by jun | 2019/04/10

週末箱根にいらっしゃってたホアン・ルイス・ルビアレスのDVD、EMCから出てる4枚組のやつです。
スペインの人の手品って特に映像で見ると良さが伝わりきらないイメージがあってルビアレスもまさにそうだと思うんですが、それでも独創性やエンターテイメントの部分は感じられるので、箱根行きたかったよーと泣きながら見直してました。

Disc1 – Perler Magic

1巻目はパーラーマジック。
半分ぐらいスタジオ収録なのが残念なあたりですが、ショーの映像はおもろいです。

オープニングの”Bill Coincidence”は観客にお札を借りて、デックを表裏で混ぜてもらうと表向きのカードの数字とお札の通し番号が一致しています。
非常にフェアに観客に選択してもらえるので不思議度も高く、やりとりの面白さとのギャップも良いです。
お札をあれするところも巧妙。
日本のお札だと番号が6桁しかないのでちょっと工夫がいります。新しいお札も桁は同じっぽいですね。

食パンを使った”Bread Deck”は食パンの中から1枚選んでもらい、予言の食パンがそのカードの形にくり抜かれるという現象。
選んでもらう食パンにはカードの名前が書いてるわけではないのですが当たります。
食べ物で盛大に遊ばないといけないし手法も好みじゃないのでたぶんやることないと思いますが絵面的にはハイライト。

“Fished Card”は紙袋にデック入れてロープで釣り上げるやつ。
サッカートリック風になっててそこがスペイン語じゃないと通じない感じなんですが物を変えれば演技可能です。
ギミックの隠蔽って意味では良い演出だと思いますし、普通にハートのなんかとかで代用するのがいいですかね。
ロープを使ったデモンストレーションも解説されてます。あれをやるとトリック部分に謎の説得力が出るので練習したほうが良さそう。

クッキーでスリーフライする”Three Fly Cookies”は最後の1枚問題を見事に解決しています。
日本で簡単に手に入るものだとセブンイレブンのバタークッキーってやつが似たサイズで、手がベタベタしないし美味しいのでおすすめです。

“Invisible Deck”はポケットから見えないカードを取り出して具現化したカードが観客が言ったカードと一致します。
レビュラーデックだけでのインデックス的な使い方や、インビジブルデックっぽいインパクトを与える演出など参考になる部分多いです。

風船の中から観客のカードが出てくる”Card in Balloon”はおもしろギミックでめっちゃクリーンにカードが出てきます。

このディスクで一番面白かったのは”Forget and Remember”という観客の記憶を操作するルーティン。
観客がカードを言えなくなったり偽の記憶を刷り込まれたりという変な現象です。
しかしこれは前に出る観客と他の観客のリアクションの違いが楽しい手順だと思うんでショーの映像にしてほしかったですね。

Disc2 – Signature Routine

2つのカード長編ルーティンが解説されてます。

最初の”JACKS”はジャックのツイスト、両面裏、移動、変化、エースの出現、リセット、トランスポジションとてんこもりの内容。
序盤はベベルのやつのバリエーションで、トランスポジションもアシンメトリカル的なやつなのでほぼベベル。
それでいて演技はオリジナリティに溢れていて、無言でもそこそこ成立するルーティンですが観客との絡み方がとてもおもしろいです。
観客と喋ってるおかげで無意味にパケットをシャコシャコやってる感がなく、デックをつかってごにょごにょしないといけないとこも誤魔化せています。
最後のトランスポジションのとこで使われてる手法も変わってておもろいです。

FISMアクトの”DICE COMANDO”は最高です。
ダイスの命令にカードが従うという筋なんですが、そのストーリーの中で色んな現象が起こってめちゃくちゃ楽しいしオフビートを効かせた裏の構成も見事。
大胆な手法をどさくさに頼りすぎないところも好みです。めっちゃテクニックが安定してるし、おもしろおじさん的なキャラクターから外れることなく普通にしかカードを扱わないのもすごい。
トランプの特性もダイスの特性も完璧に活かした現象は文句のつけようないですね。

このディスクの最後にオポンゴボックスというルビアレスが販売してるコインボックスの紹介があって欲しくなります。
普通のボックスじゃできんことができるからマニア騙すにもかなり良さそう。

Disc3 – Close-Up Miracles

3巻のメインはコインマジック、後半はプランジャーを使ったトリックが解説されています。
コインはまったりとしたテンポで変な現象が起きたりカードのテーマをコインでやったりしてて不思議おもろいです。
見た目以上にさらっとやるのは難いんですが、ちゃんとやればなんもやってないように見えるって感じなのでバランスはめちゃくちゃ良いと思います。

“Chinese Hole”はいわゆるアンビシャスコイン。
テーブルに広げるたびに一番下のチャイニーズコインが一枚ずつ上に上がってきます。
もろもろ正当化する演出も素敵です。

コインを使った予言現象”Coin Prediction”は複数のコインの片面に印をつけて、まとめてテーブルに投げて印がついてる方のコインを残していって最後に残るのが予言されています。
カードでやったほうが推測されにくいってのはあるんですが、処理のところが見事でこれはこれでという感じです。どこの国のコインでもできるし日用品としての強みもあります。

カードで弾くと銀→銅→チャイニーズと2段変化する”Flip Change”は何回見てもひっかかるほど巧妙です。
他と比べると話とかなくてさっぱりしてますけどそれだけで強い感じの連続チェンジ。

コイン版水油の”Oil and Water”は最高でしたね。
コインでやることで物理的な不可能性も上がってるしびっくりするぐらいフェア。
かなりワイルドなことやってるのにスローテンポでも通用する構成も素晴らしいです。

カードマジックの原理をうまくコインの出現でカバーした”This is a Coin Trick”もかなり好み。
マジシャンが先にカードを出して観客が言ったカードと一致するという現象で、コインが出てきても破綻しないシナリオと演技も見事です。

観客2人が持ったシルクの中で銀貨と銅貨が入れ替わる”Transposition in Silk”は比較的難易度も低く、道具立てもシンプルなのでこの作品集の中では演じやすいと思います。

プランジャーの方は2つのプランジャーと4枚のコインで行う”Chink-a-Chink”、本当にコインがカードを探しにいったようにしか見えない”Coin Detective”とこんな使い方あんのかというののオンパレードでめちゃくちゃ楽しいです。
WXみたいなやつも観客の手に跡が残るのが良かった。

観客のカードだけに吸い付く”Plunger Card Location”やカラーチェンジに使う”Spinning Card”などカードのアイデアも良くて、一つの道具や手法の可能性を広げるおもろさみたいなのも見えます。

Disc4 – Classic Plots

クラシックプロットの改案ですが、本質のみを抽出してトータルで全く別の印象をもたせる手順に仕上げています。

特にお気に入りらしい”The General Card”はちょっと説明するのが難しいので是非見ていただきたいのですが、似たような手法を使うトリックよりかなり整理されていて混乱するのが目的のような現象なのに目的以外のことでは混乱させません。
演じるの超むずそうだけどこういう独特の空気を作れる手順には憧れますね。

“Tribute to L HOMME MASQUE”は超全部同じカードに見えるEverywhere and Nowhere。
ダニダオルティスも似た感じのやつやってましたね。
ルビアレス版は演技前のちょっとしたやらしいサトルティがあり、Nowhereの方のインパクトも強くなってるのが良いです。

“Travelers”はテーブルに移動するんじゃなくデックの中に飛んでいくという見せ方で、移動したカードがAに変わるおまけ付き。
色々と賢くてデックの中という隠せそうなとこにでも移動したように見せれてるのがすごいです。
使われてる技法も他であんま見ないやつあって参考になりました。

エースの消失”Vanishing Aces”とそれを応用したマトリックスの変形”Impossible Matrix”も変な現象でとても良いです。
マトリックスをやろうとするけどどんどんカードが消えて1枚になって、1枚でキックバックまで見せきってます。

フルデックの水油的な”Call to the Colors”は配るごとに赤黒の状態が変化していく面白い見せ方で、ややテクニカルで覚えるのもしんどめですがその分現象の説得力もかなり強いです。

自由度の高い予言”Prediction”、クリーンな”Card to Pocket”、Spectator Cut the Acesの”NPI”はベースの手法が同じで色々と可能性がありそう。
ちょっと角度変えるとフェアに見えて実は隠せるというルビアレスらしい技法だと思います。

インタビューは4巻がマジック観について語っていておもろいです。
インタビュー全体通して家族と手品に対する愛と寛容さに満ちていてグッとくるものがあります。
顔のアップずっと見てて誰かに似てんなと思ってたら一時期のシルベスタースタローンにめっちゃ似てますね。
仲間思いなところとか業界へ貢献する意欲みたいなとこも共通してんじゃないでしょうか。

しかしまあアイデアも演技も手順も全部おもろいDVDで見れば見るほど箱根行きたかった感が。
絶対生で見ないとあかんやつですこういうのは。

ところで箱根のもう一人のゲストであるAsi Windは大阪でスクリプトマヌーヴァ主催のレクチャーがあります。
開催日聞いた時は既にチケットを買っていたフィロソフィーのダンスのライブと日程も時間も被ってるやんと思ってスルーしてたのですが、よくカレンダー見たら全然被ってなかったのでAsi Windは生で見れることになりました。
Asi Windも超体感型というか、近くで見ることに意味があるマジシャンだと思うんでとても楽しみです。

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