by jun | 2020/04/30

1990年に出たサイモンアロンソン本です。
Bound to Pleaseより先に出てる本ですが、作品の発表順でいうとBound to Pleaseの次、Simply Simonの前になります。
先に読んだSimply Simonは現象自体が斬新なものが多くて、Aronson Approachはどちらかというと手段を選ばないプロブレム解決ものが目立ちました。
マニア的な目で見ると準備のところを読んだだけでそれやったら別にええわとなってしまうかもしれませんが、手順を読むとその隠蔽の仕方がめちゃくちゃ念入りで演出的に面白くもなっていて読み終わるとだいたいやってみたくなります。
何か不思議なことが起こった時に観客が1番最初に考えそうな手法を使いつつその気配を全く感じさせないような手順で、振り返ってもどうにも出来ないように見えるんで結局強い現象を手掛かりなくやるにはこういう考え方が最強だよなという感じがします。
身一つとレギュラーデックだけでできる面白い原理ものや、解説に50ページを要している魔作もあり凄い本でした。

Under Her Spell

4枚のQの上に3枚ずつカードを載せてアセンブリ展開で全部消え、スペリングすると4枚出てくるというCollins Aceのバリエーション。
スペリングで4枚出てくるところの盛り上げがよくて、あくまで1枚を出すのが目的で実は的に3枚も出てくる見せ方になってます。
残念ながら日本語ではできませんがセリフまでめっちゃ気が利いてて実に見事な見せ方です。
あと、Steve DraunによるCollins Vanishのコツがとても参考になりました。あれリズム勝負なので引っかかるとあれですし、シュッとやりやすい方法が解説されています。
リズムよくできればめっちゃ綺麗。

Mark-a-Place Mates

観客が2組のメイトカードを出す手順。
4枚のA出すとかも出来ますが、なんかランダムなやつが出た方が変な奇跡っぽくて良いような気がします。
このムーブ、某有名なものと同じ効果なのですが、確かライアンシュルツがなんかでやっててあっさり引っかかった記憶があって、「1枚選ばせる」という動きに溶け込んでかなり自然な動きになってます。
フォースへの応用が解説されていて、3枚のうち2枚とか1枚で良い時は実際に1枚はフリーチョイスなのでかなりフリーチョイス感を出せそう。

Paragon Poker

3フェイズのポーカーデモンストレーション。
2段目3段目と意外性が高まり、観客から見ると同じことが起こるのだなと思うような仕掛けがあって面白いです。
しかもセットも超簡単で直感的。今まで読んだアロンソンのポーカーの手順はだいたいシンプルで良かったですが、この手順は特に気に入りました。
技法弱者への優しい見せ方の解説もあって優しい。

Self Control

アロンソン本のお楽しみ、Believe it or notのコーナー。
なんか知らんけどデックに触らずカードの位置がわかります。
最近読む本にちょこちょこ出てくるこの手の原理、やっぱり何回やっても不思議に感じます。

Active Aces

Collins Acesでエースが消えてからChrist Aces的展開での1枚ずつの出現。
それで上手いことできるんやろかと思っていたら上手いことなってました。
Christ Acesの4つに分けるのがどうもってのもありますし、消えたものが出てくるのはやっぱり気持ち良いです。
なんか知らんけどコントロールしたんだなという感じがなくなるんで、Christ Aces的な出現をやるのに綺麗な見せ方ではないでしょうか。

Simple Simon

オーバーハンドシャッフルで4枚のAを積み込む方法について。
シュッシュッシュッシュ、シュッシュッシュッシュ、シュッシュッシュッシュってならないよう、4枚をバラバラに戻してからラフにオーバーハンドシャッフルしただけに見える感じになってます。
マルチプルシフトしてシュッシュッシュッシュ、とかでもなく、戻してから混ざるまでが一連になってるのでコントロール感がないです。
ポーカー手順用なので4枚でやってますが、2枚とか3枚を何枚目と何枚目にとかにも応用できる方法。

Lateral Palm Double Change

別のカードだったトップとボトムが選ばれたカードに変わる手品です。
トップカードはあれとして、ボトムカードは確かにボトムカードだから上手くやれば結構気持ち悪い感触を残せる気がします。
ビジュアルな変化ではないので、移動のように見せたり時間差で示したり色々と見せ方は考えられそうです。

Two Minds and a Mate

2人の観客の思ったカードと誰も表を見ずにポケットに入れたカードを当てます。
思ったカードはかなり思ったカードで、ポケットに入れたカードも実際に誰も知りようがなく、見せ方もかなり凝っていて凄い手順です。
このトリックはメモライズドデックは不要で簡単なセットからスタートすることが出来、ちょっと難易度の高い技法を上手いタイミングで出来るようになってます。

Mix and Match

赤と青のデックを出して「1個ずつ使うだけだと簡単なので」つって2つをシャッフルして104枚のデックからスタートする面白手順。
現象は観客と演者のカードの一致を観客が予言した的に見せるもので、まあ混ぜんでも似たようなことできるやんというのはありますが混ぜた方が面白いので良いです。
原理的にも混ぜることによるアドバンテージがあり、セットを工夫すれば2デックマッチングのあれこれに繋げることも出来るかと思います。

Time Out

クロックトリックで、観客のカードが消えて11枚になります。
仕組みもよくできているのですが、はい消えましたという感じじゃなく仕事が終わってからの見せ方が秀逸で、サイモンアロンソンの凄いとこはこういうとこだなと思うトリックですね。

Below the Belt

2デック使ったDo us I Doの一致現象。
セットを見てそれだったらなんでもありなのではと思ったのですが、やはりそこはさすがというか、超ずるいことをした時に出来る別の穴を上手く塞いでいて隙のないトリックになっています。
ラモンリオボーの本にも似たようなのが載っていて、こういうのに興味湧き中。

Oh Pity Me Location

現象的には1枚ポケットに入れてもらったカードを当てるマジックが解説されていて、そのシステムの他の可能性にも触れられています。
確かにこれならそこそこの負担で、自由に選んでもらえてシャッフルもしてもらえるので不思議さとのバランスはとても良いです。

Bait and Switch

観客が選んだカードを観客が言った枚数目にコントロールする手品。
惚れ惚れするような演技運びで、その時点で何かをやってもしょうがないという状態が続くので、うまく演じれば最後まで何も疑われずに済む構成になってます。
これ自体も素晴らしいのですが、観客がシャッフルしたデックからボーナスステージに突入するためのトリックとしても非常に優秀。

Any Card, Then Any Number

凄いエニエニ。
連続して見せれて、2回目は数字とカード言う客を交代します。
なので超不思議なエニエニ見た時のサクラを使えばどうにでもなるという疑いが残りません。
実際はもっと反則の度合いが強いわけですが、手伝ってもらう生の観客のリアクションを引き出せる方法なので周りの観客への説得力も十分。
エニエニで観客に与えたい印象としても正しいように思います。

Four Part Harmony

4人の観客に選んでもらった4枚のカードを当てる手品。
Simply Simonにもうちょっと洗練されていて演技中の負担が少ない似たようなのが載っているので、それと比べるとやや複雑に感じます。
ただこれ当てていく過程が面白くて、割とガチのメンタルっぽくも見せられるようになってておもろいです。

Memorized Math

数理的原理をメモライズドデックで応用したアイデアについて。
原理だけで成立するトリックを更にショートカットできるようになります。
単純に手続きが減ったり、表を見ずに当てることができたり。
まだまだ開拓の余地がありそうな話ですね。
メモライズドデックでも制限付きのシャッフルは使えることが多く、スタックの気配をなくせるものも多いですし。

Simon-Eyes

50ページあるやつがこれです。
言っても手順がだらだら長いわけじゃなく、大半が理屈の解説です。
現象は2人の観客のメンタルセレクションを当てるもので、ちょっと覚えないといけないことはありますが全体を見るとそこまでややこしい話でもありません。
まあでも読んでもすぐはできるようにならんことを良くここまで完成させたなという感動があります。
理屈のとこにもなるほどするところが多く、これ関係の話見るたびに読み返すと思います。

そんなわけでサイモンアロンソン3冊読み終わりましたが、共通した面白さもありつつそれぞれ別のベクトルの趣きがありとても楽しいです。
一気に読むのももったいない気がするのでしばらく読み返して色々考えながら遊びたいと思います。
というか注文してる残り2冊がスウェーデンで行方不明中。
無事に届くと良いですね。

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