by jun | 2017/11/08

今年のマジケで発売されてたレクチャーノートで、その後マジオンなどで取り扱っていたのでそちらで購入しました。
「不可能への挑戦」をコンセプトにしたカード当てと、バリエーション的な使い方が解説されています。


本はA4版でしっかりした表紙がついていてデザインもなんかテンション上がります。

ギミックデックの作り方

本書で使用するギミックデックの作成です。
レギュラーデック1組から作れるもので、特殊な道具も器用な手先も必要とせず作れます。
慣れたら5分ぐらいで作れるものです。

この工作をしても普通にレギュラーデックとして使えるので、ギミックデックに抵抗がある人でも取り込みやすいと思います。
自分も持ち歩くのが面倒だったりしてそんなにギミックデックを使いませんが、これはレギュラーとして扱うのに全く支障がないので持ち歩くデックにこの細工をしておけばいいだけです。
あとお気に入りのデックを改造するのにもそんなに嫌じゃない細工なのが嬉しいですね。
お気に入りデックをいじりたくない気持ちよりお気に入りデックで不思議なことしたい気持ちが勝つので。

不可能への挑戦

古典的なギミックの考え方でどれだけ不思議に見せるかということを突き詰めたカード当てです。
技法でもギミックでもそれを使った色んなマジックが出てくるものですが、このギミックを使ったマジックはあまり知りません。
自分も原理自体は知っていたのですが、別にカード当てならわざわざ使うことないなと思っていました。
不可能への挑戦は、このギミックの特性を最大限に活かして観客に不思議さを印象付ける見せ方が解説されています。

このギミックに限らず、似た原理を使うマジックはたまに事故が起きてしまうのですが、そうならないための工夫がポイントごとに解説されていて、しかもそれが観客へのインパクトを強めるセリフとしても機能するあたりも素晴らしいです。
現場派のマジシャンならではの工夫は必読です。
フォースもピークもコントロールもせず、選んでもらう前も後も混ぜさせることができるカード当ては少ないと思いますが、その中でも最強の部類だと思います。

Far from Eye, Far from Heart

Out of sight, out of mindやその派生作品と同じ、引いてもらわずに見て覚えてもらっただけのカードが当たります。
解説部分だけ読むと不可能設定が減ってる気がしますが、流れで演じるとちゃんと1組のデックの中から選んでその中から探したように見えます。

Out of sight, out of mindは好きなマジックなのですが、唯一気になるとこがあって、この本でもその部分を解消するためにこの手順が生まれたみたいなことが書いてたのでとても気に入りました。

ワキワキ・カードロケーション

ワイキキカードロケーションの最後にちゃんと表裏が戻るバージョン。
ワイキキカードロケーションも十分不思議なのですが、表裏戻らないのでどうしても作業感が強くなります。
戻ればトライアンフ現象にもなりますし綺麗です。

この手順はワイキキ風にしなくても成立するのですが、マジシャン側の都合で表裏を混ぜます。
このマジシャン側の都合を不思議さに繋げるあたりがこの本通して学ぶべきところかなと思います。

Do as I DO

ギミックを使うことで演者と観客がデックを交換する回数を減らせます。
観客にデックを選んでもらうなら、カードも選んでもらったデックから覚えてほしいです。
それができます。
ハンドリングも練られていてシンプルだし、他の一致をやりたい時の負担も圧倒的に減ります。

Dr.Joseph Bell

演者は後ろ向きの状態で2人の観客に好きな枚数とってもらったり一枚カードを覚えてもらったりしますが枚数もカードも当たります。
著者がこの作品からこのギミックデックの可能性が広がったと書いていますが、そういうことが確認できるマジックです。

後ろ向きの状態で操作してもらうマジックは怖いですが細かい注意点なども詳しく書かれてるので助かります。
当てる事が多いということは覚えてもらうことも多いということになるので、そのあたりの工夫も書かれていました。

Ten Card Poker Deal

10枚のカードを使うポーカーマジック。
ラストは観客にイカサマをさせて、なんのカードをすり替えたか当てるというもので面白いです。

この手のマジックに疎いのですが、カードの構成や効果について解説されていますので飲み込めました。
ギャンブル使ったマジックの演出についてもためになりましたし、このギミック使ってこんなこと考えつくのかと感心した手順です。

Simple Elimination

複数人にシャッフルしてもらい、後ろ向きになった状態でカードを一枚ケースに入れてもらいますが、それを当ててしまうマジック。
観客がカードを覚えなくても成立するカード当ては好きなのでお気に入りの手順です。
たぶんマニアがこの現象を見ればある想像をすると思いますが、それを知っていた方が不思議に感じるはず。
ギミックや原理や技法のコンボはマニアでも追えなくなるようになるものですが、観客にシャッフルさせる部分があるので色んな可能性を消すことができています。
後ろ向きになるカード当てはカットしてもらったとこのカードを覚えるとかが多いのに対してこのマジックは完全にフリーチョイスだというとこも良いです。

Scramble Card Trick

シャッフルしたデックから適当な枚数とってもらってからケースに入れてもらって、そのカードの枚数やカードの内容も当ててしまいます。
スクランブルぶりが良いですね。
複数枚カード当てはうまくやればクライマックスに最適なので是非覚えたいところ。
これも観客が枚数やカードを覚えなくていいのでエンディングにやっても負担にならないので良いです。
演者の負担も思ったより低く、ギミックパワーすげえです。

Deluxe Edition

表を見ずに一枚のカードの裏にサインをしてもらって、それを観客が当ててしまいます。
裏にサインさせたり観客がカードを減らしていくのは魔耶一星さんのリミテッドエディションに近いですが、このマジックはラッキーパターンが存在して、まあまあの確率でそれが決まるので強いです。
もしそれが決まらなくても、巧みな構成がされてるので観客が自分で決めた感が強まるエンディングなので不思議で気持ち悪いです。

というわけで9つの手順が解説されていますが、どれも無理矢理ギミックを使った感がなく、現象に対してのアプローチの1つとして使われているため合理的でした。
個人的ベストはFar from Eye, Far from HeartとSimple Eliminationあたり。
ここぞという時にScramble Card TrickやDeluxe Editionも演じてみたいです。

文章も読みやすく、混乱しそうなところはカードの位置が説明されてますし、図や写真も程よく入ってるので手とカードを動かしながらやればできます。
クレジットもちゃんと入ってるので元ネタ掘るのも楽しそう。
このギミック使ってなんかできるかなと考えるのも楽しいでしょうし、アイデアの広げ方も学べるので色んなマジックの考え方にも応用できると思います。

余談ですが、最後のページの著者プロフィールを見て、もしかしてと思ってちょっと調べたら知ってる人でした。
自分が一時期マジックから離れてたのでしばらくお会いしてませんでしたが、こんな活躍をされていたとは。
前からカード当てが不思議で演出がおもろい人だったんで、作品集のクウォリティにも納得した次第です。

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