1971年のカードマジック作品集。
書いてるのはAlton Sharpeで、Bruce Cervon、Gene Nielsen、Dr. Jacob Daley、Edward Marlo、Alan Keith、Eddie Fechterなど多くのマジシャンの作品が載ってる本です。
元々Part1と2があったものの合本で、Lybrary.comに電子版があります。
Conjuring Archiveにある項目と比較するとページ数があってないので、電子化の際にテキストを打ち直して詰めたものでしょうか。図も少なく現象や準備の書き方がトリックによってバラバラでかなり読み辛いです。
Bruce Cervon
サーボンはファローシャッフルのある原理を使った作品を2つ載せてて、気になってたやつなんですがどちらも微妙な感じでした。
どちらもナンバートリックで、割とマジシャン都合で話が進むので特にこの原理じゃなくてもなーという気がします。
都合だけで進めるならファローだけで好きな枚数目にコントロールするのは出来るので。
まあそこの計算省けるのは良いところなんですが、同じファローシャッフル使うナンバートリックならペネロペ系のやつの方が観客の自由度も高いしマジシャンは何も知らない状態で演技できるので優れてるとは思います。
サーボンのネタで面白かったのは”Turn Me Over!”という、カードにメッセージが書かれていて、ひっくり返すだけでメッセージやカードが変化するトリック。
コミカルなサカー系のトリックとして演じやすく、シンプル操作でころころ変わって楽しい手品です。
Gene Nielsen
“Sandwich Surprise”はサーボンのサンドイッチされたカードが変化する現象をアレンジしたもの。
2つやり方が載ってて、最初の方のは謎の動作が入るので変化というよりデモンストレーション的な見せ方。
2つ目の方はコスキースイッチ的なやつで、サンドイッチカードの中でコントロールにも使えるスイッチ法です。
あと”Emanon”というカラーチェンジ技法が紹介されてます。
これ、右手に隠してると思うでしょー?実はありませんでしたーという見せ方ができるチェンジです。
できるというかそういう見せ方しか出来ないと言いましょうか、ややもったりした動きが必要になります。
ということでバニッシュに応用した”Emanon Vanish A/K/A Meltaway”というのも載ってますが、まあチェンジの原理自体はメジャーなものなので同種のチェンジでも代用可能です。
Ron Ferris
全然知らんかった人ですが面白かったです。
テーマは赤と青のデックを使った作品。
“Kavorting Kings”は赤裏のK4枚と青裏のK4枚を使って、観客が自由に言ったマークのKが入れ替わる現象です。
エキボックもカウントも使わない理想的トランスポジションですが、かなり演技力を必要とする部分があり、成立はかなりギリ。
ただし、セッティングの部分での説得力は強いので、堂々としてればなんとかなりそうではあります。
赤と青のデックを使って、観客が4枚のQを探したように見せる”Misbehaving Queens”もなかなか良いです。
この手のやつは、なんでそういう手続きをしなくてはいけないのかというのが常に付きまといますが、両方のデックで少しずらした現象に見せることでそこを緩和しています。
面白い。
“Dynamite”は赤青2デック使った一致現象で、最後に表の色がデックまたいで別れるおまけが付きます。
ちょっと蛇足くさいおまけなのですが、やはり謎の操作があるからにはここまでやりたいという感じでしょうか。
このトリックは観客の混乱を意図的に狙ってるところがあるので、単純に混乱させると不思議さは減りそう。
Dr. Jacob Daley
Daleyさんは1つの技法だけ紹介されてます。
“Dr. Daley’s Switch of Four Cards”というマルチプルスイッチで、デックのボトムにセットなので素早く手を動かしたりする必要がない代わりに、ちょっとカードが隠れる時間が長いのでなかなか使い所は難しそうです。
Edward Marlo
“Marlo’s Super Ace Cutting”は借りたデックで出来るエースカッティング。
まあ色々とスーパーです。
これレギュラー即興風でもやり方あるし色々考えられそうですね。
エース出すんじゃなく好きな数字を1回だけ出したい時とかに使えそう。
ラストトリックに説得力を持たせた”Jump-Jump Aces”はレギュラーで出来て確かに置いたカードが入れ替わった感があります。
まあこれなら素直にエキストラ使いたい感じはありますね。
レギュラーでできるというのがそんなにメリットになってない作品のように思います。
“Simple Mental Five”は5枚の中から自由に思ってもらってそれがパケットの中から消えるやつ。
ちょっと変わったスイッチが使われていて、やってみた感じありといえばありなのですが、ここらへんのスイッチは優れた技法がいくつかあるので特に必要性も感じず。
マインドリーダーズドリームの改案”Faro’s Simple Dream”は原案と比べてもやや操作の意味がよくわからなくなっていて、なんとなくぼんやりした印象もありますが、観客と一緒にシャッフルするパートがカジュアルで原理的な捻りもあり読む分には面白さあります。
トライアンフの表裏を混ぜるとこにちょっとした工夫が入る”Delayed Double Climax”は、別にそこまでせんでもという一工夫。
いやでもやってみるとなかなか巧妙な気もします。
3枚のブランクカードに観客が選んだ3枚のカードが次々印刷されていく”Another Reflection”はカードもフリーチョイスだしブランクフェイスだけあれば良く、それでいてブランクカードに印刷された感もなかなかあります。
コントロール部はやや課題ですがまあそれはどうにでも。
Part Four Bonus
ここからは色んな人が入れ替わり立ち代わりという感じなので一人一作ずつぐらい紹介します。
Allan Keithの”Clean-Up”は最初にテーブルに置いておいたカードが観客が言ったカードであるとかなり強引に見せる方法です。
強引というかワンクッション入るのですが、このワンクッションがないと直接的すぎるし、あると混乱するし、間の解決というのがなかなかないみたいななんとも言えん感じのあれ。
ルポールのエニエニ”Baffling-Impossibility”はいわゆる一つのあれなんですが、あれなりにフェアに見せるようにしてたり、事故時の対処法が載ってました。
Eddie Fechterの”You Brain Me”はブレインウェーブデックの使い方の一例。
結構好きですこれ。
ブレインウェーブの1枚向きが違うカードを示してからカードを聞くことができるのでメリットはかなり大きいかと思います。
Mel Brownの”Brain-Stack”も同じような効果を目指したブレインウェーブ。
こちらはこちらで別のメリットがあります。
どちらかというとこっちの派生の方が出回ってる印象。
Lou Galloの”Osrever S’Ollag”は演者が選んだカードと観客が選んだカードがリバースする現象です。
カードを2枚にすることによって楽にあれできるようになってる手順ですが、現象の美しさは大きく損なわれます。
見せ方的にはちょっとしたトライアンフのような感じなので、普通にトライアンフにしても良さそう。
頑張れば観客が選んだ2枚のカードにすることも可。
Carl Stenの”Once in a Knife Time”はカードスタブで、観客のカードのあるところまで突き刺したというところがかなりリアルに見える方法です。
カードの扱いが肝ですが、ハンドリングも優れてると思います。
ちょっと調べてることがいくつかあって読み始めた本ですが、意外と他に収穫の多い本でした。
セレクトがかなり謎なのでまとめるのは難しいんですけど、手段選ばずちょっと変わった手品をやろうとしてるのが多かったでしょうか。
なんだかんだ、ショーで1個カードマジックをやるみたいな感じだとそういうのが良い気がします。
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