2020年にRick Maueが無料で配布したebook。世の中が大変になってきた時期に人を笑顔にしたいってことで配布されたそうです。発表済みの手順が6つとエッセイが3つ収録されていていて、未発表の作品を入れなかったのはとにかく早く行動したかったからだそうですが、この人のレクチャーノートは普通に買えないのも多く、そっからの再録があったので普通に笑顔になりました。
あえて代表作的なやつは外してるらしく、いわゆる魚の釣り方を教える目的があるようで、実際にパフォーマンスや創作の背景に読みどころがある作品が多いです。
配布はもう終了したようですが、自分もこれをきっかけにMaue作品に興味を持ったので、元の収録されてる資料を載せつつ軽く感想を残しておきます。
DNA
FATE? 収録作。
透けない使い捨てコップを5個口を下に置き、後ろ向いてる間にその中の一つにお札を入れて混ぜてもらいますが当たります。
コップは買ってきてもらったものをそのまま使えるし混ぜ方も観客の自由。わが国では制限されるポイントはありますが、この仕掛けは面白いし、ちょっと不可解な手続きもうまいこと飲み込ませるような演出にしててとても良い手順です。
これは手法からいかにシンプルな手順を作れるかというところからスタートしたらしく、解説されてる演出も比較的誰でも演じやすそうですし理屈が書いてるので自分なりの見せ方も考えやすいのではないでしょうか。
A Matter of Trust
MV17、Facing the Truth 収録作。
スパイクルーティンです。
彼はスパイクルーティンが大嫌いらしいですが、こういうアプローチならという見せ方を提示しています。
他の手順でも観客とどう関わるかという話がちょこちょこ出てきますけど、これはそここそが目的みたいな作品でプロの手順やなあという感じ。なのでちょっと演じる敷居の高さはあります。
スパイクルーティンを刃物以外でやる方法もとても良いアイデアで、本作のような見せ方にもとてもマッチしそうです。
Non-Ambitious Card
FIVE、V&B 収録作。
アンビシャスカード。
これに近い考え方は最近色んなところで見ますね。
テクニカルなマジシャンが多くやってるイメージありますけど、この手順は技法も最小限にする工夫があって全体のセリフの説得力も強いです。
同種のアンビシャスカードの中でもかなり良いんじゃないでしょうか。
Circles of Destiny
The Book of Haunted Magick収録作。
タロットカードの手順。
12枚2組のタロット束をそれぞれ時計の形に配置して、それぞれから一つずつ選んでもらい、それが一致するというトリック。
手法はなんということないように思えるけど、タロットカードと儀式めいた見せ方でめちゃくちゃクリーンに見えます。
別に現象だけ達成しようとすればいくらでもやり方はあるわけですが、自由に選んでもらってその印象を強く残してフェアにカードを示すというのをバランスよく取り込もうとするとこれ以外ない気がしてきます。
Body Language
The Road収録作。DVDのMental Deceptions vol.1にも入ってる見栄えのするマインドリーディングの手順です。
舞台上の観客は体感込みで驚けるし、他の観客にも現象が伝わりやすいのでとても盛り上がりそう。
仕掛けは非常にシンプルで、仕事もさっさと終わって演技に集中できる手順なのも良い。
他の手順もそうですが基本的な所からこういうおもろい見せ方を考えられるの凄いなーと。
A Dash of Curry
Digital Deception収録作。
CurryのCSSを使った手順です。
メンタリスト御用達のCSSですが、一致現象の場合でも何故現象が起こったのかはっきり見せたかったということで、カードを抜き出すところからそれっぽいセリフがあったり、手順的にも焦点が絞られた感じになっていて狙いが上手くいってます。
この手の連続して一致を示していく見せ方のリズムの話も大変勉強になりました。
これ系の手順、肝はCSSだから他は好みのレベルで特にこれがと思うことは少ないけどこれはそのまま演じてみたいと思いました。
他の作品も既存作品への問題意識がはっきりしていて、そこを解決しつつスマートな手順に仕上げているのでやってみたくなりますね。
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