手品は本で学ぶのと映像で学ぶのそれぞれ良し悪しがあって、デビッドウィリアムソンのようなレジェンド級の人になるとそれはどっちも見た方が良いです。
この本の前書きでマックスメイビンも書いていますが、デビッドウィリアムソンは心理的誘導を非常に上手く使う人で、しかも演技見ただけでは絶対心理的に何かされてるとは思いません。
その観客にどう思わせたいかという部分は文章で理解する必要がありますし、それをより効果的に見せる細かい動きは映像で確認したいです。
この本に載ってるのはほぼ映像化されてるので、演技見て驚いて解説見て、より詳しい動きのコツや狙いを本で学ぶのが良いと思います。
EMCから出てる”REDICULOUS”は日本語字幕付きですし、それはまあ最高なので合わせて見るのがおすすめです。
ただこの本には致命的な欠点があって、変な日本語タイトルが付いてるのは良いんですが原題が書いてません。
というわけで原題を補足しつつ各パート見ていきます。
Coins
コインマジックのパートです。
ウィリアムソンのコインマジックは意味不明な持ち替えとかなく、バニッシュは極めてクリーン。
それでいて練習すれば確実にできるようになるぐらいの難易度で、特殊なギミックも使わないので演じやすいです。
以下の作品が解説されています。
素晴らしいコインの消失
Wonderful Coin Vanish
いかれたコインの飛行
Cross-Eyed Coins Across
リベート
Rebate
ザ・ストライキング・バニッシュ
The Striking Vanish
銅貨、銀貨、そして小銭入れ
Copper, Silver And Purse
願い事、かなえて
Wishing Well
マネー・トーク
Money Talks
遅れをとっている時こそ、先んじている
When You’re Behind, You’re Ahead
ザ・チェンジ・バッグ
The Change Bag
「素晴らしいコインの消失」は両手をあらためられるコインバニッシュで、昨今流行りの鬼スライトよりは遥かに楽にできます。
「いかれたコインの飛行」は非常にクリーンで見やすいコインズアクロス。ウィリアムソンって演技早めですが、何が起こったかはっきりわかりやすい構成になってます。
ストライキングバニッシュは文章で読んでポイント意識して微調整するといきなり上達するので必読です。
ストライキングバニッシュを使った「銅貨、銀貨、そして小銭入れ」は若干難易度上がりますが、わかりやすくて不可能性の高いトランスポジション。
「ザ・チェンジ・バッグ」はポータブルホールをパースでやる手順で、ストーリー的にもかなり説得力高くて、素晴らしい改案だと思います。
コインはやっぱり文章だけだと追い難い感じはありますが、映像化されてるもの見ると文章のややこしさからは考えられないスムーズな演技でビビります。
やはりストライキングバニッシュ周りの手順は素晴らしくビジュアルで、消すだけで終わらせるにはもったいない感じありました。
Coins and Cards
コインとカードを使った3手順。
フローティング・アセンブリー
Floating Assembly
セロファンっぽい何か
Cello-Feign
カットしないで
Don’t Cut Me Out
「フローティング・アセンブリー」はいわゆるコインマトリックス。
静かじゃないところならマットなしでできるのが良いとこです。
移動の示し方の移動した感半端ないです。
「セロファンっぽい何か」はカードケースのセロファンにコインが入ったり出たりするやつ。
これは是非実演見てもらいたいやつで、解説読んでこんなんバレるやろって思う箇所のウィリアムソンの演技力がやべえです。
“MAGIC FARM”に収録されてます。
「カットしないで」はコインを使ったカード当てから4Aが出て、その下から4枚のコインが出てくるガチ手順。
結構ガチで難易度高めですが、現象の割にはセットも楽で、4枚設置する負担は最小限にされています。
Cards
カード手順は本当バリエーション豊かで素敵です。
綴って、配って
He Who Spelt It, Dealt It
インターレイスド・スウィンドル
Interlaced Swindle
背後からグサリ!
Stabbed From The Back
駆け足の旅行者たち
Double Time Travelers
有名なスリー・カード・トリック
The Famous 3 Card Trick
催眠術師
The Hypnotist
トーン・アンド・レストアード・トランスポジション
Torn And Restored Transposition
51 カーズ・トゥー・ポケット
51 Cards To Pocket
「インターレイスド・スウィンドル」は4枚のKの中に3枚カードを挟んで、それが一瞬で消えてデックの中から出てくるという手順。
これも文章だとやたら長いですが演技は極めてスムーズに行えます。
有効に心理的トリックが使われてる作品で、サッカートリックっぽいことをサッカートリック的な目的じゃなく使ってるあたりが本当に賢いです。
「背後からグサリ!」はカード投げて選ばれたカードのところに刺さるやつ。
スタンディングでできてかっちょよいです。
やってみるとそこまで難しくないのも素敵。
「有名なスリー・カード・トリック」は本当に有名になってしまいましたね。
3枚のカード使ってるつもりが何回やっても4枚になっちゃうやつ。
オチは4枚かとおもいきや大量にカードが湧きでてくるもので、ウィリアムソンの手順って本当にインパクトあるオチに向けて上手く準備できるようになってると関心します。
「催眠術師」はレッドホットママの改案。
どちらかというとカラーチェンジングデックですが、生でやられたら本当に催眠にかかったような感じになりそうな強烈な手順です。
「トーン・アンド・レストアード・トランスポジション」は前田智洋さんで有名なやつですね。
これ思いつくのは本当に天才です。
特にトランスポジションくっつけたところ。手法的には破るも破らないも変わらないのに、破っただけでこんだけカードの入れ替わりが不思議に見えるんだから、デュプリケイトがどうとか言わずに破るべきです。
現象のインパクトが強ければ強いほどオフビートも強く、次に向けて大胆なことができるというのを学べます。
あと、破って復活でカードが変わるやつって「復活したってことは破ったカードは別のだったのね」と思われそうなものも多いんですが、これは絶対そう思われないので最強だと思います。
「51 カーズ・トゥー・ポケット」はサインカード以外がポケットに飛行します。
なんとなくカードトゥポケットの流れでやってる人も多いと思いますが、この本で解説されてる演出はとても楽しくて、51枚出てくるところにインパクトが来るようになってます。
あとサインがくるくる剥がれるのめっちゃ良いですね。
あと、デュプリケイト使う系のマジックでウィリアムソンがやってることが紹介されてて、それしとくとデュプリケイトへの抵抗がちょっと減ります。
裏でも面倒なことを少しでも減らす工夫しとくってのは大事なことです。
The Rest
カードとコイン以外の3手順。
ヘリコプター・シルク・バニッシュ
Whirlybird Silk Vanish
魔王の刃
Beelzebub’s Blade
ザ・ゴールド・カップス
The Gold Cups
「ヘリコプター・シルク・バニッシュ」はウォンドを使ったシルクの消失。
完全にマニアキラーでまじ賢いです。
「魔王の刃」はシルクにナイフ突き刺して復活、その後ナイフも消えます。
レストランあたりでやるプロ用ですが、アイデア自体は応用可能。
「ザ・ゴールド・カップス」はカップアンドボール鬼手順。
2カップでここまでできるんやってなります。
このジャンル疎いのでイマイチ本当の凄みみたいなものは掴みかねていますが、デビッドウィリアムソンが隠れてなんかやる時のタイミングの本質的な何かがあります。
というわけで全21手順、捨てネタなしの力作です。
原著が発売されたのは1989年。
30年前とは思えない新しさですし、たぶんこれから何年経ってもフレッシュであり続ける現象の数々。
なんかの改案つっても印象は全く異なる発明しちゃって、独自の演技で完全にオリジナルにしてしまうマジ天才だと思います。
どの作品見ても、手品にこれ以外の要素はいらないって思えるものばかりです。
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