by jun | 2018/09/18

2012年発売のガスタフェローのレクチャーノート。
この本とDiscoveries and Deceptions 、Seven Wondersを合わせて完全日本語訳されたThree of a Kindという本が存在するのですが絶賛絶版中だったりします。
絶版本はそもそも存在しなかったものとして考えているのですけども、Vanishingやガスタフェローの公式サイトで電子版がダウンロードできるのが厄介なところです。
しかもCentre Stageとか見たらこの本に入ってるやつがなんか良さげだったりして、両手両足に辞書を持ってしくしく泣きながら読みました。
泣きながら読んで感情が高ぶっているのもありますが、内容は本当に素晴らしいもので、ガスタフェローらしいそこそこの負担で観客に強い体験を与えるマジックが詰まっています。
ガスタフェロー手品は観客に体験させるってのが肝で、観客の参加させ方が本当に面白く、「ずっと私が持っていたからその前には既にどうにかなっていた」とは思わせない巧みな構成と演出がいつも通りバキバキに冴えてました。

1章Openers、2章Mysteries、3章Triumphs、4章Multitudes、5章Four-Closuresのトリックを一つずつ選んで繋げれば素敵なショーになるという親切設計もありがたいですね。
トライアンフはあんたが好きなだけだろという感じもしなくはないですが、どのトリックにもダレ場がなく、現象起こってない時も常に期待と興味を引くものでおもろいです。

Invisible Opener

見えないデックと見えないポーカーチップと見えない輪ゴムが具現化するオープナー。
Center Stageで見たやつ。

映像で見ても体の動きが完全にコントロールされていて無駄なく怪しさなく色々とうまく行くようになってます。
デック出すとこのサトルティもめっちゃええですね。
デックはインビジブルなものを使うのですが、その前にポーカーチップが出たり消えたりする小さな現象が起きて、ポーカーチップよりでかいデックが出てきてしかも観客の言ったカードが!!みたいな流れ本当に素敵です。

この本後で輪ゴム使うやつもあるし、他の輪ゴムとトランプ使う現象の前振りとしてもとても良いと思います。

RWB

赤から青へのカラーチェンジングデックで表が白くなります。

ガスタフェロー ブランクネタは広告を題材とした”TRUTH IN ADVERTISING”やデックがウイルス感染してしまう”Virus”などありましたが、この作品は赤青白でアメリカ国旗、愛国心がテーマという演出がついていてやばいです。

カラーチェンジングパートはDB不使用かつ無駄なコントロールの動きもなく、セリフの積み重ねとビジュアルなカラーチェンジでインパクトあるものになってます。

Mr. E. Returns

ガスタフェロー流ミステリーカード。
One Degreeに収録された傑作”Mr. E. Takes a Stroll”のセルフリメイクです。

“Mr. E. Takes a Stroll”ではラストトリックとの組み合わせでしたが、今回はミステリーカードを魔法の杖として観客に持っていてもらい、サインカードでリベレーションを行います。
ラストトリックでもそこまで混乱した印象は持ちませんでしたが、前振りの現象がよりシンプルになっているので最初から持っていたカードがサインカードに変わる衝撃も伝わりやすく、事故を防ぐための気の利いたセリフとかが良い感じにスパイスにもなっていてめっちゃガスタフェローです。

ここで使われるガスタフェローがよくやるコントロールに関してはいろんなDVDで見れますが、動きのテンポとか喋り方とかトータルで「その突き出したカードが選んだカード」と思わせる見せ方がめちゃ上手くて、この手順にもぴったり。

Spectral

15枚のカードしか使わないカードの消失と出現。
出現ポイントは観客が指定した場所で、絶妙にハンズオフになれるものです。
At The Tableでもやってたやつですね。
あとこの前オフ会で見せてもらってすげえいいなと思いました。

消えるところが一番もやっとするのですが、その後の「確実にない」から出現までは観客に実感してもらえるので終わった頃には確かにあの時消してたんやって思えます。

原理は色んなとこで使われる技法ですが、フリーチョイスのカード15枚だけでやることで消失にも出現にも説得力出ててとてもワンディグリー感ある手品です。

Centerfold

折りたたまれた紙に予言が書いてます。
引いてもらったカードが当たって、さらにその紙の中に移動します。

超シンプルかつ絶対目の前でやられたらわからない移動です。
OTHER IDEASで紹介されてる予言自体が変化したりエンドクリーンにしたりメッセージカードを出現させるアイデアも超素敵。

Twist of Fate

ちょっと説明ややこしい予言手品なのですが、予言のカードはそれぞれマークと数字を予言してる2枚のカードで、観客の引いたカードがその通りに一致します。
その後マークのカードと数字のカードの位置を変えると、選ばれたカードも変わるというエンディング。
要は数字のカードがスペードの5、マークのカードがハートの2だったら予言されるカードはハートの5で、位置を入れ替えるとスペードの2に変わるみたいな手順です。

あんまりこの手の前提の説明が必要な手品が好きではなく、予言の形としても決まったーって感じが薄い気がするのですけども、そこにさらにもやっとするオチがついて独特の余韻を残す手品に仕上がっています。このあたりの演出はさすがという他ないですね。
バリエーションとしてポストイットを使う手順が紹介されていて、こちらはとてもわかりやすくなっていて小道具としての絵面もおもろいです。

Bound to Triumph

輪ゴムを使うトライアンフ。
表裏混ぜてデックを輪ゴムでデックを縛り、観客の手の中でカードが飛び出してきて向きも揃うみたいな。
その手があったかと痺れました。
たしかにあれとトライアンフの相性は良く、バラバラに混ぜてからのハンズオフ感も強調できてとっても素敵です。
やりとりもめちゃ良いですね。
あれは本当にいきなり出てくるおもろい手品なので、「動いてるのわかる?」みたいな話がじわじわきます。
あれあれ言ってるの好きな割に実は名前知らなかったのでクレジットで知れてよかったです。

Untouchable

こちらもトライアンフ。
手法的にはガスタフェローが気に入ってるいつものやつですが、終盤の操作を観客にやってもらいます。
これはOne Degreeの”BEHIND THE BACK TRIUMPH”でも似たようなことやってましたけども、より直接的に仕事をやってもらう感じでThe Spectator Half Passというパワーワードが踊っていました。
「混ぜる部分」を観客にやってもらうのも特徴ですね。

Inside and Out

2枚のカードを選んでもらい、片方はインサイド、もう片方はアウトサイドつーことで、1枚は箱の中に、もう1枚は箱の中から出てきます。

ガスタフェローの箱ものっていい感じにアヘッドしてて気持ちいいですね。
ここで使われてるサトルティだけでも十分なんですが、そこに必ずもうワンアイデア足してくれます。
レンコン美味しいけどまだ穴あるやん辛子詰めたろっつって辛子レンコンができたみたいな感じ。
実際辛子レンコンはそのような成り立ちでできたものではないんですけども、足し算がうまいってことを言いたいわけです。

バリエーションで紹介されてるトランスポジションもとても良いです。
なんかこの本バリエーションや追加のアイデアがことごとく「皆さんこういうのもお好きでしょう?」という感じで全部刺さります。

Triple Pocket Discovery

3枚のカードとポケットを使った手順。
全部ポケットに飛び移るわけじゃないあたりが賢く見た目に変化を持たせててとても良いです。
後の”Ace Case”や”Multi Mental”に通じるものがあり、その中間のライト版のような軽さが魅力。

Assembly Line

観客参加型のアセンブリ。
Center Stageで見てめっちゃ気に入ったやつです。
4人の観客にパケット持たせて、そこに一枚ずつジャックを入れていくのですが、一人のところに集まってしまいます。
パケットを分けるのも観客がバケツリレーのように渡していき、ジャックは見えないカードを手渡ししていくライン作業。

観客が参加するだけじゃなく観客同士がわちゃわちゃやる手品ってなんか好きで、このトリックは絵面だけじゃなく透明のカードを渡す茶番に謎の整合性をもらたしていてマジ最高です。
サトルティも芸が細かく、参加した観客はより強い衝撃を受けるはず。

このトリックの追加アイデアは他のカードが全部ブランクになるオチ。
終幕には最適ですね。
表が見えなければなんでもブランクオチにしていいのかということには議論の余地があるとは思いますが、複数の観客が最初から最後までずっと持ってたトランプを全部真っ白にできるならそりゃしたいです。

Pickpocket Aces

観客がスリという演出で、観客のポケットからエースが出たりデックが消えたりします。

ちょっと怖い部分ありますが、現象の割には遥かに低負担。
たぶんデックバニッシュできる手順の中でもかなり楽な方だと思います。

観客に服装制限があるのと演技の性質上人を選ぶのでガスタフェローにしては重たい印象ですが、手順としては完成度高いのでどっかでやってみたい感じはします。

んなわけで捨てネタなしの名著でした。
半分以上がベスト級です。
各章から一つずつ選ぶとしたら、Invisible Opener、Mr. E. Returns、Bound to Triumph、Inside and Out(トランスポジション)、Assembly Line(ブランクオチ)という感じです。
ガスタフェローさん毎年ペースでこのクオリティの作品集出してるのやばくないですかね。

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