by jun | 2019/05/15

ベンジャミンアールのPast Midnight、ジョセフバリーのInscrutableでお馴染みのAlakazamが2017年にそれ感と良さ感のあるDVDを出しています。
めちゃくちゃ上手いスライトとメンタル要素が上手く溶けてスタイリッシュさと不思議さが両立したような、メーカーとお国柄で括るのもどうかと思いますが二人と共通する部分は多いです。

トムローズさんは割と省エネ主義で、技法的にも手順的にもシンプルに解決して仕事終わってからの雰囲気で不思議を演出する感じが強く、そういう意味では最近のベンジャミンアールと通じるとこもあるかもしれません。
悪く言えばもったいぶってるだけとも言えますが、ふらーっとしたチル感でいかつい現象起こすのは真似すんの難しいけどかっこよかったりします。
気だるさ混みのかっこよさだとPast Midnight期のベンジャミンアールが最強だと思ってますが、手法的にはトムローズの方が真似しやすくバランスは良いです。
ベンジャミンアールにバランスの良さは求めないしジョセフバリーのようにリスキーに見える手法でやばい現象起こすのもやばいのでバランスの良さが全てではありませんが、取っつきやすいのはこれかなと思います。

一つ一つの手法だけ見ると超斬新ということは少なく、見る人やタイミングによって結構好みは分かれると思いますが、ちょっとしたこだわりを大事にしてる人なので細部気になる時に見ると発見が多いはずです。
技法編ではフレッシュかつ有用なもろもろが紹介されていてそこは誰が見てもおもろいはず。

A Study In Probability

選ばれたカードをデックに戻して観客にもシャッフルしてもらい、マジシャンは表を見ずにカードをどんどん減らしていき、3枚まで減らしたところで表をちらっと見せますが観客のカードはありません。
そこから2枚減らして1枚にすると選ばれたカードが残っています。

露骨なサッカートリックではなく、変な演技をしなくても意外性を出せて良いですね。
ピットハートリングのMaster of the Messの前半的な。
観客にシャッフルさせれる非常にフェアな手法を取ってるのもポイントかと思います。
全体的に現象に対するアプローチの正しさありますねトムローズさん。

Homage To Elmer

ビドルトリック。
かなり些細なバリエーションですが、デックを半分にするところに工夫あり。
消失パートは若干やらしいというか、この人の佇まいだと焦らされても絶対もうちゃんと消えてるやろという気しかしない!

Ace Assembly Ⅰ

シンプルなエースアセンブリー。
各エースに3枚ずつ乗せるんじゃなく、観客が選んだ1枚にだけ乗せて残りはデックにみたいな感じです。
ウィリアムソンのやつを更に簡素化したような。

3枚ずつ乗せまーすも意味分からんと言えば分からんけど、1枚だけに3枚乗せるだけというのはそれはそれで謎は残りますね。
サトルティはしっかりしてるとはいえ、動機としてはちょっと弱くなってる気がします。
観客にエースを一枚選んでもらうのは超良いです。

Ace Assembly Ⅱ

こっちは普通のアセンブリーに観客の選択要素を足したような感じ。
移動させる時のジェスチャーがオシャンでクール。

Tracked

カード引いてもらってポーカーハンドを配ると演者のとこに客のカードが来て他の4枚はAという手順。
シャッフルさせてカード当ての不可能性を維持しつつスタックも維持する方法が面白い。
結構な枚数キープできて観客は混ぜた印象残すから繋ぎの手順として使うにはかなり優秀だと思います。

Soft Key

数枚ずつカードを見せていってどれか一つ覚えてもらったのを当てます。
これはジョセフバリーが似たようなことやってましたね。
あれはポーカーハンドの中から覚えさせるやつで、こっちはそれをよりラフにした感じ。
ごにょごにょして特定したあとのカードの出し方が大事というのがよくわかる手順で、そのあたりはベンジャミンアールも含めてみんな共通してますね。
あんまりメンタりすぎない感じというか。

Memo Demo 1 / Memo Demo 2

記憶術のデモンストレーション。
1はMove a Card的な感じで見せたあと、ポーカーハンドを配ってそのうち一つの5枚の内容を当てます。

2は裏向きで1枚出してから、残りのカードからその1枚を判別するみたいなのが1段目。
2段目は出したカードのフォーオブアカインドが何枚目に入ってるか当てます。

どちらもシャッフルさせた状態からスタートできますが、実際に多少の記憶が必要なタイプで、オチも両方ガチっぽく見えたまま終わるので印象としてはガチよりのガチという感じになります。
ルーティンの途中ならそういうのも良いのかもしれませんが、個人的にはもっとありえん手品な感じで終わるやつの方が好き。

Flow Cutting

観客と一緒にごちゃごちゃに混ぜたデックから4枚のA出し。バラバラに戻して、観客の好きな順番で取り出す2段目。

プロダクションは超かっこいいし観客に混ぜさせるとこも完璧。
2段目はなくても良い気がしますが、コントロールはおもろいので是非に。

The Control Freak

観客の好きなポーカーの役を配る手品。
手順そのものよりシャッフル技法がクソうまくてそこ見るだけで価値あり感。
これは混ぜてる。うまい。

You Think As I Think

演者が思ったカードと観客が思ったカードをそれぞれ当て合います。
このDVDの中でも結構お気に入りで、Think Cardテーマとしておもろいアプローチです。
演者が思ったカードを観客が当てるというのが効いていて、操作的にもすっきりしてて綺麗な構成だと思います。
ジョシュアジェイが似たようなことをやっていて、それは表を見ずに抜き出し合うというやり方で、偶然の一致感ならそっち、頭繋がり感ならこっちという感じでしょうか。

Twist

突然のパケットトリック。
ノーエキストラでのツイスト現象です。
ノイズは少ないけどその分ちょっとあれはカウントが。
なんとも言い難い感じです。

Tunnel Vision

選ばれたカードがズボンのポケットに。
そのカードをデックに戻しますが、別々のポケットからそのカードのフォーオブアカインドが出てきます。
ズボンのポケットだけでできて軽い手順でおもろいですね。

Analogue Poker

デックをポケットに入れ、観客の選んだカードのフォーオブアカインドを手で抜き出します。
バラバラの位置から抜き出したような感じに見せる取り出し方がおもろいです。

Techniques

プロダクションやフォールスシャッフルなどの技法解説。

“Quick Cut Production”はポンポンポンつってリズミカルにカットしながらトップからAが1枚ずつ出ます。
リズミカルというかリズム勝負。でもちゃんとカットしたとこから出たように見せる工夫もあってやらしい感じです。

テーブルを使わずにBenzais Spin Out的なことをやる”Trapdoor Removal”はジョンバノンのあれと同じですね。便利でちゃんとそう見えていいです。

カードの取り出しではスプレッドの真ん中から抜き出したように見せてトップカードを出せる”Spread Removals”と、カットした場所からトップカードを出す”Slip Removal”もそれぞれ実用性高そう。

フォールスシャッフルは”Finessed False-Count Shuffle”がベスト。
シャーリエシャッフル、アードネス本で言うところの第五の方法というあれなんですが、なんかすげえ混ざってるように見えます。

“Dribble Undercut Force”はイロジカル系のフォース。
ちょっとした目線と体の動きが良いっすね。
この人左利きということもあって引っかかりやすいというのもあるかもしれませんが、裏の色隠せるし楽にできて良いと思います。

ボトムディールは上手くデックをホールドするTipsで、特に変な持ち替えの動作もないので良いです。
慣れるまでちょっとホールド強すぎて抜けにくいけど、最初苦戦するの持ち方だと思うので入門には良いと思います。

あと手順内で多用されてるグリンプス。
立った演技でもほぼ違和感なくやってますが目と顔の動かし方にコツがある模様でそこらへん解説されてます。

技法編は出来るようになっておきたいのいくつもありますね。
形だけならそこまで難しいものじゃないからモチベーション保てるし。
手順はYou Think As I Think、Flow Cutting、A Study In Probabilityあたり。
全体的に超うまいし参考になるとこ多くて良いDVDだと思います。

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