by jun | 2018/04/09

1599

オフ会をやってて初めて会う人によく言われる言葉に「パス見せてください」と「クリップシフトできますか?」というのがあります。
なんとなくマニアの間で高難度技法とされてるものができるかどうかで、てめえにオフ会を主催する権利があるのかどうか見定めてやるって言われてる感じで泣きそうになりますが、クリップシフトは結構練習した技法なのでなんとか大事には至っておらず、クリップシフトでコントロールしてからパスしたみたいな動きをして「パスはこんな感じっすかねえ」と言って誤魔化そうとしたのがバレた時の方が気まずいです。

クリップシフトを最初に知ったのはDan & DaveのTrirogyに収録されている「The Queens」の演技を見た時でした。
やべえと思って解説を楽しみに見たのですが、その部分の解説はなくて別の技法で解説されていて泣いたことは今でも覚えています。
そして2010年にようやくこのDVDが発売されたわけです。
肝となるクリップシフトの解説と、クリップシフトを使ったマジックが収録されています。

The Clip Shift

クリップシフトの解説。
Trilogyの例があるので、ここでサイドスチールの解説が始まったらどうしようとハラハラしながら見た記憶がありますが、とてもわかりやすく解説されていました。
カードを戻す時にいくつかコツがあって、一番合理的に移動させるやり方が解説されてます。

ここでパームやコントロールへの応用についても語られます。
クリップシフトからのパームは綺麗にクラシックに入れれるわけではありませんが、テーブルに手をつける状況なら自然な手の形にできるので結構良いです。
そのまま手をポケットに入れるとかなら問題ありませんし、むしろ指は開けるのでプラス面もあります。

コントロールにも当然使える技法で、不自然な手の動きをカバーできればなかなかに強いコントロールではないでしょうか。
角度に弱い印象のある技法ですが、
ちゃんとしたやり方でカードを動かしてお客さんに手の甲を向ければフラッシュしません。
横向くのに抵抗なければ少し左向きなって、手のひらをお腹と平行にするようにすれば安全だと思います。
カラーチェンジに使う場合も、デックと地面と平行にしながら振るより、左を向いてデックの面と体を平行にして、息を吹きかける動作でチェンジすると角度に強くなります。
意外と左右の角度に気をつけないといけないので、デックと地面を平行にしていると振った時に見えちゃうことがあるのですね。
どんなに早くやってもカードが戻ってくる時の動きは誤魔化し辛いので、軽くでも振る必要があるのはこの技法の弱点でしょうか。
手でカバーする代わりにデック自体は動かさずに済ませるか、面は見せた状態でカバーする範囲を減らすかの好みの話だと思います。

どちらかというとカラーチェンジより表裏を変えて消失/出現を表現するのに向いてる技法だと思っていて、それだとぴったり合わなくてもなんとかなるので実践的にもなります。前述の「The Queens」でも消失で使われていますし、フェイスを見せた状態のインパクトを活かせるのではないでしょうか。

難易度はやはり高めです。
というより普通のカードの扱いと全く違うことをするので最初は形にもならないのが辛いところで、指攣らない程度に無理せず頑張らないといけないのが大変だったりします。
一旦戻すところまでできるようになればあとは角度気をつけたり音を鳴らさないように微調整するだけなので早いです。

指の位置とか力のかけ方とか間違って覚えちゃうと後から治すのが大変なので見よう見まねでやったり、しょうもない種明かしユーチューバーの解説で覚えるのはおすすめできません。
このDVDが出るまで必死にDan & Daveの動きを推測で真似して変な癖がついて苦労した結果、結局このDVDで解説されてる方法に落ち着いたので人のバイアスがかかったコツとかは聞かない方が良いと思ってます。

Freefall

カードを一枚表向きでサイドに突き出して、片手で振ると段階的にどんどん下に下がっていきます。
一番下まできたところでもう一度振ると一番上に上がってきます。
まるっきりレイコスビーのレイズライズの逆バージョンですが、Freefallは表向きでできるのでそういう意味ではこっちの方が強いです。
ちょっとクリップシフトの応用的なこともしないといけないので難易度は高め。
解説されてるマジックの中で一番クリップシフトである意味があるマジックだと思います。

Fourplay

カードが真ん中でひっくり帰ったり突き出した状態でもひっくり返ったり、それ以外のカードが全部ひっくり返ったりするあれです。
元ネタはビルカルシュの「The Fidgeting Card」ですが、ラストのあれをクリップシフトでやるのがクールなところです。
ただクリップシフトでやるとゴミが残るので解決策としてはクリップシフトやりたいだけやんという気がしないでもないです。
クリップシフトできるようになるとクリップシフトしたくなるのでクリップシフトやりたいだけやんを否定し難いところはあるのですが。

Criterion

コレクター現象で、Kが消えていくパターンです。
これもまあクリップシフトやりたいだけやん案件で、The Queensの解説のような別技法でも解決可。
スタンディングで左手にK持ってれば片手で行うクリップシフトの意味が出てくるのですが、いちいちぴったり揃えるのを連続でやるとなると実用性は低くなるのであれなところです。

Rum Jungle

カードを二枚選んでもらってサッカートリック的に間違ったカードを出して、1枚目のカードに変化、そのカードが2枚目のカードに変わるというものです。
クリップシフトやりたいだけやん感まあまあ強いです。
あとサッカートリックとクリップシフトみたいな変化のさせ方ってあんま相性よくない感じがします。
技法っぽくない感じでやらないとわざと失敗したのが嫌味すぎる気が。

Tricycle

ストップかかったところのカードを3人に覚えてもらうのですが、カードを当てる段階で3人が別々のカードを覚えてたことが発覚するという手品です。
何を書いてるかよくわからないと思いますがそういう手品なのです。逆羅生門プリンシプル的な。
クリップシフトである意味がとっても感じられる手順なだけに限界が見えた気がして辛いものがあります。

Clean Hook

ワンハンドで4枚プロダクションをやってからのカード当てです。
たぶんどんなに上手い人がやってもプロダクション部分のもぞもぞ感は隠せないと思うので魔法っぽくはありません。
プロダクションはフラリッシュ的に頑張りを見せるものだと割り切れる勇気が必要になってきます。

というわけで手順パートは結構アレな印象です。
挫折する人が多いのってDVDの中で使い道がはっきり示せてないからなんじゃないかと思います。
個人的にはすり替えたカードを突き出したままのコントロールに使えるので良いと思いますが、それもわざわざ難しいことせんでええやんと言われたらそうかもしれません。

ポイントは片手でできるということです。
左手も空いてるのにわざわざ片手でカラーチェンジする必要はないです。
例えば左手でも片手でできるカラーチェンジをやりながら右手ではクリップシフトして両方変えるとか、左手でカードをテーブルに置きながら右手でクリップシフトしてなんかするとかならものすごく強力だと思います。
特にシークレットムーブとして使用する部分には開拓される余地がかなりある技法だと思うので、そこらへんに興味があれば身につけて損はないはずです。
一時期かなりクリップシフトやりたいだけやん期があって、クリップシフトを使わないと成立しない手順をいくつか考えたので個人的には覚えといて良かった技法という感じになってます。

これはクリップシフトでなくてもいいけど、クリップシフト使うことで持ち替えが減って時短になりそうなサンドイッチ。
バラバラに入れた3枚が上に上がってくるようなイメージです。

ダブルカラーチェンジを使ったプロダクション手順。

Sponsored Link

Comments

No comments yet...

Leave a Reply

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です