by jun | 2020/01/19

2017年に出たRyan Matneyさんの作品集。
前にこの人のBada Bingという本を読んで正直ピンと来なかったのですが、これはジョンバノンが序文を書いてるということで読んでみました。
この表紙ジョンバノンの名前の方がでかいんじゃないかってぐらいで、手順の中でもジョンバノンによる手直しやこの技法よりこっちのほうが良いみたいなアドバイスが書かれてたりします。

カードマジックが50個ぐらい解説されてて、手法は普通で演出が全てみたいなのも多いのでぼんやりサラッと紹介したいと思います。

The Mind of a Cheat

チートのデモンストレーションで、テーブルの上に置いたと思われてる4枚のAがポケットから出てきて、4枚はロイヤルフラッシュに変化しています。
手法的には普通ですが、パームを使わずなかなかインパクトの強い現象を起こせて良いです。
カード構成を上手く使った演出と無理のないハンドリングで軽く見せれます。
チートするよーっていうと注目されるしそれは大丈夫なのかという部分もありますけども。

The Whitechapel Solution

ある原理を使ったパケットカードの予言的な現象です。
ちょっと変なカード使ってジャックザリッパーがどうのという演出がついてます。
こういう原理っぽいのは雰囲気で持っていくみたいなとこあるんで、変なカード使って儀式感出すのはありっすね。
原理自体は自由度も高く普通に不思議。

Christmas Card from Jersey

St Nicholas Acesのバリエーション。
4枚のAをサンドイッチカードで出現させるやつです。
ドキムーンのやつがすごく良かったんですが、手法的には近く、表向きのセットが要らない感じになってます。
Matney版はフラリッシュ的な見せ方でもなく、かなり良いハンドリングだと思います。
2枚のカードの間になんにもないのを見せれるのも良いですが、フラリッシュ的な見せ方じゃないだけに出現パートがちょっと好き嫌い分かれそう。
いやでも良いですよ。

The Columbo Effect / Impromputulumbo

バラバラに戻したQを探し出す手順ですが、変化したり箱の中から出てきたりと楽しいです。
即興版よりセットあり版の方が自然でいいっすね。
いい感じのセリフにいい感じのスイッチが組み合わさってギリギリ狙ってる感じもあって、上手く意外性も出せてると思います。

Splinched!

両面ブランクカードの中の1枚にセレクトカードのフェイスが移ります。
まあ1フェイズのジャズエーセスみたいなもんといえばそうですが、やはりブランクカードは強いっすね。
シンプルでカード構成も変なカウントとかしなくてよくて無理がないです。

An Arrow for Dr.Krenzel / A Card for Claude Rains

スペードのAを表向きに適当な場所に入れて、カードを選んでもらって、スペードのAが教えてくれる云々で当たり、選ばれたカードはスペードのAの隣に来ています。
マニア向けのトリックではありませんが、カード当ての演出として見どころはあります。
A Card for Claude Rainsはカードの裏に文字を書いてもう一演出足したバリエーション。これも結構見え方が変わって比べると面白いです。

Now It’s Now Again

トライアンフとサンドイッチカードを合体させた手順で、タイムトラベル的な演出がついてます。
たしかにタイムトラベルと相性が良い見せ方で、サンドイッチカードによって負担が減ってサトルティが強くなってるところもあります。
トライアンフ部分にはもうひと工夫ほしい気がするというか、もうちょっと構造を活かしたやり方もなくはないと思いますね。

Death Become You

物騒なタイトルがついていますが、そういうメッセージを表示する予言的なものです。
ここは適当にメッセージ変えれますが、導入のセリフが気持ち悪くていい感じなのでそのままやりたい感じもあります。
封筒を使ってMCをMCっぽくなくさせる方法で、なるほど確かにという気もするしちょっと回りくどい気もしなくもないです。
だから結構セリフが重要。

The Pallbearer’s Aces

観客にシャッフルしてもらったデックで、4枚のエースがどの順番で出てくるかを当てていき、観客が指定したとおりにできたり最後の一枚がポケットから出てきたりします。
演者の胸三寸なものを演技力でどうこうする面白さがあって良いです。
プロット的にメンタル的すぎないので軽く演じられるのも利点。

Grifter’s Game

ポーカーハンドが移動して元の手がロイヤルフラッシュになる系の手順。
できるだけ観客が自由に手札を作れる感を出しているのですが、ちょっとポーカーには合わないかなというのもあるしハンドリングもちょっとまどろっこしい感じはします。

From a Whisper to a Scream

ジョンバノンのバリエーションもあるSadowiztzの”Whispering Queens”の改案。
4枚のQの間に裏向きにカードを入れるとQが教えてくれるという演出で、最後にトランスポジションのオチがつきます。
トランスポジションのところはバノン版よりハンドリングが軽くなっていていますが、入れ替わるところの演出は特になく少し残念。

Aproxymate

チャドロングのシャッフリングレッスンを元にしたメイト一致からのスペクテイターカットエース的展開。
多段の現象にするのは結構ありだと思うものの、4Aのところでそれかーって感じがあって原案の良さもなくなってしまってる気がします。

Hoff-Crosser

ちょっと変わったホフジンサーエース。
パケットを2つに分け、片方に4枚のAを表向きにしておきますが、観客が選んだカードのマークのAだけが移動し、その隣に選ばれたカードがくるみたいな感じです。
入れ替わりオチじゃなく大幅にインパクトは弱まっていますが、移動に焦点を当てたいなら結構良いと思います。

Triple Proof

抜き出したパケットをスペリングした結果カードが当たり、スペリングしたとこのカード見ると全部同じマークという三段落ち。
スペリングのためにセットやフォース方法がめんどくさくなっていて、スペリングのために!スペリングのために!ってなります。

Slam Bang Collectors

3枚の間に2枚挟まる式のコレクター。
見せ方は違いますがやってることはエリックジョーンズのあれと同じっすね。
不思議に見えるかどうかはよーわからんです。

Inner Workings

ナンバー系のトリックです。
2枚のカードの合計の枚数の枚数を取り出し、その最後のカードが観客のカードというやつ。
まあまあガッツリしたセットが必要かつ、セレクトカードを戻すタイミングがうーんという感じです。
その分超低負担なわけですが、不思議さもかなり減じています。

Penultimate Man 2.0

トライアンフです。
ちょっとおまけ的展開があります。
2.0です。
その前がどんなものだったか知りませんが、たぶんこねくり回しすぎたのだと思います。
余計なものがくっついた感が凄いです。

E.Ch.O

シカゴオープナー的現象です。
タイトルはイージーシカゴオープナーの略で、あれをしなくて済んでます。
構造的にもシンプルになっていて、かなりサラッと見せれる感じです。

Harmony

小数枚でのメイト一致。
観客が自由にやったっぽいところがあり不思議に見えます。
一致を示すのにカードにシールを貼ったりしてややまどろっこしいですが、原理自体はいくらでも応用可能。
誤魔化しも効くしシール貼る引っ張りも全然悪くないと思います。

Discard Dating Service

4枚のQと4枚のKを使って同じマークのカードがペアになる系のあれですが、観客に自由にシャッフルさせることができます。
エンディングの示し方はマルチエンディング系なんですけどこの考え方は面白くて結構好き。
実際演じてみるともっとハマりそうな感じあります。

Color Strip

黒いカードの中に1枚入ってる赤いカードを選んでしまったっぽい感じに見えるやつです。
ダニダオルティスのバウンドレスの中に赤黒テーマの解説があって、その中の1つっぽいサトルティが使われてます。

Without a Clue

カードが選ばれて、サッカートリック的に当てて選ばれたカードのフォーオブアカインドも出てくるやつ。
楽にキックバック的な現象を起こせますが、フォーオブアカインドが出てくることによってやや予定調和感も。
あとオチのカッコよさから考えるとアンダーダウンするのにかなり抵抗あります。

A Further Combination

例えばハートの5を選び、そのカードを適当なとこに差し込んでもらうと、その両隣がハートの8とスペードの5になっていて、それをひっくり返すとハートの5がスペードの8に変わる的な、ちょっと書くとややこしそうですが結構面白いトリックです。
プロフェシームーブを使わないハンドリングで、なかなか説得力あります。

Ambi-Count

予言として5のカードを出しておき、2枚のカードをバラバラに差し込み、2つのパケットにわけて両方から5枚数えると選ばれたカードが出てきます。
出てくるんです。

Nepomuk

ホフジンサーエース的な現象で、他の3枚のカードの裏を見ると色違いになってて選ばれたカードの文字が書かれています。
ホフジンサーエースの意外性があるから最初から全部決まってた感は感じさせない構成って感じでしょうか。
でもまあこの辺になるとフォースしてちょっと変わった演出で見せるみたいなのちょっと飽きてきます。

Hofzinser’s Scheme

サンドイッチとホフジンサーエースを合体させてます。
合体させてしまったのだからしょうがないです。

The Magic Bullet Theory

ユニバーサルカード的な現象です。
レギュラーで行うパターンで、エースを1枚載せると変わる的な演出になっててハンドリングも良い感じになってます。

The Walton Deficiency Experiment

エニーナンバー現象です。
数え方が肝ですが、それだけじゃ弱いと思ったのかちょっとゴテゴテしすぎてる気がします。
これ自体は良い技法だと思うのですが。

Divergence

6枚のカードのうち、サイコロの目によって決まったカードが消え、カードで折られたサイコロを開くとそのカードになってます。
オシャン。
消すとこはちょっとこうストレスある手法なんですがエンディングのおかげでそこは全く気にならなくなるはず。
カードでサイコロ作る方法が解説されてます。

The Joker Proximity Conclusion

2枚のジョーカーを観客の選択によって見つける的なトリックです。
地味ですが、オープニングトリックにこういうの選べる大人になりたいですね。
なんかでもこれ成功させるとそのあと楽になりそうだしそういう意味で使いやすいネタかなと思います。

Busted Flush

ロイヤルフラッシュの中から観客の選んだカードが消えてメッセージカードになり消えたカードがポケットから出てきます。
セリフとメッセージはたぶん気が利いてるのだと思いますが、手法的な面白さはイマイチ。

The Maven/Bannon Triangle Conversion

4枚のエースが出てくるやつのバリエーション。
まあ、4枚のエースが出てくるやつです。
こういう些細な改変にこそ何かがあるのでしょうけど、4枚のエースが出てくるやつです。

Ripples in Time

小数枚のパケットで行うメイト一致手順。
過去、現在、未来がどうのという演出はなかなか域で、なんとなく抵抗ある技法をそれっぽくしてる気がします。

Behind The Ritual

これも過去現在未来がどうのというトリックで、トリック的には予言なのですが予言の仕方がちょっと変わってます。
これがなかなか良くて、観客目線になってみると気持ち悪さがいい感じに残るトリックで、現象の示し方が巧みだと思いました。
シンプルな手法をいかにもっぽく見せる手腕が活かされてるのではないでしょうか。

The Psychic Dyslexia Approximation

観客のメンタルセレクションの枚数目が予言されてるというもの。
大変面白い原理で、ダイレクトに予言しなくてもコントロールにも使えます。
直接やっても割と大丈夫な感じです。
ジョンバノンのトリックのバリエーションで、ハンドリングは変わってるけど目的はよくわからん感じではあります。

The Positive Fortune Observation

リヴァースファローを使ってカードを減らしていってフォーオブアカインドが揃ったりメッセージカードが出てきたりして、残りは全部同じカードでしたみたいなネタです。
まあワンウェイはオプションでいいかと思います。
カード減らしていくところは全部マジシャンの操作ですが、観客がカットするパートがあり不思議な感じはします。

Positively Fourth Street

観客がシャッフルしたデックの中で、一番最初に出てくるエースのマークを当てる予言トリック。
なかなか地味なので予言の仕方に凝ってます。
手法はちょっと色々応用できそうな感じがあるもので、デックの構成変えればエースに限らずなにかのフォースに使えたりしそう。

Blind Willie’s Deal

観客が選んだマークのエースと同じマークのロイヤルフラッシュを配るデモンストレーション。
これはカードを選ばせるシークエンスが面白くて良いです。
スートプロダクションとかにも使えそうな手法。

Last Breath

単純なカードのトランスポジションとエニーナンバー的なトリックを組み合わせた感じの何かです。
ちょっとサカー部分の演技は難しそうですが、シンプルすぎて怖い原理をお互い誤魔化してて結構良いと思います。

The Conqueror Worm

4枚のクイーンを出して、観客が選んだ1つのクイーンに全部が変化したように見えて、次の瞬間残りのカードは別のカードに変わります。
これ逆の方がよくないですかね。
バラバラに4枚見せて揃った方が。
それはまあ好みにしても、ハンドリング的には新しいとこも特になく、演じるシチュエーションがあんま思い浮かばない感じです。

Amara Rises Again

なんやかんやあって予言が当たり、フォーオブアカインドが揃います。
それはまあ良いとして、カードケースを使った予言の示し方で面白い方法が紹介されてます。

Dressed to Overkill

嘘発見器演出で選ばれたカードのフォーオブアカインドが揃って無事当たります。
個人的にはあんまり無事じゃない部分も多いと思いますが、当たるのは当たるので大丈夫です。

The Truth is Out There

選んだカードについてスペリングしていくごとに次の指示が書かれたカードが出てきて…みたいな感じのトリックです。
スペリングもこういう遊びがある分には楽しい気がしますね。
なんか直接カードにメッセージ書かずに、箱の中とかマットの下にメモを仕込んどいて脱出ゲームみたいにまわりくどくしてやりたい。

Something from Nothing

サムシングとナッシングをスペルしたりダウンアンダーしたりするとサインカードが残ります。
ここまで数々のダウンアンダーをやってきたのてダウンアンダーハイ状態になったこともあるのかより複雑な方が良いように感じましたが、たぶん気のせいです。
いやでもどうなんでしょう、ダウンアンダー名人というかそこをスリリングに見せれたら長けりゃ長いほど面白いもんなんでしょうか。
その名人は他のことやったらもっと面白いと思います。

Mind Magnet

観客の選んだカードが箱の中に入れた磁石にくっついて中に入っちゃうという手順。
カードを箱の中から出したように見せる時、こういうアイテムあると説得力が違いますね。
ハンドリングも落ち着いており、カードインにありがちなバタバタ感がなく好み。

Back to the End

バックトゥザフューチャー演出のカードインボックス。
あんまり演出が手法のカバーに関係なくて、バックトゥザフューチャーが好きなんやなという感じではありますが、現象的にはパケットの中の1枚が箱に入るというわかりやすいもので、軽くて良いトリックだと思います。

The Card at Many Number

メイトカードで示すカードアットエニーナンバー。
結構ジョンバノン感がある気がします。
なんとなくそのメイトカードでやる意味の微妙さというか、そこが不思議すぎず良い感じの後味というか、手法も大胆ながら特に違和感なく行えそうなもの。

The Wheel of Endings

ミステリーカード的な感じのトリック。
4枚の裏に?マークが書いたカードがあり、それぞれ文字が書いてるのですが、その中の1枚が観客のサインカードになります。
面白い見せ方です。
まあ欲を言えば他の?カードにももう少し意味を持たせたいところではありますが、裏の模様ごと変わるミステリーカードにしては無理がありません。

こんだけあって1年ぶりぐらいに再読しても全く記憶にも残ってないのが少なかったのは結構良い本なのではという気はします。
ただまあ手法が偏りすぎてるのと、意外なオチ演出系もいくつかに分類できるんで15個ぐらいには絞れるはず。
クレジットに名前出てくるピーターダッフィーとかジョンキャリーとかもだいたいそういうイメージですが、その界隈のメンツで改案し合ったりして似たようなのが無限に製造されていくので好みにハマらないとまあまあきついです。
演出や見せ方のバリエーションとしてはなかなか普通にカード触ってるだけじゃ思いつかんものも多いんで、軽く強い手品を探してる人には良いかもしれません。
個人的にはは手法、演出共に3つずつぐらい気に入ったのがあるので全然良かったんですけども、ダウンアンダー絡みのは読みながら試して上手くいかなくて、それはダウンアンダーではなくアンダーダウンだったからということもあり、字ではそう読んでてもどっちがアンダーで何がダウンなのかで混乱してうわーーってなったので、一冊の中で行うダウンアンダーの回数を定める法律とかがあると良いと思いました。

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