by jun | 2020/11/01

今年の5月に出たMark Elsdonのebookで、映像配信やビデオチャットで行えるメンタリズムを解説したものです。
映像配信に特化した手品はこの数ヶ月で色々とリリースされており、大きく分けて既存の手品を映像向けにアレンジしたものと、カメラトリック的な要素を含むものの2つあると思いますが、このZOOMentalismは前者的な方向。
というのもこの本の中身は過去にElsdonがConversations As Mentalismというシリーズで発表したものの中から抜粋して映像用に使えそうなトリックを解説しなおしたものだからです。
んで、その映像用のアレンジやトリックの取捨選択は割と適当な方だと思います。読み比べてないですけど、明らかに映像だとどうすればいいのかという説明が抜けてる箇所がありますし、演出やセリフがそれ用になってるということもそんなにないです。
映像配信に特化してるどころか映像だと明らかに効果が薄まるようなのもあるし、普通に観客がいないと演じられないのも入ってまして、なんか勢いで出した感は否めません。
だからまあ観客が触れられなくても演じられるトリックを映像で見せる作品集ぐらいの感じで、それだけだとなんぼでもありそうですけど、もう一つのテーマが何も持ってなくても出来るか紙とペンがあれば良いとか、観客が絶対持ってるものを使えるトリック、これを”CAM”と呼んでいてそれ自体は便利だし悪くないとは思います。

メンタルの方向性としては手品や数理的な原理を使った手堅いものが多いです。絶対にそうなる系とか、カードの原理を使ったもの。これはこの本がインタラクティブな手品を目指しているということとも関係してますが、観客が自由にやったように見せつつコントロールされてるというものなので、確実に具体的な指示をさりげなく出すスキル、それが別になんでもないことのように思わせる態度は求められます。
演出的には割と軽い感じで見せるようになっているので、手品っぽい作業とのバランスは良いし、もちろん良い原理を使った手品は良く、そのバリエーションとして上手いこと跳ねさせてるのもありました。
日本語で無理なやつもいくつかあるのと、メンタルメンタルしたのを求めるとちょっと肩透かし感はあるのでそこは注意。
2つぐらいメンタルーって感じのがあってそれはとてもおもろかったです。
ちょっとピンと来なかったのも多かったんですが、こういうのは演技巧者な人からするとそこが良いんじゃないってとこかもしんないんで参考程度にしていただければ。

Maximum Zoomertainment (Gideon Livnah)

映像配信でライブショーを行うための心構えの話。
この人は配信ライブをガンガンやってるらしく、色々研究もしてるようでこの序文とは別に無料のebookも配布されてたりします。

ここに書かれてることはそのebookの一つの章。プロ向けの内容で、いつものショーと同じ感じでやっちゃいかんよということがわかりやすくまとめられてました。
どういう話し方がいいか、目線はどうするか、セルフフィードバックの仕方など先駆者の知恵を借りれます。
オンラインショーの一番の違いは観客が途中で見るのをやめてしまえるというところなので、そうさせないために何を考えるべきかという話です。

The Finger Game

観客が5本の指の一つを指差し、演者が指定した数だけ指を移動してもらう。これを繰り返して最終的に移動した先の指が予言されているという手品。
どうやってもそうなる系の手品ですが、途中で移動範囲も狭める必要があり、そのせいでどうやってもそうなる感は結構出ちゃってます。そこをそう感じさせないためのセリフをさりげなく不思議な感じで言えるか勝負です。予言の仕方がかっこいい。

The Ring Thing

指輪を左右どっちかの手に持ってもらい、それをスペリングによって持ち替えてもらったりしますが、最終的に持ってる手を当てる手品。
途中は質問の答えをスペリングしてもらう感じで、最後まで何をスペリングしたかは演者にはわからないのですが、重要なことを最後にやる必要があり、これはまあバレるでしょうという感じでした。

Game On

演者と観客で見えないサイコロを振り合ってゲームをしますが、絶対に演者が勝ちます。
ゲームの内容は伏せますが、まあ普通にゲームで、割とその必勝法も有名なのではというあれ。

The Key

6人の観客の手に1〜6までの数字を書いてもらい、その中の一つに鍵を握ってもらい、ルールに沿って鍵を渡したり人を減らしたりしますが、最後に鍵を持って残った人が予言されています。
ここまで来ると絶対にそうなるという感じはないし、鍵の演出も予言の仕方もシャレてて良い感じです。
でもこれどうやって配信で演じるんですか!

Dream On

宝くじの番号を予言してる的な手品。
紙とペンを使ってカードマジック的なことをやるもので、予言の演出勝負です。
しかしこれは配信だと観客に操作してもらうんでなく、演者が紙をずっといじってることになって効果はかなり弱くなりそう。

All Change

観客がポケットから取り出す小銭の合計額がわかったように見せるトリックで、ちょっとこう面白い企みがあります。
なんでそんな回りくどい言い方をするのかというところをほんのりカバーしていて、当たり前のことをやってるはずなのに不思議に見える。
これぐらいのバランスのはとても好み。
しかしこれも配信だとちょっと説得力落ちる部分はありますね。

Bet On L.A.

文章の中に3箇所空白があって、そこに全て当てはまる単語を作るという遊び要素もある手品。
バラバラの紙に1文字ずつアルファベットを書いて、観客の指示で並びを変えて単語を完成させます。
カードマジックの原理ですが、クイズやパズル的なカタルシスと一致してなかなか楽しそう。

SEVEN

映画のセブンと七つの大罪をモチーフにした手品で、観客が想像した大罪を当てます。
原理を演出によってカバーしている手順で、それぞれの単語が上手いことそれで出来るようになっててへーという手法。
普通あんまり使わない単語なので、原理にも気付かれにくそう。

Deckless Wonder (Stephen Tucker)

デックを使わずに観客が想像したカードを当てます。
やることは既存の原理を使ったものなので、デックを使ってなくても同じことなのですけど、同じ原理を使う中ではこれは結構良い方だと思います。
カンペがなくても比較的覚えやすく計算も簡単という意味で。

21st Century Telepathy

最新のテレパシー実験。
スマホのメモアプリに5つの単語を書いてもらってテレパシーしてもらった単語を当てるというもの。
元ネタがバーンスタインというだけあってこれはとても良かった。
アレンジも確実性を増していていいものだと思います。

Poetry in Motion

単語の組み合わせを観客と一緒に順番並び替えてそれが予言されてるもの。
Bet On L.A.とだいたい同じですが、配信ならこっちの予言の仕方のほうが向いてます。

Sixty Two Pence

3枚のコインを並べてもらって、あれをこーしてこれをそーしてと指示を出して色々当てれるもの。
これも絶対そうなる系ですが、段階的に見せることができ、セリフに工夫があってなんとなくそれっぽく見えます。
オチで年号まで予言できるトリックですが、これは日本円では不可。手法は良いので、1枚のコインを指定したものではなく好きなコインにしてもらうとかで代用はできそう。

Serialist

記憶術のデモンストレーション。
お札のシリアルナンバーを記憶します。
ガチのあれがちょっと必要で、その方法が解説されてる感じ。
手順が2段階になっていて、2段目はより簡単に行えてより難しいことをしてるように思わせることができます。
さらっとできたら楽しそうな手順。

Dreamachine

電卓で3桁の掛け算を3回やった数字の中から、一つの数字を飛ばして読み上げてもらい、その数字を当てます。
3桁は一応制限はあるけど簡単に指示を出せるもので、出来る数字は予想できそうにないけど当てれる感じ。
面白い原理で、見せ方も色々できそうで楽しい。

Calendrical

観客にカレンダーアプリを起動してもらい、好きな月を開いてもらう。
いくつか日付けを足しての合計を言ってもらい、その日付けを当てたあと、何年の何月なのかも当てる。
日付けを当てるとこはそんなに不思議ではないと思います。
何月か当てるとこは、ちょっとごにょごにょする必要があり、なんとなく残念な感じです。
でもこれ別に気合い入れれば残念にしなくても済むと思うんで、気合いを入れましょう。

ONVI (Ran Pink)

観客が思った2桁の数字をコントロールした的なことに説得力を持たせるような何か。
メンタル現場ではこういうこともあるのかーという話でした。
雰囲気勝負ですが、気持ち悪いエッセンスを足したい時はこういうのあると良いのでしょうかね。

そんなわけで、手軽な用意や何もない状況でやる縛りの割に見せ方が豊富な本でしたが、まとめて読むとなんか似たようなのが多く見えるし、ひたすら観客に具体的な指示を与え続けてる感じがするのでその難しさも確認した次第。
インタラクティブといえば聞こえはいいけど、世界中に視聴者がいる配信ライブで観客にスペリングをやらせる時に双方向性のエンターテインメント!!とか呑気に言ってられません。
その辺気を使ったセリフになってる部分もあるし、信頼関係が出来た上でワンポイント取り入れるにはとても良いと思います。
売り方やコンセプトのブレは気になるところではありますが、配信で手品しなくても超特殊な時代の流れと勢いで出た本をリアルタイムで読む楽しさはありました。
覚えてたらどんなシチュエーションでも出来るんで、良いやつの上5個ぐらいは普通に良かったしミーハー気分で読んでよかったです。

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