by jun | 2020/10/17


2007年に出たDobson本。
大変多作な方ですが、この本だけで40作品解説されてます。
図や写真は一切なく、だいたいのトリックが1〜2ページで解説終わるのでシンプルな仕掛けの面白さが楽しめる一冊です。ebookも出てるので電話機に入れて隙間時間に読むのに丁度良いと思います。
全体的に解説があっさりしてて演じ方自体はそれなりに考える必要があるし、メンタル系の現象も多いんである程度リテラシーが必要とされる本ではあります。
一方で観客とやり取りする系の手品になるとウッキウキで「ここで笑いが起きます!」「ここで二度目の爆笑です!」とか書いてて、本人の演技テンションに近いセリフが解説されてる手品もありました。この人はアドリブにめっちゃ強い人で、観客がちょっとふざけた時とかでも無視せず立てつつ全部上手いこと返すからウケてるということもあり、そのままセリフを言えば間違いないってこともないですけど、ステージの客上げ手品の参考にはなると思います。ウケ狙いのセリフの中にも現象を示唆するフリがあったり、イメージを補強しつつ気の利いたことを言っていたりして、ただふざけるだけだったら別に手品やらなくていいのではということはたまにしかないです。
正直全部の手順でセリフや演出を丁寧にやって欲しかった感はありますが、扱ってる素材も幅広く、まずはアイデア集ぐらいの気持ちで読めばそこそこ満足できますし、良い手品率は高く、めっちゃ良いのも結構あります。

Imagine

ブランクカードを使ったマインドリーダーズドリーム的な何か。
両面白の中から想像で一枚選んでもらい、そのカードだけ実体化するというような現象です。
デックを2つ使うのですが、フィッシングにかこつけてさらっと取り出してサトルティまで終わらせるのがなかなか良い感じでした。

Invisible Lie Detector

見えない嘘発見器。
カードのあれじゃなくて、見えない嘘発見器を取り出し、それが観客が思ってる物体として現れるというような現象です。
物体の決め方自体はカードを使った基本的な手法ですが、びっくり箱と軽めのメンタルは相性が良さそう。

TNT

演者と観客が持ってるものが予言されてるというあれ。
これはものではなくて言葉が書かれたカードを使うもので、面白みはあるけどガチ言葉遊び感が出てしまって不思議ではなくなってるような気がします。
英語だとそうでもないんですかね。まあそこを上手いこと言うのが面白いジャンルではあるのですが。

Point Blank

観客に配ってもらって好きなところで止めてもらい、そこに予言のジャンボカードを挟んでもらうと、その位置のカードと一致してデックの他のカードは全部ブランクでしたというオチ。
ジャンボカードを使ったフォースで、予言の意味もなしてるから道具としての意味は十分ですが、必要な付属物があることの動機がかなり弱いです。
持ち運んだり示しておくのにそれが必要ぐらいの理由なら付けれそうですけど、うーん。

Ringflash 2

指輪をマッチであぶるとチェーンに変化し、フラッシュペーパーでボーンやるとチェーンの中に指輪が現れます。
マッチを使ったクリーンなハンドリングがおもしろく、決まれば金属がにゅるっと溶けて変化したように見えるんじゃないでしょうか。
このロードは色んな物体に使えるので重宝しそうです。

Stunning

カラーチェンジングトライアンフ。
観客のカードだけが色違いになるやつ。
ギャフをもりもり使う方法ですが、フォースが不用でハンドリングはかなり軽いです。

The Wining Card

観客が選んだカードと同じカードが観客の手の甲にくっついている。

なんとなく面白げなやり方で目的を達成しているのですが、逆にそこが印象に残りすぎて付けたならそこしかないという感じもしなくはない。
カードの選択がまあまあフェアなのでそれでも不思議さは残ると思いますが。
ただドッキリ的にやられることが多い現象に、ちゃんと演出がついてるのは好感度高いです。

Think as I Think

観客と演者がそれぞれお互いのカードを当て合いっこするやつ。
これ大きく分けて3つやり方があると思うんですけど、観客にシャッフルしてもらえて見た目的にもすっきりしてるバランスが良い形です。

Sweet

砂糖袋の中にサインコインが入ります。
リアルにインしてるので準備がちょっと大変ではあるんですが、サインコインの扱い方が肝なので飛ぶ先はなんでも良いと思います。
同じ考え方でカードでも可。
良作でしょう。

Jack in the Box

間違ったカードが表向きになったりスペリングしたり色々あって、「箱の中を見ろ!」というカードが出てきて箱の中を見るとカードが入ってます。

手法的にメッセージカードを使わなくてもキックバック的なトランスポジションでも可。
まあ変なメッセージ書いてるカード出てきた方が楽しいのはわかる。

Vision

透明のデックと透明のルーレットと透明のフルーツバスケットがあり、カード1枚、ルーレットの結果、果物を1つ決めてもらう。それが演者がベットしていたお札に予言されてる的な現象です。

観客の自由度は高く、上手いこと色々分散させてて後出し感もそんなにないように見える構成で賢い手順だと思いました。
果物はフォースなんですが、ハッピーエンドを作りつつアウトにも行けるやり方が結構よかったです。

Rainbow

レインボーデックの演出案。
そんなん普通やんみたいなギャグ手品をしたあと、実はレインボーだから凄いことだよみたいになります。
まあレインボーデックは味覇みたいなもんでそれ使ったらだいたい良くなるやんてのもありますけど、オーバーキルとして使うんでなくレインボーデック見せた時が最初の驚きになってるのは良いんではないでしょうか。

Tax

両面ブランクの山の中から3枚を観客の前に置き、1枚使いたくないものを選んでもらい、残りの2枚に赤と青のシールを貼る。シールを貼った裏を見るとそれぞれ赤と青の裏模様になっていて、使いたくなかったカードを見ると「税金」と書かれています。

仕組み自体は良いのですがガバガバなところが多く、そのまま演じるにはちょっと辛いでしょうか。
オチの面白さに対して赤と青というのもなんだそれという感じがするので、ここはもう少し工夫したいところです。

Word

観客がカードに書いた文字を当てる手品。
シンプルな原理を使っていて動機付けもそれっぽくはありますが、手順の通りだとあれはなんだったんだというところがはっきり残っていてなんとも。

Sharpie

3本別の色のペンを置いて、後ろ向きになって名刺にどのペンかで何か書いてもらい名刺は隠してもらいますが、何色のペンで書いたかを当てれます。

演出さえしっかりすればそれっぽい感じで見せられそうな手品です。
一個上のWordとうまいこと組み合わせられそう。

Man Eaters

観客が選んだカードを2枚のQの間に挟むと消えて、デックから表向きに現れる超シンプルなカニバルカード。

その通りのことができますが、セリフや演出も特に書いてないしあまりにもあっさりしてるので、こんなことをやって楽しいのかという気持ちになりました。

On The Button

布の上に6つのボタンが置いてあって、観客が選んだボタンだけ布に縫い付けられています。

現象はとても素敵です。
どうやって選んでもらうかですが、過半数がバッドエンドかつ、そこが気にならない人はまずいないんじゃないかというレベルのバッドエンド。

Janus

表向きの予言をテーブルに置いておき、観客にスプレッドの中から自由に1枚選んでもらうと、予言と一致し他のカードを見ると予言とは違う全部同じカードでしたというあれ。

現象まで最短距離で遊びがなさすぎるので、そこ!っていうところが割と引っかかりやすいと思います。
予言は裏向きで良さそうだし、先にデックの表を見せてから予言を開けるとか、テーブルのないシチュエーションでやるとか、色々工夫の余地がありそうです。

Missing Think

パケットで行うカード当て+ポケットへの移動現象。
最初は演者が選ばれたであろう1枚のカードを取り除き、観客は残りのパケットにそのカードがないことを確認して当たってることを示し、当たりのカードをパケットに戻しても観客が確認するとそのカードがなくなるというちょっと面白い見せ方。
現象だけ見るとカードトゥポケットを地味にしたような感じですが、観客が確かにそこからカードが消えてることを確認するのは結構強いと思います。

Spell Check

2つのデックを観客がシャッフルして、片方のトップカードを表向きにし、もう片方のデックでスペリングすると同じカードが出てくる。
Sadowitzがやっていた手品をDobsonが想像して作った作品らしいです。

解説されてる方法では奇跡っぽい見せ方ではなくなっているのですが、面白い現象で原理も強いのでバリエーションはいくつか考えられそう。

Synchronicity

演者と観客で一つずつデックを持ち、お互いに1枚ずつ取ってそれを交換すると、カードが一致していて、他のカードを見ると全部ジョーカーでしたという手品。
リチャードサンダースのアルファデックと同じ現象だけどちょっと違うよという前書きがありましたが、手順が違うだけでまあ同じような感じです。
全部ジョーカーオチは主に演者の都合のためのものですが、この場合はかなり効果的に機能するので全然ありだと思います。

Switch

カードケースとギャフを使った良い感じのトランスポジションの見せ方+ワンウェイオチ。
入れ替わりのところのハンドリングは本当に良い感じなのですが、トランスポジションのあとにワンウェイを見てどう感じればいいのかはよくわからないです。

TLC

think、look、chooseと書かれたカードに観客が自由に考えたもの、部屋の中で見えたもの、選ぶカードをそれぞれ書き込んでいきますが全部当たります。
基礎的な原理を利用しますが、終盤にバタバタしない感じで普通に良いです。

Unique Prediction

3枚のコインを使った予言。エキボックを使うあれのあれ版です。
ちゃんと計算してないですけど、エキボックエキボックした感じにならない場合が多くて、ちょっと残念から超ハッピーに持っていけたりもして楽しそう。
即興性は失われるけど即興っぽくはできる。

X-Change

コインボックスを使った複数枚コインの移動。
ハンカチかマットの端から端に移動するもので、あの作業をセリフでうまいことカバーしています。

An Englishman In New York

Sam the BelhopのDobson版。
どうしてマジシャンとしてやっていくことになったかを語る感じで話が進みます。
これ系のやつ、いかに都合でどうとでもなる数字を使わないかどうかが大事だと思ってますが、そういう意味ではあんまり上手いとはいえないです。
ハイカードは上手く処理されていて、中盤のフリとオチは綺麗にハマってます。

Chews a Card

カードトゥマウスの手順。
手法はちょっと変わってて面白いです。
ギャグですすむので意外性も十分。

Zipperred

ズボンのチャックからカードを取り出すやつ。
パーム使わなくていいやつで、今はこれが主流な気がします。
アイデアとして書かれてる、デックを丸ごとチャックから出して最後にセレクトカードを出すやつはスタック使えばコールカードで出来そう。

Magic Spell

2つのパケットでスペリングして一致現象が起きるやつ。
スペリングする文字は演者が決めますが、観客が自由にできることもあって不思議です。カードカレッジライテストにもありましたねこれ。
この手順はトリッキーな予言がオチになっていて、その前にも何段階かに渡って盛り上がりポイントがあり、カードの枚数が少ないからこそ地味な不思議さが積み上がっていく面白さがあります。

The Crying Game

カードインたまねぎ。
まあやることはレモンのやつと同じようなあれで、丁寧なハンドリングが解説されています。
デュプリケート使うやつですが、ハンカチを使ったフォースが良い感じでした。

The Kids a Magician

子供の観客をステージにあげて、その子にマジックをさせようとしますが…
観客から見ると最初から最後までギャグで、演者だけが子供のマジックに驚くという面白い見せ方。
これはめっちゃウケると思う。

Tossed Deck

トスアウトデックでちゃんと拍手をもらう方法。
元のがどういう解説されてるのかよく知らないんですけども、確かに微妙な空気になってるのは見たことある気がします。
ここで解説されてるのは他の観客にちゃんとカードが当たったことを伝えるようにするセリフ例で、同時に座らせるのではなく一人ずつ座ってもらって徐々にでかい拍手をもらえるようなもの。
まあそれはそれで個別にカードを言い当てられるわけじゃないからボヤける気がしないでもないですが…

I Swear

間違ったカードの名前と観客が言った言葉をスペリングすると当たりのカードが出てきます。
観客に言わせる言葉がギャグにも使えて、演出上も説得力あるものです。
コントロールにもう一工夫ほしいところですが、この手法だとこれしか無理なので辛い。

Invisible

パースフレームの中から観客が言ったカードが出てくる手品。
簡単なカードインデックスの作り方が解説されていて、スペースもそんなに取らないし使いやすいものでした。
現象も普通に面白い。
DVDのDobson’s Choiseのパフォーマンスがとても良いので是非見てください。

Echo

現象は観客のポケットに入れたケースの中にカードが飛ぶというもの。
ステージ上に上がってもらう観客とコミカルなやりとりをしつつ、色々と曖昧にしてしまう方法です。
上がってもらった観客が証人になる系の手品は面白いですね。やや漫才が面白すぎて前提条件のところがボヤける気もしますが、現象ははっきりしてるし観客のポケットの中で起こるので勢いで持っていけます。

Oddball

白いボール2つと青いボール1つを袋の中に入れ、3人の観客に一つずつ取ってもらい、誰が青(色違い)のボールを持ってるかを当てます。もう一回同じことをして、失敗したかのように見せかけてどんでんがある手品です。
仕掛けの部分も大胆ながら工夫がされていて、小さなメンタル+ひっくり返しオチもあってめっちゃ良い手品でした。

4Seen

4枚のカードが予言されていましたという手品。
予言の仕方とセリフが小洒落ていて良いです。
ステージ向けのフォースが解説されていて狙いとしてはわかりますがもう一捻り欲しいところ。

Banana-Drama

ビルインバナナ。
Dobson’s Choiceでおまけ映像として入ってたやつですね。
DVDのとはお札を燃やすところがちょっと違います。
複数の果物からバナナを選ばせるのですが、ちょっとだけ自由にバナナを選んでもらえる感じの見せ方になってます。下品ですが。

Dream

メンタルフォトグラフィデックを使ったストーリー手品的な何か。
Dobsonみのあるなかなか酷い台詞回しです。
意外とどう演じていいか難しいトリックではあるので、それっぽい物語をつけてやるのはいいかもしれません。

Webmaster

蜘蛛がお客の手につくやつのスピードアップ版。
蜘蛛じゃなかったら全然良い方法だと思うんですけど、なんで最後にこんなことするんや。

トリックの解説はここまでで、後半のStar StruckはDobsonの自伝。
生い立ち、病気のこと、奥さんとの馴れ初めなど私生活のことも語ってて、マジックに関しては影響を受けたものやプロになるまでの話、いろんな現場でのエピソードが載ってます。

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