IBM大阪リング – International Brotherhood of Magicians – Ring201 Japan
大阪奇術愛好会とIBM大阪リングが合同発行してるスベンガリ最新刊。
著者が複数に渡っていますが、全編に渡って色んな方面に異常なこだわりが見えるマニアックな冊子です。
マニアックには良くも悪くもという枕が付くわけですけども、手品というのは不思議に見えることが一番大事なのでマニアに見せるための手品というのも必要だと思っています。
とにかく皆さん尖っていて、刺激を求めてる時に打ち込むと元気が出る一冊です。
オープン・コレクター (川島友希)
4枚のエースはアトファすことなくテーブルに置かれ、再びエースをデックに乗せてからシュコシュコと動かすこともなく、ピャラっと弾くと3枚のカードが挟まれています。
これでレギュラーデックかつフリーチョイスという皆さんが好きな要素のみで出来上がった最強のコレクターです。
何度かご本人に近くで見せてもらったのですが、これが死ぬほど不思議でして、音がしないんですよ音が。
解説読むと既存のコレクターにはないカードの動かし方をしていて、なるほど賢いなーと思ってやってみたけどこれがまあ鬼畜な難易度でして、理想のレベルでやるには相当練習要りそうな感じです。
いやでも練習しさえすれば超クリーンに出来るのを見てしまったのでこれは頑張りたい。
スキルある人って実現可能な範囲が馬鹿でかいから羨ましいです。
R&B (前野隆夫)
観客にシャッフルさせるところからスタートできるアウトオブディスワールド。
似たような手法のOOTWと比較して、こだわりポイントが細部ではあるのですが、あれを使うやつはあれをするタイミングが大事だと思うんで、あれを感じさせない手順だと思いました。
Rehabili Prediction (Yuji村上)
「絶対に当たる予言」というギャグ演出から、そのカードが観客の選んだカードになります。
なるっていうかそのカードが本当に絶対に当たる予言であったことがわかるというのが面白いあたりです。
ハラパンさんのやつとか、最近ちょこちょここの手のやつを見る気がしますが考案されたのは少し前のよう。
一般にもちょっと流行ってきてるジャンルのものを使うんで、見た瞬間にオチが読めちゃう人もいるかもしれませんが、別にちゃんと手品として成立するのでそこはまああんまり気にしなくても大丈夫そうではあります。
ESPカードとナンバーカード (岸本道明)
ESPカードと、トランプ5枚を使った手順です。
ちょっと文章にするとややこしい話なのでざっくり書くと、観客が心の中で思う数字を予言するというのが主の手順です。
2段階目は予言のカードも観客に選んでもらえて、奇跡的な演出の見せ方ができます。
この手順が良いのはESP手順にたまにある変な例外を考えなくていいところ。
どういう状況でも一つルールを覚えておけば技法も使わずに成立させることができます。
予言の当て方がやや回りくどく感じなくもないですが、ESPカードに興味持ってもらえれば何の問題もないかなーと。
しゃかしゃかライジングカード (とうそん)
デックを箱の中に入れてしゃかしゃか振ると中からライジングしてきます。
しゃかしゃかしないと出てこないのが面白いところで、マヨネーズの最後の一滴を出そうとする頑張り的なものが見えて不思議さは後退するように見えなくもないですが、振るのと上がるのは別の運動なのでおもろい動き方です。
既存のライジングカードを知ってる人にはめっちゃ受けると思います。
不可能な予言 (福井哲也)
別題「追いかけられる前に逃げるマジック」ということで、超マニア向けの手順です。
カードを選んでもらう前に、マニアにはご存知の可能性をプチプチ潰していって不可能性をマックスまで高めたところでどーんやられます。
セリフとかはマニア向けに特化していますが、観客が考えそうなことを排除していく考え方というのは基本だったりするので、よく出来たトリックです。
近いのはダニダオルティスのあれとかデニスベアのあれ的なあれ。
追いかけられる前に逃げるのは、マニア相手だと「そうかどうかはわからんけどあーすればできる」と思われてしまうから、先回りに先回りを重ねることでそういうぼんやりした予想をさせない効果があります。
一人でもその楽屋落ちネタがわからないような人がいる場所ではやらん方が良いとは思いますが内輪受けのギャグにもなります。
カードの選ばせるところでは逃げきれないのが少し辛いところですけども、その段階でうまく空気を切り替えれば問題ないでしょうか。
POEM (谷 英樹)
3種類まで対応できる予言。
特に工作も必要もなく超便利です。
応用手順も載っててとても良かったですね。
3つまで逃げれるとかなり色んなことができるし、クリーンな部類だと思うので重宝しそう。
Cannibal PANIC (山崎真孝)
カニバルカードで、最後はデック丸ごと食べます。
デック丸ごと食べちゃうってのはカニバルカードのオチとしては超最高で、ハンドリングも無理がなくセリフや演出も素敵です。
デックを全部食べたっていうとこの説得力も高く、大事なとこを誤魔化さずに見せる手順でとても良いと思います。
メインの食人パートも好きなやり方だし、かなり気に入りました。
スーパーセルフワーキングの研究 (石田隆信)
スーパーセルフワーキングは石田さんの造語で、セットはなしか最小限、シャッフルしたのに意外な結末、繰り返し操作を極力減らす、という条件を満たすものだそうです。
で、今回のテーマはタンタライザー。
タンタライザーについては石田さんが前回のコラムで触れられてるのでこちらを参照してください。
タンタライザーはしつこい繰り返し操作にこそ面白さがあるトリックではありますが、動きだけ見るとあまりに単調なのでそうやったらそうなるんだろうなという気しかしないというのもあります。
で、石田さんはここにイレギュラーな要素を入れて、そうやったらそうなるんだろうな感を減らしています。
そのことによって具体的すぎる指示があったり、少し動機の付けづらい操作があったりもしますが、原理自体はかなり追いにくくなっていて単調さもなくなっています。
特に「ラスト・スリーカード」という3枚のカードを残す作品は他の原理と組み合わせていておもろかったです。
観客のランダムな操作と選択の要素が入る「相棒」は現象もカード当てじゃなくなっててシャレてます。
バラバラに入れたエースを4枚残すタンタライザーを考えてたことがあるのでとても参考になりました。
ハンクボールの手順 (瀬島順一郎)
シルクがいっぱい出てくるやつ。
全く知らないジャンルだったのですがこれ面白いですね。
写真がたくさんあって解説がめっちゃわかりやすかったので練習したい。
ストップカードを考える (赤松洋一)
レギュラーデックを使い、カードにサインかせて、100パーセント成功してサイコロジカルフォースを使わないという縛りのストップカード。
基本的には同じ原理のものが3種類の別の道具を使ったやり方で解説されています。
これに似た考え方のことをラリージェニングスがやっているのですが、負担もないしフェアさも圧倒的に本作の方が優れています。
やや準備は大変ですが、一回作れば良いだけだし強烈な現象なので十分価値あるかなと。
トリック解説は以上で、他にコラムや対談が載ってます。
厚川昌男さんと近藤幸三さんの40年前の対談という超豪華でレアなものが載っていて、厚川さんが奇術とは何かと定義づける話とか読んでるだけで背筋が伸びる感じでした。
Comments
No comments yet...