英語版が発売されてから15年経ちますが、今読んでも全然楽しい1冊です。
日本語版が出る前に英語版を頑張って読もうとして、辞書とか駆使しながらも挫折して日本語版を最近ようやく完読しました。
言っても図が多くて現象と解説に分かれた構成なのでわかりやすい部類だとは思います。
あと、だいたいタイトルがかっこいいマジックが多いのでテンション上がります。
グラビティハーフパス
この本の目玉の一つというか、これ使ったマジックがたくさんあるのでこの本の中では基本技法になります。さすがに名前かっこいい。
たぶんこれに関しては細かい指や腕の動きを文字で学ぶのが近道な気がします。
ここまで出来るように頑張りましょう。
シンプルサンドイッチ
グラビティハーフパスができるようになったらこれ。
シンプルながら音速で綺麗な理想的サンドイッチ。
表裏の関係が気にならなくもないけど、まあ捕まえてくる間色々あってもおかしくありません。
ハーフパスバリエーション
ハーフパスのカバー的な動作。
リボルバー
デックの中に突き出したカードのツイスト現象。
そりゃグラビティハーフパスができたらこういうのやりたくなるわって感じです。
これ系の現象はオチが良い感じですが、それもハーフパスできれば簡単ですね。ハーフパスが簡単じゃないけど。
ワンハンドポップオーバー
片手でカードをしゅこって出すフラリッシュ的なあれ。
図がわかりやすくて良いです。
指の位置関係ズレてたら絶対できないやつなんでわかりやすさ大事。
収録されてるマジックの中で一番フラリッシュなマジックですが、ここで書かれてるリーアッシャーの引用が素敵です。
ハローグッバイ
こっちにあると思ったらこっち、みたいな最近マジックの流行りの移動現象。
この本以降の流行ってことでいいんでしょうか。
口とかに移動するよりデック間の移動の方がなんか良いですね。
ピンチ・ミー・アイ・シンク・アイム・フォーリング
お客さんに手伝ってもらうハローグッバイですが、ハローグッバイ感がなくなってて良いです。
使うテクニックは同じなのに違う現象に見えるの、色々覚えとくと便利です。
筋力についての解説あり。
ノーホエアパス
ブラフパスの応用。
たぶん普通のブラフパスより勇気は必要ありません。
サトルティ力勝負の技法にテクニックを追加した感じ。そこについてじっくり解説されてます。
アディショナルハンドリング
ノーホエアパスを使って任意の枚数目にコントロールする方法。
オーバーハンドシャッフルで調整する方法とはおさらば。
できたらいいな。
ブラフ・リプレイスメント・サトルティ
ブラフパスで戻す時という一番怖いあれについて。
読むだけで勇気が湧いてきます。
アドバンスド・ノーホエアー・パス
ノーホエアパスはカードをひっくり返す必要があってカード当てには使えないので、それを省略したノーホエアパス。
故に難易度は上がります。
イリュージョンコントロール
ブラフパス的なカードコントロール。
観客のカードをスイッチなしに突き出した状態を見せれるのでコンビンシング度はマックス。
難易度もかなり高い憧れ技法。
アウトジョグハーマンパス
これもカードを突き出したまま行うコントロール。
ハーマンパスに錯覚を使っていてクレバーです。
アカデミックアウトジョグハーマンパス
アウトジョグハーマンパスのアウトジョグを真っ直ぐにした見た目を整えたもの。
ジェニングス先生に斜めが気持ち悪いと指摘されたらしいです。
この技法については弱点がじっくり書かれていて、なんかほかの技法についても通じる部分多いので色々考えさせられます。
アンダーカバースイッチ
突き出した4枚のカードをスイッチする方法。
お客さんに指差してもらって全部エースみたいなやつができます。
フォースドアンダーカバースイッチ
アンダーカバースイッチは1枚目はスイッチしないのですが、フォースすることで4枚全て観客の選んだように見せれるバリエーション。
この違いについての考察面白いです。
つい全部選ばせたように思わせたいって考えがちだけど…みたいな話。
シンパシコ
さらっと演じれそうな相性診断。
現象もすぐ終わるし後味いいし、こういうのできるようにしときたい。
フォーバイフォー
より不可能性が強まって見える観客が偶然同じ数字を4枚選んでしまうマジック。
準備もいるし、個人的にはAとかで揃う方が好み。
アンダーコントロールスイッチ
アンダーカバースイッチ的な技法はたくさんありますが、スイッチ前のカードがデックに埋もれがちです。
なんか使い捨て感がなくてエコですね。
エコとかどうでもよくて、アセンブリの応用も解説あります。
ユースフルスイッチ
デック上のカードで行う複数枚のスイッチ。
これもアセンブリで使えますね。
アトファスとかアディション系と違ってマジシャン都合の確認の動作がないので良いです。
技法と観客との距離に関する考察がとても面白いです。
確かに昔の技法はそうだよなって話。
デッキングトップ
パームカードのリプレイスメント。
確かにパームよりこっちが怖いけど、必然的にパームより練習時間短くなりがち。
デミニッシングリフト
4枚全て同じカードに見せるあれの最後の1枚の解決法。
確かに最後の1枚気になります。
このバリエーションでも矛盾は起こってるのですが、「視覚よりリズム」ということが書かれてます。
これ結構テクニック系の人が言うことで、実際上手い人の演技見るとリズム整ってます。技法付近だけじゃくその前後の動きまで。
オールトゥギャザーナウシフト
名前かっこいい!
カットやシャッフルなしでやるマルチプルコントロールです。
これが一番理解するの苦しみました。
トップコントロールの場合は表向きじゃないとできませんが、まあ4枚とかならだいたい表確認してるし実用的だと思います。
ここまでが技法と小品で、ここからが本格的なルーティン。
オーメン
神父と悪魔をテーマにしたパケットトリック。
パケットだけで色んな現象が起こるのが楽しいですが、このままのストーリーだと日本人には厳しそう。
タイトルとオチが綺麗でめちゃ好きなストーリーですけども。
ゴールデンナゲット
カードをスロットマシンに例えるマジック。
ストーリー系のマジックってカードをものに例えるぐらいがちょうどよかったりします。
ギャンブル的な小話も効いてて綺麗な構成。
第二のハンドリング
ゴールデンナゲットの別のハンドリング解説。
この本唯一の別ハンドリング解説ですが、メリットデメリットの考え方とても面白いです。
色んなマジックに色んな解決法がありますが、常にこういう合理的な考えしていきたいものですね。
2001 エース・オデッセイ
タイトル良すぎるエースアセンブリ。
このマジックから2001年宇宙の旅っぽさをあえてあげるなら、回転装置を使ってるところですかね。
映画では回転装置を使って重力を感じさせない表現でしたが、このマジックは重力で回転させるハーフパスを使います。
というのが当たってるかは知りませんが、読み始めた時はえらい大層なセットするなと思いました。
負担もなかなかでかいですし、そんな難しいことやる必要が?と思わなくもないです。
ポイントは全ての山に3枚関係ないカードを置いたと見せれるとこで、決まればかなり不思議だと思います。
あと、ここで解説されてるマジシャンズチョイスの方法はとても良いですね。
エースアセンブリにしか使えない方法ですが、エースアセンブリならこれがベストだと思えます。
スリーキング
4枚のカードをテーブルに出し、デックからカードを選んでもらって中に混ぜ、4枚のカードの中から自由に一枚選んでもらうと4が出る。4枚配るとそこから選んでもらったカードが出てきて、他の3枚を見ると選んでもらったカードの4オブアカインドになってるという現象。
こういうしれっとした解決法好きです。
現象もとても綺麗ですね。セットも演技中にできるし、観客の疑惑をオチに組み込む構成もとても好み。
レボリューションNo9
名前かっこいい!
表のデックに裏向きにカードを差して手をかざすと表向きに、デックに手をかざすとデック全体が裏向きになるビジュアル現象。
この本の中では一番ビジュアル系です。
フェーズの間が短いのでテンポやセリフが重要で、実際に演じるのは結構難しいですが、現象を伝えやすくする構成も解説されてます。
ヘルタースケルター
レボリューションNo9のカラーチェンジングデックバージョン的な。
色違いカードの使い方が巧みでハンドリングも洗練されてます。
あと、カラーチェンジングデックをよりインパクトあるように演じる構成についての記述に納得しました。
トライアンフを表で広げるか裏で広げるかみたいな話ですが、相殺されてどっちの効果もよくわからなくなると、なんか考えオチ感が出てしまいます。
サーチアンドデストロイ
この本の中でも名前が一番かっこいいマジック。というかあらゆるマジックの中でもトップクラスのかっこよさ。
ですが難易度は比較的優しく、ほとんどお客さんに操作してもらえてインパクトはでかいです。
超基本的な原理を使ったサンドイッチカードなのですが、気付かれそうで気付かれないのは段階の踏み方と2段目の前のちょっとしたサトルティかなと。
スターイズボーン
適当に選んだ5枚の中から一枚覚えてもらって、表向きの中に5枚を裏向きで混ぜると、選んだカードだけが裏向きで現れるという現象。役者とスターというストーリーになぞらえて演じられてます。
この本のおさらいのような技法のオンパレードな手順で、難易度も高めです。
カードを特定する手続きも良いですね。
ストーリーもカジュアルに演じるのには難しそうですが、なんか切ない余韻が残る話で個人的には好み。
ザ・タックスマン
コレクター現象。
「うるさ型たちはこの手順を毛嫌いするかもしれませんが」という前置きから始まりますが、賢い手順だと思います。自分がうるさ型ではないということですが。
4枚のAとかじゃなく、赤の4枚のカードを使うところに好みは別れるかと思います。
ただ、そうすることで無駄な動きは省かれますので瞬間的に何かが起こった感は強いです。
まあ、その割に技法はたくさん必要という印象はあります。
スタンディングチャレンジ
アンビシャス現象というか、観客にトップかボトムを思い浮かべてもらって、そこにカードを移動させるという現象。オチはとんちっぽくて面白いです。
「ハーフパスが終わったらこのトリックのテクニック使用の部分は終了です。残っていることは難しい部分です。信じることです。」というパワーワード解説があるのですが、「信じること」という最難度のマジックがここにきました。
信じるためにやる作業のクウォリティも求められますが、だいたい間をつかめればうまくいきます。アウトも解説されてるので信じるしかないです。これはアウトというのかどうかは知りませんがワイルドさ勝ち。
大好き。
ロングアンドワインディングトリック
4枚のAをデックに戻して取り出そうとするも失敗、そこから出てきた数字の枚数数えて4枚出てくるのは4枚のK、積まれた山のトップにAがあるという2段サッカートリックです。
Kが出るのはサッカーのようで失敗してるように見えないのがくどくなくて良いですね。
サッカートリックについてのフィッシャーの考え方が書かれてて参考になります。
どれだけ演技すればいいのかって話。
出てきてしまったカードをいかに偶然であるかのように扱えるかの勝負です。
ヒアーゼアーアンドエヴリウェアー
Kを使ったサンドイッチかと思いきや、失敗してKがいつのまにかポケットの中でさぼってます。次はデックまるごと消滅してサンドイッチ状態のKだけになるというマジック。
タイミングとかもろもろとても賢いと思います。
こういう度胸いるやつってなかなか思いつかないというか、バレるだろと思って考えもしないので考える人すごいなっていつも思います。
そういう中で出来るだけ負担減らすサトルティがあって読者もギリ実践できそうな感じに完成させてる感じ。
ミスディレクションに対する考え方も書かれてますが、現代的でなんか演者が安心するようなことが記されてます。
というわけでマジックの本の中では薄い部類なのに大変濃い内容の本です。
個人的ベストはサーチアンドデストロイ、レボリューションNo9、スリーキング、スタンディングチャレンジあたり。
スタンディングチャレンジは相当好き。
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