置を入れ替えても順番に戻るやつで最後はデック全体がオーダーに戻るおまけもついてて、入れ替えパートも古典とはちょっと違った見せ方をしてます。
並びが戻るというより心理戦的なプレゼンテーションで説得力を上げてる感じです。
この演技がとにかく面白くて一番繰り返し見てる気がします。
ただふざけてるだけじゃなく変な声出して変な顔すんのもこのプロットには最強ですし頑張って真似したいもんです。

Disc3 – THEORY AND PRACTICAL

理論と実践。
ここではエスティメーション、思っただけのカード、水平思考についての理論とそれを活かしたトリックが解説されています。一番見応えあるディスクです。

カード当て系でおもろかったのは”Lonely”。
カードを選んでもらって戻してカット、そこから複数の観客にそれぞれパケットを渡し、覚えたカードがあればそのカードを、なければ適当なカードを演者に渡します。
そこから選んだカードを探そうとしますが、カードが1枚だけになってそれが選ばれたカードです。
原理の使い方としても安全で賢く、演出も心理戦かと思いきや消えるという意外性があって見事。ハンドリングも良いしこれは練習したいですね。

それとは逆のような見せ方の”Only a Idea”は完全に混ぜられた中から探し出す演出。
複数人にパケット渡すのは同じで、誰が持ってたかだけ確認してからパケットを集めて観客にシャッフルしてもらえます。
難易度もなかなかのもんですが、仕組みがよく出来すぎてて追いようがないです。

カードアットエニーナンバーはこのDVDセットに複数解説されていて、その中で一番良かったのがここで解説されてる”Vernon’s ACAAN”。
Aついてるけどカードアットエニーナンバーです。
観客に配らせることはできませんし、割とずっと演者がデック持ってるんですが数字は1から52まで対応してます。対応させると言った方がいいでしょうか。
カード埋めるとこから数え終わるまでの流れがダオルティスタッチと合いまくっててとにかく不思議。

思ったカードと選ばれたカードを当てる”Choose & Thought”はアイデアとしてはおもろいですが、「思っただけのカードを当てた」という感じはどうしても弱まるのでなんとも言えん感じです。

見えないデックから覚えたカードがスペリングで出てくる”Invisible Spelling”は見えないデック使うことでそこはかとないThink a Card感を醸してます。
スペリングは観客にやってもらえるし、後半にフェアな印象を持ってきて実はそこまで自由じゃなかった件をうやむやにすんのにスペリングは便利ですね。

3人のカード当て”Triple Location”は古典的な原理を発展させたもので、水平思考の例としても適してると思いました。
ここの解説の中で他のカードマジックについても触れられてます。

Disk4 – Semi-automatic

ダオルティスのセミオートマチックは結構当たり外れ大きい気がしますが、個人的には今回もその印象のままです。
賢い部分はあるし不思議だけどあえてこのやり方でやろうとは思わないようなものが多く、表向きやってることの意味が謎だったり後から考えるとなんであの作業が必要だったのかがひっかかったり。
動きの意味はあってもそれ以上の細かい辻褄にはそんな興味なさそうで、それでも不思議なのがいいんじゃないっていうのもあるんですが、やっぱ演じる時に自分がそこを信じれてないってのはよくない気がします。

例えば”Chaotic Coincidence”というトリックは、予言のカードを2枚置いて観客2人にそれぞれパケットを渡して、テーブルの下でお互い1枚選んで相手のパケットにひっくり返して戻し、そのカードが予言のカードのメイトカードというもの。
某メンタルと全く同じ原理ですが、予言となると相手のパケットにひっくり返して戻してみたいな不自然さが際立ちます。
予言にしたことで観客がシャッフルした状態からスタートできるようになってるものの、何かが転倒してる感は否めません。

“The Lucky Magician”という手順はカットした場所のカードの数字分だけ配ってそこにあるカードの数字分また配って、というのを繰り返して最後に観客のカードが出てくるという手順。
最後というのが結構謎で、中途半端な枚数カードが残るのでなんでそこでやめたのかがよくわかんなくて、観客のカードが出てくるまで頑張ったみたいな見え方しかしないような。一応そうは見えない工夫はあるしコントロールとかは良いのですけど、原理がクラシックなだけに別にこの見せ方じゃなくてもなという気持ちが強いです。

逆にカードアットエニーナンバー系で良いのは”The Blind Card”。
これは観客に4枚のカードを選んでもらってその数字の合計の枚数目から出てくるってやつですが、ラスト1枚を観客の意思で変更することができて、変更してる間マジシャンはデックに触らないでいれます。
ちょっと観客にやってもらうことに説明がいるんですがこのぐらいの大胆さは好みです。
しかし通訳の人が観客役で参加していて複雑そうな操作はだいたいこの人がやってる気がするのは気のせいでしょうか。

残り二つのCAANは”ACANN By Packets”と”The Position”、どちらもデックを2つ使って片方のデックのカードで数字を決める方法で原理も動きもおもろいです。
数枚のカードで数字決めるなら2デックも要らんやろ、とはなんとか思われないようになってます。思われないというか自由さが強調できるのでそこ押しで不自然じゃないように感じられるはず。
作業の部分とランダムなとこの切り離し方が他より綺麗じゃない気はしますけども。

“The Three Cards”は観客が選んだ3枚のカードがテーブルの下に貫通します。
カードの選ばせ方が賢くてテーブルの下で3人それぞれに見てもらうだけだからコントロールは不可能に見えますし、そういう設定だから貫通現象にしてるのも効果的。

ごっちゃごちゃに混ぜても当たる”Impossible Location”は巧妙な原理と悪いことするタイミングの巧さでかなり不思議ですが、ごっちゃごちゃじゃない部分が際立つのも否めません。
これは最終的にごっちゃごちゃにして当てるとこを観客やってもらう風にしてることで当事者以外にはごっちゃごちゃに見えるようになっています。
枚数を数える的な神経を使うと作業はどうしても記憶に残ってしまうところ、その観客を最後に違う形で参加させるあたりは賢いすね。

観客がシャッフルするのを中心に映像だと効果が薄れるようなもんもあるので、初見ピンと来なくても実際に試してみたいネタは多いです。
例のごとくダニダオルティス以外の人間が成立させるのは難しいですが、全てのトリックに策略的な見所があります。
音周りとかDVDの作りがちょっと残念なのは良いとして、GrupoKapsさんからダニの本とかその他諸々ブラックフライデーの時にお買い物したんですけどあれは一体いつ届くんでしょうか。

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