by jun | 2018/09/12

リアム・モンティアーさんの最新刊。
モンティアーさんはイギリスのマジシャンで、これまでにも作品集を多数出していて、本によってレギュラーだけとかこのギミックでとか縛りは違うのですが、どの作品もセルフワーキング寄りです。ライアンシュルツのSuper strong Super simpleに作品が紹介されてると言えばわかりやすいでしょうか。
簡単な技法と古典の原理をうまく組み合わせ、そこに合理的な演出を足すことでなんかいい感じの手品にしてくれる人で、Super strong Super simpleで解説されてる”Gemini Location”はタイトル通りの原理を使ったカード当てですが、ちょっとした当て方の工夫が面白く不可能性も高めています。

マニアが見ても超不思議!という感じではありませんが、原理の面白い使い方や古典プロットの少し捻った見せ方は読んでいて面白いです。
この本はレギュラーオンリーのセミオートマティック手品集で12作品、表紙に書かれてる通り2枚持ち上げることができたり4枚をうまく数えることができたりすればだいたいなんとかなります。ならないやつもあります。

Biddle Print

ビドルトリックとダンバリーデリュージョンを合わせた手品。
要素的にはビドルトリックですが、ヒントのカードの要素を入れることで複数枚一枚ずつ示す動機になっています。
ビドルトリックといえばパケット分け問題がありますが、この作品で使われてる方法は自然かつ現象と合っていて良いです。
気持ち的にはこういう手法使いつつサッカートリック的なことやるのが白白しくて嫌なのですけども、ビドルトリックの解決の一つではないでしょうか。

In-Decision

1枚カードを覚えてもらい、別の観客にはカードを1枚頭の中に思い浮かべてもらいます。
当たります。

思い浮かべてもらうとこは制限ありますが、カード2枚にすることで理屈は通しやすいはず。
いかに絞り込んでないように説明できるかが勝負で、この手のは間違って解釈されてもいいからさくっと説明すんのが良い気がします。
そういえばSSSSの中にもこの感じでカード思い浮かべてもらうやつありましたね。

Hofferoon

一応ホフジンザーらしいですが、キックバック的な要素はなく、セレクトカードと同マークのエースが消えてそのカードの隣に移動するという現象です。

この隣に移動するというもやっとした感じがなんとも言えんですね。
サンドイッチなら良いんですけども。
そういえばゆうきとも氏による”Sand-Which ?”ってそういうネタでした。

んで、Sand-Which ?の時にも思ったんですけどビドルトリック的な半分に分ける問題があって、ドリブルで選んでもらってGしてダミーをテーブルパケットに差し込むで解決しませんかね。
トップにはAが4枚あるからそこからビドルすれば、セレクトカードとAが接近してないことを強調できますし。

ただ、本作で使われるフォースは良くて、シャッフルさせたデックでフリーチョイス感があり、事故の確率をほぼ0にしています。
ちょっとしたギャグを挟むことで演技もスムーズにして確実なフォースができるようになっていてエース使わないマジックでも使えそう。

Hand Clap

ミステリーカードやサインドカード的なあれです。
観客の手の下に予言のカードを1枚。
観客にカードを2枚選んでもらい、片方にはサインしてもらいます。
その2枚をデックに戻しますが、1枚目は演者が選んだカードの数字の枚数目から出てきて、2枚目のサインカードは観客の手の下にあったカードがそれに変わっています。

これはとても良いです。
サインドカードのあの動きをなくすために原理を使ってカバー。
これ系だとガスタフェローの”MR. E. TAKES A STROLL”がスーパー賢いと思いましたが、同じぐらい好きです。

確かにこれ系の現象でカード2枚覚えてもらうのはカロリー高いですけど、一応ちゃんと演出は用意されています。
普通に1ネタ見せるぐらいなら2段階ネタも良いですしね。

Selective Touch

予言をポケットに入れて、観客に好きなカードを言ってもらいます。
演者が適当にカードを何枚か選んで数字を足すと、選ばれたカードの数字と一致し、選ばれたカードはポケットから出てきます。
ポケットから出すのを楽にするためにワンクッション置く構成なので、いかに興味を持続させれるかどうかが勝負。
先にカードを聞く設定なので、軽いデモンストレーション的にプチ不思議作るのはうまい構成かもしれません。
ポケット使う時点でちょっとアンフェア感出るので、前半のどさくさでフェアさを強調することができるとインパクトも増しそう。

Ink Thief

ジョーカーが裏にサインした観客のカードを探し当て、ジョーカーの裏にサインが移ります。
裏にサインしてもらう系のネタってまだまだ開発余地があると思ってますが、これはシンプルで筋も綺麗です。
使われるテクニックも無理はなく、代用技法も多いので自分好みに色々できそう。
フォースのところは無理しなくても、サインしてもらうからなんでもいいよ感を出せばフェアさは保てるかと思います。

強いて言うならジョーカーを先に埋めちゃうので若干探しに行った感が薄い感じでしょうか。
デュプリケートジョーカー使えばなんかうまいことできそうな感じです。
デュプリケート使えば裏示せるし、エゴチェンジでどーんでダメですかね。

Baker Street

ポーカーの手札を配って覚えたカードを当てるやつ。
デックから当てるより確率的には全然高いわけですが、メンタル風味な別種の不思議さがあり、某原理の使い方としても自然な方だと思います。

Ambitious Burier

アンビシャスカードに使えるアイデア。
サインカードをテーブルに置いてその上に残りのデックを重ねていくと突然表向きで現れたように見えるというものです。
確かにやってみるとそう見えなくもなく、リズム勝負で頑張ればもっとなんとかなりそうな感じ。
仕組み的にコントロールへの応用が利かないのがイマイチですが、何かに特化したものの良さもなくはないです。

Ace Ripper

4枚のキングが3枚のカードを捕まえて、さらにキングがエースに変わります。
コレクターではなく、キングをなんとかして数えてると間から裏向きのカードが1枚ずつ出てくるもので見た目はおもろいですが、まあごついです。

エースはクリーンかつビジュアル、タイトル通りの出し方をできて好みで、この処理ができるルーティンってのは良いですね。
エースオチさえなければそこまでごつくなくて済むわけですが、それをわざわざやりたいかというと微妙なところで、カウント使うわけだしもうちょいうまいことできんかなと考え中。

To The Untrained Eye

ギャンブラー vs マジシャンの改案。
4枚のキングをバラバラに混ぜて、4つのパケットに分け、3箇所からはキング出てくるけど最後だけエース。から全部エースに変わります。
ノーセットで行う方法が解説されていて、話しながらちょこちょこと堂々とセットできるように組まれていて好み。

スイッチも好みの技法だったけど、このプロットだとあの形に持ち込むのがちょっと難しいです。
用意されてるセリフだとちょっときつくて、あの形に持ち込みさえすれば強いのですが。なんかプロレス技みたいな感じですね。ある程度相手にも跳ね上がってもらわないといけないというか、寛容な気持ちを持って見ていただければ余裕です。

あとさすがにカット部分はもう一工夫欲しい。

The Twin Peeks

2枚のカードをピークします。
こっそりやる方法じゃなく、どさくさで見るやつ。
ガスタフェローのMulti Mentalみたいなやつで、手法も似たような感じです。

Vacuum

観客にカードを選んでもらい、デックの中で表向きにしてあるカードの下に入れます。
もう一枚カードを適当に選び、箱に立てかけててデックを弾くと最初のカードに変わり、変わる前のカードは表向きのカードの下に移動しています。

少し変わったトランスポジションですが、位置関係をうまく使った現象で、確かにここにあったものとあそこにあったものが入れ替わったというトランスポジションの根源を大事にしています。

箱の使い方が面白いのですけども、自分がやるなら表向きのカードをスペードのエースにして、箱に書いてるスペードのエースとひっかけて、カードは箱の下に置いてどっちもスペードのAの下に置いたということにしますかね。

全体的に足し算方向の改案が多いですが、現象自体は盛りすぎということはなく、良いとこ取りしてすっきり見せるような工夫が見られます。
ちょっとこねくりまわしたくなるような手順が多いものの、マニア騙そうとするなら的なものなので元の手順にそこまで不満ありません。
特にこねくり回したいのはコントロール周りで、個人的に気に入ってるHand ClapとVacuumあたりはシークレットにやるともう少し別の感触を出せそうです。

この人は資質的にちょっとギミックや小道具足すぐらいの作品に良いものが多く、レギュラー縛りだとやや印象は落ちますがInk Thiefとかサイン使うものでパワー発揮してました。
ジョンバノンがよくクレジットされていて影響も大いに受けているみたいなので、もう少し技法の幅増やした作品集も見てみたいですね。

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