2018年リリースのジェイソンラダニーさんの本です。
かっちょええですよねこの人。
シュッとしつつ演技はコミカル風味もあってギャンブリング的な手順でも嫌味がありません。
表題作をはじめゲームやギャンブルをテーマにした作品が多く、そもそもトランプはゲームをするものですから導入としても自然で、いつのまにか不思議な事が起こってる感じが楽しいです。
トリックは全体的に捻りがあってそこにいくまでのゲーム的演出がうまくミスリードになってます。
解説する内容としての歯ごたえもちょうど良い感じで、適度に技法を使いつつ賢さもあってとても面白い本でした。
サインカードを使うものや、カード以外のアイテムを使うもの、フェイズが分かれてるロングルーティンなどここぞという時に活躍しそうな手品がたくさん載ってます。
Standing Out
テーブル不要のマッチングザカード。
だいたいこういう感じの手品が多いですよーということでオープニングトリックになってるのでしょうか、マッチングカード的なテイストのものがいくつか入ってて、このトリックは手法的には比較的オーソドックス。
スタンディングで角度に強く、セットも簡単なので活躍の機会も多いでしょう。
Game Changer
アニバーサリーワルツ的なカード合体を別の演出で。
観客と演者であるゲームをして、観客が勝ったと思ったら引き分けでしたみたいな感じで合体カードを示します。
とても良い演出で、2枚のカード選んでもらってからサインしてもらうハンドリングも結構良くて、普通のアニバーサリーワルツでも使える方法。
Catch Me if You Can
軽く遊べるゲームからのカードトゥウォレット。
賭け事の設定で財布を出す意味があり、前半のゲーム部分のおかげでミスディレクションも強く、あまりストレスなくできる手順です。
前半やったことが無駄にならない現象の流れも巧みだと思いました。
Nick of Time
4枚のセレクトカードをバラバラに戻してストップウォッチで時間内に4枚のエースと4枚のセレクトカードを取り出すことを宣言しますが、4枚のエースはセレクトカードが変化していたという感じで現れます。
ストップウォッチがあることで出したカードを裏向きに置く理由がちょっとあり、4枚選んでも設定時間内に終わるということの安心感を与えられて良いです。
この時間が決まってるからというのがオチのひっくり返しにも効果的な感じもします。
ハンドリングがやや単調ですが、ジェネラルカード的なものが代用できるのであちこちから出したい場合はそれでいけますね。
Lucky Charms
現象的にはミステリーカード的な感じのあれです。
ミステリーカードとサインカードをあれするところが巧妙ですが、そこに注目させないためにある他のアイテムがただの役立たずという使い方しかしてないのはややもったいないあたりでしょうか。
アイテムを工夫するなどして、何かしらオチに向かうフリとして機能させたいところ。
The Wire
4枚と1枚が入れ替わるアシンメトリカルトランスポジションですが、手法がちょっと変わってます。
変わってるというか、この現象好きな人はあんまりこの手法を選ばないだろうという感じのものです。
ただ、そのおかげで非常に説得力が上がっていて、サインもしてもらえるし確かに入れ替わったという感覚も強め。
でもまあこの手のは他に良い手順がありますんで、あえてこれという感じでもないのは正直なところ。
Ladanye’s Ultimate Triumph
マルチプルセレクションのトライアンフです。
ファローの原理を使ったもので、複数枚選ばせることで表裏混ざってカードもバラバラに戻した印象は強く、かつファローの回数は少なく済みます。
終わりは4枚のカードが真ん中で固まってる形になる割に覚えやすいです。
4枚選ばせるとこは一応セリフついてますけど現象的には4Aとかでやっても問題ないと思います。最初からその位置にセットしておいてもいいし、バラバラに戻すとこから始めてもよさそう。
同じ原理を使ったトライアンフに傑作が多いので比較するとさすがに見劣りはしますね。
Conjuring Archiveでもチクリと書かれてましたが、さすがにこれでバーノンのトライアンフだけクレジットしてるのはいかがなもんかと思います。
Liar Liar
バラバラのデックがニューオーダーに戻る手順で、嘘の種明かし的にカードを当てていきながらみたいな演出です。
バラバラなことを印象付けつつ、ファローを分散させていておもろい見せ方だと思います。
ちょっとそこはどうにかならんのかというところがあるにはあって、どうにかなる方法でやってます。
Royal Exchange
観客が指定した場所にロイヤルフラッシュの手札が移動するポーカーの手順。
移動というか手札が丸ごと入れ替わります。
手法はシンプルで、こういう見せ方があるかという感じで結構気に入りました。
以前発表していたギャンブラー vs マジシャン的なやつも良かったですが、セットが簡単なのがええっすね。
Dead Center
センターディールデモンストレーション。
ちょっとガチの技法も入りますが、フェイズごとに不可能性を増していき、最後は観客が選んだカードのフォーオブアカインドまで出てきて派手で良いです。
A Numbers Game (Ladanye’s ACAAN)
デモンストレーションとして見せるエニエニのルーティンです。
プロブレムとしてどうかという見方だとあれこれ言いたくなるでしょうけども、綺麗な流れだと思います。
肝の枚数数えるところも前段階がちゃんとフリになってるし、どうせ演者がデック触らなきゃいけないんだならデモンストレーションとしてルーティンを組むというのも全然ありじゃないでしょうか。
Hold ‘em Hustle
テキサスホールデムのデモンストレーション。
日本ではちょっと演じる機会もないと思いますが、2枚のカードのコントロールというかあのあれが良い感じかつテキサスホールデムならではの誤魔化されっぽさがあって楽しいです。
アメリカの人がどのくらいこのルール知ってるかわからないですが、仕組み上オチに色んなバリエーションつけれてマジック向きではあるような気がします。
Cheaters
イカサマメガネをかけると裏から見てエースがわかるという演出でエースの裏の色が変わります。
プレゼンテーションはおもろいしハンドリングもよくお気に入りの手順です。
セリフ例も気が利いてるしなんぼでも好きに演じられそうな設定はそれだけで良いマジックな気がします。
Fast Track
カードが何枚目にいったか当てるデモの後、フォーオブアカインドが出てくるまでトラッキングの設定で頑張ってます。
他のギャンブル手順もそうなのですが、そういう設定でファローを使うのが気になるといえば気になりますね。
テーブルファローができたらええんですけど、持ってやる場合はそれなりに流れを気にした方が良さそう。
これはギャンブルじゃないからそこまで違和感ない方ではあります。
Aces Anonymous
エースを封筒に入れて財布にしまいますが、封筒の中からカードが消えてデックに戻ってきます。
封筒の中への移動だと弱いけど抜け出すのなら十分という絶妙な説得力の封筒の扱いが上手い。
この使い方は色々と応用できそう。
High-Card Hustle
カットした場所のカードで戦うハイカードバトル、何回やっても演者が勝ちます。
思ったより変なセットじゃなくて、他のと流用できて覚えやすいのは利点。
オチはもうちょい派手なの期待してしまうけど、まあこの本の中にならこれぐらいのあっさり目のも入っててもいいかなという感じ。
現象っぽいとこじゃないとこで変に負担がかかるのは避けてしまいがちですが、逆にそういう気付かれにくいとこで仕事やってしまう的な考え方は参考になりました。
Power Play
観客がシャッフルしたところから始まるポーカーデモで、最後はハイカードが全部フォーカードになる手札を配るところまでいきます。
別の現象の中でセットを組んでしまう的なあれで、パワープレイというか演技力が超重要。
この人のキャラならのらりくらりやってしまうんだろうなと思いつつ、やっぱりこれ系は自分でやって自然に見せれる気がしないです。
手順的にはそこの負担減らすように配慮されてるとは思いますが、もうちょいオチに関連する現象の中で作業できるようになってれば印象良かったかもしれません。
The Art of War
超大作のハイカードバトルルーティン。
全部のカード使いますが全部演者が勝ちます。
途中で条件を変えたり、カードを入れ替えたりしつつ意外とダレなさそうな感じになってて、手も足も出ない感を強調したオチも見事。
シャッフルデックから客前セットも無理じゃない範囲なので、観客にシャッフルしてもらえる何かに繋げたらかなり不思議に見えるはず。
全体的には手法からしてマニアが見て超不思議みたいなものは少ないです。
ファロー使うやつは目的までは見えないけどまあそうなってるんだろうなと思われるかもしれません。
ゲーム風プレゼンテーションにハマれば演じてみたくなるはずで、個人的にもセットや道具の準備が大変なのも多いのに実演率結構高めだったりします。
実際人に見せてみると演出込みの全体の構成はかなり良くできてるように思いました。
やっぱり観客参加型のゲーム演出は引きも強いですし、ゲームの作業の中でマジックの仕込みが出来るのは気持ち的にも楽です。
デモンストレーションの類もなんとなくそういうのが求められてそうな時に覚えておくと便利。
基礎技法のティップス的な解説も多く、デュプリケートやサインの扱いなど使い道の多そうな考え方も参考になりました。
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