by jun | 2018/11/15

新商品をチェックするマジックショップの一つにマジオンがあって、野島さんの新作はもちろんなのですが輸入もののDVDなんかも変わったものが多く、旧作でも質の良いものばかり扱われてる印象です。
今週の新着商品の中に見たことあるやつがあってまだ書いてなかったので軽くレビューしたいと思います。

Under the Bridge(アンダーザブリッジ) by Kiko Pastur – マジックショップMAJION

キコさんはスペインのマジシャンで当然カードがめちゃうまい人です。
このDVDの演技はすごい変な場所で洒落た音楽に乗せて無言で行われていて、これをアーティスティックと言っていいのかはわかりませんが、やってる手品は変な空間に負けずむっちゃ不思議なので間違いなく芸術です。
無言の演技でもノイズ的な動きや技法感は見えず、手順自体がしっかりしてることがわかりますしテクニックも一級品。
気配が出そうなポイントの置きどころがうまくて、見直すと堂々と動いてるけど全体の流れでは特に意味のある動きに見えないように組み込まれています。

キャラクターは独特な方ですが、観客目線で変な動きは少なく現象はクラシカルなものが多いので変わったアプローチがじっくり楽しめる1本です。

Four Cards Repeat

動画をどうぞ。

これだけ人間の観客がいない演技なんですが、一体ここはどこの何なのでしょうか。

何度もカードが戻ってくるという手順で、最後に選ばれたカードが残るというものはいくつか見たことがありますけど、これは選ばれたカードをデックに戻すタイミングがめっちゃいいですね。
スイッチからパケット取るまでの流れも自然だし、オチのインパクトも強いです。
あのディスプレイのタッチとかも綺麗ですし、演技力も素晴らしいものがあります。
イメージですけどスペインの人ってマジシャンにも予想できないことが起こった的な表情めっちゃ上手いですよね。
なんか可笑しいんだけど茶番にはならない絶妙な感じ。

Homming Deck

これも動画あります。

カードが似ててわかりにくいですが、1枚目と2枚目がトランスポジションしてからのデックバニッシュという流れです。

観客にシャッフルさせるのも含めて、過剰にクリーン感を出してるのがいいですねこれ。
演出も少し変則的ながら、ポケットを使ったトランスポジションということで筋は通ってますしストレスを減らす構成も巧みだと思います。

Shuffling Surprise

デックを4つに分けて3人の観客にシャッフルしてもらって、それぞれのトップカードを見るとA。
スペクテイターカットエースの変形ですが、シャッフルしたあとパケットを触らないし、ちゃんと全部混ぜたように見えるので強いです。
あれをあれするところはグッドウィンのやつに似てますが、こっちはかなりゆっくり処理しても大丈夫なようになってます。
スペクテイターカットエースだと気になる動きもこの手順の中では割と自然に見えました。

この手順には続きがあって、観客に一つエースを選んでもらい、そのエースの場所のパケットを見るとA〜Kまでが揃ってます。

Collector’s Case

ケースの中にエースを4枚入れておいてから3枚選んでもらい、デックを弾きつつケースの中を見るとコレクター状態。

3枚のカードを表向きに戻さないといけないのはちょっとあれだったりするんですが、コントロールはなめらかで追いにくい感じのものになってます。
1枚ずつ戻してこんとするのもあんま好きじゃないんですけどなんかいい感じですこれ。
エースをケースに戻すところにも一工夫あり、あれするところのタイミングも完璧です。

後半はスライト勝負なんですがこれがクッソうまくて、ここの細かい動き解説で見るだけでも価値あります。

あと後ろの観客のおじさんがノーリアクションすぎて怖い。

Invisible Stream

デックには裏向きのカードが1枚。
観客がジョーカーに書いたカードがその裏向きのカードです。

レギュラーでインビジブルデック的なことをする中でも高得点で、ジョーカーに書いてもらうってことにしてるのが功を奏してます。
カード見る前にワンクッション置くことやカードを示すところの動きに違和感が出ないようになっていますし演出的にもおもろいです。
プロブレムからちょっと妥協した時にその中で最高のものを作れるセンスが光ってる一作。
普通に見たら別に何かが劣化したように見えませんし。

Sandwich xyz

3枚のカードを選んでもらって、そのカードが1枚ずつ2枚のサンドイッチカードの間に移動するトラベラー的な現象です。

なんのカードが移動したかはっきりわかる型のトラベラーで、アヘッド具合もおもろいですが使われてる技法も少し変則的なものでテクニックのクウォリティも鬼。
簡単に安全にやろうと思えばいくらでも置き換え可能ですけどそれだとこの感じは出ません。そんな難しいことせんでもという妥協がないのがええですね。
枚数を意識させないタッチのぬるぬるっぷりは中々簡単に真似できなさそう。

これだけバックで流れてる音楽にがっつり歌詞があるもので、何故かアマンダパーマーの”The Bed Song”。
この曲歌詞が5つのパートに分かれててどんどん不穏になっていくんですがその感じでしょうか。

Once upon a Triumph

トライアンフ。

バラバラに見せてから広げ直すだけで揃う。素晴らしいっすね。
ノーセットから観客が触る部分が多いのも良いですし、入れちゃっていいの混ぜちゃっていいの的なサスペンス感もたまらんです。
このインパクトにしては低負担だと思いますし、フェアに徹してるので最後にどうとかいうのもそんなに気になりません。

Predictions in a Bubble

3枚のカードを伏せておいてから1枚選んでもらって、それをデックに裏向きで突き出した状態にしておきます。
3枚のカードを見ると3枚とも選んだカードになってますが次の瞬間エースに変わり、デックの中に裏向きにしたカードもエースに変わっています。

Everywhere and Nowhereの変形的なあれで、エースが出たあとは選ばれたカードは消えてしまうパターンです。
似たような現象だもアシンメトリカルトランスポジションに繋げるのもありますが、これはこれでさっぱりエースだけが残ってあれどこいったんという不思議な余韻が良かったりします。
それ言ったらなんでもええやんという感じになりますけど、なんとなく手順によって相応しいエンディングってある気がしますし、これはこれという感じが出てるのです。

Elrond’s Assembly

エースアセンブリー。

消えたって言ったらちゃんと枚数ごと減る消失で、それだとマスターパケットに最初から3枚置くのがあれに見えますが、そこは表向きに出現するからなんとなく大丈夫になってます。
スローモーション的な見せ方としてはクレバーで、バニッシュの異常な不思議さで持っていってるのも良いです。

他の手順と比べるとちょっと重たさを感じなくもないですが、セッティングされてからは一直線。
これもやっぱり既存の方法でセッティングするとちょっとぼんやりしそうな感じありますね。
これが最後の手品だからラストにロールシャッハテストの紙を観客に渡す謎のシーンが入ってて面白さ3割増しぐらいになってるかもしれませんが、とても理想的なアセンブリだと思います。

そんなわけで、あれにまだこんなやり方があったのかというのを存分に楽しめておすすめのDVDです。
本当見た目上は変な動きしないので、むしろよく使われる技法に違和感が出るぐらい。
アクロバティック方向の演技もされる方で、最近Fool Usに出た時のこれとかもマジ最高でしたね。

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