by jun | 2018/07/23

これはpdf形式のレクチャーノートで、元は英語版だったのが2014年の日本レクチャーでも完売して、スクリプトマヌーヴァによって日本語化されたものです。
原著の発売は2009年で、解説されてるトリックは今でも彼の代表作と言われるようなものも多く、ビジュアルで実践的というガルシアみがとてもよく出ています。

ノートは33ページの薄いものですが、トリックと技法が合わせて15種類解説されていて、写真も多くわかりやすいです。
文章の大半が手法解説なので、ぶっちゃけ映像でやってくれた方がわかりやすいといえばそうなんですけど、今となっては他で見たようなものも多いですしちょっとしたポイントを日本語で読めると嬉しかったりもします。

エゴ・スリップ

トップコントロールです。
コントロール完了後にダミーを突き出した状態にしておけるのがポイントで、時間差で中に戻したい時とかにとても有効。

角度はそんなに厳しくないですけど、隠しすぎると説得力が失われるのでいかにギリギリを攻めれるかの勝負です。
シークレットムーブと説得力高める動きが一体化してるのでその辺りはさすがという感じ。
左右より上下の角度に気を使わないといけないので、ストリート的なシチュエーションだと少しストレスはあります。

ARM使ったやつとかもありましたが、これ系のコントロールは極めれば何もしてないのにコントロールできちゃってセットも狂わないしとても強いですね。

ワンポイント・プロダクション

手をテーブルに叩くとそこにカードがいきなり出てきます。
デックをテーブルに置かないといけないのは煩わしいですが、逆にマニアから見てもデックからごにょごにょした感は消せるのでプラス面の方が大きいかも。

難易度的にもそこまで難しくなく、コツさえ掴めば成功率も上がりますし、下手な時でもカード折っちゃうようなことがない安心設計。
角度的には正面3人ぐらいがベストかなって感じですが、そういうシチュエーションでは積極的に使いたいぐらいビジュアルで不思議。

ホワイト・オア・ウィート

サンドイッチカード。
デックと2枚のサンドイッチカードを接近させない形式の中ではかなり強いと思います。

おそらく技法ありきで作られたものだと思うのですが、技法の特徴を最大限に発揮させたとても良い作品です。
移動系の手品はビジュアル現象に使うダイレクト手法をシークレットにやると良くなることがあって、ガルシア作品はそういうの多いし気がします。

マス

2枚のクォーターが移動して、お客さんの手に渡すと1枚のハーフダラーに変わります。

使われてる技法自体は古典的なもので、サトルティをうまく使って衝撃的なオチへ。
サトルティのためのサトルティみたいなとこがなくて、全部流れの中で手を示せるのでクライマックスのビジュアルも映えます。
テーブル使わずにスタンディングで行えるのも高ポイント。

エゴ・チェンジ

みんな大好きエゴチェンジ。
チェンジ前に見せてる面が大きく、チェンジ後にゴミが残らず、バニッシュやプロダクションにも使えて非常に便利でクールなカラーチェンジです。
Cardini Color Changeがクレジットされていて、この違いについてはしばしば議論になったりしますが、指の位置と引き込み方の違いってのは主に薬指の違いということでよろしいんですよね?

ナチョ・ママズ・トライアンフ

カラーチェンジオチがついたトライアンフです。
カードの向きが揃うところも色が変わるとこもビジュアルなのが特徴。
ビジュアルにやろうと思うとちょっと難易度上がりますが、別にカットで済むとこもあるのでギリ大丈夫です。

ちなみにこの手順エゴチェンジは使いません。
最後のカラーチェンジはギミックカード使ってエゴチェンジでやるようにすれば結構負担減る気がするんですがダメですかね。

ユア・パーソナル・セーフ

指輪を使ったコインアクロス。
お客さんの手のひらに指輪を置いて、そこにどんどんコインが移動していきます。
最後はコインがお客さんの手にあったはずの指輪に変わります。

コインマジックはちょっとした小道具を使うと見た目よくなったりわかりやすくなったりするもんですが、指輪をキックバック的に使うのがシャレてて良いです。
単純にここの指輪とコインの変化だけでも使えますし、スチール方やタイミングも悟られにくい構成になっています。

クリップ・トリップ

真っ直ぐに伸ばしたクリップがゆっくり曲がっていきます。
釘とかフォークと違って力で曲げれるものなので演出力勝負です。
元のクリップを真っ直ぐにしてもらうのはお客さんだったりするので、結構不思議に思わせるの難しい感じもありますが、ハンドリングはシンプルで曲がるとこは怪しくないので練習すればなんとかなります。
ちょっとしたコツや観客に不思議な印象を与えるポイントも書かれているのでたぶんその通りにやれば大丈夫なはず。

ノー・スモーキング

マッチの移動現象です。
紙マッチの中のマッチを全部燃やして、お客さんに持ってもらって、燃えてないマッチを1本消すと、紙マッチの中に1本だけ燃えてないやつがあって移動したことを見せます。

煙を使った演出をするもので、安全だけど自己責任でね!的なスカイダイビングする前みたいなことが書かれてます。
原理的には煙は必要ないっちゃないのですが、なんとなくあった方が不思議です。
小ネタでやるなら火もつけなくてもなんとか成立しますし、煙はなんぼ安全と言われても怖いので、人に見せることは一生なさそう。

ディスク・ホバー

クレジットカードが浮きます。
これを発展させた”VISA”が後に発表されていますが、どうせ小ネタなら小ネタらしくシンプルにいきたいのでこちらのディスク・ホバーぐらいで良いような気がします。
どうやって終わるのか書いてないのでとても怖いです。

ストレッチ

本作のメインになる感じでしょうか。
動画あります。

指輪と輪ゴムを使って移動、消失、出現、貫通とてんこ盛りのルーティン。
変なセットをした状態から始めなくていいのが良いですし、あやとり感もあんまなくて素敵です。
ピナクルっぽいとこのセットもめちゃくちゃ良いですね。
流れ的に小指に指輪があってもそんな気にならないですし、確実に別れてることを示せてます。
あそこの投げ込み方も前段までの動きと合ってて一連のコンセプトがかっちりしてるのも好み。
クレジット見ると輪ゴム四天王の一人であるマーカスエディが大半の手順を作ったと書いてましたが、ガルシアがやるとガルシア感ビンビンになるあたりもさすがだなと思います。

オン・ザ・ロック

コインスルーグラス。
手のひらに置いたコインをグラスの底で叩くと貫通します。
ノーギミックノーエキストラノーマグネットノーストライキングバニッシュです。

DG ボックス・スチール

箱に入れた1枚のカードを抜き取る方法。
ちょっとした加工は必要ですが、何かと使い道はあるかと思います。
絶妙に使えそうで凡人には何も思いつかないわけですけども、ベストな手順を作ってくれるのがダニエルガルシアさんみたいなところがあって、派手な現象より流れ上矛盾のない動きみたいな特徴がよく現れる技法な感じです。
この論法を使えばなんでも褒めてしまえる気もしますが、やっぱりガルシアさんはすごいですよ。

タイムライン2.0

色違いのカードの裏面にサインをしてもらって、予言としてそのカードを箱にしまって持っていてもらいます。
デックからカードを1枚選んでもらい、予言のカードを確認してもらいますが、箱からカードは消えていて、選んだカードが色違いサイン付きのカードです。

結構色んなところで解説されてる手順でガルシアさんのお気に入りぶりが伺えます。
ミステリーカード的演出ですが、サインドカードあたりとは違って引いてもらったカードがダイレクトにそのカードですという見せ方。
どっちが良いとも言えないとは思いますが、うまく不条理を感じさせる演出が必要になってきます。
この手順だと、予言を確認してもらうとこまでは「ちょっと確認してみて」という手品的なお約束感で進んで、えーないよーから選んだカードがどーんという感じ。
サインドカードより「最初からここに置いてましたね」的な説明をしなくてもわかりやすくなってますし、消失をクリーンに示せます。
オープンプレディクション的な側面があるので選ばせるところはハードル上がりますが、ここで使われるフォースはかなり説得力があるもので、カードの裏面見せなくてもいいってのは色々と便利です。
余分なカード1枚持ってればいいだけだし、サインさせてカードを消費する負担もあまりなく、色々と傑作要素が揃ってます。

バター・ビル

ストローがお札を貫通します。
穴開けて復活ってより貫通に重きが置かれた手品です。

やってることはそれ以外考えられないという手法なのですが、それをやってないように見せるという手品の根源的な何かがあります。
ダニエルガルシアはお札使ったビジュアルな作品も発表してまし、さすがにお札のお札性をよくわかってるという感じで見事な錯覚を生んでいます。

そんなわけで、原著発売から10年近く経っても全然古い感じはしません。
エゴチェンジ以外はあんまりやってる人見ないってのもあるかもしれないですね。
個人的にはホワイト・オア・ウィートがベスト。

まあダニエルガルシアはキャリア通して大きな外れもそんなにないので全部ベストです。
最近発売されたこれもめちゃくちゃ不思議。

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